メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説14】深倜を螊る『二人だけのフォヌクダンス』䞀

    茹蛞倢皿

    修孊旅行は砂挠の駅だった。

    砂挠の䞭を二本の線路が走っおいる。駅で降りおもう䞀本の線路の駅たで砂挠を歩いお枡る。クラスごずに分かれお男女二列の瞊隊で競争する。どのクラスが早く぀くかどのクラスが途䞭で倒れおしたうか。砂に埋もれお救助を芁請するクラスも出おくる。

    䞍安な気持ちを玛らわすため私は砂挠に突入する盎前の駅で停車したすきに発車たで時間があったので降りおしたった。アラブ人も䞀緒に降りた。駅舎にはコヌヒヌショップが開いおいた。アラブ人を誘っお砂に぀いおの知識を埗ようず思っおお話を聞こうずした。アラブ人はさっさず行っおしたい私はひずり取り残された。お金を持っおいなかったのではないか。悪いこずをしおしたったなず悔やんだ。

    アラブ人は戻らなかった。列車が動き出した。私はプラットフォヌムに出るず列車を远っお走り始めた。プラットフォヌムが切れるあたりで列車はカヌブを描いお離れおゆく。倧声で呌び止めた。諊めたら止たった。線路に降りお列車によじ登った。

    通路を歩いお行く。葛岡䞭孊の同玚生のはずだが芋知らぬ乗客のようにすたしおいる。劙に萜ち着いお倧人のようでもあり顔が癜じんでいる。䞭には顔を隠すために包垯を巻いおいるものもいた。みんな無蚀で、話しおいるものは誰もいなかった。

    䞀぀のクラスに䞀぀の車䞡が割り圓おられおいた。私は䞉幎五組のクラスに戻ろうず先を急いだ。連結郚をいく぀も通り越したが自分のクラスには蟿り着けない。通路には机が眮いおあり進路を劚害しおいた。跳び箱のように机を飛び越えた。いく぀もいく぀も飛び越えおやっず䞉幎五組の車䞡にたどり着いた。

    ボックス垭の通路偎に小川さんが座っおいる。窓の倖の砂挠を寂しそうに眺めおいる。砂䞘が幟重にも波打ち、遠くたで重なっおいる。空ず砂挠の境目はなく茶色にくすんでいる。砂挠の谷底を列車は走っおいるのだろうか。山䞊み党䜓が砂挠のような景色だ。空があるべき高いずころに砂挠が広がっおいる。

    赀い着物を着お杖を぀いた女が腰を倧きく揺らしながら䞊っおいく。女の頭䞊で円を描いお赀ずんがが舞っおいる。救助のヘリコプタヌだろうか。女は砂䞘の向こう偎の駅を目指しおいるのだが、たどり着けそうになかった。じわじわ砂に埋もれお行く。

    小川さんは車窓越しに今にも倒れそうなその女の姿を芋やっおいる。自分の未来を芋おいるような悲しく现めた県差しだ。にじんだ涙を芋逃すはずもなく、ボックス垭の他の䞉人はじっず小川さんの顔を芋お心配しおいる。

    小川さんの前には島接君が座っおいた。クラスの䞭では䞀番背の䜎い男子だ。身長は小川さんの肩にやっず届くくらい。小川さんの呚蟺で隒ぐのが奜きだった。喜ばせようずしおクラスのみんなのものたねを始めた。私のたねをする番が来たようだ。急に深刻そうな顔を䜜った。やられおしたうやられおしたうずしわくちゃの顔で泣き叫ぶ。将来私以倖の男が小川さんず肌を合わせるこずになる。そのこずを慟哭しおいるのだ。小川さんは喜ぶどころか䜓をふるわせおこらえおいた。小川さんも自分の運呜を呪っおいるに違いないず私は思った。

    窓際の垭には二人の女の子が向かい合っおいた。二人ずも足が床に届いおいない。宙でぶらぶらしおいる。朝瀌などで䞊ぶ時い぀も先頭にいる女の子たちだ。しかしクラスメむトのようには芋えない。小川さんの二人の嚘のように芋えた。倫ず瀺し合わせお䜜った家族だ。

    修孊旅行の特別列車は砂挠の駅ぞ向かっお走り続ける。

    駅にはプラットホヌムがあるだけだった。柱も屋根もなかった。プラットフォヌムの䞊にクラスごずに敎列した。私ず小川さんはペナントを先に぀けた竿を持っお䞉幎五組のみんなの列の先頭にいた。

    砂挠に降り立ち行進を始めた。先方の砂䞘を越えお、䞋っお行けばもう䞀぀の別の駅があるはずだ。䞀歩螏み出すごずに足が砂の䞭に消えおゆく。登るに぀れお砂が深くなる。䞘の頂䞊に来た頃には膝たで砂に捉えられおいた。

    小川さんは䜓を斜めにしお斜面を乗り越えようずしおいた。背埌を振り返るずクラスメヌトの、男子は私に、女子は小川さんに埓っお、列が点々ず連なっおいる。暪にいる小川さんの息遣いず砂の感觊に興奮した。このたた砂に埋もれお死んだほうが駅に蟿り着くより幞せかもしれない。私はわざず砂に転がっおみた。小川さんの玠肌の脚を芋䞊げた。䞀緒に転がっお砂に埋もれお欲しかった。しかし小川さんは䞀瞥したが無芖しお生真面目に行進を続ける。砂挠の駅に䞀番乗りを果たすんだずいう厇高な決意が滲みでおいた。私は䜕回か回転したが砂に朜るこずはできなかった。生き続けるより他に仕方がないのであった。起き䞊がり小川さんの暪で再び歩き始めた。

    砂挠の旅も終わり、修孊旅行の䞀行は垰路に぀いた。

    終着駅は葛岡駅であった。

    着いたのは深倜である。

    駅前通りに敎列しお解散匏が行われた。この楜しい思い出を倧人になっおも忘れないでいおほしいず先生のお蚀葉があった。さらに思い出を深めるためにこれからフォヌクダンスをするず蚀う。

    音楜が流れ始めた。生埒たちはばらけお男子が内偎に、女子が倖偎に、駅前通りの幅いっぱいに円を䜜った。内偎ず倖偎が逆方向に移動し盞手が倉わっおいく。

    私は目の角で小川さんの姿を捉えおいた。だんだん近づいおくる。遠慮なく手を握るこずができるのだ。぀いに順番が来お小川さんが右腕の䞭に飛び蟌んできた。小川さんの捧げた右手を私の右手が軜く埌ろから握った。小川さんの巊手を私の巊手が前で握っお、右腕を小川さんの肩に枡しお、音楜のリズムに合わせお足を揃えステップを螏んだ。

    小さくお柔らかくお冷たい手だった。二床ず離したくないくらいこの䞖で最もいずおしく感じられた。たかが人間の手、肉の塊に過ぎぬものが、なぜこれほどたでに心を掻き乱すのか。悲しみず喜びず、孀独ず死が倧きな枊ずなっお私をさらった。それは宇宙の果おの暗黒ぞず、私の魂を投げ出す力さえ秘めおいた。

    だが、音楜の非情な埋動は、私に次の女子生埒ぞの亀代を匷いる。螵を地面に぀き、軜く䌚釈をしお、圌女ずはお別れだ。

    ──はずだった。

    次に私の腕の䞭に飛び蟌んできたのも、やはり小川さんだった。

    私たちはい぀しか、秩序正しく回る茪から、はみ出しおいた。

    䌚釈をしお䞀旊は離れるのだが、くるりず私の呚りを回っお腕の䞭に再び収たっおしたう。

    䜕床もそんなこずを繰り返しおいるうちに同玚生たちの螊っおいる茪は次第に遠ざかっおしたった。

    音楜も小さくなっおゆくが、私たちはお構いなしに螊り続けた。

    圢匏的な同じ動きをあきもせず繰り返しおいた。

    倧通りからそれお路地に入っおも動きは倉わらなかった。

    葛岡の垂街は寝静たっおいた。

    深倜の街角を、二人だけのフォヌクダンスが、行く。

    音楜はもう聞こえない。

    オクラホマミクサヌを口ずさみながら螊る。

    気が぀くず通孊路にいた。

    私ず小川さんは家が隣同士だったから通孊路も同じ道順だった。葛岡䞭孊校は南にある。葛岡は小さな垂だ。せたい垂街地の南北を端から端たで瞊断しお登䞋校しおいた。

    小川さんはい぀も䞀人で垰った。䞀人でいる小川さんを芋かけるず遠くから埌を぀けおいった。クラブ掻動を終えおからの䞋校だからい぀も倕暮れだった。闇に玛れお芋えなくなる頃に家に着く。敷地の小道を遠ざかり邞ぞず消える小川さんの姿は朚々の圱ず芋分けが぀かなくなるのだった。決しお䞀緒に歩いお垰る事はなかった。垞に五十メヌトル以䞊離れお間隔を詰めるこずなく小川さんの埌を目で远っお歩く。

    䞭孊生になっおからは䞀床も手を握ったこずがなかった。小孊生の時、フォヌクダンスで䞀床、手を握ったこずがあった。それなのに修孊旅行の垰り、今は通りの真ん䞭を、堂々ずフォヌクダンスをしお手を握り合っおいる。死んだような田舎町だ。おたけに深倜だ。車も通るはずはなかった。

    葛岡䞭孊の校庭に来おいた。

    グラりンドを䞀呚し、䜓育通内を䞀呚し、校舎に入り教宀や廊䞋で螊った。枡り廊䞋を通っお別の校舎に入り同じように螊った。花壇の呚りで螊っお、テニスコヌトで螊っお、土塁を越えお孊校の倖に出るず、入り組んだ现い裏道で螊りながら、神瀟の方ぞ向かった。神瀟を過ぎれば消防眲だ。やがお葛岡第二小孊校の䞉階建おの校舎が闇に浮かび䞊がっおくる。校庭に入り螊り、校舎に入り螊り、六幎二組の教宀で螊った。机を寄せ集めお舞台を䜜り、その䞊で螊った。雑巟がけの競争をした廊䞋でも螊った。小川さんが雑巟がけをしおいる姿が思い出されるのだった。足で床を掻くたびに突き出したお尻でスカヌトがはねる。するずパンツがちらちら芋えるのだ。抌し寄せる波に圓惑し、性の浜蟺にたたずんで底知れぬ深い海を想った。

    玄関の暗がりを抜けお校庭ぞ、そしお小さく口を開けた裏門を抜け、䞡端が田んがの现い蟲道ぞず滑り蟌んだ。小孊生の時、この道を通っお通孊した。二人で䞊べばもうゆずりはなく田んがに転げ萜ちそうになる。右に折れれば粗末な小さな䜏宅が立ち䞊ぶ。やがお県道に行きあたり枡れば巊に雑草の生い茂る空き地がある。

    空き地でも螊った。道に戻るず二人ずも制服には草が匵り付いおいた。お互いをむしりずったが、草は剥がれない。人間の服に匵り付くこずを糧ずしおいる草だから仕方がない。小孊五幎生の時、この草をかき集めお孊校の垰り、雄叫びをあげお小川さんを襲った。䞡手いっぱいの草をぶちたけた。心臓が恋のずきめきをささやいた。恋をしおいるずはっきり自芚したのだ。

    草だらけの二人だったがダンスを続けた。女子校のブロック塀が右手に続く。倉電所の角を右に折れれば女子校の校門だ。小川さんの邞が人家の奥に芋える。垣根が切れたずころから敷地に入った。たくさんの朚々が怍えられおいた。五、六幎前に邞が建おられた時に怍えられた苗朚はただ十分に成長しおいない子䟛の朚だった。䞀本䞀本の呚りを順番に挚拶しながら螊り抜けた。あたりにも数が倚かったので敷地のすべおの朚に挚拶するこずはできなかった。

    校門前の道に戻り、私の家に向かっお螊っおいった。玄関から応接宀に入り、グランドピアノの呚りで螊った。䜕呚かした埌で螵を぀いお䌚釈をしおから、小川さんは私から離れるず、グランドピアノの前に座った。口ずさむのをやめおオクラホマミクサヌを匟きはじめた。私は小川さんが隣にいるものずしお䞀人で遊戯した。

    ピアノの調べが鳎り止み、家の前の道に出た。次の倪い十字路が駅前通りだ。぀いに戻っおきたのだが倧通りには誰もいなかった。ずうに解散しお今頃みんな家で眠っおいるのだろう。

    駅は少し高い堎所にあった。幟分傟斜した倧通りを螊りながら登った。駅舎の前には円圢の怍えこみがあっお、ロヌタリヌずなっおいる。私たちは特別列車がプラットフォヌムに入っおくるたでぐるぐるロヌタリヌの呚りを螊り続けた。

    埅合宀から誰もいない改札口を抜けおプラットフォヌムに入った。

    乗車口で螵を぀いお軜く䌚釈をした。䞀旊離れおから再び私の右腕に小川さんは収たるはずだった。ずころが小川さんは私の呚りを䞀呚した埌で離れおしたい開いたドアから列車に飛び乗った。私も乗車しようずしたがドアは閉たっおしたった。こじ開けようずしたが開かない。開いおいるドアを探しおプラットフォヌムを走った。列車が動き出す。窓の向こうに小川さんがいる。䞡手をガラスに圓お窓の倖に芖線を泳がせおいる。草で汚れた制服から玔癜のり゚ディングドレスに着替え終えおいた。

    窓のなかの小川さんず䞊走した。

    花嫁甚の特別列車は東京に向かっおぐんぐんスピヌドをたしおいく。

    小川さんが手を振った。

    「さようなら

    「  」

    ぀づく


    ─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
    ■これたでに公開した小説目次
    https://note.com/yudedako28/n/n4faf4d679541
    ■これたでに公開した日蚘目次
    https://note.com/yudedako28/n/n3290177d4910
    ■これたでに公開した手玙目次
    https://note.com/yudedako28/n/na854e51a7a2c


    【読者の皆様ぞ】
    「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

     
     
     
    45才たで子䟛郚屋にいた。家砎産し逃亡。流れ着いた先には、忘れ埗ぬ人、か぀おは隣の䜏人であった、同玚生の小川さんが居を構えおいた。手玙ず日蚘を曞き始めた。1998幎のこず。老いお未了の小説に取り掛かる。 お仕事の連絡はDMたで yudedako.mukou@gmail.com

    あなたぞのおすすめ