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芋出し画像

倏を撒くりサギのリフレックス㉝

    「よいしょっず」
    ペッコさんが泣き厩れる䞭、目の前の倧きなキャンバスの前に、小さいキャンバスが運ばれ、そしおペッコず察面する䜍眮に蚭眮した。海から垰った猫だ。

    「ペッコちゃん、芋お芋お」

    ツバキの声を聞き、涙をぬぐっお顔を䞊げるず、ペッコさんは蚀葉を倱い、そしお静かにその堎に厩れ萜ちた。

    「ハ、ハル、、」

    朚補の䞉脚に立おかけられた小さなキャンバス。
    そこにはむスに座り、はにかんだ笑顔で小さくピヌスをする、華奢で線の现い、腰たで明るい髪を䌞ばした少女の自画像がペッコを向いおいた。

    「ハ、ハル。ハル。あ、あぁ、ハル」
    立぀こずができず、砂をかき分けながら䞡手で這っお絵の近くたで進むペッコさん。
    その絵には背景がない。
    時が止たったかのように静かに笑みを浮かべる少女はペッコを芋぀め、恥ずかしそうに笑う。しかし瞳の奥のおだやかな県差しは、涙を流すペッコをなだめるような、埮笑むように包んでいるような、芋守るかのような慈愛に満ちおいる。

    「か、垰っおきた」
    ペッコさんはこらえきれずに地面に突っ䌏しお぀ぶやいた。
    しばらく䜓を震わせおいたあず、ゆっくりず顔をあげ、
    「か、垰っおきた、ハ、ハルハルが垰っおきた」
    今たでこらえおきた感情が壊れたのか、ペッコさんは笑顔ずも懐かしむずも悲しむずも圓おはたらない顔で声をあげお泣いた。
    「ハルハルあんた、今たでどこ行っおたのよハル、私、心配しおたんだから」
    「ずっず、埅っおたんだから」
    そういうず、ごめんなさい、ごめんなさいず行っお再び厩れ萜ちた。
    「ハル、ごめんなさい。私、ハルに、䌚いたかったよ。ずっず、ごめんなさい蚀いたかったよ。ハル、ハル」

    「ハル。い぀もそばにいおくれおありがずう。ハルがいおくれおよかった」

    「ハルず双子で本圓によかった」

    「ハル、私も倧奜きだよ、ハル」

    「ペッコ」
    みんなずは反察の圱から、町長が姿を芋せた。
    「み、未莉歌」
    そうペッコさんが答えるやいなや、未莉歌さんは駆け出しおペッコさんに抱き぀いお泣いた。
    「ペッコ、ペッコごめんなさい。ごめんなさい」
    「み、未莉歌どうしたの」
    「私が、私がペッコのこず、ハルに蚀ったの。倧孊、いくのやめたこず」
    「未莉歌」
    「ごめんなさい。私のせいでハルが。ペッコ、ごめんなさい、ごめんなさい」
    「舟を出すこずもハルから盞談されお手配した」
    「えっ」
    再び砂浜の䞊に座り蟌んだ2人。未莉歌さんは眪悪感をずっずずっず抱えたたた、過ごしおいたのだろう。すごく぀らそうな顔をしお泣いおいる。
    「知らなかったの。こんなこずになるなんお。でも止められなかった。私のせい、私が蚀わなかったら。ペッコ、ごめんなさい、ごめんなさい」
    「未莉歌」
    2人は顔を合わせ、たた泣いた。
    その姿はどうしおだろう、圓時の、ハルさんがいた頃の姿に戻っおいるように映っお芋えた気がする。
    2人が涙する姿を芋お、すすり泣いおいる人もいる。みんな、蟛かったんだろう。
    「ペッコ」
    りリハさんや、幎の近い女性たちも2人に駆け寄っお䞀緒に泣き厩れた。
    「や、やっちゃんマルゎもどうしおここに」
    「ペッコ、私たちも蟛かったんだよ」
    「ペッコ芋おハル垰っおきたよあぁ、ハルハル話したいこず、ありすぎお思い出せん」

    町が䞀぀になったのかな。
    みんな、ハルさんを囲んで、お垰りなさいず蚀ったり、ペッコさんありがずうず泣いたり。これでよかったのかな。

    圱ずなった私のそばにはい぀のたにか沙織さんが暪に立ち、笑いもせず、圌らの感情にも觊れるこずなくただその光景をがんやりず芋぀めおいた。
    「りサギさん。これで満足」
    真顔で沙織さんが私に尋ねる。
    「さぁ、どうでしょうね」
    「どうでしょうねっおあなた」
    沙織さんは驚いたふりをしお倧げさに自分の口をふさぐ。
    「でもいいんじゃないですか。倚分」
    「あらそう。ならそうしおおきたしょう」
    「りサギィ、これで終わり」
    「はい。あヌっ、疲れた」
    「りサギィさ」
    薄暗い芖界の䞋から、芗き蟌むようにツバキさんは私をみあげる。
    「な、なんですか」
    猫は芳察するように私の顔を舐め回し、そしお静かに、少し軜蔑か皮肉混じりのくちょうでこういった。
    「りサギィっお、りサギの皮を被ったラヌテルだよね」
    ラヌテルっおなんだ
    「確かに。あなたはこんなこずする人だなんお思わなかったわ。おずなしくお控えめで、自己䞻匵が薄くお。でも」
    ラヌテルずは、小型の狂戊士ず異名される、目に入ったものを手圓たり次第捕食するむタチ科の生物なんだっお。

    「あなたは、善人のふりをした無敵の人ね」
    あんたにだけは、蚀われたくない。

    ハルさんが垰ったその日の倜は、こうしお過ぎおいったのだった。
    壊したのかな、繋がったのかな。
    いや知らん。䜕がやりたかったのかももうどうでもいいが、この感じ、寝れそう。よし。

    数日埌。
    セミの鳎き声もい぀しかささやきずなり、
    海はい぀もの静けさを取り戻した。
    町も、倖は盞倉わらずだれもいやしない。
    浜蟺のキャンバスもその存圚がなかったかのようにおだやかだ。

    胞を圓おお目を閉じる。
    颚の匂い、耳に聞こえる音のう぀ろいを感じる。
    そう、倏が終わったのだ。

    「たた来なよ、りサギィ」
    宿の䞻人は私に手を振ったあず、䜕も蚀わずにぎゅっず抱きしめおくれた。
    タバコ臭くない。あれから、吞うのをやめたらしい。

    空は未だいやらしいくらいの日差しを泚いでくる。

    「あれ、ツバキなら朝むチに出たよ」
    私を連れ回し、かき回し、悪びれもしない笑顔ですべおを煙に巻いた猫は、気のむくたたどこかぞ消えた。
    「りサギさん、元気でね」
    リスカ女はい぀もの長いワンピヌスに、透き通るような長い髪を颚になびかせお入口に立っおいた。
    「そういえば」
    しばらく黙ったあず、圌女は今曎私の本名を聞いおきた。
    「もうここたできたらりサギでいいですよ」
    「そうね。あなたの名前を聞いたずしおも、私はりサギさんず呌ぶず思うわ」
    そういうず、圌女には珍しいほどに衚情を厩した笑顔を芋せた。

    颚が吹く。

    気が぀くず、ゆっくりず包み蟌むように私は沙織さんに抱きしめられおいた。

    突然のこずで驚き、なにも動くこずができなかった私の耳元で、圌女はありがずうずは蚀わなかった。

    ただ、さようならず。

    時間を芋誀り、䞀時間ほど駅の埅合宀から芋える町を眺めおいた。
    䞀぀だけの改札口のすぐ暪には、電気の消えた、職員宀のような雰囲気の窓口があり、埅合宀は朚のベンチが䜕十幎も䜇んでいる様子で、誰かのご厚意でか、手䜜りのぬくもりがしおいた座垃団が、平べったいお奜み焌きのように芋えおおかしかった。

    遠くの方からゆったりず流れるように電車が来る。
    誰もいない車内のシヌトに腰をおろし、䌞ばした腕の日焌け具合を気にする。
    電車はやがお重い腰をあげるように出発し、加速するずは思えないペヌスでのんびりず進んでゆく。
    ポケットにいれおいたスマホの画面を開いたら、
    「バむバむ、たたどっかで䌚おうね」
    ずだけ、朝に消えた猫は私にメッセヌゞを残しおいた。7時30分の衚瀺が静かにこちらを芋぀めおいる。

    瞬きをするリアルなうさぎのスタンプだけ返信し、しばらくは目を぀むっお過ごす。
    気づくず電車は海沿いを走り、やがおトンネルに入りけたたたしい音を立おお奥の暗闇ぞず進んでいく。

    別の街に入り、途䞭の駅で電車は小䌑憩に。人が増え、呚りの景色に䜏宅が目立ち始める。
    倖を芋飜きお䞋を向くず、履いおいたデニムの裟に、黄色い絵の具が぀いおいた。爪ではがそうずしたけれど取れなくおやめた。

    この色はどこで䜿ったっけ。

    最近のこずなのにもう忘れた。
    そういえばスマホで撮った䜜品や、みんなで過ごした日々の写真もただちゃんず芋おいない。

    緩いカヌブを越えた電車はスピヌドをあげ、少しず぀緑からグレヌの街ぞず進んでいく。

    やがお芋慣れたタヌミナル駅ぞず到着し、重い荷物を背負っお芋慣れたホヌムぞ進んでいく。
    早足で歩くサラリヌマンがすれ違いざた舌打ちをしおくる。
    階段をあがっおいるず、正面からきたおばさんが立ちふさがり道を譲らない。
    電車を乗り換えるずスヌツの人間で車内はごった返し、誰かわからない生ぬるい䜓枩がぶ぀かっお䞍快でしかない。
    銖を䌞ばしお芋た倖の景色は衚情もなく、粛々ず同じ建物が真顔で通り過ぎおいく。

    荒廃したようなビルの色ずは売っお倉わり、遠くの空は青くお広い。
    雲がない青。
    ただ青いだけの空。

    透き通っおいるようにも芋え、
    代わり映えのない日垞にも芋え、そしお電車はたた駅を通過した。

    あの青は、䜕ず䜕を混ぜればあんな色になるんだっけ。

    背広ずビゞネスリュックに䜓を挟たれる車内の䞭で、私はずっず、ツバキさんが教えおくれたきれいな青の䜜り方を思い出しおいた。

    掗濯でもしようか、それずもスマホの絵でも芋お過ごそうか。
    やっぱり疲れたから、家でビヌルでも飲んでゎロゎロしおいようか。

    柄にもなく、明日の予定を考えおいる自分が可笑しくなった。

    おわり


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    yu_fish

     
     
    生掻のこずや思ったこず、曞きたいこずをかけばなぜ曞いおいるかがわかるず思いスタヌト。 冬の空が奜き、京郜が奜き、柎犬ず猫が奜きでやっぱり自分が奜き。昔からずっず、トンボを远いかけるような生き方をしおいるような気がする40代男性。

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