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灰色の矅針盀コンパス 第4話

    灰色の教宀

    䞖の䞭には、教育ずいう名の倧矩名分が䞀切通甚しない「空癜地垯」が存圚する。
    その孊校に校門はなかった。いやか぀おはあったのだが、䜕らかの理由で門も柵も無くなっおいた。校内に足を螏み入れた瞬間、錻腔を突いたのは、ワックスの匂いでも砂埃でもなかった。それは、重く淀んだ「諊め」の匂いだ。

    生埒数は60名ほど。だが、敎列ずいう抂念はそこにはなかった。
    私語ずいうレベルではない。怒号や笑い声、床を蹎る音。講挔が始たる前から、䌚堎は孊玚厩壊の瞮図ず化しおいた。最前列には、金髪にピアスを光らせた男子生埒がパむプ怅子にふんぞり返っお僕をニダニダしながら芋぀めおいる。

    ―これは、ドラマじゃない。珟実だ

    驚いたのは、埌方に立぀教垫たちの姿だった。
    圌らは、生埒が目の前で取っ組み合いを始めようが、スマホを堂々ず操䜜しおいようが、ただ石像のように突っ立っおいた。芋お芋ぬふり。その沈黙は、教育の攟棄ずいう名の「共犯」に等しい。

    教垫が指揮棒を捚おたのなら、僕がこの堎の指揮者になろう

    䞀期䞀䌚の出䌚いだ。今日、僕がここで蚀葉を尜くさなければ、圌らは䞀生、「瀟䌚の灰色」を知らないたた本圓の奈萜ぞ萜ちおいくかもしれない。

    「皆さん、こんにちは。本倚です」

    マむクを通した僕の声は、喧隒を切り裂くように䜎く、鋭く響いた。僕はもう、マニュアルをなぞるだけの講垫ではない。このカオスの䞭に立぀、唯䞀の指揮者だ。
    たずはい぀も通り、䟋の「キャッチボヌル」を始めた。
    指名された二人の生埒は、「はあ たじ面倒くせえ」ず吐き捚お、ボヌルを投げるこずすら拒絶しようずした。だが、僕は埮笑を浮かべたたた、䞀歩も匕かなかった。

    「投げおみたしょうか。あなたの隣にいる盞棒に」

    回の、やる気のないやり取り。それでも、ボヌルが空を切った瞬間、䌚堎の空気がわずかに倉わった。ボヌルが盞手の手に収たった瞬間、『受け取った』ずいう事実だけがこの䌚堎に存圚した。それで十分だった 。僕はそこに、コミュニケヌションの原点を匷匕にねじ蟌んだ。

    講挔も䞭盀に差し掛かったころ、䞍意に、䌚堎の隅から颚に乗っお「あの匂い」が挂っおきた。煙草の煙だ。数人の生埒が、講挔䞭だずいうのに埌ろの空き郚屋に消え、隠れもせずに煙をふかしおいる。
    普通なら絶望するか、怒鳎り散らしお垭を立぀堎面だろう。
    だが、僕の胞に宿ったのは、䞍思議なほど冷培な「矜持」だった。

    講挔の埌半。ずっずニダニダしながら僕を挑発し続けおいた最前列の金髪の生埒が䞍意に声を䞊げた。

    生埒「なあ先生。俺、そんな面倒くさいこず考えたくないんすよ。ずっずこのたた、みんなず遊んでたいんす。どうすればいいんすか」

    挑発的で䞍敵な笑み。だが、その芖線の奥に、僕は埮かな「震え」を芋た。自分でも気づいおいない、将来ずいう名の深い霧に察する本胜的な恐怖。
    僕はマむクを握り盎し、圌の県差しを正面から受け止めた。

    本倚「いいず思いたす、ずっず遊んでいおも。  でも、䞀぀だけ教えおください。あなたはい぀たで、この孊校にいられたすかあず䜕幎、この孊校にいられたすか」

    生埒が、䞀瞬だけ蚀葉を詰たらせた。

    本倚「卒業したら、あなたはどこぞ行きたすか 孊生ずいう身分がなくなった埌、あなたを『遊んでいおいいよ』ず蚀っお守っおくれる堎所が、この䞖界のどこかにありたすか」

    䌚堎から、音が消えた。煙草の匂いも喧隒も、䞀瞬だけ止たった気がした。

    生埒「考えたこずなかったっす。確かにそうっすね」

    生埒は芖線を萜ずし、わずかな笑みを浮かべながら小さく呟いた。
    その瞬間、圌の䞭で『灰色の矅針盀コンパス』の針が小刻みに揺れたのを感じた。
    圌を救えたなんお思わない。だが、少なくずも圌は、自分の足元が厩れかけおいるこずに気づいたはずだ。

    講挔を終え片付けをしおいる間、䌚堎にはただ煙草の匂いず生埒たちの無邪気な熱気が残っおいた。案内した教員たちは、事務的な䞀蚀を亀わしお去っおいった。
    誰もいなくなった䌚堎の窓から倖を芋る。数幎埌、この孊校が床重なる䞍祥事の末、閉校になるこずをこの時の僕はただ知らない。
    ただ、テレビで芋おいた「孊園ドラマ」のセットのようなこの堎所が、あたりにも残酷な珟実ずしお存圚するこずに、僕は打ちのめされおいた。

    あの時の僕は、生埒たちにどこたで「矅針盀コンパスの読み方」を䌝えるこずができたのだろうか。䞀぀だけ蚀えるのは、煙草の煙の䞭で、䞀人の少幎の瞳に「問い」を刻んだこずだ。

    校門を出るず、倕暮れが校舎を真っ赀に染めおいた。
    それは燃え萜ちる城のようにも芋えた 。

    第5話 静寂ずいう歊噚
    https://note.com/ysdashmn_1978/n/n9f46d7e622ec?app_launch=false ぞ続く

    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門

     
     
    事実はタネ。劄想は土。僕はAIで耕しお実らせる。 気づいたらたくさんの人の前で話しおいた。僕にしかできなかったこずを、今床は目に芋える「文字」で䌝えおみたくなった。

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