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妖怪古伝・弐


    #創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #妖怪話短編集

    妖怪古伝・弐

    あらすじ
    ようこそ、この妖怪古伝は江戸の時代から人々に怖がられながらも愛され続けた様々な日本各地の妖怪をどんな伝承が伝わっているか紹介し、
    その妖怪をメインとした面白い話し、哀しい話し、少し怖い話しを過去・現代の様々な時代にわたって私が一人で勝手に作ったオリジナルストーリーをお話ししています。時にはあの事件?あの小説?あの映画?といったモノをオマージュしたモノもありニヤリと笑えます。
    どうぞゆっくりとお読みください...。

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    鬼

    鬼は日本の妖怪。民話や郷土信仰によく登場する。
    一般的に描かれる鬼は頭に角を1本か2本生やし、口には牙、指に鋭い爪をもち、虎の皮の腰布をつけ金棒を持っている。
    肌の色は青、赤、黄、緑、黒の五色で5つの煩悩の色とも言われている。
    もっとも古くからの妖怪の一つであるとともに、悪者の代表とされ、酒吞童子、茨城童子などを代表するように色々な昔話の中にも出てくる妖怪、それが鬼である。

    ーーーーー

    鬼オリジナルストーリー

    ここは瀬戸内海のとある小島、頭に角を生やした赤鬼と青鬼がけだるそうに海を見つめていた。

    赤鬼:
    どうしたジョージ、いつもに増して浮かない顔をして。

    青鬼:
    どうもこうもないよマイケル、俺達角の生えた一族は何百年も寿命があるからずっとこの島国の奴らと仲良くやって来たじゃないか。

    赤鬼:
    そうだな、大陸の奴ら俺達の姿かたちを怖がって大陸からこの島国に追いやられた。
    しかしこの島国の先住民、アイヌ人って言ったかとても気立ての良い奴らで長いことお互いそれぞれの文化を尊重して仲良くやってこれたんだ。

    青鬼:
    それを後からやって来たヤマト人達が見た目や自分たちのやり方に合わないと思うと、アイヌも俺達もどんどん辺境に追いやられちまった。

    赤鬼:
    それだけならまだしも、ヤマトの奴ら国の兵隊の訓練所とでも思っているのか新人の兵隊たちををこの島に送り込んでくるんだ。

    青鬼:
    そうそう、俺達は体はデカいし力もあるが、見た目と違って争いごとがほんとは嫌いなんだ。
    だから新兵たちの攻撃をわざとくらうフリをして、怒ったぞ~とばかりに反撃するとそそくさと逃げていくのさ。

    赤鬼:
    この光景をまわりで見ているヤマトの奴らは子や孫に「悪い化け物」を意味する「鬼」だと俺達を名付けて勝手に悪者としやがったのさ。

    青鬼:
    まさにそれだよ!俺達頭に角があり体がデカく長生きなだけなのになんで化け物扱いされなきゃならないんだ!それが腹立たしいんだよ。

    赤鬼:
    この前この瀬戸内海で難破しかけた船を助けてやったのに、鬼だ!鬼だ!って積んでいた中国からのお宝残して逃げて行っちまったしな。
    こんな物俺達には何の価値もないから返してやりたいけど、怖がるだけだからな~困ったもんだ。

    そんな出来事があってから約半年、桃太郎と名乗る四人組が赤鬼青鬼のもとにやって来た。

    桃太郎:
    やあやあ我こそは吉備の国にその人ありと言われた桃山小太郎、略して桃太郎!そしてお供のゆかいな仲間たちだ!

    犬:
    誰がゆかいな仲間やねん!ワシは犬山健太郎、こいつは猿山申造、そして紅一点の鳩山八十ちゃんや。ワシらうまい話がある言うからついてきただけやねん。

    赤鬼:
    桃太郎?聞いたこと無いな~。それと、キジじゃなくてハトなんだ。おいジョージ聞いたことあるか?

    青鬼:
    いや~聞いたこと無いな。ところでその桃なんとかとゆかいな仲間が何のようなんだ?

    桃太郎:
    よくぞ聞いてくれた!半年前この島の海岸に壊れた船がやってきただろう。その船に僕の親父が乗っていた。
    聞けばお宝を置いてきたと言うではないか。そこで我ら四人がお前らを退治してお宝を取り戻すのだ。わかったか、さあ皆のものかかれ~!

    桃太郎たち四人は赤鬼青鬼に飛びかかった!そして決着はあっという間についた。

    桃太郎:
    ど、どうか命ばかりはお助けを~。何だったら三人は置いてきますから僕だけは助けて。

    赤鬼:
    いやいや、かかってきたからついつい殴っちゃったけど、大丈夫か?お宝?ああ、アレは別に取ったわけじゃないからお前たち持って帰れ。

    桃太郎:
    えぇ、いいの本当にお宝持って帰ってもいいの?追って来ない?、、、だったら、頼みがあるんだけどもう暗いから一晩泊めてくれない?

    青鬼:
    なに~?調子のいい奴らだな。まあいい、確かにこんな暗いのに船を出したら危ないな。いいだろう食べ物と酒を出してやるから泊まっていけ。

    こうして桃太郎たちは鬼たちと仲直りの宴を開いた、宴は盛り上がったがその陰で猿山が酒にしびれ薬を入れ、鳩山が赤鬼青鬼にその酒をお酌して回った。
    宴も終わり、六人が寝静まったと思ったころ。桃太郎が起き上がった。

    桃太郎:
    よし、鬼たちは毒の酒を飲みやがったな。悪いがお前たちには死んでもらう。
    お宝をただ持ち帰っては俺達が横取りして売りさばくのがバレるし、お前たちの仲間かと思われるだろうからな。
    さあ、今度こそみんなで鬼たちを討ち果たすぞ!かかれ~~!!

    どうやら赤鬼と青鬼は本当にしびれている様子だった、そこに桃太郎たちが一斉に飛びかかった!決着は一瞬だった。

    桃太郎:
    待って、待って、話せばわかる話せば......って今度ばかりは許してくれなさそうだな~。もう~やけだこっちに来るな!!

    桃太郎たちは身の回りの物をなりふり構わず鬼たちに投げつけた、しかし鬼たちは平気な顔でそれを受けた。
    そこにたまたま鳩山が投げた豆が焚火に落ちて、熱せられてハゼた熱々の豆が鬼たちに当たった。

    赤鬼:
    なんだこれは、熱い熱い、こりゃ~たまらん逃げろ!!

    赤鬼と青鬼は逃げていった。それをみて桃太郎たちは大喜び、鬼は退治したということにしてお宝をえっちらおっちら持ち帰った。
    それを岩の影から赤鬼青鬼が眺めていた。

    青鬼:
    よしよし、あいつらやっとお宝持って帰っていったか。やれやれだな。

    赤鬼:
    確かにめんどくさい奴らだった。でも熱々の豆は本当に痛かったな。ちょっとトラウマになりそうだよ、ハハハハハ。

    噂では、この時以来鬼たちは炒った豆が嫌いになったとかならなかったとか。

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    雨女

    雨女(あめおんな)とは、雨を呼ぶとされる日本の妖怪。
    産んだばかりの子供を雨の日に神隠しに遭って失った女性が雨女となり、泣いている子供のもとに大きな袋を担いで現れるとの説もある。
    なお、「雨を呼ぶ迷惑な妖怪」とされる事もあるが、旱魃が続いたときに雨を降らせてくれる「雨を呼び人を助ける妖怪」という神聖な「雨神」の一種とされる事もある。

    ーーーーー

    雨女 オリジナルストーリー

    ここは長野の山里、村人たちが空を見上げ話し合っていた。

    村人一:
    困ったの~ここひと月まったく雨が降らない。米や作物もだが、その前に俺たちが干からびて死んでしまう。

    村人二:
    ほんとだの~。昔の言い伝えではあの山にある竜神様の洞窟に子供をささげれば雨を降らせてくれるって話じゃ。

    村人一:
    しかし、そんな本当かどうかわからない言い伝えに大事な子供の命を差し出すわけにはいかんじゃろ~。

    村人二:
    それだども、このままこの村の者全員死ぬわけにはいかんじゃろ...。

    その会話を一人の子供が聞いていた。そして山の方を見上げるとと、何か決心したような顔で山に向かって歩き出した。
    まだ十歳にも満たない子供の足にはこの険しい山道を進むことはかなり厳しく、何度も転んだり滑り落ちたりして足も手もいたるとこを擦りむいていた。

    草太:
    くそ~なんでオイラの体はこんなに弱いんだ。少しでも早く竜神様の所に行きたいのに。くそ~、負けないぞ!

    村の子、草太は数年前の流行り病で両親を亡くし、草太自身も何とか命は取り留めたもののすっかり体が弱くなってしまい、村の長老の家に住まわせてもらっていた。

    お日様が真上に上がった頃、太吉は山の中腹の洞窟にたどり着いた。

    草太:
    あったぞ、本当にあった。ここがみんなが話していた竜神様の洞窟なんだな。だったらこの中に入って竜神様に雨を降らせてもらうようにお願いしなくちゃ。

    真っ暗な洞窟は怖かったが、草太は歯を食いしばり勇気を出して中に入っていった。
    しばらく真っ暗な中を進んで行くと前に明かりが見えた。
    あれが竜神様かと草太が足を速めて進んでいくと、明かりの所にいたのは白い着物、長い髪に生気の無い青白い顔の女だった。

    草太:
    しまった、アレは村でも昔から噂になっている雨女だ!見つかったらオイラ食われちまう。

    草太は雨女に見つからない様に後ずさりして洞窟を戻ろうとした。その時、濡れた岩に足を取られ草太は洞窟の下の方に滑り落ちてしまった。

    どのくらいたっただろう、草太は誰か女の人に声をかけられ気を取り戻した。草太の頭と目には布が巻かれているようだった。

    女:
    よかった、気を取り戻したんだね。私が見つけた時から目を覚まさないから死んじゃったのかと思ったよ。よかった、本当によかった。
    でもね、お前は頭と目のあたりを打ち付けたみたいだから少しの間その薬草を塗ったその布を巻いておくといいよ。
    ところでどうしてお前は一人でこんなさびしいところに一人でやって来たんだい?こうゆうのは勇気とは言わないよ。

    草太:
    おばさん、オイラを助けてくれてありがとうございます。じつはオイラこの洞窟に住んでいる竜神様に会いに来たんだ。
    じつはオイラの村に雨が降らなくて大変なんだ!このままでは村のみんなが死んでしまう。
    だから竜神様にお願いに来たんだ、オイラの命と引き換えに雨を降らせてもらうように。

    女:
    なんだって!なんてバカなことを言うんだい!!お前の命と引き換えに雨を降らせるなんて!

    太吉:
    だって...しょうがないんだ、誰かが竜神様に命を捧げないと...オイラは体も弱いからなんの役にも立たないし、死んでも悲しむ両親もいないオイラがソレをやらないと!

    女:
    バカなことを言うんじゃないよ!子供の命と引き換えに願いを叶える竜神なんてここにはいないわよ。お願いだから命をそんなに簡単に粗末にしないで...。
    昔この村が干ばつで雨を降らせてほしいと竜神に子供をささげるためにくじ引きをし、選ばれたのが私のたった一人の息子だったのよ...。
    息子の命と引き換えにたしかに雨は降ったけど、もう二度とあんな馬鹿なことは私がさせない!代わりに私が雨を降らせるわ!おまえはここで待っていなさい!

    そう言うと女は洞窟から飛び出して行ったようだった。草太も置き上がると頭に巻いてあった布が落ちた、目は見える!あわてて草太も女の後を追った。
    洞窟からやっと出てくると、さっきの女は崖の上から天に向かって何かを唱えていた。その女こそ草太が洞窟の中でみた雨女であった。
    崖の女が泣きながら悲鳴のように何かを唱え続けると、何処からともなく黒い雲が湧き出てきて空を覆った。そして女が何かを叫ぶと一斉に雨が降り出した。
    その雨に当たっていた女は、草太の見ている前で霧のように消えていった。草太が見た最後の雨女は笑顔のように見えた。
    ただただ雨だけが降っていた。

    草太は洞穴に戻り雨が止むのを待った。どのくらいの経っただろうか、洞穴の外で聞きなれた声がした。村から長老をはじめ大人たちが草太を探しに来たのであった。

    草太:
    長老様オイラはここです、ここにいます。

    長老:
    おぉ、草太無事じゃったか村のみんなも心配して大人たち全員でお前を探しに出ておるのじゃぞ。

    草太は長老や大人たちに謝り、いままでの出来事をすべて話した。

    長老:
    そうか雨女が自分を犠牲にして雨を降らせてくれたのか...。それであれば村のみんなが恐れていた雨女は「ゆり」だったのかもしれんの...。
    百年前この村が今年のように干ばつになった時、言い伝えの竜神様のささげものに選ばれたのが「ゆり」の息子じゃった。
    男たちは泣いてすがるゆりから子供を引きはがし、山の洞窟に連れて行ったのだ。その晩ゆりも見張りの目を盗んで洞窟息子を探しに行ったのじゃ。
    しかし、ゆりがいくら探しても息子は見つからない、とうとうゆりは帰ってこなかった。
    それもそのはずじゃ、子供を連れて行った男たちは洞窟にその子を置いて帰ろうとすると、その子は「村のみんなのためなら」と笑ったんじゃ...。
    それを見て男たちは子供を村に連れ帰り、当時の長老に男たちみんなが自分が代わりになるから子供の命は助けてくれと訴えたのじゃ。
    それを見た天の竜神様が願いを叶えてくれたのか、雨が降り出したということじゃ...。そして、その救われた子こそ草太のひいひい爺さんじゃ。
    きっとゆりは悲しみに暮れ息子を探すうちにこの世ならざる者になってしまったのかもしれんな。
    しかし、ゆりも自分の息子の子孫の命を救えたんだきっと成仏できたことじゃろう。

    こうして村は干ばつから救われた。そして村の神社の脇にはゆりに似せた女の人が子供を抱っこしている石の像が彫られ、長く村の人々に愛されました。

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    さえずり石

    さえずり石は、群馬県の文化財である大きさ約4メートルの巨石。しゃべり石ともいう。
    所在地は吾妻郡中之条町大道(あがつまぐんなかじょうまちだいどう)。名前の由来は、かつてこの石が言葉を発したという妖怪伝説による。
    その昔、親の仇を探して旅をしていた男がこの地を通りかかり、この石を寝床として一夜を明かすことにした。
    夜中、男は人の話し声で目を覚ました。耳を澄ますと、声はなんと石の中から聞こえていた。
    しかも話の内容は男の目指す仇のことであり、その仇の居場所まで話していた。
    男はこれぞ神仏の助けと信じ、その場所へ赴き、見事に仇をとることができた。
    その後もこの石は幾度も声を発し、人々の役に立つことを話したので、土地の者は石の神としてこの石を祀った。
    しかしあるとき、この石の近くを訪れた旅人が石の声を聞き、驚いて石の角を刀で斬りつけてしまった。
    以来、この石が声を出すことはなくなったという。

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    さえずり石 オリジナルストーリー

    ここは上野の国の奥地の山の峠である。一人の侍が途方に暮れたようにブツブツとつぶやいていた。

    新之助:
    何ということだ、やっとずっと探していたわが母の仇の所在を突き止めたと思ったのに...昨年病で亡くなっていたとは。
    俺は何のために今までずっと仇の源九郎を探して来たのか...いままでの苦労は全て無駄になってしまった。

    そう言ってこの侍、新之助がこの峠にある大岩によじ登り、大岩の上に横になった。

    新之助:
    俺を育ててくれた養父平七郎の話ではこの大岩の下で母は斬られ、赤ん坊だった俺は大岩の上に居たため助かったと聞いている。
    あぁ~、もうどうしていいのか分からない...。

    そんなことを言いながら空を見上げていると何処からか低い声が聞こえてきた。

    謎の声:
    おぉ~大きくなったな、あの20年前の赤ん坊がこんな立派な侍になったのか?時はあっという間に過ぎるのだのう...。

    新之助:
    だ、誰だ!どこにいるのだ!姿を現せ!!

    謎の声:
    姿を現せと言われてもワシはずっとおぬしの下におる。ほらここじゃ、ここじゃよ。

    新之助:
    俺の下? 俺の下と言われても...下にはでかい石しかないじゃないか!

    さえずり石:
    そうじゃワシは昔から皆に「さえずり石」と言われている大岩じゃ。
    ところでおぬし、話を聞いてしまったのじゃが...おぬしを2年前のまだ源九郎が生きていた時に戻してやろうか?

    新之助:
    なに!そんなことが出来るのか?本当に出来るならお願いだ俺を連れて行ってくれ。

    さえずり石:
    よかろう、では目をつぶれそしてワシの上、この大岩の上に大の字になれ。...では行くぞ!そ~れ。

    大岩がそう掛け声をかけた、すると新之助の体は大岩が無くなったように下に落ちてゆくような感覚になり気を失った。
    新之助が気がつくと大岩の後ろ側に倒れていたようだった。そして何やら表側では男と女がもめているようである。新之助は姿を出さず聞き耳を立てた。

    男:
    菊殿はやまるな!その子には何の罪も無いではないか!無実を訴えて死んだ京太郎のためにもその子を育てるのだ!

    女:
    それは無理よ。こうなってしまったのもすべては私のせい、この子だけを残して当家の恥を背をわせて生きさせるのは不びん。ならばいっそ私の手で...。

    新之助は二人の会話に聞き入った。話はこうだった、最近年貢の量がおかしいと訴えがあって調べると米を量るマスの大きさに細工をされていた。
    この女・菊はその話を代官から聞きマスを預かり夫の京太郎の手柄にしようとして家に持ち帰ったところ、役人たちが突然家にやってきて細工されたマスを見つけられた。
    役人たちは京太郎がこの偽物のマスを使って農民たちを苦しめたのかととがめてきた。
    身に覚えのない京太郎は、誰かにはめられたと悟り役人たちのすきをみて無実を訴え切腹した。
    菊はすべては代官が仕組んだ罠で、年貢をごまかしていた代官が保身をはかりその罪を夫の京太郎になすりつけ犯人に仕立てあげようとしたこととわかった。
    そして菊自信がまんまとその代官の悪だくみの手助けをしてしまった、しかも自分の夫が犠牲になってしまったのだ。
    菊は混乱し正常な判断が出来る状態では無くなっていた。

    菊:
    夫、京太郎様を殺したのは私なのよ。だからこの子、新之助も私と一緒に夫のもとに行くのが一番の幸せなの!邪魔をしないで源九郎様。

    源九郎:
    やめるんだ!そんなことをして京太郎が喜ぶはずがない!まずはその子を私に渡すんだ!

    源九郎は菊から赤ん坊を奪い取った。すると菊は懐刀を抜き源九郎に切りかかった。それを源九郎は避け二人はもみ合って倒れた。
    源九郎が立ち上がると、足元には喉元に刀が刺さりこと切れた菊が倒れていた。
    そこに平七郎が駆けつけた。

    平七郎:
    源九郎、どういうことだ!なぜ京太郎の妻の菊が死んでいるんだ!教えてくれ。

    源九郎:
    平七郎よ、...菊殿は私が殺した。幼いころからの親友の妻を私は殺したんだ...。
    平七郎頼みがある、この赤ん坊を預かってくれ。名を新之助という。母を殺した私が育てたのではあまりに不びんだ。
    もし、新之助が大人になったら母の仇は私だと教えてやってくれ。新之助に討たれるなら私も本望だ。

    こうして源九郎は赤ん坊を平七郎に託しその場を去って行った。
    大岩の後ろの新之助は涙を流し嗚咽をこらえながらその話を聞いていた。

    さえずり石:
    おぉ、すまんすまん。ワシも歳かの時を間違えてしまったみたいじゃの。
    では今度は本当に2年前のこの場所に参ろうか、さあ目をつぶりワシの上で横になれ...。

    新之助が気がつくと今度は大岩の前に倒れていた。そして立ち上げるとこちらに一人の年老いた侍がやってくるのが見えた。新之助は近くの松の木の後ろに隠れた。
    老いた侍は大岩の前に来ると座り込み持ってきた花をその大岩にたむけて手を合わせた。

    新之助:
    すみませぬ、通りかかりの者ですが...どうしてそんな岩に花を供えるのですか?失礼でなければお聞かせ願えませんか。

    老侍:
    これはこれは、見られてしまいましたか。...偶然でも見られたのは何かの縁、お話いたしましょう。
    実はこの岩の前は私の親友の妻、そして私が幼き頃よりずっと思いを寄せた女性(ひと)の終焉の場所なのです。
    色々な未練を私もこの女性(ひと)もここに残してあるので...毎年今日のこの日に花をたむけに来ているのです...。

    そう言うと老いた侍は差していた刀を地面に置いた...。

    少し時間が過ぎた。

    新之助:
    そうですか...見ず知らずの私に話していただきありがとうございます...。あなたのその思い...きっとその女性(ひと)も成仏出来たのでは無いでしょうか。

    新之助の返事を聞くと老いた侍は刀を取って立ち上がり、新之助におじぎをするとその場を去っていった。
    新之助はその後ろ姿が見えなくなるまで深々と頭を下げていた。

    さえずり石:
    さあ、そろそろおぬしの本来の時代に戻ろうか。用意が出来たらまたワシの上で横になれ...。

    新之助は大岩にのぼり横になった。大岩から見上げた空はどこまでも青く澄み切っていた......。

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    一本ダタラ

    一本ダタラとは、日本に伝わる妖怪の一種で、熊野地方の山中などに棲む、一つ目で一本足の姿の妖怪とされるが、地方によって伝承内容には違いが見られる。
    和歌山県と奈良県の境の果無山脈(はてなしさんみゃく)では、皿のような目を持つ一本足の妖怪で、12月20日のみ現れるといい、
    この日は「果ての二十日」と呼ばれて厄日とされた。
    奇怪な姿のために恐ろしい妖怪だが、人間には危害を加えないという。
    名称の「一本だたら」の「だたら」は刀や槍を作るタタラ師(鍛冶師)に通じるが、これは鍛冶師が片足で鞴(ふいご)を踏むことで片脚が萎え、
    片目で炉を見るため片目の視力が落ちること、一本だたらの出没場所が鉱山跡に近いことに関連するとの説もある。

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    一本ダタラ オリジナルストーリー

    ここは今の奈良県・大和の国の山の中、ある旅人が深い森の道を歩いていた。

    旅人:
    参った、都で商売をして結構儲かったは良いが自分の里に帰るのに道がわからなくなってしまった。どうしよう...。

    すると前から修験者らしき人が山道を下ってきた。

    旅人:
    助かった、あの人ならきっとこの山の道を知って知るだろうこれで私も里に帰れる。お~い!そこの方、止まってくれ!

    修験者:
    おぉ、どうなさった?こんな深い山の中で、さては道に迷いなさったな。

    旅人は修験者に自分の里へ帰る道を教わりお礼を言って別れようとした。

    修験者:
    おっと、旅の方ちょっと待ちなされ、この山の中には「一本ダタラ」と言われるモノノ怪が出る。
    そのモノノ怪は鉄で出来た物を欲しがる。ここで出会ったのも何かの縁、この鈴を渡すからもしも出会ったらモノノ怪に渡すといい。

    こうして二人は別れ別々の道を進んでいった。旅人はなれない道を歩いていたので疲れて大きな木の下で休んだ。もう日が暮れかかっていた。
    すると暗くなった道を何者かがぴょんぴょん跳ねてやって来た。どう見ても人とは思えない影である、そしてそれは旅人の前に姿を現した。
    それは全身が動物のような毛で覆われていて大きな目が一つ、手は二本あるが奇妙な太い足が一本だった。

    ダタラ:
    おぉ、珍しいこんな山の中に人間がおるわい。そんなに怖がるなワシはお前を食ったりしない。それよりお前は何か鉄の物は持っておらんか?

    旅人:
    あ~、持ってます持ってます。さし上げますから命ばかりはお助けください~!!

    ダタラ:
    おぉ~立派な鈴じゃな。これをワシにくれるのか?ありがとうよなんか困ったことがあったらワシを呼んでくれ、じゃあな。

    モノノ怪はたいそう満足して闇に消えていった。旅人はほっとして今夜はこの木の上に泊まろうと思い何とかよじ登って、大きな木の枝に横になった。
    月も真上に来た夜中である何かが森の中をこちらに向かって突進してきた。それは普通の猪の二倍はあろうかという大猪で、旅人の木に体当たりをくらわした。
    旅人は寝ていた木の枝から落っこちて目が覚めた。目の前には見たことのない大きな猪、もうダメだと思った瞬間叫んでいた。

    旅人:
    誰か助けてくれ~!!

    こんな真っ暗な山の中誰が助けに来るであろうか?しかし、助けは現れた!暗闇の中をソレはぴょんぴょん跳ねてやって来た。

    ダタラ:
    こら、猪!その人間はワシの知り合いじゃ手を出すな!手を出したらワシが許さんぞ!

    そう言われたのが分かったのか大猪はモノノ怪に頭を下げると闇の中に消えていった。

    ダタラ:
    すまんすまん、あいつも悪い奴ではないのだが小さい頃いやな目のあったのか人間が嫌いなのじゃ、許してやってくれ。

    そう言うとモノノ怪も同じように闇の中に消えていった。

    朝が来た。
    旅人は今日こそは里に帰るぞと歩き始めたがどうにも方向音痴らしくまた道に迷ってしまった。しかも昨晩木の枝から落ちた時に足を痛めたらしい。
    気が付くと昨日と同じ木の下に戻ってきてしまっていた。そして日も暮れそうな頃合いになっていた。

    旅人:
    困ったぞ、また道が分からなくなってしまったどうしよう?そうだ、昨日のモノノ怪を呼んで助けてもらおう。「一本ダタラおるか~!」

    旅人がそう叫ぶと暗闇の方からぴょんぴょん跳ねてやって来る足音がした。しかし今日は何とも足音が重い気がする。

    旅人:
    おぉまた助けに来てくれたか…ま、まてよモノノ怪の様子がおかしいぞ?

    モノノ怪が旅人の前に姿を現した時、昨日とは明かに様子が違い、目は真っ赤に濁り、口には昨日は気づかなかった大きな牙が生えその口からは血の匂いがした。

    旅人:
    お、お前まさかオレを喰う気じゃないよな?冗談はやめてくれよ!

    モノノ怪は旅人の言葉が分からないのか大口を開けて旅人に噛みつこうとした!旅人はそれをかわし、何とか木によじ登った。
    するとモノノ怪はその太い足でその木を蹴り旅人を木から落とそうとした。旅人は必死で木につかまるが痛めた足で踏ん張りが効かない。
    もうダメだと旅人があきらめかけた時、暗闇の中から疾風のごとく現れた者があった。昨日の修験者である。

    修験者はモノノ怪の目のあたりに大きなお札を貼り付けると、モノノ怪は木を蹴るのをやめ静かになった。

    修験者:
    間に合ってよかった。まさかまだあなたがこの辺にいるとは思わなかったから、昨日は本日12月20日の話はしなかった。
    一本ダタラはなぜか毎年12月20日になると我を忘れて周りの生き物を襲うのじゃ。モノノ怪になる前の何かしらの恨みなのかもしれん。

    山裾が明るくなってきた頃、修験者はモノノ怪に張ったお札を取ってやると、モノノ怪は静かに頭を下げて森の中に消えていった。

    修験者:
    私は役小角と申す。私はあの世に知り合いが居るのでこういったモノノ怪たちの事も知っておる。
    だが、人間が無断で山や森を我が物にしようとすれば、必ず痛い仕打ちに会うことになるだろう。覚えておくといい。

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    天邪鬼あまのじゃく

    天邪鬼(あまのじゃく)は、悪鬼神もしくは小鬼、また日本の妖怪の一種とされる。
    民間説話においては、人の心を察して口真似などで人をからかう妖怪とされるが、地方により伝承が異なる。
    秋田県、茨城県、群馬県、静岡県などでは、人の声を真似ることから木霊や山彦が「アマノジャク」と呼ばれ、山中の声の反響はアマノジャクが声を真似しているなどと言われている。

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    天邪鬼オリジナルストーリー

    十六夜(いざよい)の月の下、桜の花びらが舞っている。ここは平安京、陰陽師・安部暗明の屋敷である。

    春雅:
    実に美しい、そしてとても不思議に感じるのだ。

    夕刻よりこの屋敷に来ていた笛の名手源春雅はすのこの上に座して暗明と酒を飲んでいる。

    暗明:
    何を不思議に感じる。

    春雅:
    毎年毎年桜の花は散ってしまう。それに俺は美しさを感じると共に哀しさを感じてしまう。また来年にはこの桜の花は咲くというのに...。

    暗明:
    ほ~...。春雅、つくづくお前はよい男だな。木や草のいとなみにもののあわれを感じるとは...。

    春雅:
    暗明、またお前はそうやって俺をからかう!やめだ、やめだ。ところで暗明、お前夕刻まで出かけていたようだが何処に行っていたのだ?

    暗明:
    実は東大寺の別当殿から相談事を持ち掛けられてな。それで少し調べ物をしていて帰りが遅くなってしまった。

    春雅:
    どんな相談なんだ?

    暗明:
    もう少し分かったらお前にも話すよ。

    春雅:
    必ず教えろよ。ところで暗明、お前このところ朱雀門の辺りで起こっている怪異については聞いているか?

    暗明:
    あぁ、そのことで藤原道草殿からその怪異を何とかしてほしいと依頼が来ているんだ...。

    話はこうである。四月の初め頃桜の花見をし、酔った貴族が朱雀門の辺りに差し掛かった。すると門の下あたりに黒い人影のようなモノがしゃがんでいた。
    酒で気の大きくなっている貴族は「何者だ、顔を見せろ」と言うと人影は顔を隠す。気持ちが悪いので「こっちに来るな」と言うと、こちらによって来た。
    「来るな」と言って貴族が走り出せば、人影も追いかけてくる。「助けてくれ」と叫ぶと人影は背中を押し、貴族は頭から転んでしまい気を失った。
    このようなことが夜桜見物の後に何件か起こっていて、藤原道草の耳にも入り怪異と言えば、ということで安倍暗明に依頼が来たという訳だった。

    暗明:
    今宵あたりは丁度出てくる晩だと思う。どうだ春雅一緒に行かないか?

    春雅:
    いいのか一緒に行って?

    暗明:
    問題あるまい、それどころか検非違使のお前が来てくれるのは心強い。
    ゆこう。

    春雅:
    ゆこう。

    そういうことになった。

    桜の花びらが舞い散る朱雀門、暗明と帯刀した春雅が二人並んで立っていた。門の下には噂の黒い人影がしゃがんでいた。
    春雅は腰の剣に手を掛けたが、暗明がそれを制した。そして暗明は春雅にうっすら微笑みを見せると人影に声を掛けた。

    暗明:
    おいそこのお前、こっちには来るなよ。

    人影は暗明と春雅の方に足音も立てずに近寄ってきた。すると暗明はニヤリと笑うとこう声を掛けた。

    暗明:
    まさか顔は見せるなよ。

    人影はその言葉を聞くと頭からかぶっていた布を取った。月に照らし出されたその顔は角の生えた鬼の顔だった。春雅は握っていた刀の柄に力を込めた。

    暗明:
    おい、手は上げるなよ。...そこに座るな。...おいおい、横になるなよ。

    暗明の言葉に合わせて鬼は手を上げ、地面に座り、しまいには二人が見ている前で腕を枕に横になってしまった。

    暗明:
    オン・ベイシラ・マンダリヤ・ソワカ

    暗明は毘沙門天の真言を唱えた。すると地面に寝そべっていた鬼は苦悶の顔をするとゆっくりと消えていった。

    春雅:
    暗明、どうなっているんだ?鬼が消えてしまったぞ!

    暗明:
    どうやら私の見込んでいたことが合っていたようだ。春雅、こんな時間だがこれから東大寺に行くぞ。

    春雅:
    東大寺?お前が昼間行っていた件と何か関りがあるのか?

    暗明:
    行ってみれば分かる。

    こうして二人は東大寺を訪れ、寺の別当に許可をもらい一緒に四天王、広目天・増長天・持国天・多聞天の像がある部屋にやってきた。

    別当:
    おぉ~、多聞天の足元の天邪鬼が戻っている。暗明殿どうやってこの鬼の像を戻したのですか?

    実は昼間暗明が東大寺別当に呼ばれたのは多聞天の足元の天邪鬼が消えてしまったので探して欲しいと持ち掛けられたのだった。

    暗明:
    別当様、どうやらこの天邪鬼は春の桜の精の息吹を受けフラフラと外に抜け出したようです、ご覧ください。

    暗明が指さした先には天邪鬼の頭に桜の花びらが付いていた。

    暗明:
    先ほど朱雀門の辺りをこの鬼がフラフラしておりましたので、多聞天つまりは毘沙門天の真言を唱え正気に戻し元の場所に帰したのです。

    別当:
    なるほど、お手数をお掛けした。しかし流石は安倍晴明の血を引き継ぐ陰陽師ですな感服いたしました。

    暗明と春雅は別当に挨拶をして東大寺をあとにした。

    春雅:
    暗明、しかしお前よく東大寺の天邪鬼が怪異の原因と分かったな?

    暗明:
    あぁ、ご先祖様の「陰陽師」の本にもこんな感じの話があったからな。
    春は生の息吹に満ちている。お前の様に桜を愛おしむ人の思いを受けて春の精がいたずらをしたのであろう。
    ところで春雅、桜も今夜あたりが見納めだ私の家に戻って飲みなおそう。

    二人は月に照らされ桜の花びらが舞う平安京土御門大路を北にゆっくりと歩いて行った。

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    獏ばく

    獏(ばく)は伝説の生物。中国発祥で、日本へ伝わった。日本では、人が睡眠中に見る悪夢を食べるとされる。
    中国で「獏(貘)」は古くから文献に見え鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラにそれぞれ似ているとされる。
    日本では獏は悪夢を食べるとされる。中国では獏が悪夢を食べる描写は無かった。しかし、獏の毛皮を座布団や寝具に用いると疾病や悪気を避けるといわれ、獏の絵を描いて邪気を払う風習もあり唐代には屏風に獏が描かれたりした。
    こうした邪気を払う伝説が日本に伝わるにあたり、「悪夢を食べる」と解釈されるようになったと考えられている。

    ーーーーー

    獏オリジナルストーリー

    時はもうすぐ1600年になろうかという、京都の伏見城。ある老人が豪華な部屋で眠りについていた。

    信長:
    藤吉郎、藤吉郎目を覚まさんか...。

    秀吉:
    ん~...こ、これは信長様!

    信長:
    やっと目を覚ましたか。藤吉郎よ、そろそろ頃合いじゃワシの元に参れ。

    秀吉:
    上様、それがし上様の仇を見事に討ち果たしました。この手柄に免じてもうしばらくお待ちいただけませんか。

    信長:
    それについては褒めてつかわす。しかしだ、ワシの息子たちへのお前の数々の仕打ちは許せぬ!すぐにワシの元に参れ!

    秀吉:
    上様、どうかどうかお許しくださいませ~!

    信長:
    いや許さぬ!今すぐ参れ!!

    秀吉:
    いやじゃ~~!

    小姓:
    太閤殿下、殿下どうなされました!お気を確かに!

    豊臣秀吉は滝のような汗に真っ青な顔で目を覚ました。

    次の日、織田信長の元で数々の戦を乗り越え秀吉が数少ない腹を割って話せる相手である、前田利家を呼び、昨晩の夢を語った。

    秀吉:
    利家殿、なぜじゃ?なぜ上様はワシのことをこんなに苦しめるのだ?助けてくれ。

    利家:
    太閤殿下、私も殿下も上様のため命を掛けて戦ってきました。恨まれることなどないはず。これは何の関係もないただの悪夢にすぎません。

    秀吉:
    とは言え利家殿、こんな夢が毎晩続いてはワシはおかしくなってしまいそうなのじゃ。

    利家:
    ご安心くだされ、先ほど石田三成殿からコレを預かってきました。これは中国では悪夢を食べるといわれる「獏」を彫った枕でござる。
    今夜からこの枕を使えばもう悪い夢などもう見なくなりましょう殿下。

    こうしてしばらくの間、秀吉は悪夢を見ることもなく穏やかな夜を過ごすことができた。
    不穏な夢を見そうになると鼻の長い不思議な生き物がその夢を吸い込んでくれて秀吉は胸をなでおろす、そんな夢を何度も見た。

    しかし、獏の枕を使い始めて一年が経とうかという頃の晩ことだった。

    信長:
    藤吉郎、藤吉郎目を覚まさんか...。ひさしぶりじゃ。

    秀吉:
    上様?なぜ!またなんであらわれたのですか?どうかお許しください。

    信長:
    お前にまだ言ってないことがあった。ワシは知っておるのじゃぞ...。

    秀吉:
    な、何をでございますか?

    信長:
    白を切るでない!お前が明智光秀をそそのかしワシの警護が手薄なところを狙い謀反を起こさせたのは分かっておるのじゃ!
    お前はその謀反が分かっておったから高松城攻めから取って返し信じられぬ速さで京に戻ってこれたのであろう。
    そして何よりも光秀の口を封じると同時に仇討ちの大手柄を手にすることが出来るからな...。どうだ、言い訳があるなら言ってみろ!!

    秀吉:
    ははーーっ...光秀の件は黒田官兵衛めの入れ知恵にございまして、こんなにも絵に描いたように事が進むとは思わなかったのでございます~。

    信長:
    もういい、言い訳はあの世でたっぷり聞いてやる。さあ、この第六天魔王信長がお前をじきじきにあの世に連れて行ってやる。

    秀吉:
    上様、どうかお許しを~~。

    秀吉は天を見上げ息をしていなかった。横に獏の彫られた枕が転がっていた。  その部屋の隅の暗闇から妖怪枕返しが現れた。

    枕返し:
    まさか太閤殿下が死んでしまうとはオレも思わなかった。家康の所の天海僧正に秀吉の枕を転がしてくれと頼まれたが、
    まさかこんなことで死んでしまうとは...昔からの付き合いのある天海だが、妖怪よりも恐ろしい奴らだ。
    ん、手紙か?いやこれは豊臣秀吉の辞世の句だな...まさか本当に夢の中で死ぬるとはある意味正夢だな。

    「露と落ち 露と消えにし 我が身かな   なにわのことも 夢のまた夢」

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    灯無蕎麦(あかりなしそば)

    燈無蕎麦(あかりなしそば)は、本所いまの東京都墨田区あたり、を舞台とした本所七不思議と呼ばれる奇談・怪談の1つ。幽霊屋敷の屋台版のような怪異。
    江戸時代、本所南割下水(ほんじょわりげすい)付近には夜になると二八蕎麦の屋台が出たが、そのうちの1軒はいつ行っても店の主人がおらず、夜明けまで待っても遂に現れず、その間、店先に出している行灯の火が常に消えているというもの。
    この行灯にうかつに火をつけると、家へ帰ってから必ず不幸が起るという。

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    灯無蕎麦オリジナルストーリー

    ここは江戸の本所あたり。今夜は少し肌寒く温かいそばかうどんが欲しくなる晩だった。大工の三郎は仕事で遅くなり腹をすかして帰り道を歩いていた。

    三郎:
    いや~すっかり遅くなっちまった。いつもの親方の説教、なぜか今日は気合が入って長かったな~。
    それにしても腹が減ったな~。、、、、おっ、あそこに蕎麦屋があるじゃねえか!ありがてぇ一杯食ってこう。

    三郎が見つけた蕎麦屋の屋台はあったかそうな灯が点っていて「二八 そばにうんどう」と書いてあった。

    三郎:
    ん?何か書き間違えてるのか?まあいいや、おやじさんしっぽくそば一杯ください。

    店主:
    はい、いらっしゃい。しっぽくそばですね、すいません私は年なもんで早く動けません少々お待ちくださいな。

    三郎:
    いいです、いいです。こんな寒い晩に温かいそばが食えるだけでもありがたい。喜んで待ちますよ。

    店主:
    はい、お待たせしました。

    三郎:
    え、おやじさん速いですよ、全然待ってない。いい匂いだね~それに料理は器で食わせるなんて言うけど、本当に豪華なお椀ですね~。
    しっぽくのかまぼこもこんなに厚くて、これでお店の採算取れてるんですか?ん~それに汁も鰹節のダシが効いててうまいね~。
    そしてこのそば!角がたってて細くて長いですね~。温かいだけでもご馳走なのに本当にうまい。一杯の蕎麦なのに極楽極楽って感じですよ。

    店主:
    ありがとうございます。こんなにほめていただいたのは初めてです。今夜はこれで店じまいにしましょうかね。

    その時暮れ六つを告げる寺の鐘が鳴った、三郎は鐘の音の方向に顔を向けた。

    元の蕎麦屋の屋台に向き直ると屋台は消えていた。そして三郎の足元には富くじが落ちていた。

    それから三日後、三郎が拾ったその富くじが大当たりし、三郎の家族は貧乏長屋から引っ越していった。

    そんな三郎の話を聞きつけてこの貧乏長屋の兄貴分の銀二も三郎が出会った蕎麦屋の屋台を探しまわったが、いっこうにその蕎麦屋の屋台とは出会わなかった。
    そしてひと月ほど経った蒸し暑い晩、やっと普通ではなさそうな蕎麦屋の屋台を見つけた。

    銀二:
    暑ぃな~。やっと三郎が言ってた様な蕎麦屋の屋台を見つけたぞ!しかしそれにしちゃ~行灯の明かりも点いていねえな。
    おい蕎麦屋~おやじは居ねえのか?おい、いねえのか?しょうがねえな明かりも点けねえで、オレが点けてやろう。
    お、ついたついた。ん行灯に書いてある文字おかしいな「二八 手打ちそば うんどん」?うんどんてのは運がドン詰まりみたいでヤダな。

    店主:
    はい、いらっしゃい。

    銀二:
    なんだい、おやじ居たのかい?それじゃおやじしっぽくそば一杯作ってくれ。

    店主:
    なんだいじゃないよ。あんたが明かりを点けてオレを呼んだんだろ。あぁ、しっぽくね、ちょっと時間かかるけどいいかい。

    銀二:
    おっ、三郎の話みたいだね。いいよ、いいよおやじゆっくり作ってくれ待ってるから。

    銀二が蕎麦をたのんでから半刻、約一時間が過ぎた。

    銀二:
    おいおやじ、まだかい?いくら何でも遅いよ、まさか蕎麦粉作る所から始めてんじゃねえだろうな?

    店主:はい、お待たせ。

    銀二:
    お、やっと出てきたかい。やっぱり蕎麦のつゆの匂いはいつかいでもいい...ってなんだいこの匂い!
    鼻の奥を突くような刺激臭だな。ホントに食えるんだろうな?
    でもな、料理は器で食わせるなんて言うからな、どうだいこの立派な器...ってなんだこのどんぶりは犬のメシ用のどんぶりか?薄汚れて汚ねえな~。
    まあいいや、味が良ければそれが一番だ。このしっぽくのかまぼこがいいね~...ってこりゃ~かまぼこじゃねえな!
    なんだいこれは?え、おふ?そうかいそうかい。でも肝心なのは蕎麦だよ蕎麦!ほらこの蕎麦...。なんだいこれは蕎麦かい?丸くて太くて短いんだが。
    え~い、つゆがうまけりゃ今までのダメなのも帳消しだ。どれどれ、ブーー!!なんだこの味、苦くてすっぱいつゆってのは初めてだ!!
    とても食えたもんじゃねえ...。おやじこんなんじゃ客なんて来ねえだろう?

    その時暮れ四つを告げる寺の鐘が鳴り、銀二は鐘の音の方向に顔を向けた。
    元の蕎麦屋の屋台に向き直ると屋台は消えていた。

    銀二:
    お、三郎の言ってた通りだ!さあ、富くじ、富くじ、富くじが落ちてるはずだ!

    銀二は屋台のあった辺りを見回したが富くじは見つからなかった。代わりに携帯用の薬入れ、印籠が落ちていた。

    銀二:
    おぉこりゃ~立派な印籠だな!質屋に持っていけばいい金になるかもしれねえ。富くじは無かったがこれで手を打ってやるか。

    銀二は落ちていた印籠を家に持ち帰り、次の日さっそくその印籠を質屋に持って行った。

    銀二:
    おやじ、居るかい。ちょっと見てもらいたいモノがあるんだけどよ。え~と、これこれどうだい立派な印籠だろ?

    するとたまたまその質屋に居合わせた旅人風の男がその会話を聞いて銀二にたずねてきた。

    旅人:
    ちょっと待ってくれ、お前さんその印籠どこで手に入れなさった?

    銀二:
    な、なにぃ、なんか文句でもあるのか!これはオレの友達にもらったもんだ、決してやましいモンじゃねえやい!

    旅人:
    お前にはこの印籠についている御紋が分からんのか?......ご隠居さま、昨晩盗み取られた印籠が見つかりました!

    旅人がそう外に声を掛けるといかにも威厳のありそうな老人ともう一人のお供の者が一緒に質屋に入ってきた。

    銀二:
    なんだ、なんだ!三対一だからってオ、オレは負けねえからな!

    旅人:馬鹿者、まだ分らんのか!お前が持っている印籠についているのは徳川家の御紋。ここにおわすは先の副将軍水戸光圀公にあらせられるぞ!頭が高い!!

    銀二:
    え~~水戸の黄門様!!オ、オレはこの印籠を拾っただけなんです。質屋だって間違って入っただけで、ちゃんと奉行所にお届けしようと...。

    黄門:
    助さん、格さん、懲らしめておやりなさい。

    銀二:
    た、助けて~~~~。

    ==========================

    人形の霊

    人の形をした人形ははるか昔、人の病や凶事を移し身代わりになってもらうために作られたものであるため、人形に魂が宿りやすいというのは有名な話である。
    あるところに住んでいた娘が、父親と共に見に行った浄瑠璃に出てきた人形に恋をしてしまった。娘は父親にねだり、その人形を買ってもらい、食事中も寝る時も、常にその人形と過ごした。
    娘も年頃になり、流石に人形と過ごしてばかりではいけない、ということで見合いをして結婚することになった。
    娘の大切にしてた人形は捨てられ埋めてしまった。
    結婚式の日。式中に突如、かつて娘が肌身離さず持っていたその人形が乱入してきて、娘の手にした盃を振り落として去って行った。
    唖然とする人々をよそに、娘は血相を変えてその人形を追いかけて行った。
    家族達が必死で探すと、なんとかつて人形を埋めた筈の場所に、娘が土の中に手を差し入れて死んでいるのが見つかった。
    後にそこは「人形塚」と呼ばれ、娘と人形一緒に弔われたのだという。

    ーーーーー

    人形の霊 オリジナルストーリー

    ここは江戸のとある下町。反物問屋の娘ひさは両親と旅の浄瑠璃芝居を見に行った。
    浄瑠璃は大人気で、浄瑠璃の人形もまるで生きている役者が演じているように観衆を魅了し毎日大入り満員が続いていた。
    もちろん反物問屋の家族もこの浄瑠璃芝居に夢中になったが、娘のひさは少し理由が違うようだった。

    ひさ:
    お父様、お願いがあります。あの浄瑠璃の若侍の人形を買っていただけませんか、どうか私の一生のおねがいです。

    主人:
    おひさ、そんなにあの人形が気に入ってしまったのか。普段ワシに何かねだることのないお前がそれほどまで言うのなら、この浄瑠璃芝居の最終日にでもこの一座の座長に話して譲ってもらおう。お前のためなら大金をはたいても惜しくない。ははは。

    こうして反物問屋の主人は浄瑠璃芝居一座から主役の若侍の人形を譲り受け、娘ひさに自慢げに渡した。

    ひさ:
    お父様、ありがとう!私ずっとずっと大事にします。本当にありがとう。

    ひさの喜びようと言ったらなく、その日から何をするのもその人形と一緒、食事も寝る時もひさと人形は片時も離れなかった。

    そしてそれから一月ほど経ったある晩に人形がひさに語りかけてきた。

    人形:
    おひさ、おひさ、私をあの芝居小屋から助け出してくれてありがとう。これからずっと私はおひさと一生一緒だよ...。

    次の朝目を覚ましたひさは涙を流し、死ぬまで一緒にいると人形に誓ったのだった。

    それから数年が過ぎ年頃になったひさを父はいくら好きだといっても人形ではうちの反物屋を継ぐことは出来ない。人形は今まで通りでよいから婚礼を挙げてくれと説得し、ひさもいやいやながらも父の探してきた米問屋の次男坊と祝言を挙げることとなった。

    そしてその祝言の当日、新郎新婦が三三九度をする場面になった時、若侍の人形が誰も操っていないのに一人で立ち上がり刀を抜き新郎に切りかかった!
    新郎は額と左手を切りつけられたが何とか逃げ延びた。人形はひさの手を取り連れ去ろうとしたがひさの家の物に引き留められ、人形は一人暗闇に姿を消した。
    怪我をした新郎は顔を真っ青にし、この婚礼はなかったことにしてくれと言い捨て親族共々出ていった。
    ひさは気絶して寝込み、家の者たちは怯えて部屋に閉じこもるもの、いとまをもらい郷に帰るものが相次いだ。

    主人:
    何でこんなことになってしまったんだ、私がひさに人形を与えたばかりに...。きっとあの人形はまたひさをさらいに来るだろう、どうしたらいいんだ。

    その頃、近くに神社にお参りに来ているひさの家の者がおり一心に願いを掛けていた。それはひさの幼馴染の番頭の息子武雄であった。

    武雄:
    神様どうかお願いいたします。おひさを人形から守ってください、私に出来ることがあれば何でもいたしますからお願いいたします。

    武雄の願いが聞こえたのか神社の社の中から背が高く髪の長い山伏のような男が出てきた。

    男:
    悪いが話は聞かせてもらった。オレが思うにお前が言うその人形には何かしらの霊がついておるな。きっと非業の死を遂げた侍の怨念あたりであろう。
    お前には悪いが、そういったモノは人の手には負えない。きっとその娘は連れ去られ戻ってくることはあるまい...。

    武雄:
    どなたかは存じませんが、あなたは何か知ってらっしゃるようにお見受けいたします。
    もし、何とか出来る方法を知っていらっしゃるならば私に教えてください。私に出来ることがあれば何でもいたします。

    男:
    ほう、お前その娘に惚れているのだな...。わかった、お前が命を掛けてもその娘を守るというのならオレも手を貸してやろう。

    そう言うと男は懐から真っ黒な木彫りの鬼の面を取り出した...。

    それから三日後の満月の晩、また若侍の人形が現れた。ひさの屋敷の屋根に現れた人形は月光に照らされ異形の魔物の様な恐ろしさをまとっていた。

    武雄:
    神社にいた方が言っていた通りあの人形が現れたか!こうなったら私の命に代えてでもおひさを守る!

    そう言って武雄は人形の前に進み出たが、屋根から飛び降りた人形は目にも止まらぬ速さと信じられない力で武雄を弾き飛ばした。

    武雄:
    くそ~なんだあの力は。とても私の力では抑えきれない。こうなったらアレを使うしかない!

    怪我をして血まみれの武雄は懐から神社であった男にもらった鬼の面を取り出した。その鬼の面から武雄の心に呼びかける声がした。

    鬼の面:
    力が欲しいか?...力が欲しいか?...力が欲しければ......くれてやる!!

    武雄は鬼の面を被った!すると武雄の髪は逆立ち身体も、手足の太さも二回り大きくなり仁王様のごとく立ち上がった。
    そこにまた人形が今度は刀を握り武雄に飛び掛かってきた!
    しかし、武雄は左の手で刀を握り、右の手で人形の顔を握っていた!そして武雄は右手にありったけの力をこめ人形の頭を握りつぶした。
    人形は動きを止め操っていた糸が切れたようにその場にぐしゃりと落ちた。だが武雄もその場に倒れた。鬼の面が落ちた顔からは目、鼻、口から血が噴き出していた。
    ひさもまるで夢から覚めたように目を覚ました。そして自分を守ってくれた武雄のそばに来て座り込んだ。

    武雄:
    おひささん、目を覚ましたんですね。よかった。
    私が幼いころあなたをさらいに悪者が来たらやっつけると誓った約束守ることが出来ましたよ。

    そういうと武雄は笑顔で息を引き取った。ひさは武雄を抱きしめ大声で泣いた。

    男:
    やれやれ、呪いの人形よりもオレの面の方が勝っていたか...。フフフフフ。

    そう言って男は地面に落ちていたお面を拾った。満月の月の光に照らされたその男の影には腕が六本生えていた。

    ==========================

    のっぺらぼう

    のっぺらぼうは外見は人に近いが、その顔には目・鼻・口がないという日本の妖怪である。
    古くから落語や講談などの怪談や妖怪絵巻に登場してきた比較的有名な妖怪であり、小泉八雲の「怪談」の「貉(ムジナ」に登場する妖怪としても知られる。
    また、しばしば本所七不思議の一つ「置行堀」と組み合わされ、魚を置いて逃げた後にのっぺらぼうと出くわすという展開がある。
    妖怪としての害は人を驚かすことだけで、それ以上の危害を与えるような話は稀だが、話の筋立てとして「何度も出くわす」という落ちがよく用いられる。

    ーーーーー

    のっぺらぼうオリジナルストーリー

    時は1975年、ここは山梨県甲府市。小学校の授業が終わり二人の児童が自宅への帰りの道を歩いていた。

    タケ:
    やっちゃん。今日の野球楽しかったな!オレ明日こそホームラン打つぞ~!...ん?やっちゃん、あの東の空のオレンジ色のヤツなんだろう?

    ヤス:
    たけちゃん!あれはこの間テレビでやってたUFOってヤツだよ!見つかったら僕たち乗せられて連れてかれちゃうかもしれない、早く隠れよう!

    空を見ているとそのオレンジ色の物体は近づいてきた。二人はあわてて近くに墓地に身を隠した。
    すると、その物体は近くのぶどう畑の中に降りたようだった。

    タケ:
    やっちゃん、ぶどう畑に降りたみたいだ見に行こうぜ。

    ヤス:
    たけちゃん、やめようよ僕怖いよ~。ねえ、やめようって...。

    二人は足音を立てないようそ~っとぶどう畑に進んでいった。そろそろさっきの物体が降りたあたりに来た時だった。ヤスの肩を誰かが叩いた。
    それは銀色の服を着た背の高い肌が茶色の髪の毛の無い人物だった。そしてその人物の顔には目も鼻も口もついていなかったのだ!
    ヤスは驚き気を失って倒れた。タケもビックリし腰が抜けそうだったが、なんとか誰か大人を呼びに走って行った。

    宇宙人:
    アラアラ、タオレチャッタ。ゴメンナサイオドロカセルツモリハナカッタノヨ。ワレラ、チョットサガシモノヲシテテキキタカッタノヨ。

    顔の無い宇宙人は謝ると気を失ったヤスを起こしてぶどうの木に寄りかからせた。
    タケは必死で誰かに助けてもらおうと走った。するといつもタケたちが遊んでいる川で釣りをしている大人が目に入った。

    タケ:
    あ、誰かいる。こうなったら誰でもいい早くやっちゃんを助けに行かないと!すいません、助けてください!

    タケは釣り人に声を掛け、うまく説明できなかったが友達が怪物に捕まったことを話し、一緒に助けに行って欲しいとお願いした。

    釣り人:
    なるほど、なるほど。坊やの友達が捕まっちゃったんだねそりゃ~大変だ。
    ところで坊や、その怪物ってのは...こんな顔してなかったかい?

    そう言って釣り人がタケの方に振り返るとその顔は目も鼻も口もついていなかった。今度はさすがのタケも気を失って倒れた。

    のっぺらぼう:
    おぉ、気絶したか、よしよし。ところでどいつだまたオレのふりをして人間を驚かせているのは、ムジナか?キツネか?それともタヌキの奴か?
    友達も助けないといけないな。いずれにしても本物のオレが行って懲らしめてやる!

    そう言うとのっぺらぼうはタケの走ってきたぶどう畑に走り出した。

    ぶどう畑に到着するとそこにはオレンジ色に光る物体が地面に着陸しておりそこに銀色の服を着た人物二人が何か話し合っていた。
    のっぺらぼうはそっと二人に近づき、立ち上がるとそのうちの一人の顔をつかみ引っ張った!

    のっぺらぼう:
    この野郎、正体を現せ!ムジナか?キツネか?それともタヌキか?オレに化けやがって今日という今日はただじゃおかないぞ覚悟しろ!

    のっぺらぼうは銀色の服を着た男の顔をつかむ手に力を込めた。

    宇宙人:
    イタイデス、イタイデス、ヤメテクダサイ!コノカオハウマレツキデス。ソレニナンカノドウブツガバケテイルワケデモアリマセン。

    のっぺらぼう:
    本当だ化けているんじゃないのか?!だったらお前は何者だ、オレの親戚か何かか?

    宇宙人:
    シンセキ?マアソンナトコロデス。
    ワタシタチハ、ハルカカナタノホシカラキマシタ。
    ソノモクテキハ800ネンマエニコノホシニフジチャクシタ、ワタシタチノナカマヲサガシニキタノデス。
    デモ、ソノモクテキモヤットハタセマシタ。
    サア @@@@ イッショニフルサトノホシニカエリマショウ!

    のっぺらぼう:
    え、まさかオレがお前たちの仲間だというのか?そんなはずは無いオレはこの国の人達にずっとのっぺらぼうという妖怪だと怖がられてきたんだ。

    宇宙人:
    ムリモナイ、フジチャクシタトキニアタマヲウッテキオクヲナクシタノデショウ。
    ダイジョウブデス、コノコウセンヲアビレバゼンブオモイダシマス。

    そう言うと宇宙人は手に持ったライトを光らせた。
    のっぺらぼうはその光を浴びると頭を抱えてうずくまり、そして立ち上がると宇宙人二人に向き直った。

    のっぺらぼう:
    全部思い出した。オレは恋人のカグヤを追いかけてこの星に来たのだがマシントラブルで落ちてしまったのだ。
    おい、お前たちカグヤはカグヤはどうなった?知っているなら教えてくれ!

    宇宙人:
    カグヤサンナラ...キヲオトサナイデクダサイ。
    カノイジョハジブンノホシニカエッテ、ケッコンシテモウヒマゴマデデキテイマスヨ。

    のっぺらぼう:
    そ、そうかカグヤが...こんなことなら記憶を取り戻すんじゃなかったな。
    カグヤはオレの何が気に入らなかったのか...。

    宇宙人:
    カグヤサンハ...アナタノカオガコノミデハナカッタソウデス。
    ...サア、イッショニカエリマショウ。

    のっぺらぼう:
    顔が好みじゃ無いって...目も鼻も口も無いのにそれを言われちゃどうにもならんだろう。

    こうしてのっぺらぼうを乗せたオレンジ色の物体は音もなく空に舞い上がり夜空に消えていった。

    タケとヤスは二人の帰りが遅いと迎えに来た家族に発見され無事家に帰った。
    この時二人とその家族は東の空にオレンジ色の物体が飛んでいくのを目撃したのだった。

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    がたがた橋

    がたがた橋(がたがたばし)は、飛騨小坂(今の岐阜県下呂市)にあったといわれる橋にまつわる伝説。
    小坂の金右衛門という者の家の前に小さな板橋があり、峠を越えて隣村へ行くためにさかんに利用されていた。
    ある夜。金右衛門が家にいると、ガタガタと橋をわたる大きな音が聞こえ、ひそひそと人の声が聞こえた。
    こんな夜に峠越えは危険だと思って外を見ると、人影はまったく見えない。
    こうした不思議なことが毎晩続き、やがて雨の夜には橋をわたる音に混じって、悲しそうな泣き声が聞こえるようになった。
    気味悪く思った金右衛門が占い師に占ってもらったところ、彼の家の前は隣村を越えて越中立山まで続いており、
    立山にはさまざまな地獄があるので、地獄へ墜ちる亡者たちが橋を通っているとのことだった。
    これを聞いた金右衛門は、家の者たちとともに橋から離れた場所へ引っ越すとともに、亡者たちを供養し、橋のそばには経塚を立てた。
    以来、これまでのような怪異はなくなったという。

    ーーーーー

    がたがた橋オリジナルストーリー

    江戸時代の飛騨のとある町の隅に銀左衛門という者の家があり、その家の前に木造の橋があった。
    この橋はけっして大きな橋ではなかったがこの橋を渡り峠を越えて隣町に行くため昼間は結構な往来があった。
    しかしそれだけではなく、時折夜中にガタガタと音を立てヒソヒソと話し声が聞こえこの橋を大勢の者が渡っていくような音がすることがあった。
    銀左衛門は少し不気味に感じたが、こんな夜中に峠越えは危険だと声を掛けようとしたが戸を開けると誰もおらず、外はシ~ンとしていた。
    そんなことが時々あった。

    話は変わるが、この銀左衛門には気は優しいが勝ち気で喧嘩っ早い鉄太郎という息子がいた。
    この日もこの鉄太郎が仲間何人かと隣村の悪ガキどもと喧嘩をし夕方森の横の道を抜けて自宅に帰る所だった。

    鉄太郎:
    お前たち気を付けて帰れよ~。...隣村の奴らえらそうなこと言ってたくせに大したことなかったな。

    そんなことを言いながら歩いていると道の横の藪からガサガサと物音が聞こえた。鉄太郎は藪の中を覗いてみた。

    鉄太郎:
    おぉ、キツネじゃないか、どうした?あぁ、罠にハマってしまったのか!うゎ痛そうだな。待っていろ助けてやるからな。

    そう言うと鉄太郎はキツネの脚にがっちりとハマっている罠を外してやった。

    鉄太郎:
    おい、大丈夫か?無理するなオレの家に来れば手当してやるぞ。一緒についてこいよ。

    しかし助けたキツネはお礼のように頭を何度か下げると森の中に消えていった...。

    それから三か月経った頃のことだった。鉄太郎は仲間二人と隣村に行った帰り道、以前喧嘩をした悪ガキたち大勢に不意打ちされ追い回された。
    暗くなり始めた頃何とか逃げ切り、仲間と別れ自宅近くまで帰ってきた時のことだった。

    鉄太郎:
    くそ~あいつら卑怯な奴らだ俺達三人に大勢で仕返ししてきやがって。こんなに傷だらけで、痛て~もしかすると左手折れてるかもしれねえ…。

    (ガタガタガタガタ...) ん、何の音だ?なんなんだこんな夜更けに何がやってくるんだ?
    鉄太郎が前を見ると大勢の者たちが通りをこっちに向かってやって来ていた。そして恐ろしさで硬直している鉄太郎を囲んだ。
    三日月の光に照らされたその者たちは手が無い者、足が無い者、首の無い者、身体に穴が開いている者、つまりこの世のモノではなかった。

    亡者:
    おぉ~お前は新入りか?さあ一緒に行くぞ...。

    そう言うとこの世ならざるモノの一人が鉄太郎の着物の襟をつかむと引きずって連れて行こうとした。
    鉄太郎はやっとのことで襟をつかむ手をはねのけると必死で後ずさりした。

    亡者:
    おいおい、いまさらおじけづいたのか?そんなこといってもお前もあの世に連れていかないと人数が合わないんだ、あきらめるんだな。

    そう言うと亡者はまた鉄太郎を捕まえようとして、ほとんど骨になっている右手を伸ばしてきた...。

    女:
    待ちなさい。そいつは今回のあの世に連れていく名簿に載っている人じゃないわよ!あたしが最後の一人よ、さあ連れて行っておくれ。

    そう言うと見知らぬ女は鉄太郎に伸ばした亡者の手をはねのけた。そして鉄太郎に向かってニコリと笑った。そして鉄太郎の耳元でつぶやいた。

    女:
    この前は本当にありがとう罠から助けてもらったから幼い子供たちのもとに帰れたわ。あれから三か月経って子供たちも大きくなれたわ。
    それに、あの時の傷が元で病になりもうあたしの命は限界なの、だからなにも気にしないで、、、、本当にありがとう。

    そういうと女はこの世ならざるモノ、亡者の行列に加わり橋を渡って行った。
    亡者の行進で橋はガタガタと鳴っていた。そして橋の向こう側の闇に消えていったのだった。

    鉄太郎:
    お、お前はあの時の罠にハマっていたキツネなのか?オレへの恩返しに人間に化けて助けてくれたのか?ありがとう、ありがとう...。

    亡者のたちがいなくなったあとの橋の上には冷たくなったキツネが倒れていた。鉄太郎は橋の手前で痛みをこらえ闇に向かって両手を合わせた。

    次の日鉄太郎は橋の横にキツネ葬り墓を建てた、そして父の銀左衛門に昨晩のことをすべて話した。
    後日、銀左衛門が橋の横に供養塔を建てるとそれからはこの橋がガタガタと鳴ることは無くなったという。

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    逢魔時

    逢魔時(おうまがとき)、大禍時(おおまがとき)は、夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻。黄昏どき。
    読んで字の如く、逢魔時は「何やら妖怪、幽霊など怪しいものに出会いそうな時間」。
    逢魔時の風情を描いたものとして、鳥山石燕の「今昔画図続百鬼」があり、夕暮れ時に実体化しようとしている魑魅魍魎を表している。
    昔から他界と現実を繋ぐ時間の境目と伝えられている。この時刻に魔物や妖怪がうごめき始めて災いが起きると伝えられていた。

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    逢魔時オリジナルストーリー

    ここは鎌倉のとある街の古本屋。孝行はいつもここでネットなどには出ていない本をながめるのが週末の日課だった。
    この本屋を受け継いで30年の本屋の主人も孝行をあたたかく迎えてくれた。

    店主:
    いらっしゃい。おや、今日は早いね。

    孝行:
    ええ、今週の仕事が少し早く終わったんでうちの会社フレックスだし、今日は早めに上がったんです。
    おやっさん、今週何かいい本入りました?

    店主:
    ああ、そうそう。伊藤君が好きそうな本が入ったんだよ。これなんだけど、見てみるかい?

    孝行:
    へ~...明治の頃のこの鎌倉を舞台にした不思議な話を集めた本なんですね。ちょっと読ませてください。

    孝行は手に取った本のあまりの面白さに時間が経つのを忘れて夢中に読みふけってしまった。
    ふと気づくと、日がかなり傾いていた。

    孝行:
    いけない!すいません、おやっさんこれ面白いから買います。いくらですか?

    店主:
    そうだね、けっこう立派な本なんだけど装丁が傷んでいるからな~。そうだな2,500円でどうだい?

    孝行:
    OKです、買います。この本めっちゃ面白い。おやっさんまた面白いのあったら取っておいてください。

    店主:
    ありがとうよ。うん、また探しておくよ。気をつけて帰りなよ。

    店を出るともう日が沈みかかっており、辺りは暗くなり始めていた。
    買った本が気になってしょうがない孝行は店主が入れてくれた紙袋から本を取り出すと歩きながらペラペラと少しページをめくった。
    いよいよ暗くなってきて本の文字も読みづらくなったので本を閉じた。

    ふと前を見た孝行は立ち止った。いつのも本屋からの帰り道、本を見ながらといっても迷うはずがない。
    なのに今立っているこの道はまったく見覚えがなかった。それどころか街並みはとうてい今の時代のものではなかった。
    建物は木造やレンガ造りのものがほとんどで、店に吊るされた看板も木やブリキでできており、文字は今とは逆の右から左に書かれていた。

    孝行:
    なんだここは!いつの間にかどこか映画の撮影セットにでも間違って入ったのか?

    その時声をかけられた。相手は警官だと思われるかっこをしていた。

    警官:
    おいそこのお前、待ちなさい。お前はどこから来たんだ?変なかっこをしているな。

    孝行の格好はスニーカーにジーンズ、そしてなんといってもスマートフォンは絶対にこの時代に不釣り合いなものだった。
    孝行は警官にいろいろといいわけをして、なんとか逃げ出した。

    孝行:
    まてよ、この街はさっき買った本の中と同じじゃないか?だとしたら、この情景はまさか...?

    さっきの本では主人公が道に迷っていると街の暗闇の中からこの世のものと思えないあやかしたちが出てきて主人公を追いかけて来たのだった。
    そして今、孝行の目の前の大きな洋館の塀の角の暗闇から何かがうごめいているのが見えた。

    孝行:
    えぇ、どうしたらいいんだ!そうだ本の主人公はどうやって逃げたんだ。

    また本を広げ同じ状況になっていた主人公の部分を調べた。主人公はあやかしに追われ近くの川の橋から飛び降りて助かったのだった。
    孝行も同じように橋を見つけると飛び降りた!

    気がつくといつもの本屋の帰りに通る川の横の草むらに倒れていたのだった。

    孝行:
    もしかしてオレは夢を見ていたのか?現代に戻ってきている。まるでキツネにつままれたみたいだ。

    孝行はほっとして自宅のマンションに帰ってきた。そして自宅のドアを開けた。

    女:
    おかえり孝行。帰るって電話くれたのに遅かったわね。あ、またいつもの本屋さんに寄り道してきたのね?その袋見ればわかるわよ。

    子供:
    おかえりなさい、パパ。パパあしたお休みだよね?公園でサッカーやろう!

    女:
    どうしたの孝行?真っ青な顔して...。

    孝行はあわてて自分の家から飛び出した!そして走ってさっきの倒れていた草むらに戻って来た。

    孝行:
    どうなってるんだ!オレはまだ結婚してないぞ!あの女は誰だ!パパって、なんで子供までいるんだよ!

    孝行はスマートフォンの時間を見た。もちろん年月も。本屋を出てからまだ1時間ほどしか経っていなかった。

    孝行:
    もしかして...明治から戻った時に、元とは違う世界線に出ちまったのか?どうしたら、どうしたら元の世界に戻れるんだ!

    そう言って頭を抱えた孝行の影は地面に2つあり、空には2つの月が浮かんでいた。

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    沼御前

    沼御前は福島県の沼沢湖・沼沢沼の主とされる大蛇。約6mもの毛髪を持つとされる乙姫のような女や大入道などに化けるとされる。
    狂暴な一面を持ち、人間に害を為して討伐されたという話もあれば、
    実は生きていて、人間の少女を誘拐したが直接殺さなかったなどの話もある。
    また、討伐された後にも機織りをする女に化けたともされる。
    討伐された大蛇の祟りを鎮めるため、人々は神社を建てて大蛇を祀ったという沼御前神社も存在する。

    ーーーーー

    沼御前オリジナルストーリー

    楓は暗い沼の底に居た。光さえわずかしか届かない暗闇の中に。

    楓:
    私ってなんでいつもこんなになっちゃうんだろう。心にも思ってもないのに優美にあんなことを言っちゃって。
    本当に私って可愛くない大っ嫌い...。もう消えちゃえばいいのに...。

    高校からの帰り道、楓は不思議な着物の女の人に会った。
    その女は楓の両親が先月離婚したこと、今週小学校からずっと続けインターハイも期待されていた陸上で足に怪我をして完治はしないと言われたこと
    そして楓のことを心配してくれた親友に「私の気持ちなんて何も解らないくせに、知った風なこと言わないでよ!」と喧嘩したこと
    初めて会う人なのにすべてを知っていた。そしてそれらの苦しみから逃れられる方法を教えてくれたのだった。

    女は沼御前というこの世のモノではなかった。沼御前は楓を沈めた足元の水たまりを覗き込みながら冷ややかに笑っていた。
    そこに楓の同級生、了がやって来た。了は優美から話を聞き学校から飛び出し楓を追いかけて来たのだった。了は着物の女と目が合った。

    了:
    すいません。ここに松葉杖の女の子が来ませんでしたか?

    女はニヤリと笑いを浮かべて答えた。

    女:
    あぁ、来たよ。お前はあの娘の彼氏かい?

    了:
    ...いえ、...ただの幼なじみです。それよりも彼女は、楓はどこにいるんですか?

    女はもう一度冷ややかな笑みを浮かべると、目の前のアスファルトの道の真ん中の水たまりを指さした。

    了:
    え、どういうことですか?この水たまりの中にいるって言うんですか?

    女:
    そうさ、あの娘はもうどうにでもなれと、自分で自分を見捨てたのさ。だからあたしがもう誰にも会わなくて済む所に連れて行ってあげたのさ。

    了:
    そ、そんな...。まだ楓に会うことは出来ますか?もし出来るのなら俺を会わせてください!

    女:
    フフフフ、たぶんまだ会えるよ。あの娘は心の闇にゆっくり落ち込んでいる途中さ。
    お前の会いたいという思いの強さ勝れば、きっとあの娘に追いつくかもしれないね。

    了:
    やります、どうすればいいですか?どうしても楓にもう一度会って伝えたいことがあるんです。

    女:
    へえ~、それなら目をつむりその水たまりの前に座れ。あたしがお前の背中を押せばこの沼の中に入れる。
    そうしたらこの底なしの沼の何処かにいるあの娘を探すんだね。
    この沼の中ではあの娘への思いと、この世界に戻るという気持ちがお前の中の空気だと思いな。
    もしお前の息が持たなければ、あの娘もお前も戻ってはこられない。それでもいいんだね?

    了は首をたてに振って目を閉じた。女は了の背中をドンと押し水たまりに落とした。すると了はとても深さなどありそうに無い水たまりの水の中に落ち込んで消えていった。

    了は目を開けると暗い水の中に浮かんでいた。まるで夜の大きな沼の中にでもいるような音の無い水の中に漂っていた。

    了:
    いけない!俺は水の中なんだ、息がつづく間に楓を探さないと!

    了は辺りには目もくれず真下に向かって潜っていった。

    了:
    ぜんぜん何も見えてこない、どこにいるんだ楓!楓を見つけるまで俺の息がそれまで持つだろうか?

    了はどんどんどんどん真っ暗な沼の底に向かって潜っていった。

    了:
    楓、幼なじみの俺は小さい頃からずっと楓を見てきた。高校も同じクラスだからこの数ヶ月の楓の心の傷も見てきたつもりだ。
    でも、楓お前は一人じゃない!楓どこにいるんだよ!

    了が見つめた先がわずかに光った気がした。いた、そこに楓がいた。わずかに見えた光は楓のSOSだったのかもしれない。

    了:
    楓!

    楓:
    了!!どうして、どうしてここにいるの?

    了:
    楓、迎えに来たんだよ!俺と帰ろう!

    楓:
    了、私は帰らない。私には何も残ってないし、帰る場所もないのよ...。

    了:
    そんなことはない、みんな楓を待ってるんだ!さあ戻ろう!

    楓:
    嘘よ、誰も私を必要としない、消えたって誰も困らないもの!

    了:
    バカ!勝手に決めるな!俺には楓が必要なんだ、楓のいない世界なんて俺にはいらない!!

    そう言うと了は楓に口づけをし、空気を、地上に戻る勇気を分け与えた。

    水たまりの横にびしょ濡れの了、そして楓が座り込み荒い呼吸をしていた。

    女:
    まさか2人で戻ってくるとはね。たいしたもんだよ初めてさ。今までの奴らはあきらめて1人で戻ってくるか、2人共沈んだまま戻ってこなかったりさ。
    お前、了って言ったかい?その娘を大切に守ってやんなよ。けっして手を離すんじゃないよ。
    あたしも...昔、城が焼け落ちて沼に身を投げた時、たとえ助からなかったとしても、あたしのために沼に入ってくれる人がいたら、
    こんな「沼御前」なんて言われるバケモノにならずにすんだのかもしれないね...。

    そう言うと了と楓の前から着物の女は霧のように消えていった。後に残ったのは一番星が映ったきれいな水たまりだけだった。

    =========================

    鍛冶婆(かじがばば)

    鍛冶婆(かじがばば)は、高知県室戸市に伝わる説話。
    夜になる頃飛脚が峠を歩いていると狼が襲って来たが、木の上へ逃げることができた。
    狼たちは木の上へは爪が届かないので、梯子状に肩車を組んで木の上へ襲いかかろうとし、飛脚は脇差で必死に応戦した。
    その内にオオカミたちは「佐喜浜の鍛冶婆を呼べ」と言い出した。
    しばらくすると、白い毛に覆われた一際大きいオオカミが鍋をかぶった姿で現れ、飛脚に襲い掛かった。
    飛脚は渾身の力で脇差しを振り下ろすと、鍋が割れると共に人の叫びのような声が響き、オオカミたちは一斉に姿を消した。
    夜が明けたので、飛脚は血痕を辿って佐喜浜の鍛冶屋へ辿り着いた。
    お宅に婆はいないかと尋ねると、頭に傷を負って寝込んでいるということだった。
    飛脚は屋内に入り込み、中で寝ていた婆を斬り倒した。
    婆の姿をしていたのはあの白い毛のオオカミであり、床下には本物の婆の骨が転がっていたという。

    ーーーーー

    鍛冶婆オリジナルストーリー

    ここは高知の峠、そろそろ暗くなってきた山道を飛脚が急ぎ足で歩いていた。

    飛脚:
    くそ~昼に食べた茶屋の団子、みたらし団子だがら糸を引くと思っていたがありゃ傷んでたんだな。
    おかげで腹が痛くてずっと用を足しててすっかり遅くいなっちまった。なんとか腹が痛いのは治まったがもう真っ暗だ。
    この辺は猪やら熊やらが出るって評判の峠、早くふもとの村まで降りねえと。

    飛脚はそんなことをブツブツ言いながら急いで歩いていると、前の森の暗闇から何やらうなり声が聞こえてきた。
    そして立ち止りその暗闇を目を凝らして見ると、暗闇の中に月に照らされた目が何十個と光っていた。
    飛脚が身の危険を感じ慌てて反対方向に走り出すと、後ろから叫び声を上げ何十匹という狼たちが追いかけて来た!
    脚が自慢の飛脚であったが流石に狼にはかなわない、あっという間に追いつかれ飛脚に飛び掛かってきた!
    飛脚は懐から護身用の脇差を抜くとめちゃくちゃに振り回した。するとタイミングよく飛び掛かった狼に当たり、狼たちは少し後ずさんだ。
    飛脚は今がチャンスと松の木に飛び乗りどんどん上に登って行った。

    飛脚:
    ハアハアハアハア。流石に狼たちもここまでは登ってこれまい!どうにか助かったか。

    しかし、狼たちはあきらめなかった。群れのリーダーと思われる狼が他の狼に指示して梯子になるように狼が狼を肩車し始めたのだ!

    リーダー:
    おい、お前。お前はデカくて鈍いんだから下の土台になれ、はい次はお前、お前は背中が広いからその上に乗れ、そして次はお前だ...。

    というようにどんどんどんどん狼の肩車は高くなってゆき、そのままもう少しで飛脚に届きそうになった。

    リーダー:
    ハハハハ。覚悟しろ人間、いまに喰ってやるからな。ハハハハハ。

    狼の肩車の梯子が飛脚に届きそうになった時、飛脚が一番上の狼の頭を蹴った。  
    あ~れ~~。

    リーダー:
    あ、梯子が倒れた。
    バタン!   
    くそ~生意気な人間だ、おとなしく喰われろよ!
    よし、分かった今度は簡単に崩れないようにピラミッドを作るぞ!

    またまた群れのリーダーの指示で狼たちは重なり合い組体操のようにピラミッドを作り始めた。
    そしていよいよもう少しで飛脚というところでリーダーの狼がピラミッドを登って来た。

    リーダー:
    さあさあ覚悟しろよ!ハハハハハ。は?ありゃ届かない、もうちょっとなのにオレの前足では届かない、あと1匹か...。
    しかたないこうなったら親分を呼ぼう、誰かふもとの村の「鍛冶婆」を呼んで来い!急いでだ!!

    土台の狼:
    おう、わかった。

    土台に居たドンくさい狼がそう言って立ち上がって抜けてふもとに向けて走り出した。土台を失ったピラミッドは見事に崩れ落ちた!
    バタン!

    リーダー:
    馬鹿野郎!なんで土台のヤツが抜けるんだよ!あ~痛てぇ。
    しかたねえ、あいつが親分連れて戻るまで木の幹の所でマイムマイムでも踊って待つぞ。

    狼たちは飛脚を襲うには数が足りないので松の木のまわりを楽しそうにマイムマイムを踊っていた。飛脚も怖いのを忘れ見物していた。

    鍛冶婆:
    待たせたなおめ~ら!アタイが来たからにはもう大丈夫よ、さっさと登ってあの木の上の飛脚を引きずり降ろしてやるよ!

    その声に松の木の下を見ると他の狼よりも2周りは大きいなぜか女の着物をきた顔の真っ白な狼が舌なめずりをして上を見上げていた。

    リーダー:
    さすがは鍛冶婆の親分!でも親分気を付けてくだせえ、あいつ刀をブンブン振り回すんですそれが怖くてうかつには手を出せねえんです。

    鍛冶婆:
    ハハハハ、アタイをお前らと一緒にするな。ちゃんと鉄鍋を持ってきたこれをかぶれば刀なんか怖くねえのさ!

    リーダー:
    はぁ~御見それしました親分!  ん?...親分、その鍋底に穴が空いてねえですか?

    鍛冶婆:
    バカ、こんなに暗いんだ言わなきゃ分からないだろう。「穴が空いてる」なんてでかい声で言わなきゃ大丈夫さ。

    そう言うとリーダーが号令をかけて作った狼のピラミッドを鍛冶婆と呼ばれた狼が登って来た。飛脚も風前の灯か!!
    しかし、飛脚は平然としていた、なぜなら鍛冶婆が登ってくるとき狼たちが口々に「鍋底の穴に気をつけて」と言っていたのだ。
    そしてピラミッドのてっぺんに登った鍛冶婆が鍋をかぶり飛脚を捕まえようとすると、飛脚は鍋底の穴を狙いすまして脇差で突いた!

    鍛冶婆:
    な、なぜばれた~~!!飛脚め~!!

    そう叫びながら鍛冶婆は下に落ちていった。頭に傷を負った鍛冶婆は仲間の狼たちに支えられながら森の暗闇に消えていった。

    朝が来た。やっと松の木から降りた飛脚は昨晩聞いた「ふもとの村の鍛冶婆」を探して正体を暴いてやる!と峠からふもとの村に降りて行った。
    飛脚が村に来て村人に聞いて回ると、鍛冶屋は1軒しかなく村の入口のすぐ横にあると教えてくれた。飛脚は脇差を握りしめその鍛冶屋に向かった。

    鍛冶屋主人:
    え、夜中に誰か帰ってこなかっただって?あぁ、昨日の晩ならうちの婆さんが夜道で転んだとか言って額から血を流して帰って来たわい。

    それを聞くとその婆さんの部屋を教えてもらい脇差を抜いて踏み込んだ!すると寝ていた婆さんは飛脚を返り討ちにしようと立ち上がった!
    しかし、頭に深手を負った鍛冶婆は立ち眩みをして落ちていた金づちに足を取られ、脇差を構えた飛脚に倒れ込んだ!
    胸に脇差が刺さった鍛冶婆はさっきまでの人間の顔からすっかり白い狼の顔に変わっていた。

    鍛冶屋主人:
    え、え~~!ば、婆さんは狼だったのか!子供も5人、孫も10人おるのにまったく気づかなかった~~!!

    飛脚:
    いやいやいやいや、それは無いです。おそらくこの畳の下あたりに...。

    飛脚が言った通り婆さんの寝ていた部屋の畳を返すと土の中から本物の婆さんの骨と思われるものが出てきた。
    飛脚と鍛冶屋の家族は婆さんの骨を全て掘り出し手厚く弔った。

    鍛冶屋主人:
    婆さん、すまん今まで気づいてやれず。どうかこれからは安らかに眠っておくれ。

    飛脚:
    爺さん、婆さんの墓はこっち。そっちは狼の墓だって...。

    ===========================

    辻神

    辻神(つじがみ)は、辻つまり道が交差した場所にいるとされる魔物、妖怪の総称。
    古より辻は現世と来世との境界となっているという説があり、そのような場所に棲みつきやすいといわれる魔物が辻神である。
    名称は「神」だが、いわゆる信仰対象の神ではなく、災いをもたらす悪神というべき存在である。
    南九州から南島にかけての地域では、異界より現れるとされる辻神を防ぐため、辻、特に丁字路に石敢當(せきかんとう)
    と呼ばれる魔除けの石を路傍に供える風習がある。

    ーーーーー

    辻神オリジナルストーリー

    上限の月が平安京の街並みを照らしている。ここは陰陽師・安部暗明の屋敷、二人の男が少し色付き始めた庭のかえでを見つめていた。

    春雅:
    もうすぐ山々も赤や黄色に染まっていくのだな。暗明よ、どうして木々は秋になるとこんなにも色を変え我々の心をとらえて離さないのだ。

    夕刻よりこの屋敷に来ていた笛の名手・源春雅はすのこの上に座して暗明と酒を飲んでいる。

    暗明:
    春雅よ、本当にお前はよい男だな。木々の紅葉にもそれほどに心の情を震わせるとは。
    しかし、春雅。あれはな、気温と日照に合わせ木々が冬を越せるよう力を蓄えているのだ。人はそれを勝手に感動しているのさ。

    春雅:
    そうなのか?何かものの哀れが少し冷めてしまうな。......でも、来春に芽吹くためと考えればそれも愛おしいものなのかもな...。

    暗明:
    やはり春雅はよい男だ。ハハハハハ。

    春雅:
    暗明、またお前はそうやって俺をからかう!やめだ、やめだ。
    ところで暗明、平並盛殿の屋敷に起こっている怪異について聞いておるか?

    暗明:
    あぁ、実はそのことで今夜並盛殿の使いが迎えに来ることになっているのだ。

    話はこうである平安京一条大路にある平並盛の屋敷でのこと、家の者が夜中にうなされて目を覚まし水を飲もうと起きると
    庭に人の背丈もありそうな大蛇がとぐろを巻いており、悲鳴を上げ倒れ寝込んでしまった。
    また別の日には真夜中に牛車で帰ってきた並盛の息子が屋敷の門をくぐると目の前に牛なみの大きさのガマ蛙おりが息子をべろりとなめ、
    息子は倒れて高熱を出しその晩から床に伏している。といった様にこのところ毎晩のように怪異が起こっているというのである。
    暗明の式神だと思われる家の者が平並盛の使いが来たことを告げた。

    春雅:
    暗明、今回の件は一筋縄ではいかなさそうだが大丈夫なのか?

    暗明:
    春雅、心配してくれるのか?ありがとう。でも大丈夫だ、だてにご先祖の「陰陽師」の本読みこんではいないさ。
    それに心配してくれるなら春雅も一緒にゆこう。

    春雅:
    俺も一緒に行っていいのか?

    暗明:
    あぁ、お前がついて来てくれるなら私も泥船に...いや違った大船に乗った心持でいられる。ゆこう。

    春雅:
    ん、なんか馬鹿にされた気もするが、まあいい。ゆこう。

    そういうことになった。

    暗明たちが牛車に揺られ平並盛の屋敷に着いたの頃には月は雲に隠れがちになっていた。暗明は牛車から降りると屋敷の門の前にしゃがみ込み地面を見ている。

    春雅:
    どうした暗明、並盛殿の屋敷はこの門の中だぞ。それとも何かあるのか?

    暗明:
    あぁ、実は昼間少し調べたのだが並盛殿がここに屋敷を構える前、ここは南北と東西のを通る「辻」であったのだ。
    もともと辻はいろいろなモノが交差するため「辻神」が出やすいとされる。
    見てみればこの屋敷の門の横にその「辻神」を防ぐ「石敢當(せきかんとう)」があったようだが割られているようだ。
    そしてこの門の前の所...すまないが誰かこの場所の地面を掘ってはくれないか。

    暗明の指示した所を並盛の使用人が掘ってみると、土の中から布で封をした大きな壺が出てきた。そしてその壺を覆った布には縦横に九本の線が引かれていた。

    春雅:
    暗明、何か出て来たぞ!それにこの布に描かれている模様はなんだ?猫か何かのひっかき傷みたいだな。

    暗明:
    これは「ドーマン印」陰陽道の九字の呪法を表したモノだ。そしてきっとこの壺は「蟲毒」の呪術を行ったものであろう。

    春雅:
    「蟲毒」とはなんだ?

    暗明:
    唐(から)の国から伝わった呪術で大きな壺の中に蛇や蛙、ムカデなどの毒虫を入れて互いに喰わせ合い勝ち残ったモノを憑代に呪術をかける禁忌の法だ。
    きっとこの「蟲毒」を使い眠っていた辻神を起こし並盛殿の家の者に災いを起こしたのであろう。
    そしてこの呪術を得意とし、「ドーマン印」を使う陰陽法師といえば...。

    暗明と春雅が気づくと並盛の使用人達は何かの術にかけられたのか倒れ眠っていた。
    そして、暗闇の中からボロボロ着物を着た髪も髭をボウボウと生やした法師姿の男が現れた。

    暗明:
    やはりあなたでしたか、蘆屋役満殿。

    役満:
    フフフフフ。ワシの仕事の邪魔をするならお前だと思ったがやはりその通りだったな、暗明。

    暗明:
    なにを言われますか。今回の件は必ず私がつきとめると分かるように仕掛けたとしか思えない。なぜですか?

    役満:
    フフフフフ。
    今回の件誰に依頼されての呪いなのかが分かれば、平並盛もその依頼主に仕返しの呪いをかけるように頼んでくるであろう。
    そして別の所でも同じような事が繰り返されるのだ。それがこの平安京、それが人の性といったものよ。ハハハハハ。
    ワシの先祖はその昔時の権力者に呪いをかけ、それがばれてしまい島流しにされた。
    ワシはそんな二の舞は踏まんが、この都にわが一族は恨みがあるのでな...少しは仕返しをしてやろうかとな...。

    暗明:
    役満殿、まさかあなたは貴族たちを毒虫に見立て、この平安京という壺を使って、かつてないほどの「蟲毒」をやろうとしているのですか?

    役満:
    さすが暗明じゃ察しがいい。かつてないほどの呪術がかかった世界じゃ、面白かろう?
    それに、お前ほどの者ならそんな呪術でもなんなく切り抜け生きていけるじゃろう?

    暗明:
    はい、しかしそのために多くの者たちが苦しみを味わい死んでいくでしょう。
    かつての私であればそんなことも気にもせず遠くから眺めていたことでしょう。
    しかし、今は人も捨てたものではないと教えてくれた者もあり、この都を守って行きたいと思っております。

    役満:
    ほほ~、お前も変わったな。それならばどうする暗明?ワシと闘うか?......

    ハハハハハ。やめだ、やめだ!
    ワシはお前の先祖と争ったワシの先祖の様にお前と闘おうとは思わん。逆にワシはお前が気に入っておる。
    ワシは名前とは逆に賭け事、争い事は嫌いなんじゃ。お前にかなわないと思えばとっとと止めるさ。
    それではまたどこかで会おう暗明、そして源春雅殿。

    そう言うとボロボロの法師は暗闇に消えていった。

    春雅:
    あまりに二人のすごみに押されて俺は何も言えなかった。暗明、これで今回の件は済んだのか?

    暗明:
    あぁ、並盛殿の屋敷の件は大丈夫だろう。しかし...。

    春雅:
    しかし?さっきの蘆屋役満殿が言ったように他の屋敷でも何か起こるのか?でも役満殿はやめたと言っていたぞ!

    暗明:
    あぁ、言っていた。しかしあの御仁はどこまでが本当で、どこからが偽りなのか分からんからな...
    春雅のように何事にも真っ直ぐで正直な者は貴重なのだ......ん?春雅?何をしているのだ?

    春雅:
    いやこの埋まっていた壺の中に何が残っているのかと思ってな。暗明は何だと思う?

    暗明:
    や、やめろ春雅!私は蛇が苦手なのだ。絶対に開けるなよ春雅!絶対にだぞ!

    秋の山々が色づき始めた平安京に暗明の悲鳴と春雅の笑い声が響いていた。

    ============================

    アマビエ

    肥後国(現・熊本県)の夜ごとに海に光り物が起こったため、土地の役人がおもむいたところ、アマビエと名乗るものが出現し、
    役人に対して「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作がつづく。
    しかし同時に疫病が流行するから、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ。」
    と予言めいたことを告げ、海の中へと帰って行ったとされる。
    また、予言をするだけで、疫病の流行を鎮めるかどうかは定かではない。

    ーーーーー

    アマビエ オリジナルストーリー

    ここは九州のとある海岸、この辺りに住む者たちの間でこのところ岬のすぐ近くの洞窟が毎晩光り輝いていると噂になっていた。
    近くの浜辺で年を取った漁師と若い漁師が洞窟の方を見つめ話している。

    老漁師:
    最近毎晩毎晩、洞窟の中が光っておるがどうなっておるのじゃろうのう。

    若漁師:
    おやっさん、俺も気になってしょうがねえんだ。今夜こそあれが何なのか突き止めてやろうと思うんだ。

    老漁師:
    やめておけ、ああいったモノは何か悪い予兆だ。化け物でもいたら食われてしまうぞ。

    若漁師:
    大丈夫だ、俺のモリの腕は知っているだろう。悪い化け物だったら俺が仕留めてやるさ!

    そう言うと若い漁師はモリを握りしめ洞窟の方に歩き出した。洞窟に近づくほど光がどんどん強くなっていった。
    漁師はいよいよモリを握る手に力を込め洞窟を覗き込んだ!

    若漁師:
    な、な、何ということだ!これは小さい頃よく昔話で聞いた「人魚」ってやつか!なんとも美しい...。

    漁師の目の前には身体から神秘の光を放っている髪と目の青い絶世の美女がいた。その美女の下半身は魚でありそのウロコも七色に輝いていた。

    人魚?:
    おぉ、この村の者か?よく来た。心配するなお前が怖がるようなことはしない。ところでお前は絵が描けるか?

    若漁師:
    え、俺は漁師だ。絵なんて描いたことがねえよ。

    人魚?:
    そうか、では誰か絵の描ける者を五日後の晩にここに連れて来ておくれ。伝えたいことがあるのじゃ。わたくしはアマンディーヌまた会いましょう。

    若漁師:
    え、五日後だな。わかった必ず連れて来るから、連れて来るから。絶対来てくれよ!

    そう言うと伝説の人魚の様な美女は海の中に消えていった。若い漁師は見とれてしばらくその場にボーっとしていた。

    次の日若い漁師の話が村中の話題になっていた。そしてその噂が離れた城下町まで伝わり、
    描いたネズミが動き出したと言われるほどのすごい腕前の絵描きの耳にもその噂が入った。
    そして四日目に漁村にその噂の絵描きが弟子を連れやってきた。村は有名な先生が来たと村を挙げて絵描きたちをもてなした。
    そして約束の五日目の日になった。町から来た絵描きは小声で弟子につぶやいた。

    絵描き:
    白斎、白斎よ。ワシは二日酔いで頭がぐらぐら回るし、昨日食べた貝に当たったようで厠から遠くにはいけない状態だ。
    そこでだ、いままでワシの元で10年修業したお前の腕前を見せる時じゃ!ワシの代わりに行ってその人魚を描いて来てくれ!

    白斎:
    え、え~~~~!先生、無理ですよ!10年先生の元で修業したのに全然上達していません。
    もう絵はあきらめようかと思い、今回の旅の後それを先生にお伝えしようと思っていたんですよ。

    絵描き:
    白斎よ、そうはいってもワシは行くのは無理じゃ。大丈夫だワシにいい案があるそうすればお前が描いても誰も文句は言わん。

    こうして弟子の白斎と村人たちは夕暮れに洞窟に向かて歩きはじめた。そして洞窟の近くに来た時白斎は村人たちを制してこう言った。

    白斎:
    皆さん、皆さんはここで待っていてください。人ならざるモノを描くのは神聖な儀式なのです。
    私一人であればそのモノも現れるでしょうが、大勢でおしかければ出て来てくれないでしょう。私の師匠も今ごろ、出て来てくれるように祈祷を行っています。

    こうして弟子の白斎は村人たちを説得しその場に残し、一人光る洞窟の中に入って行った。

    人魚?:
    おぉ、よくきた待っておりましたぞ。わたくしはアマンディーヌ、絵描きのあなたに大切なことを告げます。いいですか、よく聞くのですよ。
    今年から6年間この辺りは豊作と大漁がつづくであろう。しかし、これとは反対に疫病が流行ります。
    この疫病を鎮めるためには私を上手に描き沢山の人々に見せるのです。わかりましたか?さあ、描きなさい!

    こう言われて早速白斎は光る人魚の様なモノを描き始めた。しかし......想像どうり実物とは明かに違っていた。

    人魚?:
    どれ、どのくらい出来ましたか?...まあ、何これ!あまりにも似てないじゃないもっと本気で描きなさいよ!

    白斎は冷や汗をかきながら必死に書き直した。人魚の様なモノは怒って口をとがらせ、尾びれをバタバタさせている。そしてまた白斎の絵を覗き込んだ。

    人魚?:
    何よ、どういうこと?子供だってもっと上手に描くわよ!もういいわ、あたくしが現れる場所を間違えたのよ!それじゃあね。

    そう言うと人魚の様なモノは海の中に消えていった。白斎は怒られフラフラになりながら村人たちの前に戻ってきた。
    そして、さっき聞いた予言を村びとに伝え、描いた絵を皆に見せた。

    村人:
    本当にこんなモノだったのですか?噂ではかなり美人だったと聞いていたんだけどな~。そうだ、ソレの名前は何ていうのですか?

    白斎:
    え、名前?え~と、、、アマ、アマ、アマビエって言ってました。

    この後、実際にこの村周辺に疫病が流行してしまい大変なことになった。そしてこの時アマビエの絵を大量に印刷し人々に配ったことにより疫病は沈静化した。

    しかし、実はこのアマビエの絵を印刷し配った人物は沈静化させるために同時に行っていたことを明かした。

    印刷屋:
    いや~実は俺はヨーロッパで印刷技術を学んできたんだが、たまたまその時あった医者が祖父がかつて
    ペストって疫病を鎮めたことがあるんだって言ってたのを思い出して俺もまねてやってみたんだ。え、どうしたかって?
    フランスではぶどう酒で家や身の回りの物を消毒したらしいんだが、俺は代わりに強い焼酎を使って消毒したんだ。
    あの医者、お爺ちゃんはなんか不思議な人だったって。たしか名前はミシェル・ノストラダムスって言ってたな...。

    ==========================

    首かじり

    首かじりは日本の妖怪。餓死した老人が妖怪化したもので、
    生前の自分に食物を与えなかった人が死ぬと墓に現れ、その首を掘り出して食べるとされる。
    また、首のない状態で土葬されたものの怨念から生まれた妖怪とも言われる。
    秋の彼岸頃に出現し、墓を掘り起こして首のある死体をかじるとされる。

    ーーーーー

    首かじりオリジナルストーリー

    とても日差しが強い夏だった。ここは下野の国のとある村、若者二人が肝試しをしようと話しをしていた。

    幸太:
    ねえ、正助ほんとに行くのかいあの墓場に。ほんとうに行くなら今からにしようよ。

    正助:
    何言ってるんだ幸太。こんな真っ昼間に行ったらただの墓参りだろ。夜に行くから肝試しなんだ。
    なんだお前怖いのか?情けねえな~いい大人が。

    幸太:
    い、いや、俺怖いなんて言ってないだろう!ただ、あの墓場にはなんでも死んだ人間の頭を掘り返してかじる「首かじり」って
    化け物が出るって噂なんだぜ。もしそいつに襲われたらどうするんだよ?

    正助:
    幸太、お前バカだな~。俺もその噂は聞いているが誰も襲われたって話は聞いたことないぞ。
    つまりだ、生きた人間を襲えない弱い化け物だから墓を掘り返してるんだよ。
    そうだ、その化け物を俺たちで退治してやろうぜ!そうしたら村の頑固じじいたちも俺たちに一目置くようになるぜ。

    幸太:
    え~、化け物退治!そんなの無理だよ。俺たち侍みたいに刀を持ってる訳じゃないし、坊さんたちみたいに悪霊退散のお札ある訳でもないんだぜ。

    正助:
    大丈夫だよ、何とかなるさ。それじゃ、日が落ちて寺の鐘が鳴ったら墓場の前のでかい桜の木の下に集合だ。幸太逃げるなよ、必ず来いよ!

    こうしていちど二人は別れた一人は指をポキポキ鳴らし、一人は肩を落としトボトボと歩いて行った。

    そして日が沈み山のふもとの寺の鐘が鳴った。桜の木の下には大きなクワを持った正助と古びたほうきを持った幸太がやって来た。

    正助:
    幸太、お前そんなほうきで戦うのかよ?それじゃあっという間にやられちゃうぞ。ハハハハハ。

    幸太:
    えぇ~、だって俺が振り回せる物なんてほうきぐらいなんだよ。でも他にも数珠に線香に清めの塩、そうそう十字架ってのもあるよ。

    正助:
    そんなもの坊さんでもなきゃ効き目ねえよ。それに十字架ってどこで手に入れたんだよ?まあいい、行くぞ。

    そう言うと二人は墓場の奥にどんどん入って行った。すると墓の奥の所に人影のような者が月光に照らされ立っていた。
    その者は暗闇に両手で人の頭と思われるくらいのモノを持ち、それにかぶりついた口元からは赤い血をしたたらせた足の無い鬼のような顔の化け物だった。
    それを見るとさっきまで勇ましかった正助はガタガタ震えだし、クワを幸太に渡すと一目散に走って逃げて行った。
    後に残った幸太は腰が抜けて座り込んで逃げられなかったのだ。

    化け物:
    ん?誰か居るのか。ワシが怖いか?大丈夫じゃ取って食ったりせんよ、安心せい。
    お前の仲間は薄情じゃのう一人で逃げて行ってしまったな、かわいそうに。

    幸太:
    ほ、ほ、本当に俺を食べたりしない?だって今生首手に持ってるじゃないか!

    化け物:
    え、これ?ハハハハハ。よく見て見ろ、これはスイカじゃよ。ほら見てみい。

    幸太:
    え、本当だスイカだ。じゃあ口が赤いのはスイカの汁なのかい?

    化け物:
    おぉ~夢中になって食っておったので口元まで気がつかなんだ、お恥ずかし。
    先代の首かじりは本当に恨んでいた人が亡くなってその頭をかじって成仏したが、
    ワシはベジタリアンだから恨んでいた人のお供えのスイカだのおはぎだのを横取りするくらいしかできないのじゃよ。
    だからどうすれば成仏できるか分からんのじゃ。

    幸太:
    そうか、化け物は化け物なりに大変なんだね。

    化け物:
    それはそれとして、このスイカちょっと甘みが足りないな~。

    幸太:
    え、ちょっと待ってて、...そうそうコレコレ。この塩をかければ甘みが増すよ。ちょっとスイカ出して。フリフリと!

    化け物:
    おぉ~本当に甘く感じるぞ!それにこの塩いい塩だなもしかしてモンゴルの岩塩か?
    ん?か、体がおかしいぞ、なんか溶けていく感じだ。もしかしてワシは成仏できるのか?...青年よありがとう...。

    そう言うと首かじりはどんどん体が透けて行き、とうとう消えて無くなってしまった。

    幸太:
    首かじりさん、首かじりさん。もしかしてさっきかけた塩で清めらて成仏しちゃったのか?......まあ結果オーライだな。

    こうして幸太が墓場から出てくると、入り口で先に逃げてしまった正助が待っていた。そして幸太から一部始終を聞いたのだった。
    村に帰った二人は次の日墓場の出来事を話した。そしていままでだらしないと言われていた幸太は一躍村の英雄になったのだった。

    =========================

    夜道怪

    夜道怪(やどうかい)とは、埼玉県の秩父郡や比企郡などに伝わる怪異の一つ。
    何者かが子供を連れ去るといわれたもので、宿かい(やどかい)、ヤドウケともいう。
    子取りの名人のような妖怪として伝承されており、秩父では子供が行方不明になることを
    「夜道怪に捕らえられた」「隠れ座頭に連れて行かれた」という。
    民俗学者・柳田國男の著書においては、夜道怪の正体は妖怪などではなく人間であり、
    中世に諸国を修行して旅していた法師・高野聖のこととされている。

    ーーーーー

    夜道怪 オリジナルストーリー

    ここは江戸の両国のとある大名屋敷の屋根の上。今夜も悪徳大名の倉から小判を盗み出した泥棒が月に照らされる街並みを眺めていた。

    次郎吉:
    いや~一仕事終わった後に見るお月様は気持ちいいね!お、ちょうどこりゃ~浅草寺の鐘の音だな、いい音だ......ん?
    いや、違うこの鐘の音は昨日までの鐘の音と違っていやがる。ちょくら浅草寺に行ってみるか...。

    ねずみ小僧・次郎吉は千両箱を隠すとその足で浅草の浅草寺に飛んで行った。そして弁天堂の横の鐘突き堂にあっという間にやって来た。

    次郎吉:
    やっぱりな、見た目には昨日までの鐘と一緒だがオレは騙せねえぜ、わずかだが鐘の音の響きが違っていた。
    いったい誰が、何の目的で浅草寺の鐘を盗んでいったんだ。江戸の大事な時の鐘を盗むとは許せねえな。

    場所は変わり、ここは上野の不忍池にいつの間にか出来ていた不気味な塔の中、若い娘が牢屋に閉じ込められていた。

    弥生:
    お願いです、私を家に帰してください。どうしてただの町娘の私をこんな所に閉じ込めているのですか?

    夜道怪:
    フフフフフ。知らないとは言わせぬぞ、お前の家は代々蛇の目石を守る家柄。そしてお前はその家に生まれた千人に一人の霊力を持つ娘。
    お前の家が守って来た蛇の目石と草薙剣、そしてお前の血をささげればあの方が長き眠りより復活なさるのだ!
    入手不可能と思っていた草薙剣はやっと手に入れた。残るは...さあ言うのだ!蛇の目石はどこにあるのだ!
    捕らわれた娘・弥生を怪人・夜道怪が拷問しようとすると、にわかに外が騒がしくなったどうやら夜道怪の部下たちと何者かが暴れているらしい。

    夜道怪:
    え~い、何事だ?騒がしい!!

    夜道怪は部屋から出ていった。するとそれと入れ替わり天井裏から何者かがストンと降りてきた。

    次郎吉:
    どうやら表じゃ銭形平次のおっさんが外で大捕り物をしているらしいな。おかげでこっちは時間が稼げた。
    オレが盗まれた浅草寺の鐘がここにあると噂を振りまいたのを信じて来てくれたんだな。
    ところで...お前さんは誰だ?オレは浅草寺の鐘を追ってきたらここにたどり着いたんだ。
    浅草で一番古い金物屋の親父が言うには、かつて浅草寺の鐘は徳川家康が江戸城の北東の鬼門に
    かつて瀬戸内海で見つけた有名な剣を溶かして鐘を造り浅草寺に鬼門封じとして置きその鐘の音で魔よけにしたと言われているらしい。

    弥生:
    そういう訳だったのですね。わが家の言伝えに代々守ってきた蛇の目石と血を受け継いだもの、そして草薙剣が揃った時オロチが蘇るとあります。
    間違っていたらごめんなさい。泥棒さん、オロチを復活させないためにも私をここから出してもらえませんか?お願いします。

    次郎吉:
    間違っちゃいねえ、オレは泥棒さ。お前さんをここから助けてやりてえが、銭形のおっさんに見られたらお前さんまでオレの仲間だと思われちまう...。

    弥生:
    いいえ、私の家では私は蛇の目石を守るためだけに生きているような扱いでした。私ももっと人間らしく生きたいのです。
    お願いです泥棒さん、私も連れて行って。泥棒はまだできないけどきっと覚えます!だから...。

    次郎吉:
    バカ言うんじゃない!お前さんの人生はこれから始まるんだぜ。オレのように薄汚れちゃいけないんだよ。

    二人がそんなやり取りをしていると外で銭形平次と争っていた夜道怪が部屋に戻ってきた。

    夜道怪:
    誰だきさま!全国を探し回って200年、やっと手に入れた草薙剣と復活の巫女だ、誰にも渡さんぞ!!

    そこに銭形平次も夜道怪を追って部屋に飛び込んできた。

    銭形平次:
    鐘を盗んだ怪人め逃がさんぞ!おぉ~お前はねずみ小僧・次郎吉!ここで会ったが百年目お縄につけ!!

    次郎吉:
    銭形のおっさん、今はオレじゃなくあの変態じじいを捕まえろって!あのじじいただ者じゃねえぞ...。

    次郎吉と銭形がそんなやり取りをしていると夜道怪はかぶっていた笠を取り投げてきた。笠には刃が付いておりその刃が二人を襲った。
    二人はそれをかわすと銭形は得意の一文銭を夜道怪に投げつけた。夜道怪の額に当たりひるんだところに次郎吉が飛び掛かった!
    しかしそこは200年以上生きている怪人、次郎吉の刀を両手の長い爪で受け止めると目に止まらぬ速さで爪を動かし次郎吉に襲い掛かった!
    次郎吉危うし!そこに弥生が髪に刺してあったかんざしを夜道怪に投げつけた!
    かんざしからは黒い光が出て、その光が夜道怪に巻き付いた。そう、このかんざしの飾りこそが蛇の目石であった。
    動けなくなった夜道怪を次郎吉が蹴り飛ばすと塔の柱に当たって折れ塔のてっぺんから浅草寺の鐘が落ちてきた!

    夜道怪:
    あぁ~~!!

    弥生:
    きゃ~

    次郎吉:
    あぶない!!

    塔は大きく崩れ落ちた。

    次郎吉:
    大丈夫かい。鐘は銭形のおっさんが元に戻してくれるだろう。さあもうお前さんを縛るモノは何も無くなった、これからは自由の人生を歩むんだぜ。じゃあな!

    弥生:
    待ってねずみさん。私も連れてって...。

    銭形平次:
    おぉ~痛てててぇ。くそ~次郎吉め逃げやがったか。あ、、また奴はとんでもないモノを盗みやがった!

    弥生:
    いえ、ねずみさんは何も盗んでいません。

    銭形平次:
    いえ、盗んだのはあなたの心です。

    弥生:
    はい。

    銭形平次:
    待て~~ねずみ小僧!!

    次郎吉:
    待てって言われて待ってる泥棒はいね~よ~!

    二人は朝日に向かって走っていった。それを弥生はすがすがしい笑顔で見つめていたのだった。

    ========================

    ヤマタノオロチ

    ヤマタノオロチ(八岐大蛇、八俣遠呂智、八俣遠呂知)は、日本神話に登場する伝説の生物。
    高天原(たかまがはら)を追放された須佐之男命(スサノオノミコト)は、出雲国の肥河の上流に降り立った。
    川を上ると、美しい娘を間に老夫婦が泣いていた。娘は櫛名田比売(くしなだひめ)といった。
    夫婦の娘は8人いたが、年に一度、ヤマタノオロチという8つの頭と8本の尾を持った巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまう。
    今年もヤマタノオロチの来る時期が近付いたため、最後に残った末娘の櫛名田比売も食べられてしまうと泣いていた。
    須佐之男命は、櫛名田比売との結婚を条件にヤマタノオロチ退治を請け負った。
    まず、須佐之男命は神通力で櫛名田比売の形を変えて、歯の多い櫛にして自分の髪に挿した。
    そして老夫婦に、強い酒を造らせ、8つの門を作り、それぞれに酒を満たした酒桶を置くように命じた。
    準備をして待っているとヤマタノオロチがやって来て、8つの頭をそれぞれの酒桶に突っ込んで酒を飲み出した。
    ヤマタノオロチが酔って寝てしまうと、須佐之男命は十拳剣(とつかのつるぎ)で切り刻んだ。
    このとき、尾を切ると剣の刃が欠け、尾の中から大刀が出てきた。そしてこの大刀を天照大御神に献上した。
    これが三種の神器の一つ「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」またの名を「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」である。

    ーーーーー

    ヤマタノオロチ オリジナルストーリー

    平安時代の初めの富士山麓にある要石を祭る社。黒ずくめの集団が要石の前に集まり祭壇を築き、若い娘をその祭壇にのせると短剣でその胸を刺した!

    首領:
    オロチ様、どうか目を覚ましてください!今我々はクシナダヒメの子孫の娘の血をあなた様に捧げました。どうかオロチ様目を覚ましてくださいませ!

    祭壇から娘の血が要石に落ち、要石が砕け散った!そして要石がふさいでいた洞窟より漆黒の強大な何かが這い出てきた。

    首領:
    おぉ~、オロチ様!皆の者オロチ様、ヤマタノオロチ様が永い眠りから復活なさったぞー!!

    その声に黒ずくめの集団が歓喜の声を上げたが、洞窟から出てきた八つの首を持つ強大な魔物はためらうことなくその者たちを喰らい、切り裂き、踏みつけた!
    そしてそのまま社に突撃し、粉々に粉砕すると麓に下っていった。

    多聞天:
    天邪鬼よ、天邪鬼聞こえておるか?
    天邪鬼よ、我ら四天王はヤマタノオロチを封印する役目でこの地に奉納され、もう永い年月この地を守ってきた。
    しかし、今ヤマタノオロチは復活し我ら四天王は破壊されてしまった。無事に残ったのは天邪鬼、お前だけだ。
    今我ら四人の残った霊力をお前にそそぎお前を動けるようにした。頼む、この国を守るため仲間を集めヤマタノオロチを止めてくれ!

    四天王の多聞天(毘沙門天)は足元にいた天邪鬼に語りかけた。うずくまっていたおかげでヤマタノオロチの攻撃を免れた天邪鬼は立ち上がった。

    天邪鬼:
    毘沙門様、オレにそんな力はねえよ。四天王たちのように武器も神通力も持たないオレに何が出来るって言うんだい?

    天邪鬼は壊れた多聞天に話しかけたが、何も答えてくれなかった。しかたなく天邪鬼はヤマタノオロチが麓に下りるのになぎ倒していった木々の間を下りていった。

    しばらく麓に向けて歩いて行くと、少し高台の岩の上からヤマタノオロチの炎で燃え上がる森を見つめる異常に頭の大きな老人がいた。

    ぬらりひょん:
    ん、お前は天邪鬼か?天邪鬼は悪さをして毘沙門天殿に踏みつけられているはずじゃが?
    そうかヤマタノオロチを封じていた四天王も壊されたか。
    おぉ、お前からは微かだが毘沙門天殿の霊力を感じる。そうかヤマタノオロチを追うように頼まれたのか。

    天邪鬼:
    あんたは誰だ?なんでオレや毘沙門様のことを知っているんだ。まあいい、そんなことより爺さんオレはなにをしたらいいんだ?

    ぬらりひょん:
    爺さん?ワシはぬらりひょんという者じゃ。お前が進む道か...そうだなヤマタノオロチを止めるためには草薙剣は絶対に必要だ。
    まずは草薙剣を探し出すのじゃ。かなり困難な道になるかもしれんが、きっと剣にたどり着くまでにお前を助ける者に出会うであろう。
    ワシは共に戦ってくれる強い仲間を探して来る。お前とはヤマタノオロチとの決戦の地でまた会おうぞ。
    おい、天邪鬼待て。...天邪鬼は噓つきの代名詞となっているその名を名乗れば誰も信じてくれまい。
    ...そうだな天...。これからお前は「テン」と名乗るがよい。それでは決戦の地で必ずまた会おうぞテン!

    そう言うとぬらりひょんは闇の中に消えていった。天邪鬼、いやテンはヤマタノオロチ追って西に向かった。

    次の日、険しい山を上り長野の森の中でテンは全身黒い毛で覆われた人の背丈ほどのあやかしに出会った。

    さとり:
    待っていたぞ、お前が来ることは少し前から分かっておった。俺はさとり、人や動物の心を読むことのできる妖怪だ。
    実は最近少し未来に起こることも分かるようになってきたのだ。もしかすると、テンお前に出会うために現れた能力なのかもしれない。

    テン:
    どうしてオレの名前を知ってるんだ?それになぜここでオレに出会うって知ってたんだ?
    ...いやそんなことはどうでもいい、あんたが分かるんならオレが探しているモノの場所を教えてくれ!

    さとり:
    あぁ分かるとも、草薙剣であろう。ぬらりひょんにヤマタノオロチを倒すにはその剣が必要だと言われたのだな。
    草薙剣は京の都の辺りにあると伝え聞いておる。さあ、急ぎ西の都に向かうのだ!

    テン:
    西の都だな。わかったすぐに向かう!......あ、ありがとう...。

    さとり:
    ほ~天邪鬼がお礼を言ったぞ。気をつけてな...あ、待て!お前にはこれから二つの大きな試練が待ち受けている。よ~く考えて決めるのだぞ。

    テンはさとりに頭を下げると、さとりが指さした方向に早足で向かって行った。

    次の日、やっと険しい山を抜け岐阜の辺りに来ていた。小さなお堂の前で一休みしようとすると中に先客がいた。それは怖い顔の大きな古狸であった。

    隠神刑部:
    遅い!ワシは四国の八百八狸の頭、隠神刑部だ。お前が特別な剣を探してこの辺りに来るとずっと待っておったぞ!

    テン:
    え、あなたもオレの心が読めるのですか?ならば教えてください草薙剣はいったいどこにあるのですか?

    隠神刑部:
    馬鹿者!ワシは心など読めん。ただワシにはこの日ノ本中にいる狸たちの情報が入って来るじゃ。

    テン:
    そうですか、失礼しました。ではオレは先を急ぎますのでこれで失礼します。

    隠神刑部:
    待て!誰が草薙剣の所在を知らぬと言った。草薙剣は都の北、鞍馬山の天狗が持っていると聞いておる。
    ただし...いや行ってみれば分かる。テン、頑張るんじゃぞ。

    テン:
    鞍馬山の天狗が持ってるんだね。何かありそうだけどオレ頑張る。...ありがとう...。

    テンは頭を下げると西向かって行った。さっきまで怖い顔をしていた隠神刑部は笑顔になりテンに手を振っていた。

    それからテンは都ではなくその北の鞍馬山に向かった。険しい山を上り八合目にある鳥居をくぐると空から大きな何かが降りてきた。

    天狗:
    何者だ!ワタシの持つ剣は誰にも渡さぬぞ!噂ではヤマタノオロチが復活した聞く、あの化け物と戦うにはこの剣は無くてはならぬもの。
    この剣を破壊しようとする者の手からはワタシの命を掛けてでも守る!さあこの場から去れ!

    テン:
    待ってください!オレは毘沙門様とぬらりひょんと約束したんだ、ヤマタノオロチを止めるため必ず草薙剣を持って帰ると!
    だから、いつも嘘つきでひねくれ者のオレだけどこれだけは約束を果たすって決めたんだ!
    オレが信用できないなら手でも足でも目玉でもあげますから。...その剣を渡してください。

    天狗はテンの話しが終わると持っていた剣をテンの頭に降り降ろした!しかし、剣は頭のすぐ上で止まった。

    天狗:
    そうか、お前がテン...天邪鬼だな。ぬらりひょんからお前が来ると文を受け取っていた。...そうか長旅だったな...。
    それならばお前を信じてこの草薙剣をお前に託そう...しかし、その目でこの剣をしかと見よ。
    そうこの剣が地上に現れてから長い年月が経ちもう光も消え失せ、錆びも付き、なまくらな剣になってしまったのだ。
    このままではヤマタノオロチを倒すどころか一撃で粉々に破壊されてしまうだろう。

    テン:
    そ、そんな...。オレの旅は無駄だったってことですか、天狗様!

    天狗:
    いや、まだ方法はある。奈良の山の中に住むと言われる一本ダタラというもののけがいる。
    一本ダタラはかつては神をも斬ると言われた刀鍛冶だったらいのだが、神の怒りにふれもののけにされてしまったという話だ。
    その者ならこの剣をもう一度打ち直しして元の草薙剣の力を取り戻せるかもしれない。

    テン:
    わかりました。オレ必ず一本ダタラを探し出しこの剣を打ち直してもらいます。それがぬらりひょんとの約束、毘沙門様から力をもらったわけなのだから。

    天狗はその意思を確かめると持っていた大振りの剣をテンに渡した。テンはそれを両手に受け取ると大事そうに抱えた。

    天狗:
    ワタシも何度も奈良の山の中を探し回ったが隠れているのか会えていないのだ。
    お前ならもしかすると心を開いてくれるかもしれない。たのんだぞテン。それでは決戦の地で待っているぞテン!

    天狗は空に飛んで行ってしまった。テンは両手で草薙剣を抱きかかえると奈良の山に向けて出発したのだった。

    テンは奈良にたどり着き、山中を三日間夜も寝ずに探し回ったが一本ダタラには出会えなかった。
    テンは旅の疲れもあり、足が思うように動かず崖で足を滑らせ谷底に落ちた!......いや、落ちていない。誰かがテンの足を捕まえてくれたのだった。
    テンはもうろうとした意識の中でテンの足を持つ者を見た。それは一本足に大きな一つ目を持ち毛深い大きな頭と手を持つ化け物であった。

    どれくらい経ったであろうか、テンは薄暗い洞窟の中で目を覚ました。

    一本ダタラ:
    おぉ、やっと目を覚ましたか。余計ことは聞かん、お前は何やら大変な役目を背負わされてしまったようだな。
    お前は知らんかもしれないが、この剣は人が造ったモノではない。この世ならざる者たちが打った剣だ。

    テン:
    あなたが一本ダタラさんですか?お願いですこの剣を打ち直してください。この剣、草薙剣がなければ復活したヤマタノオロチを止められないのです。

    一本ダタラ:
    そんなことはワシには関係ない、ワシはもう刀は打たないと心に決めたのだ...。
    ...とわいえ、そんな剣を見せられてしまっては、我慢することは出来ない。ワシの魂がその草薙剣を打ち直したいと叫んでおる。

    テン:
    それでは草薙剣を打ち直ししてもらえるのですか?オレに出来ることがあれば何でもしますから、お願いします!

    こうして二人の妖怪はすべてを焼き尽くすほどの炎に草薙剣をあて、一本ダタラは渾身の力でその刀身を叩いた。
    草薙剣はみるみる光が蘇り、新しい剣と見まごうばかりの立派な剣になった。

    テン:
    一本ダタラ様、もうすっかり草薙剣はかつての姿を取り戻したようです!ありがとうございました。

    一本ダタラ:
    ...いや、まだだ。草薙剣本来のオーラをまとっていない。やはりこの世ならざる者を切るにはそれなりの犠牲がいるようだ...。

    そう言うと一本ダタラは草薙剣を両手で抱えるとそのまま業火の炎の中に飛び込んだ。全身を燃え上がらせながら真っ赤になった草薙剣をテンに差し出した。

    一本ダタラ:
    テンよ、受け取れ!我が命を捧げ草薙剣は本来の力を出せる破邪の剣となった!これでヤマタノオロチを打ち倒すのだ、約束だぞ!

    こうして、一本ダタラはテンに草薙剣を渡すと炎の中に消えていった。テンの手には先ほどとは明かに違う凄みをました剣が握られていた。
    テンが夜空を見上げると、立ち上る高い炎を見つけたのか烏天狗が降りてきた。
    烏天狗は鞍馬山の天狗に今ヤマタノオロチが身を潜めている琵琶湖にテンを見つけて連れて来るように頼まれたのだった。
    テンは草薙剣を大事に抱えると烏天狗につかまり琵琶湖まで飛んできた、そして湖畔に立つお堂の近くに降りたのだった。

    その頃、ヤマタノオロチが身を潜めていた琵琶湖近くの風穴(かざあな)と呼ばれる洞窟周りにはぬらりひょんが結界を張り。
    ぬらりひょんが集めてきた妖怪たち、地獄の番人牛頭と馬頭、カミナリの化身雷獣、疾風のように切り刻む鎌鼬、そして雪の精雪女。
    そしてテンが道の途中で会った妖怪たち、さとり、隠神刑部と八百八狸、天狗が臨戦態勢を取り決戦最後の決め手が来るのを待っていた。

    隠神刑部:
    え~い、テンはまだ来ぬのか!

    天狗:
    もうすぐだ、もうすぐテンは来る!

    さとり:
    南から来たようだぞ。

    テン:
    みなさんお待たせしました。この通り草薙剣を持ってきました。みなさんとこの剣があれば必ずヤマタノオロチを討つことが出来ます!

    天狗:
    おぉ、その草薙剣はまるで神でさえ斬れる威光を放っている!この場所にはぬらりひょんの結界で誰も入っては来られない。
    さあ、皆の者よ全員の力を合わせヤマタノオロチを討ち果たすぞ!! おぉーーー!

    天狗の号令に合わせその場の妖怪たちがヤマタノオロチに飛びかかった!
    しかしヤマタノオロチは八つの首を振り回し、そして口からは炎を吐き妖怪たちを近づけなかった。

    隠神刑部:
    おのれ~オロチめ!これではうかつに近づけないどうすればいいじゃ。

    さとり:
    皆の者、俺はお前たちほど強くはない、しかしわずかだが未来が見えるのだ。どうだ俺を信じてくれないか?
    ヤマタノオロチの先の動きを指示するから、それを避けるように攻撃してくれ。

    こうしてさとりの指示に合わせ妖怪たちは攻撃をし始めた。ヤマタノオロチの吐く炎を雪女が吹雪で防ぐとそれに合わせ牛頭馬頭が槍で突けば。
    別の炎を天狗が団扇の突風で返せばそれに合わせ鎌鼬が首を切り刻む。そして雷獣が雷を落とせば八百八狸たちは大入道に化けオロチに殴りかかった。
    見た目には妖怪たちが押しているように見えるが、ヤマタノオロチの動きはまったく衰えていない。

    さとり:
    どうやら我らの攻撃はオロチにはねずみに噛まれた程度にしか効いてない様だ。やはり草薙剣でしか奴には効かないのかもしれない。
    では雪女、雷獣、大入道よ力を合わせてヤマタノオロチの動きを止めてくれ、そしてテンよあとはお前の出番だ、頼んだぞ!

    雪女がヤマタノオロチを吹雪で凍らせ、そこに雷獣が雷を落とし、それを狸たちの大入道が押さえ込んだ。
    そしてテンは草薙剣に全身の力を込めオロチの頭に刃を振り下ろした!草薙剣はまばゆい光に包まれた!

    しかし、その剣はオロチの固いウロコに弾き飛ばされたのだった。テンは飛ばされ地面に叩きつけられた。

    テン:
    なんでオレはこんなに非力なんだ!みんなが命がけでオロチと互角に渡り合っているのに、オレだけ、オレだけが...。
    やはりこれを使うしかないのか、この鬼の面を...。

    ・・・・・・・・・・・・

    時は少しさかのぼり、テンが決戦の場にまだたどり着く前のことである。
    烏天狗に降ろされたお堂の中から声をかけられた、そしてお堂から全身黒ずくめの人の姿はしているがけして人ではない何者かが出てきた。

    泰河勝:
    待て、お前はこれからヤマタノオロチと戦いに行くのだな。しかし今のお前でその剣・草薙剣を使いこなせるかのな?
    もしかすると他の者たちの足手まといになるだけかもしれんぞ、天邪鬼よ。

    テン:
    誰だお前は!なんでオレの正体も草薙剣のことも知っているんだ。オレだって今回の旅で強くなったんだ他のみんなにも負けない力をつけたんだ!

    泰河勝:
    私は泰河勝(はたのかわかつ)。かぶった者の霊力を引き出す面を造ることを生業にしておる。
    お前の決死の覚悟、気に入った。この鬼の面をお前にやろう。この面はお前が怒りに満ちた時お前の本当の力を授けてくれる。
    ただし...お前が真の姿になった時、もう二度と前のお前には戻れない。それでもよければこの鬼の面を被るがいい...。
    さらばだ。

    ・・・・・・・・・・・・

    テンは面を彫った男の言葉を噛みしめると、鬼の面を顔に当てた。
    すると鬼の面はテンの頭を覆うと髪の毛は腰より長いざんばら髪となり、体も10尺(3m )はある紅い巨体になっていた。

    テン:
    どうやら四天王の霊力とオレの怒りが、オレの本当の力を引き出してくれたんだ。もう誰にもオレは止められやしない、いくぞオロチ!!

    そう言うとテン、いや紅鬼はもう一度草薙剣を握りしめるとヤマタノオロチに刃を振り下ろした!草薙剣からは黒い閃光がきらめいた!

    オロチのひとつの首が落ちていた。驚き暴れるヤマタノオロチを紅鬼は足で押さえつけると、また別の首に刃を振り下ろした。
    あまりのことに唖然としていた妖怪たちだったが、我に返りみんなでヤマタノオロチの動きを封じた。

    戦いは終わった。恐怖の象徴であったヤマタノオロチは討伐されたのだった。

    天狗:
    やったなテン!我らは勝ったのだ、この国を救ったのだ!

    隠神刑部:
    どうしたテン?もう戦いは終わったのじゃ、もうその仮面を取ってもよいのじゃぞ。

    さとり:
    いや、テンの鬼の面はもう二度と取ることは出来ない...。それどころかやがてすべてを忘れ本当の鬼になってしまうだろう...。
    しかしそれもテン自身が決めたこと。

    テン:
    オレに近づかないでくれ、もうオレの意識が無くなりみんなを斬ってしまいそうだ。
    天狗、草薙剣はあんたに返す。もうオレには二度と渡さないでくれ。
    ......み、みんなありがとう。楽しかったよ...。

    こうして巨大な紅鬼のテンは闇の中に消えていった。

    数年後、京の都では北の大江山に「酒呑童子」と呼ばれる紅鬼が住み悪さを働くと噂された。
    しかし、実際被害に遭ったと名乗り出る者は無く、人々が大江山に近づかないように流布された作り話だったのかもしれない。

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    ・・・・いかがでしたか?

    もしお気に召したなら妖怪古伝・壱と参も読んでみてくださいませ。

     
     
    Podcast「妖怪古伝」を配信しています三毛猫又みい(三毛猫みいの父)です。 このNOTEは配信した妖怪の物語りのシナリオを掲載しているのもです。 毎回ひとつの妖怪を紹介し、その妖怪のオリジナルストーリーを書いています。 Podcast妖怪古伝も聞いてみてくださいね!

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