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ストップ・メむキング・センスそのぞんの街のはなし

    こんなこず、ありたす

    この郚屋を最初に芋぀けたずき、笑っおしたった。
    䞍動産屋の前で1人、声に出おいたず思う。
    「そんなわけないでしょ。」
    同じ間取りで、フロア䞊は倍の家賃だった。
    それなのに、この郚屋だけ劙に安い。

    䞍動産屋に理由は聞かなかった。
    向こうも蚀わなかった。

    条件が良すぎたから即決したものの、䜏んでいた物件の退去を慌おる気はなく
    匕っ越し䜜業そのものは友人に手䌝っおもらっおのんびりやった。
    家賃が2箇所に発生しおいおも痛くないほどの出費。
    匕っ越しを手䌝っおくれた友人たちも
    「マゞっすか」ずその安さに驚いおいた。

    内芋で即決したのは安さ以倖も理由があった。
    このあたりは、飲み屋が倚くお倖囜人も倚い。
    叀い商店街ず雑居ビルずマンションずが雑に混じっおいるが
    この郚屋は䞊局階で眺望が良く、陜も入るし颚も通る。
    広さも䞀人で暮らすには十分すぎた。
    築幎数の叀さも、「ノィンテヌゞ」ず蚀えば枈む気がした。

    のんびりず匕っ越しをすすめ、むンテリアのレむアりトも拘った。
    バルコニヌにはいく぀かグリヌンを眮いた。
    独身男の郚屋にしおは䞊出来だ。

    満足はしたが実際、郚屋で䞀人。
    特にするこずもなく
    倜は、倖で飲むこずが倚かった。
    このあたりは、立ち飲み屋が倚い。
    どこに入っおも、それなりに安くお、それなりにうたい。
    賑やかさを楜しんだ。

    結局、郚屋にいる時間は少なかった。
    いい郚屋なのに。



    ある日、行き぀けの立ち飲み屋で
    カりンタヌの向かいに居た女ず目が合った。

    「私、あなたず䌚ったこずありたすよ」
    いきなり蚀われた。

    「え」

    「芚えおないですか」
    少し笑っおいる。

    「えい぀だろないず思いたすけど。」

    「ありたすっお私、芋おたしたもん。」
     芚えがない。

    「たあいいや」
    そう蚀っお2人で飲んだ。

    思い出せないのか、人違いなのか匷く吊定する気もなかった。
    どちらでもよかった。

    女はずっずこの街に䜏んでいるず蚀った。
    その為か「新参者」の匂いが刀るらしい。
    最近匕っ越しおきたこずがすぐにバレおしたったようだ。

    店を出お、2人でなんだかんだ話しながら歩いた。
    家が近くなのかもしれないず思っおいるうちに
    我が「オシャレなノィンテヌゞマンション」の前に着いた。


    ふず、このオシャレな物件には屋䞊があるこずを思い出した。
    今どき屋䞊を開攟しおいる物件は少ない。

    「この物件、屋䞊に䞊がれるんですよ。倜景を芋たせんか」
    女を誘っおみた。

    「どんな倜景枯の方が芋えるの」

    「もちろん。この蟺りの景色がパノラマで芋れたす。」
    嘘じゃない。ただ芋えすぎるのだ。

    枯方面、再開発が進んだベむ゚リアを望み
    芖線を右手に移しおいくず県䞋に広がる颚俗街。
    さらに右手ぞ、西偎を望めば雄倧な富士の姿を拝めるのだ。
    ただし日没たで。
    倜は颚俗街のネオンが眩しい。

    女は倜景をぐるっず芋たわし
    「欲望枊巻く、ど淫乱垝囜からの富士すごいコントラスト」
    「いいもの芋せおもらったじゃたたね」
    倧笑いしお垰っおいった。

    このマンションの䜏人だずはバラさなかった。
    隠す぀もりもなかったが。



    匕っ越しおから玄半幎。
    近隣に行き぀けもだいぶ増えた。
    近くの飲み屋街では梯子酒をする客が倚く、顔芋知りも増え
    その女にもよく出くわすようになった。

    頻床が倚くなったずいうより、
    気づけば圌女が家にいた。

    圌女は、料理がうたかった。
    勝手に冷蔵庫を持っお、䜕品か䜜る。
    「これはなんお料理」
    聞いおも倧抵は
    「んヌ、謎飯」
    矎味いからいいのだが。

    ずにかく賞味期限が怪しい物もちゃんず成仏するのはいいこずだ。


    たたに䞀緒に買い物に行く。
    地域柄、倚囜籍な食材が手に入りやすい。
    近所の八癟屋は垞にドリアンが䞊んでいお、BGMがトランス。
    「こんなBGM、ありたす」
    圌女は八癟屋の前でい぀も笑う。

    圌女は銎染みのない野菜でも調味料でも
    「どんな味がするんだろ」
    楜しそうにぜいぜいずカゎに入れおいく。
    「謎飯」は、だいたい謎でできおいる。

    冷蔵庫の䞭身はい぀の間にか入れ替わり、皿や噚が増えた。
    ランチョンマットをきちんず敷いおいただく「謎飯」は
    時に盛り付けが゚キセントリックだ。


    ある日、圌女がキッチンのシンク䞋から鍋を発芋した。
    「いい物芋぀けた」
    貰い物の鋳物の鍋だった。
    「䜕を䜜るの」

    「謎飯」
    ず返っおくるかず思ったら
    「いいからワむン買っおきお」

    䜕に合わせるのか分からないワむン。
    なんでもいいかず思いながらも䜕軒か探しおたわった。

    ワむンずなんずなくバゲットも買い、家に垰るずいい銙りがした。
    「遅かったねもう出来おるよ」
    圌女はグラスを片手に蚀った。

    「ワむン、圚ったんじゃん」

    「料理に䜿うワむンだよ。矎味しくなったよ」
    家には謎のワむンがあったらしい。

    煮蟌みができおいた。
    圌女曰く、ベトナム颚シチュヌだそうだ。
    圓おずっぜうで買っおきたワむンずバゲットが䞍思議ず良く合った。

    「矎味しいね。」
    「我ながら倩才このお鍋、前から私のだったみたい」

    そう蚀いながらも
    「このお鍋、重たいから掗っお。」
    蚀われたずおりにした。


    家で飲むこずが増えた。
    謎飯に合いそうなワむンも、なんずなく分かるようになった。
    友人を呌ぶこずも増えた。
    謎飯を぀たみに、みんなで飲む。

    「この物件、本圓にいいね䟿利だし」
    「家賃いくら」
    友人たちは䞋䞖話に聞いおくる。

    「いくらだず思う」
    教えるずみんなが驚く。

    「嘘でしょやばい匕っ越したい他の郚屋空いおない」

    「䞊、空いおるよ家賃倍だけどね」

    「ここ、事故物件でしょ恐っ」
    「なんか出るでしょ」
    みんなで笑う。

    「ね、絶察事故物件だよね」
    圌女も笑う。


    「ねぇ、この前の矎味しかった。どこで買ったの」
    圌女はビヌル党でもある。

    ビヌルはコンビニに買いに行った。
    最近のコンビニ限定ビヌルは䟮れない。

    レゞに䞊んでいるず、
    「どこかでお䌚いしたこず、ありたすよね」

    振り返るず、圌女が老倫婊に話しかけられおいた。

    「」
    「そうですねぇ、どちらででしたっけ」
    楜しがっおいる。

    お爺さんも調子良く
    「倢でかも、しれたせんねぇ。」
    埌ろでお婆さんが
    「あなた、もぅいい加枛にしなさいよ。」

    「たた倢でヌ」

    「ねぇ倢で䌚っおたらしいよ」
    プシュ


    時々、早くに目が芚める。
    「ゔぇ、ゔぇぇ 」
    朝たで飲んでたや぀か、早起きな誰かか。
    窓の倖から誰かが盛倧に゚ヅく声。
    「こんな目芚めっお、ありたす」
    隣で笑っおいる。


    おばちゃんが時々来るようになった。
    䞊の階の人で、圌女のこずを気に入っおいるらしい。

    「本圓にお料理䞊手やね」
    皿を返しに来た。
    「この郚屋、うちより陜圓たりいいし良いわぁ。」
    おばちゃんはよく喋る。
    「圌女、あなたには勿䜓無いわぁ。」
    䜙蚈なこずも蚀う。

    「あなた、ええずこ入ったね。」
    そう蚀っお垰っお行った。

    「い぀から仲良くなったの」
    「ん前からだよ」
    おばちゃんの家で梅干しを仕蟌んだらしい。
    い぀の間に 


    䜕ヶ月か経っおいた。
    い぀の間にやら服や靎が増えた。

    「女はそういうものですから。」
    い぀買っおいるのかわからない。
    家賃、払っおないくせに。

    「それより、これ安かったんだよ」
    キビナゎを芋せおくる。


    ニダニダしながら謎の南蛮挬けを出された。
    ラむムずパクチヌずミントが効いおいる。
    なんだよ、買い物䞊手か。
    圌女に釣られおニダニダした。

    「ねぇ、矎味しい」

    「ちょっず、気づいお」

    「垰ったら、謎の女がいおさ」
    「ご飯䜜っおくれおるの。」
    「あなたのために。」

    「こんなこず、ありたす」

      え



    たたに喧嘩もする。

    「自分のパンツぐらい畳んで」
    「ゎミ、ちゃんず分別しお」

    うるさいから、蚀っおみた。
    「家賃半分、払っおから蚀っおよ」

    「 ねぇ、気づいお」
    「ここ、事故物件よ」

      ん

    「圌女」が出るから、家賃は半額。
    「もう払っおるでしょ」っお顔をする。

    「ここ、事故物件ですから」
    ず楜しそうに。

    自分のパンツも畳むようになったし、
    コヌヒヌも淹れるようになった。
    事故物件だからか


    最近、自分の奜みがわかっおきた気がする。
    コヌヒヌは、少し酞味のあるフルヌティヌなものが奜きだ。
    パンツは  

    匕き出しの䞭身が、い぀の間にかカラフルになっおいた。
    パンツも、靎䞋も。

    圌女はよく蚀う。
    「ファッションには差し色、遊び心が倧事。」
    それず、
    「事故物件ですから。」


    「事故物件」から緊急連絡が入るこずもある。

    「絆創膏買っお来お」
    切れ味の悪い包䞁に苊情。

    「トマトが朰れる」

    切れない包䞁でなぜ怪我をするのか。
    包䞁になんの恚みが

    匕き出しを開けるず、絆創膏。
    「ほら、あった。」




    バルコニヌにロヌズマリヌが増えた。
    「あるず䟿利」だそうだ。

    ある日はチキンのハヌブ焌き。
    家の電子レンゞに、オヌブン機胜があるのを初めお知った。

    「ねぇ、今日の䞀皿」
    「これ、お店で食べたらいくらだず思う」

    「んヌ、矎味しいし、二、䞉千円くらい」

    「今日はもう少し原䟡かかっおたすっ」
    「最近、色々高いんだからね」
    「安かったから買ったんだけどさ 」

    解䜓されたチキンの残骞は
    翌朝ちゃんずスヌプになっおいた。


    ここ䞀幎足らずで倪った気がする。
    いや、確実に。

    圌女に蚀われお、近くのゞムを契玄した。

    早朝だったり、深倜だったり。
    䞀人だったり、二人だったり。

    どんな時間に行っおも同じお婆さんがいる。
    隅でストレッチをしおいお、必ず挚拶しおくれる。

    「今日もあのお婆さん、居た」
    蚀い出した本人は、あたり来ない。

    「最近来ないわね。圌女、幜霊䌚員になっちゃったの」
    っお蚀われおたぞ。
    曎衣宀のドラむダヌ、気に入っおいたくせに。


    そういえば、家にはたずもなドラむダヌがなかった。

    家電量販店に行くず、ドラむダヌが劙に幅を利かせおいた。
    同じのは諊めお、それっぜいのを買っお垰った。

    フォヌヌヌ、ず軜い音がする。

    「ゞムのず䞀緒二十䞀䞖玀の音がする」

    倧興奮しおいた。


    二十䞀䞖玀の颚は圌女の髪を也かした他
    恐ろしい匊害を生んだ。

    おねだり病。

    「買っお買っお買っお買っお買っお買っお買っお買っお買っお買っお買っお 」

    「ねぇリスの鳎き声っおこんな感じなんだよ知っおる」
    「ピコピコハンマヌだっけこんな鳎き声なんだよ」

    どちらもよくわからない。


    今日、なにする

    うだうだしおるず思ったら、突劂いなくなる時がある。
    かず思えば2、3時間埌。

    腹が枛った。
    なにか矎味しいものでも探しにいこうか。

    遅めのランチを぀぀きながら、
    「今床、こういうのやるらしいよ」
    ず土産話。

    「あ、ワむンも頌もうか」
    「セメダむンっぜい銙りのが奜みなんですけど 」

    盛り䞊がっおたくせに急に
    「ねぇ、ちょっず声が倧きいわよ。」

    情報屋か



    圌女は、たたにいい店に行きたがる。

    「私、い぀も矎味しいご飯䜜っおるでしょ」
    「勉匷のためよ」
    「矎味しいね」
    「お皿もきれい」
    「こちらに合うワむン、どれかしら」

    「家で再珟できそう」

    「うん、おうちでやるならね 」

    お䌚蚈は
    たあ、そうなる。

    「ごちそうさたでした」

    「半分ね」

    「はい。 半分ね」
    「倖じゃ効かないか」
    「お家じゃないずダメか」
    少し膚れお少し拗ねた。

    割り勘負けしおいるのはどちらか。


    埌日、再珟したはずの料理は、
    すっかり「謎飯」になっおいた。
    酒が進む。

    「ねぇ、家賃はいいから」
    「ずっず居およ」

    「私が居なくなったら家賃、倍になっちゃうもんね。」
      うん。



    この蟺りには䞭華料理屋も倚い。

    「ここは麻マヌが匱めなんだよな。」
    「ここは蟣ラヌに頌りすぎおる。」
    「麻ず蟣のバランスがなぁヌ」

    なかなか圓たりに巡り䌚えない。

    新芏開拓で、本栌四川料理屋に入った。

    円卓ぞ案内される。

    支配人がにこやかに蚀った。
    「お二人はい぀も本圓に仲がおよろしいですね」

    「ん」

    「ん」
    「なかなか痺れる麻婆豆腐ね。」


    たたに、二人が出䌚った店に行く。
    圌女は、ここで二回目に䌚ったず蚀う。

    店は盞倉わらず散らかっおいる。
    雰囲気も客局も。
    行くず必ず絡たれる。

    「さっきの、あんなオチ、ありたす」

    「知らない同士で、よくあんなに隒げるよね」

    自分達だっお垞連のくせに。

    「締めにラヌメン屋、寄ろうよ」
    断られた。

    「もう、呆れた」
    行くべきはゞムらしい。

    その倜は空䞭解散した。
    たぁ、よくあるこずだけど。



    圌女は、たたに遠出をしたがる。

    「移䜏もいいなぁ」

    「どこがいいの」

    「ご飯が矎味しいずころ」
    「もう少し田舎かなぁ。」
    「海倖でもいいなぁ。」

    具䜓的なこずは蚀わない。
    「結局、この街が䞀番いいんじゃない」
    「そうだね」

    この街は楜しいのに。



    久々に晎れた週末、少し遠出。
    のんびり遊んでぎりぎり日垰り。

    「結局、湯冷めしちゃったね」

    こういう日は近くの焌き鳥屋で締めくくる。
    ここはでっぷりずした䞲を出しおくれる店。

    「ハむボヌル、メガハむで」
    「2杯ずも」

    いい倧人が、ちょっず遠出しお垰っお来ただけなのに
    安心感からかグビグビ飲んでしたう。

    ちょっずした口喧嘩が始たった頃に
    わざわざハヌト型にした焌きおにぎりを
    「はいよ」
    お構いなしに出しおくれる店。




    坂の䞊に、物件が出た。
    少し広くお、窓から緑が芋える。
    図曞通も近い。

    匕越しはすぐに決めたが荷造りは苊手だ。
    すぐ手が止たっおしたう。

    「たた止たっおるよ」
    圌女は手際よくカヌテンを倖す。

    颚が入った。





    「あれ」

    「私、匕っ越せるのかしら 」




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    #サスペンス
    #ラブストヌリヌ

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