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【小説09】䞖界。支配。富。『赀ちゃんが殺しに来た』䞉

䞃海さんは海から䞊がるずボヌトに這い䞊がった。党身が濡れおいた。デッキに立ち䞊がり自身の割れ目に手をやり幅の狭いビキニパンツを匕っ匵り䞊げた。腰を揺らし肩をくねらせポヌズを決めた。

私はそこで目が芚めた。

我が家の7畳半の子䟛郚屋にいた。暖の切れた炬燵でうたた寝しおしたったのである。目が芚めおも䜙韻はい぀たでも残った。九州の海の颚情がしみじみず思い返されるのであった。䞃海さんず海に出かけ楜しい毎日を過ごしおいた間に私は父ず母のこずを忘れかけおいた。そんな時、再び友氞さんから電話が入ったのだ。垰囜がもう少し遅れる。お父さんずお母さんを連れおきおおくれ。郚屋に䜏たわせお䌑たせおおいおおくれ。俺が治療をする。化け物を剥がしお芋せる。アメリカの最新技術を䜿えば可胜かもしれん。私は父ず母を友氞家に連れ垰るために我が家に舞い戻ったのであった。

廊䞋の戞は開いたたただった。玄関にも鍵がかかっおいなかった。以前ず䜕も倉わった様子はない。私が出奔した時のたたであった。呌んでも返事はなく誰もいないらしい。私は自分が生掻しおいた7畳半の子䟛郚屋に行き炬燵に足を投げ出すず長旅の疲れがどっず抌し寄せおきおたどろんでしたったのであった。

私は居眠りから芚めおからも旅情に浞っおいた。

ず぀ぜん戞があいお䞭孊時代の叀い知り合いが入っおきたのだ。名前は思い出すこずができない。極端に痩せおいる。キヌキヌず甲高い声で悲鳎を䞊げるように話すや぀だった。蚘憶に残っおいるそのたたの声が口から出おきた。

「田䞭君がいるよ。田䞭君がいるよ」

郚屋から廊䞋にひるがえるず効の郚屋の方ぞかけお行く。私に぀いおこいずいうこずらしい。廊䞋の突き圓たりを右に曲がったずころが効の郚屋だ。効はいない。代わりに田䞭君がいた。巚倧なテレビが䜕台も眮いおある。田䞭君はベッドに寝おいる。圌は父に雇われおいた。私が䜕も告げず急にいなくなっおしたったので田䞭君を代わりに雇ったのだ。父は窮䜙の策ずしお私の代甚ずしお䜏み蟌たせたのだ。田䞭君は昔ず倉わらず気持ちよく肥えおいお色が癜かった。埗䜓の知れない倉なものが圌ず䞀緒に寝おいた。

「それは䜕だい」

「息子だ」

息子はツルツルずした裞䜓だった。日本人の赀ちゃんずはずおも思えない。

「君の息子には芋えないのだが」

「そうさ。去幎ペヌロッパ旅行に行ったずき逊子にした」

圌は次第に興奮し始めた。息苊しそうだ。癜い顔も黒ずんでくる。

赀ちゃんの䞡腕はば぀じるしの圢になっお胞の䞊に畳んである。既に肉が癒着しおしたったのか党く動かない。顔を斜めにするず十字架にも芋えおくる。なぜこのような赀ちゃんをわざわざペヌロッパたで行っお逊子にしたのかわからなかった。

「君には子䟛がなかったのか」

いやいるよ、ず田䞭君が答えるず、僕が本圓の息子だ、ず蚀っお、巚倧なテレビの埌ろから1人の男の子が珟れた。これも裞䜓で䜕も着おいない。぀る぀るず奇劙になめっこく光っおいる。

「僕はあい぀が倧嫌いだ。あい぀がお父さんず䞀緒にペヌロッパから垰っおきおから僕のものは党郚あい぀にずられおしたった。僕には䜕もないんだ。あい぀から時々食べ物を分けおもらうだけ。それでどうにか生きおいるだけなんだ」ず泣いた。

たさかず思っお私は田䞭君を芋た。圌は苊しそうに胞を波打たせ、たすたすひどく黒ずんでゆく。

「子䟛がいるのになぜ逊子などもらおうずしたんだい。それもよりによっお西掋人ではないか。しかもヌヌ」私は口ごもった。

「劻ず子䟛を残しお1人でペヌロッパぞ遊びに行ったんだ。そしおある民家に泊たった。そしお泊たったその日ヌヌ」

田䞭君はそこたで話しおおおきく苊痛に喘いだ。私はその先が知りたかった。圌も話したい様子だったがそれを話させたいずする力が働いおいた。

「その日その家のご䞻人ず奥さんは死んだ。3人の子䟛がいたがこの赀ちゃんは末っ子だ。䞊の2人がそれぞれ1人ず぀芪を殺した」

私は恐くなった。家族を厩壊させる化け物だ。わが家が借金に远い詰められ奎隷のように働きづめの日々を送っおきたのはこい぀のせいではないか。父ず母に取り付いおいるのはこい぀ではないか。䞖間知らずの父ず母を眠にハメがんじがらめにしお貪り぀くそうずしおいるのはこい぀ではないか。

その時匟ず効がテレビの埌ろから珟れた。2人は震えおいた。私ず匟がそれぞれ父ず母を殺し、効は1人残され逊子に行く。逊子先の䞀家を砎産させ離散させ、ひずりひずり、ずこずん呜果おるたで远い回す。同じ構図が浮かび䞊がっおきおぞっずした。

「でもなぜ田䞭君はその赀ちゃんを逊子にしなければならなかったの。君は単なる宿泊客に過ぎなかったではないか。その子に哀れを感じお優しい愛情からそうしたのか。人類愛なのか」

「そうじゃない」ず圌は即座に吊定し、「じゃあなぜ」ずいった私の質問に答えようずしたが、呌吞が激しく、錻の穎ず口を倧きく開いお癜目をむいお倩井を睚み぀けながら、今はベッドから転げ萜ち䜓党䜓を床に打ち付けおあえいでいる。顔はどんどん黒くなり炭のようになった。田䞭君が䜕か蚀葉を蚀おうずした時、赀ちゃんはベッドの䞊で×印に腕を組んだたた起き䞊がり床に降りるず田䞭君のそばに近づきうずくたった。䜕か話しかけおいる。蚀葉の意味はわからない。いく぀かの単語だけが聞き取れた。䞖界。支配。富。奎隷。砎壊。予蚀。田䞭君はもうこれ以䞊私の質問に答えようずはしなかった。むしろ急に私に察しおよそよそしさを芋せはじめ、そっけなく薄ら笑いを浮かべおいる。䞖界に起こり぀぀ある異倉ず我が家の厩壊の予感に私は恐れおののいた。田䞭君の家庭はすでに厩壊しおしたったのだ。家を捚お劻を捚お、そうしお私の家に流れ着いたのだ。私は田䞭君の矎しい现君を想い浮かべ涙ぐんだ。圌らは孊生結婚だった。実に仲の良い友人同士みたいな倫婊だった。ペヌロッパから赀ちゃんず䞀緒に垰っおきた田䞭君を迎えた時の现君の気持ちを思い私は愕然ずした。それはそうず次は私の番だ。この赀子の魔力から家族を守らなければならない。父ず母を殺すわけにはいかない。魔力に勝たなければならなかった。

この郚屋の空気はどんどん淀んで重苊しくなった。効は倖に出お行った。耐えられなくなったのであろう。赀子は効の埌を远うように倖ぞ出た。アッ。これはえらいこずだ。効にずんでもない灜難が降りかかる。赀子に぀かたっおしたう。私は埌を远った。淀んだ悪い空気を吞いすぎたためか、私が家の倖ぞ出るたでには、だいぶ時間がかかっおしたった。道に出たずきにはすでに効も赀子も芋えなかった。家の前の道を巊に走っおそれからガヌドをくぐれば道は二手に分かれおいる。さあどちらぞ効は行ったのか思案しおいるずその時私は思い出したのだ。確かに私は、空を飛ぶこずができたのだ。思いっきり䞡足で地面を蹎るず空ぞ身がすヌっず持ち䞊がり䞋の二本の道を芋䞋ろすこずができた。小さな点になっお効ずそれを远う裞の赀子の姿が目に入った。私が地面に降りお駆け始めるず普請䞭の柱ばかりの家があっおそこに倧工道具が散乱しおいる。金槌を拟い䞊げこれであの悪魔に察抗しようず思った。そのずき柱に立おかけおあった玄翁がすっず宙に浮くずブヌンブヌンず回転しだし私の頭めがけお飛んできた。

もう逃げない。よけない。信じる。念ずる。祈る。

玄翁は、金属の頭かしらの郚分を䞊にしお、私を打ち付けようずしたその時、額の先の宙で止たった。

次アメリカ化粧品宣䌝隊


─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
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■これたでに公開した手玙目次
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【読者の皆様ぞ】
「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

いいなず思ったら応揎しよう