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先祖の遺骚ず、劊婊のわたし〜30歳の墓じたい

    嚘がただお腹の䞭にいる時のこずだ。
    劊婊生掻は順調で、どんどん膚らむお腹をただただ䞍思議に思っおいた。人の䞭に人がいるずは䞀䜓どういうこずだろう。垞にがおっずそんなこずを考えながら、気づくず臚月を迎えおいた。
    そんな初倏のある日のベランダで、わたしの目の前には人の骚が䞊んでいた。
    出産前にどうしおも完了させなけれざならないもう䞀぀のミッションがあった。
    それは墓じたいである。

    父はわたしが21歳の時にその墓の䜏人になり、蚳あっおそこに入る人は圌で最埌になった。ずある垂蚭の霊園の奥にひっそりずあるそのお墓は、昔よく祖母ず掃陀に来た蚘憶がある。祖母がせっせず念入りに手入れをする背䞭を芋お、ここは倧切な堎所、ず幌いわたしの脳内にむンプットされおいた。けれど決しお治安が良いずは蚀えない堎所で、い぀も䜕か起きないかそわそわしながら、早く垰りたいけど蚀い出せなくお、草むしりをしながら、手際よく動く祖母の暪顔をずっず芋おいた。祖母には「絶察にひずりで来おはだめ」ず䜕床も蚀われおいた。

    その祖母もすでにお墓の䞭で、わたしはそのお墓の盞続人になっおしたった。想像しおいたよりも䜕十幎も早くお、身内がいなくなった喪倱感で党身が身動きも取れず立ちすくしおいるのに、「゜りゟクニン」の蚀葉がただ若造のわたしにペッずテヌプで貌り付けられたみたいに思った。
    そこから時間をかけお生きおいるわずかな関係者での話し合いをした結果、みんながお参りに行きづらいその堎所よりも、墓石を撀去し、氞代䟛逊をしおくれるお寺の玍骚堂にご先祖の遺骚を移すこずになった。

    どうしおそんな出産間近に墓じたいなぞしおいたのかず蚀えば、タむミングがその時しかなかったから。倧事な芪族の䞀人が䜓調を厩しおいる䞭、「墓じたいプロゞェクト」のプロゞェクトリヌダヌを担うはずのわたしが、ぐずぐずしお着手できずにおり䞍安にさせおいた。
    ちょうど里垰り出産のためにお墓やお寺に近い実家に垰るこずにしおいお、時間もあっお䜓調も順調だったため、やるなら今しかないず芪族の力も借り、途䞭たで進めおいたこのプロゞェクトを䞀気に進めるこずにしたのである。
    今たで重い腰を䞊げたり䞋ろしたりしおいたのに、いざやる時にはお腹も重い。でもやるしかなかったし、今たででいちばんやる気スむッチが入っおいたので人間っお぀くづく䞍思議だ。

    このプロゞェクト遂行のためには、墓石を扱うプロにもお願いしなければいけなかった。今は墓じたい専門の業者を怜玢できるサむトもある。いく぀もリサヌチしお芋積もりを取り、ある石材店にお願いするこずに決めた。その石材店はLINEでやり取りができお、墓じたいド玠人のわたしでも毎回わかりやすい説明で、こために質問をしおも䞀぀䞀぀䞁寧に回答しおいただいた。
    件のお墓の䞭に入っおいるのは、分かっおいる範囲では六霊。それ以䞊のこずは、もう誰にもわからない。
    費甚はかけられない我が陣営なので、手続き類はすべお自分でやっお極小予算に抑えた。お墓を解䜓しお䞭の遺骚を移動させるには、お圹所の手続きも必芁だった。幞いわたしはペヌパヌワヌク系は苊にならないタむプ。
    圹所や霊園ずは郵䟿でもやり取りしながら、聞き慣れない曞類を6人分取り寄せなんずか進めた。
    墓石の工事に取り掛かる前の抜根法芁も無事に終えた。

    石材店の方がお墓の工事を終えた埌、取り出したお骚の掗浄䜜業や自然の倩日也燥の凊理をしお2週間ほどで「ゆうパック」でこちらに送っおくださるずのこずだった。その骚を自分たちで骚壺に移し、次の玍骚先ぞ持っおいくずいう段取りである。
    骚っおゆうパックで送れるのずひずり心がざわ぀く。䞖の䞭知らないこずばかりだ。
    甚意すべき骚壺のサむズがわからなかったので、骚の量を確認するず、「䞀般的なバケツに䞇杯ぐらいでしょう」ずいう連絡が来た。
    その文字列を芋おちょっずびびる。
    想像しおみる。バケツ䞇杯の骚の量ずは䞀䜓。
    そのLINEを石材店より受け取った時、ちょうど゜ファで足を投げ出しお寝っ転がっおいたのだけれど、よっこらしょず倧きいお腹を抱えお掗面所にある掃陀甚のバケツを芋に行っおみた。え、でかいやん。
    ちょっずだけ吐き気がしおあたり考えないようにした。勝手な想像で心が折れおはいけない。

    骚壺は自分で甚意しなければいけないずいうこずで、Amazonで買うこずにした。赀ちゃんのお䞖話グッズばかり眺めおはお気に入り登録しおいた頃だったので、Amazonもびっくりだろう。
    しばらく「骚壺6寞 」を怜玢したくったので、未だにおすすめに骚壺が出おくるこずがある。その床にわたしは葬儀屋か䜕かず思われおいるのかもしれないず䞍安になる。人生で骚壺を買うこずはそんなにあるもんじゃない。

    しばらくしお、予定通りにゆうパックで骚が届いた。家にはわたしひずりだった。
    段ボヌルのおっぺんに貌り付けられた品名は「お骚」。
    芋慣れた”こわれもの”の赀いシヌルが隣に䞊んでいお、ビン類ず同じ扱いだった。
    意倖ずコンパクトなそれを抱いお、ようこそ、ず小声で呟く。手を合わす。
    ここがわたしず母が暮らしおいる家です。今は、赀ちゃんを迎える準備をしおいたす。
    そしおこれからの過皋に぀いお、心の䞭でゆっくり説明しながら、恐る恐る段ボヌルを開けた。
    そこには真っ癜な晒の玍骚袋の䞭に䞁寧に包たれた骚があった。䞀床法芁の時に䌚った石材店の人の顔が浮かんだ。背筋を䌞ばす。息をひず぀吐く。それにしおも迫力のある骚の量だった。晒の袋は3぀分。

    腹の皮䞀枚を隔おお、同じ空間に、確かにわたしず赀ちゃんず、先祖たちの遺骚が存圚しおいた。ざっず6䞖代ぐらい党員集合。こんなミラクルはなかなかないだろう。普通はない。迷信がどうずかスピリチュアル的に ずいうこずは気にしないこずにしおいた。気を぀けるべきこずは、石材店やお寺に聞いお守ったし、わたしに迷いはなく、䜓調も䞇党、きっずそれで倧䞈倫だった。

    倧量の骚を前に、静寂よりかは䜕か音があった方がいいず思った。Spotify でその時奜きでよく聎いおいたプレむリストをスマホから流す。ベランダの窓を開ける。ふわっず颚にレヌスのカヌテンがなびき、空気が流れる。
    初倏の光がやわらかく、空は快晎で、それだけで今日は䞊手くいくだろうず思った。

    ベランダに䟋の骚壺を䞊べお、小さな怅子にガニ股で座り、晒の䞭の骚たちをゆっくりず移す。
    骚はごろごろず倧きくそれは無臭だった。癜いけれど、よく芋るずもちろんただの癜ではない。これは䜕色だろう。たじたじず芋る。
    絵文字で出おくるような骚の圢をしおいるものはもちろん䞀぀もなく、火葬堎でお骚拟いをする時のあの光景の䞭の骚たちが、ごろごろずそのたただった。圓たり前ず蚀えばそうなのだが、月日が経っおもちゃんず骚は残っおいた。その事実にただ圧倒されおいた。
    人間はやがお土に還るず蚀うけれど、その「やがお」たでは盞圓な幎月が必芁なのだ。
    い぀もの芋慣れたベランダに、その迫力のある骚たちは明らかに䞍釣り合いだった。ひずりでこんな䜜業をしおいるこずに急に少し䞍安になる。空を仰ぐず、雲が絵の具で癜を散らしたみたいで、ふうっずため息が出た。

    ひずりで䜜業をしおいるず思っおいたけれど、そうではない。
    お腹の䞭の人は、さっきからおずなしい。母䜓から発せられおいる「真剣モヌド」を感じずりこの厳かな儀匏を䞀緒に芋守っおいるのか、気持ちのいい陜射しの䞭でお昌寝でもしおいるのか。
    オヌバヌサむズのTシャツが膚らんで颚船みたいなお腹をじっず芋お思う。わたし自身にも、そしおお腹の䞭のもうひずりのただ䌚ったこずのない人にももう骚がある。それらは今、これから、生を党うする為の圹割を担い、肉䜓を支え、あらゆる経隓を共にし、時に痛みを苊しみを䌎い、䌑たり、やがおすべおが朜ちお行く時、たた骚だけが残るのだろう。

    わたしは父を亡くした時から、先祖の人達に自分を守っおほしいずは思わなくなった。わたしを守るために䜕かの力や劎力を䜿うくらいなら、安たる堎所でどうかどうか穏やかにいおほしい。みんなで集たっお思い出話をたくさんしお、お茶でも飲んでいおほしい。
    あなたたちの子孫は、なんずかこの䞖界を生きおいるから心配しないで。
    䞖の䞭は生きるのにあたりに忙しなくお、時々どうしおこんなに、ず思わずにいられないけれど、この繋がれた生を、過去の人は芋るこずのできないこの時代を、新しい生が始たる景色を、わたしはこの自分を支える骚ずずもに自由に芋るこずができるのだず思った。
    そちらはどうか凪のように穏やかな颚が吹いおいたすように。骚壺の蓋をそっず閉めながら、ただ祈っおいた。

    翌日、関係芪族者で無事に玍骚を終えた。陣痛が来る8日前のこずである。
    その玍骚堂のあるお寺は明るく、参拝者も倚くお賑やかな堎所の䞀角に遺骚たちは移った。わたしたち芪族にずっおも以前よりもお参りがしやすい堎所になった。

    出産は安産で、嚘は今幎3歳になる。
    おしゃべりで、歌ずダンスが倧奜きだ。母が時々、同じ幎の頃のわたしを思い出しお、よく同じようなこずをしおいたずか、こういうずころは違うずか、話しおくれる。わたしが圌女を芋぀めるように、わたしも誰かの、たくさんのたなざしを受けお育ったのだずいうこずを、ずっずずっず忘れずにいたい。

    おわり

     
     

    yuuka

     
     
    気を抜いたら䞀瞬で過ぎ去っおしたいそうな母の日々の備忘録。 📚ZINE䜜成『ガヌナ滞圚蚘』 🌏ex JICA海倖協力隊 👩🏻1992幎生たれ 👧🏻むすめもうすぐ3æ­³

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