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はじめおの友だちずタむムカプセル、玄束も䞡思いも土に埋めお

小孊生のわたしにずっお、ブヌムに乗れないこずはずおも恥ずかしくおむなしくお悲しいこずだった。

女子小孊生向けのファッションブランドが流行り始めたころ、同玚生たちは氎色やピンクのブランドキャラクタヌが描かれた服を着るようになる。うらやたしくお、母にお願いしおみようず雑誌で䞋調べをしたら、倀段が今着おいる服の8倍だった。絶察に無理だ。

ブヌムに乗るためには家の財力が必芁なのだ。名前もない謎のキャラクタヌが描かれたTシャツを着た小孊生のわたしは珟実を知る。


4幎生になったころ、我が小孊校では突然のタむムカプセルブヌムがおきた。仲のいい友だちず猶に宝物を入れお土に埋める。「20才になったら䞀緒にあけようね」などず玄束をしながら。

わたしにはたった䞀人だけ友だちがいる。ミラちゃんずは、団地っ子であり鍵っ子であるずいう共通点から仲良くなった。お互いの芪が垰宅するのは倕方を過ぎたころで、わたしたちはい぀も時間を持お䜙しおいた。毎日䞀緒に長い長い寄り道をしながら垰宅し、ランドセルを攟り投げたらすぐ、団地の真ん䞭にある公園で埅ち合わせおたた遊んだ。

ミラちゃんがいるから、い぀だっお少しも寂しくなかった。名前のない謎のキャラクタヌが描かれた服を着おいたっお、少しもみじめじゃなかった。ミラちゃんはい぀も、サヌフボヌドやハむビスカスが描かれた服を着おいる。サヌフ系ずいうらしい。ショヌトカットも、ゎツゎツした靎も、同玚生の誰ずも違くおかっこよかった。

明るくお、思ったこずをはっきり蚀えお、自分の奜きな物がちゃんずあっお、みんなず仲がよくお、先生ずも楜しくお話ができる。子どものわたしから芋おも「おずなみたいな子どもだな」ず思った。ミラちゃんのこずが奜きで、ミラちゃんの友だちであるこずだけがわたしの自慢だった。タむムカプセルを、ミラちゃんず䞀緒に埋めたい。


だからミラちゃんに「タむムカプセルやろ」ず蚀われたずきは嬉しくおたたらなかった。盞棒ずしお遞ばれたこの喜びを、党校生埒に自慢しお呚りたかった。タむムカプセルは猶さえあればできる。財力に関わらず乗れるブヌムだ。「ミラちゃんは興味がないかもしれない」ず自分からは声をかけられなかったけれど、よかった。

い぀もの垰り道、さっそく䌚議を進める。たずはちょうどいい猶があるかお互いに家の䞭を探しおみるこず。埋める堎所は団地の端にある倧きな朚の䞋。甚意するのは未来の自分ぞの手玙ず宝物。

我が家で芋぀けたのは、芪が小物入れにしおいた现長い猶だった。手玙をいれるならちょうどいい倧きさだ。けれど衚面に〝有明海苔〟ず曞いおあり、かわいさはない。公園に持っおいきミラちゃんに芋せるず「手玙がちょうど入るこれがいい」ず蚀った。ミラちゃんが持っおきた遊園地のお土産で買った家型の猶のほうがかわいかったけれど、遞ばれたのは有明海苔だった。

垰宅埌、猶の䞭身をばらたいおテヌブルに攟眮しおいたため「もずに戻しなさい」ず母に怒られたが「んヌ」ず肯定にも吊定にもならない返事を返す。この猶にはもう倧事な圹割があるのだから、小物入れずしおの人生は終わったのだ。


わたしたちは埅ちきれなくお、3日埌にタむムカプセルを埋めるこずにした。

たずはい぀もの公園に集合し、お互いの宝物を芋せ合う。わたしはポケモンコむンず、ケヌキやアむスを暡した新品未開封の消しゎムず、公園で謎のおじさんから300円で賌入した玫色のガラス玉を持っおきた。

ミラちゃんには内緒だけれど、正盎どれも宝だずは思っおいない。宝物っぜいものずしお無理やりかき集めた。わたしには時を越えたい宝物なんおないのだ。倧事なのは〝ミラちゃんずタむムカプセルを埋める〟ずいう出来事そのものだった。

ミラちゃんが持っおきた宝物は、ポケモンカヌドず、ピカピカの小銭ず、お姉ちゃんからもらった子ども甚の青い時蚈。「土に埋めたたただず時蚈が壊れちゃうかも、いいの」ず聞くず「いいの。宝物だから入れたいの」ず蚀った。


そしおお互いに〝15才の自分ぞ〟ず曞いた手玙を芋せあう。「20才は遠すぎるから、15才になったら掘り起こそうね」ずふたりで決めた。

ミラちゃんず友だちでいたすか。䞭孊校は楜しいですか。いっしょにあけるのが楜しみです。

これからタむムカプセルをうめるけど、15才たで手玙ず宝物がのこっおたすように。早く䞭孊生になりたいです。◯◯ちゃんずずっず友だちでいられたすように。

同じようなこずを曞いおいるね、ずふたりで笑った。


宝物ず手玙を有明海苔の猶に詰めお、フチをセロテヌプでぐるぐる巻きにしお、猶ごずゞップロックに入れお閉じる。目星を぀けおいた朚の䞋に向かい、それぞれ持参したスコップで穎を掘り始めた。

しばらくするず、同じ団地に䜏む自治䌚長がこちらに向かっおくるのが芋えた。そうだ、この時間はい぀も散歩をしおいた。団地内の土を掘り起こしおしたっお怒られるかもしれない。

ふたりで黙っおいるず「あぁ、タむムカプセルかぁ。いいですねぇ」ず声をかけ通り過ぎおいった。自治䌚長は子どもたちを芋かければ挚拶も声かけもするけれど長話はせず、他の倧人たちみたいに根掘り葉掘り聞いおこなかった。そんなこずより自慢の花壇を眺める時間のほうが倧事そうで、そのさっぱりさが奜きだった。

自治䌚長が花壇に向かうのを確認しお䜜業を再開する。土を掘るのは、小石や朚の根が倚くお思っおいたよりも倧倉だった。なんずか猶が埋たる深さたで掘り進め、ゞップロックに入った猶を穎に眮いお土をかぶせおいく。

「15才たで、無事でありたすように」
ふたりで手を合わせた。


タむムカプセルブヌムはい぀のたにか孊校の先生たちにも届いおいお、6幎生になったわたしたちは、孊校行事ずしおタむムカプセルを䜜るこずになった。孊幎党員に配られた同じフォヌマットの甚玙に、20才の自分ぞ向けた手玙を曞く。校庭を掘る蚱可が䞋りなかったらしく、手玙は段ボヌルに詰められ、ほずんど䜿われおいないホコリだらけの準備宀にしたわれるこずになる。

「これはタむムカプセルじゃない」ず思った。タむムカプセルずいうのは土に埋めお、怍物や街や地球が育぀䞭で䞀緒に時間を過ごすものだ。準備宀の段ボヌルは、たくさんある荷物のひず぀にしか芋えなかった。

わたしにずっおのタむムカプセルは、あの朚の䞋に埋めた有明海苔の猶だけ。台颚が来た倜は心配で、次の日にすぐミラちゃんず無事を確かめに行った。

「ねえ、ただ手玙の内容は芚えおる」
「曞いたこずも入れた物も党郚芚えおるよ」
「早く忘れお、あける時にびっくりしたいよね」
「卒業したら、忙しくなっお忘れられるかなあ」

タむムカプセルのこずを想う時間が楜しくお、タむムカプセルのこずを忘れる瞬間が楜しみで、タむムカプセルをあける日が楜しみだった。


小孊6幎生の冬。卒業文集のテヌマは、6幎間で䞀番思い出に残っおいるこず。わたしは迷わず「はじめおの友だち」ずいうタむトルでミラちゃんのこずを曞いた。でもタむムカプセルのこずは、誰にも内緒だから曞かない。誰かにいたずらで掘り起こされたら倧倉だ。

小孊校卒業の春。卒業文集が配られる。ミラちゃんのペヌゞには「ずっず友だちでいたい」ずわたしの名前が曞いおあった。人生ではじめお、䞡思いの嬉しさを知った。わたしの倧奜きな人が、これからも友だちでいたいず宣蚀しおくれるこず。特別だず思った。



わたしたちは同じ䞭孊校に進孊した。クラスは離れ、別々の郚掻を遞び、それぞれ新しい友だちができおいく。入孊しおすぐは廊䞋で芋かける床にお互い声をかけおいたけれど、気づけばその習慣も消滅しおいた。喧嘩をしたわけでも、絶瞁をしたわけでも、嫌いになったわけでもない。ただ時間が経ち、ただ違う堎所で生き始めた。

玄束の15才、䞭孊3幎生。タむムカプセルは掘り起こされなかった。その埌わたしたちの䜏む団地は、老朜化によっお建お替え事業の察象になる。実は䜕幎も前から決たっおいたらしい。公共の土地を掘り起こすわたしたちを自治䌚長が芋逃しおくれたのは、もうなくなる堎所であるこずを知っおいたからだったのだろうか。

我が家は建お替え埌の団地に䜏み、ミラちゃん䞀家は別の堎所ぞ匕っ越したず聞いた。タむムカプセルを埋めた゚リアには、オヌトロックずガラス匵りのロビヌを兌ね備えた巚倧なマンションが建っおいる。


あの日埋めた有明海苔の猶も、い぀もの公園も、自治䌚長の花壇も、もうどこにもない。それでも、こんなにも芚えおいる。わたしが入れた芋せかけの宝物も、ミラちゃんが入れた本物の宝物も、䞡思いの手玙のこずも。15才どころか30才を越えおいるずいうのに、こんなにも鮮明に芚えおいる。

あのころから倉わらず人付き合いは埗意じゃないし、友だちは少ないけれど、わたしの根底には「それでも倧䞈倫」ずいう自信がある。芋た目や性栌や趣味や環境が異なっおいおも䞡思いになれるし、そんな盞手がひずりいるだけで匷くなれるこず。䟋え話さなくなっおも、䌚わなくなっおも、その時間はなくらないこず。「ずっず友だちでいようね」ずいう玄束は、時を越えた今もわたしを匷くしおくれるこず。

党郚ミラちゃんが教えおくれた。あのころも今も、ミラちゃんはわたしの倧事な友だちだ。

わたしたちのタむムカプセルは今もマンションの䞋に埋たっおいるかもしれないし、どこか遠く知らない堎所に行っおしたったかもしれない。でも倧䞈倫。怍物が枯れ果おおも、街が倉わっおしたっおも、地球がなくなっおも、ミラちゃんが忘れおしたっおいおも、わたしがずっずずっず芚えおいる。


いいなず思ったら応揎しよう