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灰色の矅針盀コンパス 第5話

    静寂ずいう歊噚

    䞖界から音が消えた。
    正確には、僕がそれたで螏みしめおきたアスファルトの熱気ず、校門をくぐった瞬間に济びる子䟛たちの喧隒が物理的に遮断されたのだ。

    パンデミック。

    倚くの人々がリモヌトワヌクずいう未知の挑戊に沞く䞭、僕はただ、蚀いようのない迷いの䞭にいた。䞉キロの道を汗だくで歩き、子䟛たちの熱気で満ちた䜓育通で指揮者のように空気を支配しおきた自負。その「珟堎の感芚」を、液晶画面ずいう薄い膜の向こう偎にどう感じればいいのか。
    新たな挑戊ぞのずきめきなど、埮塵もなかった。
    僕の手元にあるのは、䜿い叀された「矅針盀コンパス」ず䞉秒で蟿り着けるデスク、そしお深海のような静寂だけだった。

    「  聞こえたすか 本倚です」

    オンラむン講挔の第䞀回目は、皮肉にも僕の母校である高校だった。慣れ芪しんだ校舎。本来なら、か぀おの自分のような埌茩たちの顔を盎接芋ながらマむクを向けおいるはずだった。
    だが僕の目の前にあるのは、六角圢の小さなカメラのレンズず、䌚堎の様子を映し出すノヌトパ゜コンのモニタヌだ。その䞭には、䜓育通に等間隔で座らされた生埒たちが、米粒のようなサむズで映っおいる。衚情はほずんど芋えず、䌚堎の熱気は䌝わらない。

    ―どうする。䜕を芋ればいい

    僕はモニタヌを凝芖した。䞀察䞀ではない。䞀察倚、しかも物理的距離を無芖したデゞタル空間での察峙。
    そこで気づいたのは、映像よりも「声」の重芁性だった。
    察面なら、身振り手振りや僕自身の「䜇たい」でごたかせる郚分がある。だが、オンラむンでは、僕の声がすべおだ。はっきりずわかりやすく、そしお䜕より、盞手の脳内に盎接語りかけるような質感が求められる。

    僕はヘッドセットを調敎し最初の問いかけが終わった埌、䌚堎の反応がわからなかった。察面なら空気で読める沈黙が、オンラむンでは攟送事故ず区別が぀かない。僕は思わず早口になりかけた。が、そこで手を止めた。 あえお「間た」を眮いたのだ。察面時代の経隓を総動員しお、画面の向こう偎の空気を想像する。

    思い出せ、思い出せ。あの時子䟛たちはどうだった

    今、最前列の生埒はどこを芋おいる埌方の生埒は欠䌞をしおいないか。
    マニュアルを急いで読み䞊げるのではない。あえお数秒の沈黙を差し蟌む。オンラむンにおける「静寂」は、攟送事故ではない。それは、生埒たちの意識をこちらぞ匷制的に匕き寄せるための、音の無い「歊噚」だ。

    「  ここたでのお話、皆さんはどのように受け止めたしたか」

    急ぎすぎず、䞀音䞀音を䞁寧に眮く。母校の䜓育通に、僕の声だけが霧のように染み枡っおいくのをモニタヌ越しの埮かな動きで察知した。
    䌚堎をくたなく想像する。モニタヌに映る小さな圱が、ふず顔を䞊げた。䞀人が動きを止めた。隣の生埒ず顔を芋合わせた。
    その瞬間、僕の䞭で「珟堎」ず「デゞタル」が融合した。物理的な距離は䞉キロどころか、数癟キロ離れおいおも構わない。僕の「芖点」がレンズを越えお、䌚堎のステヌゞ䞊に、あるいは䌚堎の最埌列にいる生埒の隣に静かに降り立った、そんな確信があった。

    講挔を終え、オンラむン䌚議の「終了」をクリックする。
    か぀おのように校門を出おオレンゞ色の空を仰ぐこずはない。
    代わりに蚪れたのは、郚屋の゚アコンの埮かな駆動音ず、ノヌトパ゜コンが攟぀熱だけだった。

    「  ふう」

    ヘッドセットを倖すず、髪が少し乱れおいた。察面時代のような喉の枇きはない。だが、目ず耳を極限たで研ぎ柄たせた埌の、粟神的な疲劎はそれ以䞊だった。
    僕は母校の様子を映しおいた暗い画面を芋぀めた。
    そこには孊校ぞの道を歩いおいた頃ずは違う、冷培で、けれど今たで感じたこずのない俯瞰力を持った自分自身が映っおいた。

    本倚 朝陜ほんだ あさひ、41歳。
    僕は今、歊噚を手に入れた。たずえ䞖界が沈黙しおも、この「静寂」を操るこずでもっずたくさんの人の心に火を灯せるかもしれない。
    窓の倖では、誰もいない街を倕闇が包もうずしおいた。

    ※この䜜品はフィクションです。実圚の人物・団䜓ずは䞀切関係がありたせん。

    第6話 ゲヌム芖力の芚醒
    https://note.com/ysdashmn_1978/n/ndf348f0bd49a?app_launch=false ぞ続く

    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門

     
     
    事実はタネ。劄想は土。僕はAIで耕しお実らせる。 気づいたらたくさんの人の前で話しおいた。僕にしかできなかったこずを、今床は目に芋える「文字」で䌝えおみたくなった。

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