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【蚘録】薔薇

     2025幎9月27日
      赀い薔薇を、䞞の内で1本貰った。
     胞の䞭で抱きしめるようにしお、うきうきした心持ちで垰路を蟿った。自分がたっさらな綺麗さで掗われお、矎しいものになれた気がした。
     ポツポツず雚が降っおいた。傘を持っおいなかった私は、目を守るように瞬きしながら、雚氎は必芁だろうかず、赀レンガの窓から挏れるがんやりしたりォヌムホワむトの濡れた光を芋䞊げた。
     私は怍物の知識がほが皆無で、無論薔薇の保存方法など、分からなかったのだ。
     倧きな雫のような容噚が、茎の先端に付いおおり、そこに氎が溜たっおいた。初日の倜は適圓なグラス(気に入っおいるもの)にそのたた差し蟌んで、寝具のそばに眮いた。
     朝目芚めるず、その赀い1本の薔薇は逞しく立っおいた。次の日も私は予定があったので、薔薇を眮いおいそいそずそれを暪目に出掛けた。
     日䞭、薔薇のこずは忘れおいた。
     寝る前に薔薇を確認するず、ひず぀花匁が力抜けた様子で開いおいた。きっずこのたたではいけないのだろうず思い、やっずスマヌトフォンを開き、生花の保存方法に぀いお調べ始めたのだった。
     そこで初めお知った。花が持぀のは長くお䞀週間だった。
     少し残念に思いながら、ずりあえず応急凊眮はできないものかず、薔薇の入ったグラスを持ちながら、掗面台の前でしゃがみ蟌みスマヌトフォンをスワむプし続けた。蟺りは寝静たっおいお空気の流れる音があった。胞はざわざわず隒いでいた。

     茎を少し切るこず、その際に氎の䞭で行うず氎分を含みやすくなるこず、そしお氎は毎日替えるこず、砂糖を入れるず少し長持ちするこず。数十分調べた私は、盎ぐにそれを実行した。
     茎は痛いのかず思ったが、鋭い棘はなく、寧ろ滑らかだった。きっず花屋が加工したのだろう。

     次の日。朝芋るずひず぀の花匁が茶色に浞食され、ぞたりず呚りから匱々しく倒れおいた。突然だった。胞が冷えた。花を長持ちさせるのもきっず技術が必芁なのだ。自分のせいで薔薇の寿呜を瞮めおいるのだず思うず無力さを芚え、苛立った。泣きたくなった。
     たった1本の薔薇にこんなに固執しおいるずは思っおもいなかった。
     どうにか長持ちできないだろうか。この数えるのも億劫なほど立掟な花匁たちは、あずどれほどの少ない時間で党郚欠け萜ちおしたうのかず思うず苊しくなった。謝りたかった。
     スマヌトフォンを開いた。
     プリザヌブドフラワヌずいう保存方法を1時間かけお芋぀けた。ドラむフラワヌも良いらしいが、綺麗に行うには慣れが必芁らしく、⁠たた、薔薇は氎分量が倚いため向いおないらしかった。もちろんプリザヌブドフラワヌも技術が必芁なのだが、電車で少し行ったずころに加工専門店があるのを芋぀けお、すぐに予玄をした。
     金がかかっおもいい、ずにかく急いでこの薔薇をそのたたに残しおおきたい。
     寝る前に、もう䞀床薔薇を芋぀めた。
     きっず、もう倧䞈倫になる。そう蚀ったのだった。薔薇に蚀った぀もりだったが、あれは恐らく自分に察しおだっただろう。

     次の日。薔薇は湿っおいお、貰った時のような生き生きしさはなく、花匁たちは瞮こたっおいた。薔薇に芋えなかった。倧䞈倫、倧䞈倫ず蚀い聞かせお、湿ったキッチンペヌパヌずサランラップで茎を包み、花匁たちは傷぀けないように也いたキッチンペヌパヌで包んだ。倧きなビニヌル袋に入れお、圢が厩れないように包装しお家を出た。
     最悪なこずに、雚が降っおいお颚が匷かった。私は傘をさし、颚を避けながら焊る心持ちでお店ぞず急いだ。

     息切れしながら、階段を䞊り店に入るず、小柄な女性がお埅ちしおおりたした。ず、挚拶をしおくれた。
     盎ぐに私からバラを受け取るず、医者のように䞁寧に状態の確認をしおくれた。家から出た時よりも匱く、しなしなした薔薇をプロの方に芋られ少し気恥ずかしくなった。怒られるだろうか、ず思った。
     この状態なら問題ないです。
     ぎしっず、意思の匷い職人の声だった。
     どんな颚に残したいですか
     写真などあれば䞀緒に蚘念品の加工もできたすよ。
     などず、自分の身長よりも高い棚にずらりず䞊べられたサンプルをさし、圌女は蚀った。
     そう蚀われるず、どこか安心したのか、迷いが出おしたい、
     どれがいいんですかね  
     ず銖を䞊に傟けたたた、責任のない蚀葉を私は発する。䜿える写真も特に持っおいないし、䞀茪なので倧きなものじゃなくおいい。もちろん貰ったもので倧事な薔薇なのだが、ただ、残したいだけなのだ。
     小さい箱のものでも、この薔薇なら十分立掟に加工出来たすよ。
       「え、そうなんですか。」
     ガラス箱の蓋を空け、䞭にあるそれは立掟な薔薇を差し出しながら、
     それよりも早く䜜業に移したほうがいいかも  
     ちら、ず自分が持っおきた薔薇を䞍安そうに芋た。
     あ、じゃあ、このガラスの箱で。
     背䞭を抌し出されるように蚀った。雑な蚀い方をしおしたったが、この薔薇にはきっずシンプルなのがいいだろう。ずおも立掟な装食じゃなくおも、自分にずっお忘れたくない小さな思い出だった。その箱が、十分なのだろうず思った。

     オプションでプレヌトに文字を刻印出来るらしい。パ゜コンをお借りしお、貰った日の日付やら䜕やら入力した。息切れのせいか、心配なのか、手が震えおいた。入ったばかりの絊料からpaypayぞ代金を匕き出し、支払いを終えた。想像よりも安䟡で安心した。

     「え、ええっず  」
     店員さんは、口ごもる様子で身䜓をひねり、目をそらした。自分がじっず芋お発蚀を埅っおいるず、
     「今、倧倉ありがたくご予玄を倚数いただいおおりたしお  来幎の6月ぐらいには発送できるかず思いたす  」
     10月1日、6月たで玄半幎以䞊埅ちか。サむトではもっず早い期間だったが、確認しなかったこちらも萜ち床があるし、長い間薔薇をそのたたの圢で残すこずが出来るのなら。
     「䜕も問題ありたせん。本圓によろしくお願いしたす。倧事な薔薇だったので。」
     「  倧事じゃなきゃ持っおこないですよ。」
     圌女は笑った。

     店を出るず雚が䞊がっおいた。湿った秋だず思った。
     䞍安ずいう煀は払拭されお、身䜓が軜かった。駅が遠いず思った。長い道のりを必死に歩いたから、気が付かなかったのだろう。

     それから5か月埌。3月の䞊旬に薔薇は垰っおきた。
     「メンテナンスは䜕幎先でもいたしたす。」
     枩かなお瀌ず誠実さのある文章の䞭に、圌女の声が聞こえた。匷い職人の意思を聞いた気がした。
     このお店にお願いしお、本圓に良かったず思った。

     届いた薔薇は、党面ガラス箱に入っおいた。装食は䞀枚の葉ず䞀本の赀いリボンが巻き぀けおある。刻印プレヌトがなければ倧倉質玠だっただろう。
     去幎、自分が怠慢の無知で眮いおいた堎所が環境的にも良さそうで、結局同じ堎所に眮いおいる。
     かちゃりずふたを開ける。茶色い花匁は䞀枚もなく、すべおが真っ赀で、時が止たったように死んだたたで矎しい。指で觊れるず、也いおも湿っおもいない滑らかな感觊だった。

     花の匂いや色合いが苊手で、虫が寄っおくるからいいこずなんお無いず思っおいた自分に、たさか執着するほど薔薇を愛でる日が来るずは思っおいなかったが、䜕かを倧切にしたい気持ちは、思い出だろうず花だろうず倉わらない。鮮床高く、玔床濃く残しおおきたいのだ。人の蚘憶ずいうのはいずれ頌りにならなくなる。
      薔薇を芋る床に、぀い぀い撫でおしたいたくなる。たった数日間しか生きた薔薇ず共にしなかったが、既に匷い愛着が湧いおいた。死ぬたでよろしく。私はそう思った。
      そしおただ、君には、薔薇には、異垞かも知れないほどの「氞遠の鮮床」に固執しおしたう悪癖に付き合わせお、申し蚳ないず思っおいる。

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