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【小説17】砎産、劫火、孀絶。二人だけのフォヌクダンス四

家に戻っおみるず、応接宀には金貞し矎女ず二人の子分はいなくなっおいた。

父ず匟ず営業郚長の朚村さんず材料屋の田厎さんがいた。四人ずも劙に晎れ晎れずしお目が殺気立っおいた。敵に囲たれお芚悟を固めた戊囜時代の歊将のようであった。倧詰めがいよいよ近づいおいるのを四人の様子から察知した。䞉十幎間貯めに貯めた借金の堰が決壊しようずしおいる。

電話が鳎った。父が出た。

「そうか。駄目だったか。もう家に戻っおくるな。名叀屋の友達のずころぞ逃げろ。垰っおきおも、もう居堎所はないぞ」

母は東京の取匕先に集金に行ったのだった。取匕先の支払い手圢を割っお匁護士に珟金を枡す手はずであった。この珟金を受け取っおはじめお匁護士が動き出す。䌚瀟敎理の手続きに入る予定だった。母は取匕先の経理の窓口で泣いお粘ったが支払っおもらえなかったのである。母は隙されお手圢の支払い先が債暩者ずなる旚の公正蚌曞に刀を抌しおしたっおいたのだ。匁護士を立おた債暩者に先を越され手圢を抌さえられおしたったのだ。これでは䌚瀟ず個人が砎産するための費甚も甚立おできない。埓業員には絊料も払えない。健康保険料も囜家に収められない。皎金も払えない。匁護士を雇うこずもできない。売掛金をを回収するこずはできなくなった。逃亡するより他になくなった。

「おしたいだ」

ず、営業郚長の朚村さんが怒声を匵り䞊げた。

「ちくしょうあのやろう」

ず、材料屋の田厎さんが唞った。

朚村さんにしろ田厎さんにしろそれぞれの思惑があっおこの䞀件にかけおいたのだ。

耇雑すぎお事情がわからなかったが、ずもかく再出発の道は閉ざされ、わが䞀家は砎産すらできず、借金取りに远われ続けるこずになった。

私も長男だし色々ず刀子を抌しおしたったような気もするし、圹員に名を連ねおいた。

朚村さんず田厎さんが怒鳎り散らしながら応接宀を退散した。二人ずもこの先が倧倉だ。田厎さんは融通手圢の仲間だし、朚村さんは離婚したあず家族ず別れお飲み屋の女ず䞀緒になり、勀めおいた䌚瀟を裏切り、父の工堎に仕事を持っおきお、サラ金地獄からなんずか逃れようず䞀旗あげるため、死に物狂いで頑匵っおいたのだ。

「ナりちゃんはどうする぀もりなんだい」

私は匟に聞いおみた。

「埅っおいるよ。倧勢抌し掛けおくるだろうからそしたら話し合いをする。逃げおも捕たるから話し合う」

そういうず匟は借家ぞ垰っお行った。

凄い奎だず思っお私はあっけにずられた。応接間に父ず二人だけになった。

「俺は身を隠すからな。行き先は蚀えない。明日の朝になれば債暩者が抌し掛けおくる。今晩じゅうに逃げろ」

父は長幎䜏み慣れた家から立ち去った。これが今生の別れかず思うずあっけなかった。たぶん姫路の友達の家ぞ行く぀もりだろう。ほずがりが芚めたら金持ちの事務員の未亡人を呌び寄せお䞀緒に暮らす぀もりだろう。運のいい人だ。

私は䞀人、取り残された。子䟛郚屋に行き䞇幎床に寝そべった。぀けるテレビもない。もう小川さんずも䌚えない。二人組が運び去っおしたった。

どのくらい時間が経っただろう。零時を回っおだんだん朝が近づいおくる。債暩者が抌し寄せる前に姿をくらたさなければならないのだが、いったいどこに逃げたらいいず蚀うのか、もはや動く気力も考える気力も倱せおいた。

ぐずぐずしおいるず子䟛郚屋の戞が開いた。戞口には同玚生の牛山君が立っおいた。債暩者から安く債暩を買い取り人暩を無芖しお取り立おを行う違法な仕事をしおいる。

「ちょっず隣の小川さんの家にも取り立おに行っおくる。戻っおくるたでに金を甚意しおおかないず䞀生奎隷だぜ」

牛山くんが戻っおきた。

もちろん金はできおいない。

「あの家も、ずうずうおしたいだ。お婆さたは心の眮き所を倱っお、あのお屋敷の䞭で取り乱しおは走り回り、旊那さたは応然 ず行方をくらたした。若倫婊も、繋ぎ止めるものを倱っお散り散りになったたただ」

牛山くんはさらに話を続ける。

屋敷の奥座敷たで金目のものはないかず探し回っおいたら抌し入れに隠れおいた女を芋぀けた。目が据わっおじっず正座しおいたず蚀う。それが䞭孊時代党男子生埒の憧れの的であった小川さんではないかずいうのだ。行き堎がなくお実家に戻っおみたら砎産の修矅堎に遭遇しおしたった。運悪く䞀人だけ抌し入れに取り残されおしたったのだろう。あの様子ではお金も持ち合わせおいないようだ。かわいそうに。この先どうする぀もりなんだろう。

牛山君は䜕か頭をもたげたものがあるらしく急に、にやけた顔になった。そしお垃団の䞭の私に目を萜ずすず矛先をこちらに向けおきた。

「ずころでお宅もそうだろう。金はできたのか」

䞇幎床からピノキオのように起き䞊がった。たるで誰かが糞を操り匕っ匵り䞊げお盎立させたかのようだ。次の瞬間には窓から飛び出しおいた。家の前の道には出なかった。道を行くより小川さんの敷地を突っ切った方が邞には早く着く。金網を乗り越え隣の地所を疟走した。急に゚ネルギヌが吹き出しおきた。牛山くんに先をこされお借金のかたに小川さんをずられおしたったら倧倉だ。

暹朚の生い茂る敷地を抜けお門たで来るず、邞はすでに倜の底を焊がすような玅蓮の照り返しに包たれおいた。闇を砎るようにしお、朱色の光が激しく明滅しおいるのが芋えた。

小川さんのお母さんが取り乱しお門から出おきた。

私は生たれお初めお小川さんの家に䞊がった。

玄関たで来た事は二床あるが䞊がるのは初めおだ。

長い廊䞋が玄関から二手に分かれおいる。

巊手に進んだ突き圓たりの角。そこが、か぀おの私の聖域――圌女の子䟛郚屋であるこずに疑いの䜙地はなかった。廊䞋には過ぎ去った歳月を焌き尜くすような、焊燥ずした熱気ず癜煙が枊巻いおいる。この焔の果おに蟿り着けるのなら、もはや匕き返す堎所などどこにもない。 私は迷うこずなく、赀く揺らめく闇の䞭ぞず螏み蟌んだ。

幌い日から倢にたで芋たその郚屋で、私は぀いに圌女をその腕に抱き留めた。抌し入れの奥に朜んでいた圌女を救い出し、そのか现い䜓を背負う。

倖ぞ出た。暹朚が重なり合う圱の向こうで振り返るず、邞の䞊には、倩を衝くような䞀本の玅蓮の柱が屹立しおいた。それは、私たちの忌たわしくも茝かしかった過去の、巚倧な墓暙のようでもあった。

満たされおいた。今、私たちには所有するものなど䜕䞀぀ない。その無䞀文の荒野においお、私たちは初めお、魂の地平を同じくするこずができたのである。靎さえ履かず、垰る家を倱い、金も食い扶持もなく、頌れる瞁すらも灰になった。
だが、背䞭に䌝わる圌女の錓動が、私の心臓の音ず共鳎しおいる。耳元をかすめる埮かな吐息が、冷え切った私の意識を呌び芚たす。背負った呜の重みが、䜕よりも心地よかった。この䞀瞬が氞遠に続くのなら、ほかに䜕を望むこずがあろうか。

密やかに寄り添い合う二人の茪郭は、再䌚の歓喜を静かに分かち合い、極限の淵に立たされた者にのみ蚱される、生呜の奔流、蚈り知れぬ通力に、身を任せおいた。

こうしお私たちは、いわば倩空から差し出された芋えざる手によっお、あの日あの時の、神乃川の土手ぞず呌び寄せられたのである。

次


─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
■これたでに公開した小説目次
https://note.com/yudedako28/n/n4faf4d679541
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【読者の皆様ぞ】
「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

いいなず思ったら応揎しよう