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50代からのHip-hop -ラップ教室で魂を解放させてきた話し-

    表現の壁を超えたい

    自分は、自分を表現できているだろうか?
    表現は言葉に偏る。言葉は、論理・文脈・その場の空気などに縛られる。うまく話せたと思っても何か自分を伝えきれていない感じが残る。

    この壁を超えたい、そういう葛藤に応えるのがアートなんでしょう。でもアートには技術や才能が必要。その壁を超えないと表現のスタート地点にも立てない。
    しかし、自分の中には外に出たがる言葉にならない何かがある気がする。

    そういう意味で、昔から自分は言葉や音楽での表現に惹かれ続けてきた。学生時代のバンド活動、今でもギターを弾く、詩を書く、車や山の中で熱唱もする、カラオケにも行く。でも、どんなに表現したくても、それは自分の身体や才能の限界で止まる。

    例えば、自分はリズムやピッチは比較的しっかりしている。しかし、声の音域や歌の抑揚が弱い。正確に言うと、歌っている時にはロックやR&Bのレジェンドに成りきっている。でも、友人に撮ってもらった動画を見ると、そこには必ず昭和歌謡の雰囲気が漂っている。歌の表現をいくら努力しても昭和の魂が現代風の音楽とマリアージュしないのである。ワインや香草をどんなに使っても匂いが抜けない隅田川のボラのようだ。

    この表現への渇望に対する、身体制約を乗り越える術はないのか?

    こんな想いを持つのは私だけではないのではないか。だいたいの人は、どこかで一度か二度、自分の表現を解放しようと試す。しかし、身体制約による気恥ずかしさに負けて、二度とその扉を開くまいと誓ってしまう。でも自分はそこで諦めたくない気持ちもあるのだ。

    Hip-hopの可能性

    そこで、少し気になっていたのがHip-hopとラップミュージックだ。ビートのリフレインに、言葉だけを乗せていくスタイルは、メロディーや音域、歌唱力などの制約を取り除き、言葉とリズムだけで表現を解放できる可能性がある。

    しかし、そもそも私はHip-hopには全く縁遠い。意識して聴いたこともないし、ラップなどカラオケでも試したことはない。
    私の中でのHip-hopは概ね、「昔し友達はワルばかり、自分もヤンチャ、世間にもまれて大人になり、親に感謝して、信じた道を突き進む、強面系ファッションのお兄さん」的なステレオタイプイメージしかない。なんとなく近寄りがたく、敬遠してきた。

    しかし、そんな折にDJをやっている友人からあるイベントに誘われた。「Groove Music Academy Rap Workshop:ラップ未体験でも楽しく学べる体験型ワークショップ」。しかも講師は、日本女性ラッパーの先駆者でレジェンドのComa-Chiさんである。日本のHip-hopシーンの初期から数々のRapコンテストを制覇し、多くの一流ミュージシャンとのコラボと自身の音楽制作で一線を走ってきたアーチストだ。ちょっと迷ったけど、ここはやってみるしかない。勢いで申し込んでみた。

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    本格的なHip-hopスクールGroove Music Academyが主催するRap Workshopへ参加

    いざラップ教室へ!

    教室当日。メンバーは意外と多様で、30代女性、子供連れのお母さん、イカツイ感じのラップ兄さん、小学生の女の子、私、という感じ。

    まずComa-Chi先生がHip-hopの歴史を教えてくれる。Hip-hopは1970年前後にニューヨークのブロンクスで黒人達のストリートカルチャーとして生まれた。DJ/ラップ/ブレイクダンス/グラフィティ(壁面アート)の4つに代表されるもので、ファッションも含めて一つのライフスタイルとして創り上げられたものだ。とても治安が悪い時代で、死と隣り合わせの生活の中で、言葉とビートに、怒り、悲しみ、歓喜、高揚など身体から発する様々な感情をぶつけていくような音楽だ。

    まずその話からして取っつきにくい。そんなワイルドストリートライフなど無縁な生活を送ってきた私に、そんな世界観のリリックは書けるのか?

    でもComa-Chi先生は続ける。「リリックは自分が本当に関心のある事、好きな事から自由に創って良いです。例えばアニメを家のソファーで観るのが好きなら、その気持ちを素直に言葉にすればよいです。」なるほど、意外と懐が深いのね。それなら自分でもできそうだ。

    韻の踏み方も教えてくれる。言葉の母音を取り出して、共通母音を使う別の言葉を当てていく作り方だ。例えば「サクラ」なら「ラクダ」とか「マクラ」とか、、。

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    Coma-Chi先生の講義を真剣に聴く筆者

    ラップ制作実演へ

    さて、いよいよリリック作りだ。
    A4の紙とペンを渡されて、「さあこれで自由に4小節作ってみましょう!」。いきなりそんなことを言われても、何も出てこない。どうしよう、、さっき先生は好きなことを素直に書けば良いと言ってた。
    最近自分が好きなものはなんだろう、、、
    さだまさし、かな(笑)。

    小さい頃から好きだったけど、この間プレイリストから流れてきて、久しぶりに「案山子」を聞いた。そこからはまって「防人の詩」や「親父の一番長い日」とか車で聴いてちょっとウルウルしたりしてた。よし、まず出だしのリリックはこれだ!

    「俺の好きな歌手はさだまさし」

    我ながらなかなか良い出だし(笑)。ここから韻を作っていく、「さだまさし」の共通母音を踏襲して別の言葉を捻り出す。
    「雨ざらし」、「肩透かし」、「宝探し」、「粗探し」、「腹空かし」、「波高し」、、。
    よし、この言葉を韻にしたセンテンスを捻り出そう。そしてダウンアップビートの16分音符の中にうまく収まるように調整する。
    5分集中!気合いで捻り出したリリックがこれ。

    「オレの好きな歌手はさだまさし
    いつも心はただ雨ざらし
    だけどきみは僕に肩透かし
    行く先は今宵も波高し」


    なかなかいいじゃん!。良い感じで韻を踏めてるし、適当に作った割には、何か深遠なメッセージを帯びてるような感じもする(笑)。

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    集中して、紙に思いついたリリックを書き殴る

    よし、次はこれをちゃんとパフォーマンスに繋げられるかだ。「では発表会に移ります」とComa-Chi先生。ビートが始まりマイクを持って前に立つ。

    「トップバッター行きます、MIC Check..one two...(beat) 俺の好きな歌手はさだまさし、、、♫」

    取り敢えず勢いでパフォームした。なかなかよかったんじゃないか、、Coma-Chi先生も褒めてくれてた!

    AIを使って表現の壁を超える

    さて、割と和やかな雰囲気で教室は終わった。その後すぐ友人が撮ってくれた自分のパフォーマンスの録画動画を見た。どれどれ、どうかな?

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    パフォーマンスする筆者。本人はGrooveしているつもりなのに、授業をする武田鉄矢にしか見えない。更にファッションは夕涼みに川辺に出てきたおっちゃんである(笑)

    うーん。。リズムも良いし、声も悪くない、ただ動きとフィールが武田鉄矢だ。音を消して見ると金八先生の授業風景に見える(笑)。
    やはり染みついた昭和感は抜けない、、

    やはり、身体の壁は越えられないのか、、。
    でも、せっかく取り掛かったので完成まで持っていこう。教室で作ったリリックの続きを創ってみる。最初の4小節でしっかり韻を踏んだので、その後はリズムだけ意識しながら、比較的自由にメッセージ性を高めて表現してみよう。電車の移動中に集中して制作。できた!以下が全リリック

    「オレの好きな歌手はさだまさし
    いつも心はただ雨ざらし
    だけどきみは僕に肩透かし
    行く先は今宵も波高し

    俺はさだまさし聴いて育った世代
    北の国からで泣いた昭和人
    HIPHOPなんて縁もない人生
    韻よりも先に空気読む日々

    人にはずっと言ってきたこと
    「挑戦しなさい」「変わるべきです」
    でもそう言うお前はどうなんだい?
    その言葉が自分に突き刺さる

    だから来たんだラップ教室
    絞り出してく己のHIPHOP
    心の奥にチラつく炎
    ソウルに乗せて火炎噴射」

    我ながら、なかなか良いね。
    さだまさしの世界観から、挑戦の意志への目覚め、そして後半はラップ教室での魂の開放。これは50代男性の素直な心の叫びを歌った、感動さえ覚える詩になったのではないか。

    しかし、これをラップしている自分は、海援隊の武田鉄矢にした見えないだろう。頭に浮かぶのは「母に捧げるバラードの」語り部分だ。この問題をどうするかである。。

    うーん。。もはや、自分がラップしなくて良いのではないか、、。こういうときに登場するのがAIだろう。自分がやらなくてもAIにパフォームさせればなんとかなるかもしれない。
    SUNOを使ってAIに歌わせてみよう。

    SUNOとは最近業界に激震をもたらしている音楽生成A Iだ。歌詞を入れて楽曲の雰囲気や条件をプロンプトで指定すると、プロミュージシャンレベルのオリジナル楽曲を即座に生成してくれる衝撃のサービスだ。

    SUNOに作ったリリックを入れて、男性ラップ歌手による、ベースとビートをシンプルにしたHip-hop楽曲生成の指示を出す。

    出来た!

    思った以上に良い出来だ。一度こう言う形で完成形を見せられると、一気にモチベーションが湧く。海援隊のイメージしかなかったのに、一気にHip-hopスターになった気分だ。これをお手本に練習していけば昭和フィールからも脱出できるかもしれない!

    今回は意外にもラップの間口の広さを感じられたトライアルだった。ビートと言葉に絞ることで表現へのハードルを下げられる。韻を踏みリズムと語数を合わせるだけで十分クールさが出ることもわかった。強い言葉や語感に向いた表現形だけに、逆に言いたいことをダイレクトにかつ攻撃的にならず伝えられるメリットもある。

    サッカーを擬似戦争化して、平和に闘う世界を作ったように、ブロンクスでもラップで言葉をぶつけ合うことで殺し合いのを回避するような、生活の知恵のようなものがあったんだろうな。

    秘めたパッションを表現できるラップは、精神的な活力が落ちてきた中高年の活性化にも役立つかもしれない。(こんなことをやろうとするのは自分ぐらいかもしれないが、、)

    次の目標はクラブでDJバックでのラッパーデビューだ!
    「Mic Check1,2.. Listen-up!..このバカチンが! (beat start ♪) 」(笑)


     
     
    大手コンサル会社などを経て独立し会社経営をしています。”面白いことを思いついたらやってみる。そして書いてみる”。というコンセプトで記事をアップしていきたいと思います。登山・釣り・旅行などアウトドアから料理・音楽、たまに経営やテクノロジー、社会や政治まで色々カバーしていきたいです。

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