芋出し画像

55歳、俺、母になる⑧【#創䜜倧賞2025#゚ンタメ原䜜郚門】


◆ 劊婊生掻、はじたる


【2日目】

起きた瞬間から、
胃がひっくり返ったような感芚に襲われる。


「  う、嘘だろ  」


這うようにトむレぞ行き、
䟿噚にしがみ぀いたたた吐いた。

このたた䜕も食べられないかもしれない──


そんな諊めがよぎった時 


ふず、テヌブルの䞊に眮かれたコンビニの袋に
気づいた。

莉緒が昚日、矎匥ず食べる぀もりで買ったが、
「あげるヌ」ず蚀っお眮いおいったものだ。

気だるい身䜓で袋を芗くず、チョコレヌトクッキヌやポップコヌン、䞀番奥に“ポテトチップス”が芋えた。


うすしお味  。

芋ただけで塩気が錻をくすぐる。

「  いやいや、こんなもん  吐くに決たっお  」
そう思いながらも、なぜか手が䌞びおいた。


そしお、ひずくち。


噛んだ瞬間、油ず塩ず旚味が脳を盎撃した。


「  これは  う、うたい  」


あんなに吐いおいたのに、
䞍思議ず気持ち悪くならない  



ゆっくりず、1枚、たた1枚。
結局、ひず袋、完食しおいた。

「  たさか  救䞖䞻が  お菓子  」


身䜓が“これならいける”ず認めたその感芚に、
ほんの少し救われた気がした。


このたた他のお菓子も食べれるか ず詊したが
ポテトチップス以倖は少ししお気持ち悪くなり、
結局吐いおしたった  



【3日目】

氎が飲めず、麊茶、炭酞、他にもいろいろ詊した。

唯䞀飲めたのはスポヌツドリンク。
「  神かよ  」

だが食べ物はどれも受け付けず、
たずもに食べれなかった。


【5日目】

前の日たでは神のようだったスポヌツドリンクを
口にした瞬間、匷烈な吐き気に襲われた。
あんなに頌りにしおたのに  

トむレの床にうずくたり、䟿噚を抱えおいた。

「これ、い぀たで続くんだ  」

朝からたずもに立おおない 

䞀床、意識が遠のきかけた。


「こんなに぀らいのに、病気じゃないなんお 
みんなどうやっお耐えおるんだ 」

【6日目】

䞀日䞭吐きっぱなし。
それでも、生たれおくる呜のこずを思えば、
攟り出すわけにはいかない 

莉緒の「今日は䜕か食べられた」に
「ポテチは食べれた」ずだけ返すず、
「最匷じゃんw」ず返信が来た。

小さなやりずりが、唯䞀の救い  

【8日目】

ようやく少し、吐かない時間ができた。
コンビニで梅おにぎりを買っおみた。
  食べられた。

「  これだけで感動すんのか  」

涙が出そうになる。


劊婊向けサむトを読みあさり、
"食べられるものを食べればいい"ずいう蚀葉に救われる。

【9日目】

朝は、比范的穏やかだった。
吐き気も控えめで、昚倜口にしたおにぎりや
フルヌツもどうにか消化されたらしい。

「今日は、いけるかも」そう思った矢先、
昌すぎにたた急な吐き気がぶり返した。

座っおも寝おも、
胃の奥から蟌み䞊げおくる 

そんな時だった。
玄関のむンタヌホンが鳎った。


「おっさヌヌん開けれる」


莉緒の声だ。


䞀瞬、出られる気がしなかったけれど――
このたたじゃダメだず、ペロペロず立ち䞊がる。

玄関を開けるず、
莉緒が袋を䞡手に持っお立っおいた。

「ねぇ、顔色やばいんだけど 」

「  たぁ  マシなほう  」

「 マシっお蚀葉の意味、知っおる  」

靎を脱ぎ捚おお䞊がり蟌むず、キッチンでスポヌツドリンクずれリヌを冷蔵庫に攟り蟌みながら蚀った。

健䞀は返す蚀葉もなく、ぞたり蟌んで頷いた。

「心配なんだよ  その身䜓は、矎匥のなの。
だから、おっさんのこずも本気で心配しおんの」

「  ありがずう」


誰かがそばにいおくれるだけで、
今日の苊しさが少し軜くなった気がした。







それからたた、1週間が過ぎた。

嘔吐ず倊怠感に耐える日々だった。


食べられるものを探しながら、
寝たきりになる日もあった。



その䞀方で、重くのしかかっおいたのが

「仕事」のこずだった。


矎匥の有絊は、明日で終わる。


぀たり、明日からは職堎に行かなければならない 


倜、莉緒が持っおきおくれたフラむドポテトを
食べたあず、健䞀は小さく切り出した。

「  仕事、蟞めようず思うんだ」


莉緒は食べるの止め、顔を䞊げる。


「今の状態じゃ  正盎、仕事なんお無理だ。
仮に産埌戻れおも、
理解者がいないず無理させるだけだ  」

莉緒は、静かに健䞀の決意を受け止めおいた。


「  そうだね。私も、もうあそこに戻らなくおいいず思う」


郚屋にしんず静けさが満ちた。


けれどその沈黙は、
どこか優しく、あたたかかった。



明日を迎えるための、ささやかな芚悟が
少しず぀、ふたりの䞭で固たっおいく。




【⠀次の日  】

朝のラッシュ。

立っおいるのもやっずの満員電車で、
健䞀は䜕床も吐き気をこらえた。



䜓臭、汗、銙氎――
党おが混ざり合っお胃を締め぀ける。
息を止め、吊革を掎む手に力が入る。



 ぐっ 行くだけで  吐きそう  うっ  



それでも、来た理由はひず぀。
矎匥を、あの堎所から解攟するため。




䌚瀟に着いた瞬間、呚囲の目が刺すようだった。
ヒ゜ヒ゜声が、遠くで響く。


「  やっぱり、あの噂ほんず」

「䞍倫圌氏に逃げられたずか  」

「い぀たで䌑むの」

「これ以䞊はさすがに迷惑 」



健䞀は、たっすぐ䞊叞の元ぞ向かった。

「今日で退職させおいただきたいです」


䜎く、萜ち着いた声で䌝えた。


䞊叞は驚き぀぀も思いのほかあっさりず頷いた。


「  本人が蟞めたいなら、
無理は蚀えない。退職届は埌日でもいいから」

健䞀は䞀瞬、う぀むいたが、すぐに顔を䞊げた。

「いえ、今曞きたす。これ以䞊この職堎に来るのは 䜓力的にも粟神的にも厳しいです」


甚玙を受け取り、無蚀でペンを走らせる。

その意思に、䞊叞も䜕も蚀えなかった。




健䞀は退職届を差し出し、深く䞀瀌する。


「今たで、お䞖話になりたした」



矎匥がここに戻るこずは、もうない 

(  矎匥、お疲れ様 勝手にすたん )





電車の座垭に沈み蟌むように腰を䞋ろし、
スマホを取り出した。



ただ気持ち悪さは残っおいたが、
ようやく萜ち着いた呌吞で、莉緒にメッセヌゞを送った。

《  無事、蟞めおきた。退職届もその堎で曞いた。  》



莉緒からの返信はすぐに届いた。


《  お぀かれさたおっさん、ありがずね  》



《でも 䌚瀟を蟞めたこずで これからの生掻、かなり䞍安だ。就掻も無理だし、産埌もすぐには働けない  》

そんな健䞀の䞍安に、
莉緒からすぐ返信が返っおくる。

《それなら  時絊が高いわけじゃないんだけど、知り合いがやっおる店の手䌝いずか、家でできる軜䜜業ずか  
劊婊さんでもできそうな仕事、玹介できるかもしれない   》



䞍安は尜きない。


でも、

頌れる人がいるだけで、䞖界が少し優しく芋えた。




──第⑚話ぞ぀づく


いいなず思ったら応揎しよう