エガフェスがきっかけで、ゾイドのプラモデルを買った話
エガちゃんのフェスを見るためだけに入った動画配信サービスが、僕をブレードライガーの箱の前まで連れていった。
僕はYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」の大ファンである。
「あたおか」であり、「村民」だ。
エガちゃんねるでは2年に一度、「エガフェス」というお祭りを開く。
今年の会場は、山梨県のコニファーフォレストだ。
もちろん、案件ではない。勝手に宣伝しているだけである。
僕たち夫婦は諸事情で現地参戦が難しいため、配信チケットを買った。
今回のエガフェスはU-NEXTが独占配信するため、試しに入ってみることにした。
……登録しなくてもライブ映像を視聴できることは、後から知った。
なんてもったいないことをしたのだろう。少しだけ後悔する。
でもせっかく入ったし、何か見られる作品はないかと調べていたら、意外な作品に当たった。
『ゾイド-ZOIDS-』である。
小学生の頃に目に穴が開くほど見た、金属生命体・ゾイドと人間がともに悪と戦うアニメ。
父がチャンネル権を持っていた我が家において、数少ない子どもが見ることを許されたテレビ番組でもあった。
ゾイドの放送時間は土曜の夕方で、父が家にいないことが多かったからかもしれない。
妙に懐かしい気持ちになり、気づけば一気見していた。
ストーリーをだいぶ忘れていたぶん、新鮮に楽しめた。
アニメを見ていると、子どもの頃のゾイドに関する記憶が一気に蘇ってきた。
当時はゾイドのプラモデルが多数販売されており、お年玉を貯めてたくさん買った。
アニメが放送されていた頃、僕は小学2年生から3年生だった。
ミニ四駆などのパーツが少ないプラモデルなら組み立てられるが、ゾイドはとにかくパーツが多いため、父に組み立ててもらっていた。
数少ない、楽しくて嬉しかった父との記憶である。
クリスマスプレゼントで、レイヴンが操るゾイドを買ってもらったことがある。
ジェノザウラーだったかジェノブレイカーだったか、記憶が定かではない。
クリスマスの前に買ってもらい、当日までは母が僕の手が届かない場所に保管していた。
そのとき、母は「ゾイドは封印してある」と言った。
僕はこの「封印」という表現がいたく気に入り、夜眠れなくなるほど封印が解ける日を心待ちにしていた。
これもおそらく、父に作ってもらったのだろう。
2年前に結婚式を挙げたとき、ミニ四駆を思い出して同じようにテンションが上がったことがある。
プラモデルは僕にとって、子どもの頃の楽しい記憶を呼び戻すタイムマシーンなのかもしれない。
そんなことを思い出しているうちに、久しぶりにゾイドのプラモデルが欲しくなった。
最近欲しいものに出会えなかった僕にとって、その気持ちはとてもまぶしかった。
気づけば、すすきののノルベサにある駿河屋に向かっていた。
僕はアニメ好きではないから、普段こういうお店には滅多に行かない。
歩き慣れたはずの道が、その日だけずいぶん鮮やかだった。
駿河屋のプラモデルコーナーには、ゾイドのコーナーがあった。
まず目に飛び込んできたのは、ブレードライガーである。
アニメの主人公バン・フライハイトが乗りこなす、2台目のゾイド。
箱を眺めていると、小学2年生の頃のワクワクがよみがえるようだ。
1/100スケールというが、箱は大きい。
そういえば、当時のプラモデルの箱も大きかったっけ。
そして、その数段下にコマンドウルフ(アーバイン仕様)があった。
アーバインはゾイドの中でも、人気の高いキャラクターの一人だ。
どうせなら、この2つが欲しい。
値段を見る。ブレードライガーは4,400円、コマンドウルフは4,600円だった。
ここで、大人の自分が顔を出す。
今の家は狭い。プラモデルを組んだとして、置く場所はどうするのか。
2つ合わせて9,000円。
買えなくはないが、趣味に使うにはそこそこの価格だ。後悔しないか。
妻に呆れられたら、どう説明をつけるのか。
いろいろな迷いが頭の中を駆けめぐる。
でも、「欲しい」が上回った。
この機会を逃せば、二度と買わないだろうと思ったのだ。
ブレードライガーとコマンドウルフの箱を抱え、レジに向かう。
不思議と、心が晴れ晴れとしていた。


ノルベサから資生館小学校前まで歩く。
めずらしく、鼻歌を歌っている自分がいた。
西陽がまぶしかったが、それでもご機嫌だった。
資生館小学校前の電停で、隣で市電を待っていた赤ちゃんと目が合った。
サングラスを外しておどけた顔をしたら、にこっと笑ってくれた。
先週の金曜日に買ったゾイドたちは、まだ組み立てていない。
置く場所がないからだ。
ちょうど引っ越しを検討しているので、引っ越した後に「封印」を解こうと思う。
母が決めていた封印を解く日を、今は自分で決められる。
そして、父が組んでくれたゾイドを、今度は自分一人で組み立てる。
新しい家でニッパーを持ったとき、僕は何を思うだろう。
エガフェスがU-NEXT独占配信でなければ、思い出せなかった記憶だ。
人生、何がきっかけで「封印」が解けるかわからないものである。
