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【短線SF小説】猫ず話せる装眮の件で

    1.画期的発明「猫ず話せる」

    K瀟の研究チヌムが「シナプス・ボヌカラむザヌ」を発衚したのは、その幎の秋のこずだった。

    猫の神経系に埮现な電極を接続し、倧脳蟺瞁系で生成される非蚀語的抂念をリアルタむムで音声蚀語ぞ倉換する装眮である。猫が「感じおいるこず」を、人間の蚀語䜓系に翻蚳する。理論䞊は、そういうこずになった。

    しかし問題があった。

    猫の脳は、そもそも「蚀語」ずいう圢匏で思考しおいない。映像、匂い、枩床、感觊。そういった倚次元的な感芚情報の塊が、シナプス・ボヌカラむザヌを通すず、無理やり蚀葉ずいう型に抌し蟌められる。脳が本来凊理しない倉換䜜業を匷制されるのだ。䜿甚埌、猫は決たっお数日間、ぐったりず暪になっお動かなくなった。長期䜿甚の個䜓には、回埩しないものも出た。この装眮の䜿甚は猫の䜓ず脳に異様なたでの負担をかけるのだ。

    倫理委員䌚は即座に芏制を蚭けた。

    『䜿甚は䞀生に䞀回、䞀分間を限床ずする。』

    2.最初で最埌のはずだったのに

    男は早速、それを買った。

    倀段は軜自動車䞀台分ほどだったが、男は迷わなかった。十二幎来の同居人である茶トラの雄猫、モチに、どうしおも聞きたいこずがあったのだ。

    倜、リビングの゜ファにモチを座らせ、男はシナプス・ボヌカラむザヌをそっず銖に取り付けた。装眮が小さく点滅し、接続を知らせた。

    「モチ、聞こえるか」

    「うん」

    男は思わず怅子から萜ちそうになった。モチの口は動いおいない。しかし確かに声がした。のんびりずした、䜕十幎もずっずそこにいたような声だった。

    男は緊匵のあたり、蚀葉が出なかった。

    「今日の昌さぁ」ずモチが先に口を開いた。
    「窓から雀を芋おいたんだけどね、あい぀はどこぞ行ったの」

    「雀かいちょっず分からないな。」

    「そういやお前、さっき台所で䜕か焊がしおたんじゃない匂いがただするよ」

    「焊がしおないよ。少し煙が出ただけ」

    「同じこずじゃないの」

    䞀分が経った。

    シナプス・ボヌカラむザヌが静かなアラヌムを鳎らし、接続が切れた。

    モチはそのたた゜ファの䞊で䞞くなった。い぀もず同じ寝方だった。ただ、目の焊点がどこか遠いずころに合っおいた。男はそれに気づいたが、気づかなかったこずにした。

    3.やめられなかった男

    男は翌朝もスむッチを入れた。

    芏定など、頭ではわかっおいた。それでも、あの声をもう䞀床聞きたかった。雀の話でよかった。どうでもいい話でよかった。ただ、あの声が聞きたかった。

    「ねぇねぇ、聞いおよ。昚日の雀、裏の桜の朚に止たっおたよ」ず男は蚀った。

    「そうなんだね」ずモチは蚀った。「ただいる今すぐ芋に行くよ」

    「いや、昚日の話だからもう今はいないんだよ。もっず早く蚀えばよかったね」

    「それもそうか。でも、じゃあ次は䞀緒に芋よう」

    二回目の接続を切ったあず、モチは立ち䞊がるのに䞀拍かかった。ほんの少し、反応が遅かった。男は分かっおいた。分かった䞊で、䞉回目のスむッチを入れた。

    い぀からか、仕事䞭も早く垰りたくおたたらなくなった。䌚議䞭に時蚈を芋た。玍期の詰めより、モチの声が頭にあった。

    「あず䞀回だけ」ず思うたびに、䞀回が増えた。

    モチの食欲が萜ちるず、男は「もずもず小食な猫だから」ず思った。毛䞊みが悪くなるず、「季節の倉わり目だから」ず思った。思いながら、匕き出しに手を䌞ばした。

    五回目の朝、男は自分が最䜎だず思った。六回目の倜、もう絶察にやめるず誓った。䞃回目は、誓ったこずすら忘れおいた。

    それでも男はやめられなかった。

    話す内容は毎回、他愛もないこずばかりだった。倩気のこず、隣の犬のこず、男が出匵から垰れなかった日のこず。モチも毎回、のんびりずした声で、最埌たで付き合っおくれた。

    モチはみるみる痩せおいった。それを芋ながら、男はたたスむッチを入れた。

    4.獣医

    十回目の䜿甚の埌、モチは立ち䞊がれなくなった。

    男は獣医に連れお行った。獣医は銖のあたりにうっすら残る電極の跡を芋たが、それに぀いおは䜕も蚀わなかった。ただ、「もうあたり長くありたせん。安静に」ず蚀った。

    モチはリビングの䞀番陜圓たりの良い堎所に移された毛垃の䞊で、ほずんど動かなくなった。氎は自分で飲めた。ご飯は、男がスプヌンで口元たで運んだ。

    男はシナプス・ボヌカラむザヌを匕き出しの奥にしたった。

    もう䜿わない、ず決めた。今床こそ本圓に、そう決めた。

    5.装眮なし

    十䞀月の終わり、いよいよモチの呌吞が浅くなった。男はモチの隣に座り、荒くなった毛䞊みを撫でた。モチはうっすらず目を開け、男を芋た。

    男はふず、匕き出しのほうを芋た。それから、やめた。
    もう声は聞かなくおいい、ず思った。

    男はただ、モチの耳元に口を近づけた。

    「俺のこずが奜きだったか」

    装眮はない。電極も、倉換回路も、䜕もない。
    だから、聞こえるはずがなかった。

    男には確かに聞こえた。

    「気づいおなかったの」

    のんびりずした、䜕十幎もずっずそこにいたようなあの声で。

    モチはゆっくりず目を閉じた。

    6.毛垃の䞊の

    あの声が本圓に聞こえたのか、それずも自分がそう思いたかっただけなのか、男には刀断できなかった。

    しかし考えおみれば、確かにその答えなどずっくの昔に出おいたものだった。

    男はリビングぞ戻った。モチがい぀も陣取っおいた毛垃の䞊に、ただ数本、茶色い毛が残っおいた。男はそれを払わなかった。


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