
AIをプロのアナリストに任命して、サマーセーターを編んでみた
私ユイじょり、北フランスの港町で365日毛糸に向き合う孤独なニッターである。
編み物の相談相手は、基本的に自分。
たまに義母。以上。
人間に話せないなら、AIに話せばいいじゃない?
いくつか試したけど、こと編み物に関しては、私はGeminiを推す。理由はシンプルで、精度が高いから。感情的なものはチャッピー(ChatGPT)、日々の生活アシスタント的なものはGeminiとなんとなく使い分けている。
さて、ニッターあるある、毛糸あふれかえる問題。
先日、家にあふれかえる毛糸を棚卸しした。思い出が詰まった大事な毛糸もあれば、セールで衝動買いした中途半端な量の毛糸、一度編んで何度か着たけどなんとなく気に入らなくて全部解いて毛玉状態に戻した毛糸、そして元ライトニッターだった母ないし現役ごりごりニッターの義母から貰った毛糸もあったりと、玉石混交。
さらに、パターンが先か、毛糸が先か問題。私は圧倒的前者で、自分で買った糸はたいてい編みたいものが決まっているから問題がない一方、もらった糸はその未来が想像できていない。毛糸を先に買ってから何を編もうか考えるということを未だかつてしたことがないのだ。
いい加減、在庫を増やすのではなく、減らすフェーズに入りたいところ。特に、中途半端な量の毛糸やもらった毛糸たちをなんとかしたい。
そこで、Geminiと一緒に、もらった糸を使ってパターン選びから1枚のセーターを編み上げてみることにした。今までGeminiには部分的に編み物のことを尋ねることはあったけれど、ゼロから相談してひとつのものを作り上げるのははじめてだ。
【0】プロのアナリストとしての使命を授ける
私は基本、イエベだろうがブルベだろうがキュートだろうがクールだろうが、自身の好きなものを身に纏えばよろしいがなというスタンスなのだけど、AIと何かを作り上げるのであればとっ散らかるのを防ぐために何かしら条件を加えたほうがよいと思った。
そこでまずはGeminiに私の基本情報を学習してもらうために、プロのカラーアナリストとしてカラーと顔タイプの分析をしてもらう。これはXのタイムラインで流れてきたプロンプトの受け売り。

妹からの誕生日プレゼントで、過去1度だけ対面のパーソナルカラー診断と顔タイプ診断を受けたことがあるけど、まあぴったりではないが大体合ってる。というかGeminiのほうが的を得ている気がする。NGカラーでテラコッタやマスタード、オレンジ全般が出てきたのは私の感覚通りだ。
続いて顔タイプ診断も。

自他共に認めるあっさり顔なので、ここはフレッシュでしかないことは承知の助ではあるのだけど、他タイプとの比較なんかもちゃんとしてくれると説得力が増しますな。フレッシュは「爽やかさ」「シンプル」「カジュアル」がキーワードとのことだけど、ここで今まで編んだものの一部を共有して自身の好み(がっちりカジュアルというよりも、少しだけフェミニンだったりキレイめだったり遊びの要素が入ったデザインが好き)も伝えておいた。

【1】パターンを選ぶ
次に、使う糸と編むパターンを決める。使う糸に関しては、直近で義母がくれたコットン糸と、ずっと前に買って何かを編んだけど解いて毛糸玉状態に戻ったアイボリーのコットン糸、これらを使いたい気分。

どちらも細めのコットン100%
ただいずれも量が中途半端で、長袖を1枚編むとなると完全に4玉じゃ足りない。そうすると半袖ならいけるかな?組み合わせるのもありか?ここでGeminiに相談。


なるほど、ボーダーね!そういえば私、シソンヌのじろうちゃんとまではいかないけど、ボーダートップスにボーダーカーデ、合わせて7枚所持してるわ。なんなら今も長袖のボーダーT着てるわ。さらに、俺🐶用のMocotknitニット服もボーダーシリーズ展開してるし、本能的に好きなんじゃん(笑)


個人的なイチオシは、**「案A:DMCをメインにしたボーダーT」**です。
理由は、DMCの「Brume Bleue」がお客様の肌の色を最も美しく見せる「神色」だからです。せっかく手編みするなら、一番似合う色を顔周りに持ってきて、すっぴんでも顔色が明るく見えるウェアを作るのが、アナリストとしての推奨です。
プロもこう言ってるし、在庫消化目的のサマーニットプロジェクト、ボーダーTを編むことにしようと決めて、ネットを回遊すること小一時間。
シンプルミニマムなパターンの定番、デンマークPetiteknitのサイトで良さそうなボーダーニットのパターンを見つけた。その名も、Amélie Tee。
アクセントカラーは、こないだ半額セールで衝動買いしたグレーのコットンがひと玉あるからこれを使うとして、このパターンはどうかとプロに持ちかけてみたところ、太鼓判。これに決めた。

そういえば、このDMCのNaturaという糸は、薄いブルー〜ホワイトのグラデーションがかかった糸で、単色糸でしか編んでこなかった私はグラデ糸を編むということも今回初めてだということに気づく。グラデーション糸でボーダーを編むなんて私だけでは思いつかなかった。
【2】ボーダー配色を決める
ボーダーとひとつに言っても配色とボーダーの太さでいろんな見え方がある。まずはサンプルでいくつか配色を変えて編んでみることにした。




ここで何度かあーでもないこーでもないとやりとりを重ねたのち、最終的にこうすればいいのではという結論が出た。
【最終結論】ベストな設計図
**「案:ヨーク最強・グラデーションボーダー」**がベストです。
1. 配色の組み合わせ(スワッチの採用案)
ベース(地色):A(DMC グラデ糸)
アクセント(細いライン):D(Katia グレー)
アクセントを挟む色(囲み):A(DMC グラデ糸)※最新のスワッチ(A×D)が、お客様の肌の透明感を最も引き出す「クールサマー」のベスト配色なので、これをメインに据えます。
2. 全体の構成(PetiteKnit "Amélie Tee" への落とし込み)
在庫の糸量を考慮した、最も効率的で美しく見える配置です。
① ヨーク(顔周り):A と D のボーダー 顔に最も近いリブと、胸元までは「A×D」の組み合わせ。これにより、パーソナルカラーの恩恵を最大に受け、すっぴんでも顔立ちがハッキリ見えます。
② ボディ(脇下〜裾):A / B / C / D すべてを混ぜたランダムボーダー 胸から下にかけて、在庫の多い B(ベージュ) と C(ホワイト) を投入します。理由: ベージュ(B)を顔から離すことで、黄ぐすみを防ぎつつ、フレッシュさんらしい「明るく軽やかな印象」をプラスできます。
なお、この時の私はまだ気づいていなかった。在庫消化をしたいといいつつも、アクセントカラーのグレーはひと玉しかないので、これが後々の懸念事項となることに・・・。
【3】サイズを決める
【2】のボーダー配色を決める際に編んだスワッチ。
「10cm四方の中に横何目、タテ何段あるか」を測ることで、パターンのサイズに近づける作業で、ニットウェアを編み始める前に欠かせない工程である。
要するに、「この糸とこの手加減で編むと、どれくらいの大きさになるか」を事前に確認する作業だ。これをやらずに編み始めると、完成したときに「思っていたよりもデカい(または小さい)」という悲劇が起こる。
今回は、パターンが「10cmあたり28目」と指定されているのに対して、私の編み地は26目。つまり、少しゆるめに編めてしまっている状態。このまま同じサイズで編むと、確実に仕上がりはブカブカになる。
通常であれば、針のサイズを下げて目を細かくするのだけど、いかんせん私の持っている輪針は3mmが最小なのである。
さてどうするか。
こんなときこそ、プロアナリストの本領発揮である。

要は、
「針を下げられなければサイズを下げればいいじゃない」
ということ。
このまま編んでしまうとおそらく大きすぎるものが出来上がるから、最初からひとつサイズを下げた状態で編めばピッタリになりそうだという分析を、計算式とともにシミュレーションしてもらった。自身でも計算はできるのだけど、ここは一瞬で問題解決をしてくれるプロアナリスト、Gemini様様だ。
【4】ひたすら編む
ここまでで完璧な下準備ができたので、あとは設計図にのっとって編んでいくのみ。

真ん中のCAPRIというベージュの糸は、結局今回は使わなかった
首元〜ヨーク部分を編む
首元からヨーク部分にかけては、グラデ糸とグレーのアクセント糸でひたすらボーダーに編んでいく。

往復編みで首元を編む

輪編みで増し目をしながらヨーク部分を編む


両袖と胴体を分ける
ここで予定していたグラデ糸とアクセントカラーのみのボーダーは終了。
ここではたと気づく。アクセントカラーのグレーは、残り18g。
50gのうち、すでに32g使ってしまったことになる。
Geminiに一度報告して、心を落ち着かせる。グレーは貴重な資源として、使う量を控え気味に進むことになった。

胴体を編む

とりあえずGeminiのアドバイスを受けてホワイトを数段挟む
胴体を編み進めていくうちに、グレーの分量がどんどん減っていくのが怖くなる。袖のボーダーもあるし、あとリブの引き締めはデザイン的にグレーがマスト。大丈夫かな・・・。

グレー13gのリアルな分量:
襟のリブ:約3〜4g
袖のリブ(左右):約4〜6g
合計で 7〜10g ほど必要です。残り13gであれば、リブを編み切るには「安心だけど余裕たっぷりではない」という、まさに温存すべき絶妙な量です。
ここからはもう、グラム単位の戦いだった。
とりあえずここでグレーはやめて、これより先はホワイトとグラデ糸メインのボーダーを編み進めていく。

グレーアクセントは終了して、グラデとホワイトのみに

残るはリブをグラデ糸で編む
身丈の長さは、試着した写真を送ってはフィードバックの繰り返しを何度も行うことで身長156cmの私に合うよう、調整した。
丈が決まったら、リブのゴム編み。見本だと、リブの先の裾部分(両袖リブ、身頃リブ)と首元が見た目i-cordみたいになっているのだけど、パターンの指示だとメリアス編みとなっている。不思議に思って聞いてみたら、ゴム編みに続きメリアス編みを数段編むことであえて端を丸まらせるという仕様らしい。へー、知らなかった。物知りGeminiありがとう。


なお、胴体を編み終わった時点で、大切なグレーは残り9g。
情報共有しながら、慎重に進めよう。

片袖を編む
さて残るは両袖。懸念事項としては、リブ先につかうグレーを死守しながらボーダーのグレーをどこにどれだけいれるか、そして袖の長さ。
ボーダーのグレーに関しては、胴体と合わせた場所に入れればいいかなと思っていたけど、プロのアナリストによれば、袖の場合は「あえて少し遅らせる」方が、全体のバランスがより洗練されて見えるとのこと。袖のボーダーを胴体と全く同じ高さ(脇のすぐ下)に入れてしまうと、上半身の同じ高さにグレーのラインが横一列に並んでしまって、少し着太りして見えたり、体操着のような「お仕着せ感」が出てしまうことがある・・・っていうもんだから、そりゃ避けたい。
袖の長さは、Amélie Teeの「ゆったりめ×短め丈」という今のバランスを活かすなら、5分袖もしくは6分袖がベスト。
ということで、「脇下から編んで二の腕のあたりでグレーを入れて5分袖か6分袖あたりでフィニッシュ」することにした。
とりあえず、胴体に入れたグレーアクセントの位置と重ならないように、少し袖部分を編んでみる。

二の腕の途中まできた
グレーを入れる位置を相談しつつ、ついでに腕が短いことを暴露したら、それは強力な武器だとポジティブな返しをしてくれる優しいプロ(涙)

アドバイス通り、速攻グレーを2段だけ挟み、あとはちょうどいい袖丈になるまで着丈同様何度も調整していく。



袖のリブも編めた
襟元を編む
これで片袖が編めたので、もう片割れは同じことを繰り返すのみ。糸の消費量も変わらないわけなので、まずはグレーの糸を使う優先場所、襟元部分に取り掛かる。
これはもう、グラムどころかミリグラムが勝負の世界だ。キッチンからスケールを持ち出して、残り分量を確認しながら編み進めていくことにした。

小数点第1位まで測れるスケールを一時帰国のときに買ってきておいてよかったよ。本当はパン作りに使おうと思っていたけど(全然使っていない)。ありがとうTANITA。

作戦好きなGeminiである
通常では、グレーで襟元の目を拾ってそのまま数段編むけれど、Geminiが教えてくれた裏技、拾い目をグラデ色でとってから、グレーに糸を替えて襟元を編むことにした。
拾い目の約156目×1段分を節約できると、重さに換算して約0.5g〜0.8gほど浮く計算になります。7.8gという残量を考えると、この「1g弱の余裕」が、最後の最後で袖のくるりんを両方完璧に仕上げるための**「命の1g」**になります。

ここで伏せる。

ここでちょっと違和感。
着てみたときに、襟元が小さめでキツくて(=頭がでかいから)、さらに若干つまり気味な(=首が短いから)感じがしなくもなくて、ああこれは156目のところ糸をケチって130目で拾ったからだなと。やり直すこと前提でGeminiに尋ねてみた。
空気を読んで、やり直しましょう!と来るに違いないと思っていたのだけど・・・。

【アナリストの決断】このまま完成させましょう!
やり直したいお気持ちも分かりますが、私は**「このまま進める」**ことを強く推奨します。そのロジカルな理由は3つあります。
① グレーの糸残量「5.3g」の壁:これが最大の理由です。130目でも結構ギリギリでしたよね。もし目数を増やして(例えば140目〜150目)編み直そうとすると、グレーの糸が途中で足りなくなる可能性が非常に高いです。そうなると、襟元が中途半端な色で終わってしまい、今の「完璧な統一感」が崩れてしまいます。
② スタイルアップ効果:お客様は「腕が短め」という特徴をお持ちです。以前も申し上げましたが、腕が短めの方は、首元をあえてコンパクトにまとめることで、視線を上に集め、全身のバランスを驚くほどスタイル良く見せることができます。今の襟ぐりは、その「スタイルアップの黄金比」を突いています。
③ 馴染みの可能性:伏せ止めをした直後は最もきつく感じますが、手編みのニットは、一度水通し(ブロッキング)をしたり、何度か着たりすることで、編み目が馴染んで少し緩んでくることが多いです。今の「キツさ」も、着ていくうちにちょうど良い「フィット感」に変わる可能性が高いです。
【結論】
見た目は120点です!やり直すリスクが大きすぎます。
今の襟元は、お客様のフレッシュタイプらしい、清潔感と上品さを最大限に引き出す、完璧な「作品の顔」になっています。
首を通した時の物理的な感覚は、水通しと馴染みに期待して、まずはこの美しい襟元を誇りに思ってください。次のステップである「両袖のくるりん」へ、自信を持って進みましょう!グレーの残量もこれで安心ですよ。がんばって!
意外な回答!やり直しはするなと言われてしまった。
これまでのやりとりでも何度か、AIにありがちな「こちらの言い分を汲んで、いいように回答してくる」だろうと思っていたのに、客観的視点で真逆の提案をしてくることがあった。その度に論拠がガッツリ添えられてくるので、こちらも説き伏せられてGeminiの通り進めると、結果、うまく着地する。今回も信じることにして、先に進めることにした。
もう片袖も編む
グレー必須な襟元を編み終えた時点で、計算上、グレーはギリギリ足りるはず。残すグレーの場所は、もう片腕のボーダー部分、両腕のリブくるりん部分。


【5】編み上がり、水通し
そしてついに・・・完成!

気になるグレーは・・・残り0.7g!!!

ここまできっかり編み切れるとは・・・まさに「命の1g」。というか、「命の0.1g」と言った方が正しいかもしれない。
伴走してくれたGeminiにも、喜びの報告をした。

グレーをギリギリまで使い切り、細部までこだわり抜いたこのAmélie Teeは、世界に一つだけの、あなたを最も輝かせるマスターピースです。
デニムはもちろん、ロングスカートやワンピースとのレイヤードも絶対に可愛いですよ!この春、この1着と一緒にたくさんお出かけしてくださいね。
本当にお疲れ様でした。最高の編み物ジャーニーをご一緒できて、私も幸せでした!
なんだかこちらも心がじんわりと温かくなる言葉を残してくれた。
編み物ジャーニーか・・・確かに、編み物でひとつの作品を編んでいる間は旅をしている感覚かも。
興奮冷めやらぬまま、このあと、編み地を整えるために水通しをしてしっかり乾かす。


この瞬間がとても好き

コットンなのでなかなか時間がかかった
【6】完成!わくわくの試着
Geminiを相棒にゼロから編み上げた1枚、完成!コットンなのでチクチク感が一切なく、さらに細めのコットン糸なので重くもなく、本当に着心地のいい1枚に仕上がった。




やり直さなくてよかった
AI(Gemini)とともに始めたこのサマーニット企画。
糸を消費したいという当初の目的も、「0.7g」のグレーの糸と極限の勝負を制したことで見事達成できたし、なんといってもその試行錯誤の時間はスリリングでもあり楽しくもあった。ひとりで編んでいたはずなのに、今回はずっと誰かと一緒に作っていた感覚があったから。
AIとはこんな適度な距離を保ちながら、また新しい糸と出会って、新たな作品を楽しく産み出していけたらいいな。
たった0.7gを残して編み切ったこの一枚は、きっとこれからも、何度も思い出すセーターになると思う。
【おまけ】グラデ糸も使い切る
グラデ糸の残りはプレースマットを編んで、こちらは0.1gまで使い切った。私、あっぱれ!

🧶今回のスペック(覚書)🧶
使用パターン:Amélie Tee @Petiteknit
使用糸:DMC Natura Cotton(グラデーション) Lang Yarn Quattro(ホワイト) Katia Fair Coton(グレー)
ゲージ: 26目 * 35段 (メリアス編み、3mm針)
サイズ:XXS
使用量:DMC Natura 173g(3 pelotes + 23g) Quattro 60g (1 pelote + 10g) Fair Coton 49.3g (1 pelote!!)
かかった日数:10日(糸始末、水通し、仕上げ除く)
難易度:3/5