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食用すすきすき女|ショートショート #虹色創作部

    「すすきって、食べられるの?」
    「いや、食用には向かないらしいよ」


    職場の廊下で女性二人がそんな会話をしていたところを通りかかった俺は、トイレで用を足していたときに偶然隣にやってきた同期にこの話をした。


    「すすきを食べる女?」
    「そうらしい」
    「そんな女、どこにいるんだよ」
    「さっき廊下で立ち話していた田中を捕まえて、その女の居所を聞き出したら長野県の山間部にいるらしい」


    田中は都市伝説が好きでSNS等で情報交換をしていたところ、件の噂話をキャッチしたとのことだが、居場所を突き止め潜入した者たちがいたがその後報告がなく、数日後に突如アカウント自体が消えていたそうだ。

    日常の退屈しのぎには打ってつけのネタだとばかりに同期がはしゃぎ出したので、週末の休みに付き合うことにした。



    当日。

    俺の車に同期を乗せて、例のすすきを食べる女が棲みついているという山間部へやってきた。

    人里離れたそこは、長く伸びきったすすきばかりで、噂の女の家がどこにあるのか分からなかった。


    「とりあえず入っていこうぜ」


    同期がそういうなり、すすきを掻き分けてどんどん奥へと足を運ぶ。

    不安感に駆られながら同期の後に続いていく。


    すすきだらけの道なき道を歩き続けると、急に視界が開け、目の前に突如として二階建ての小屋が出現した。

    長野県の軽井沢にあるような立派な別荘を思わせるその建物の横には大量のすすきが刈り取られてその場に置かれていた。


    「あれ、ホントに食っているのか?全然うまそうじゃないよな?」
    「シッ!声がデカい!」


    俺が人差し指を唇に当てながら非難したが、その声も大きかったようだ。

    小屋の玄関のドアがゆっくり開き、中から噂の女らしき人が出てきた。
    そして俺たちの視線は金縛りにあったかのようにその姿から視線を外すことができなくなっていた。


    長身でモデル体型、目鼻立ちは外国人にようにくっきりしており、金髪のロングヘア、この世のヴィーナスと言っても過言ではないほどの神々しい姿。


    「道にでも迷ったの?寒くなってきたし、我が家で一休みする?」


    その女は俺たち二人を誘うようにドアの向こうへ視線を向けた。


    中に入ると、暖炉の火でぽかぽか暖かい。
    テーブルに導かれ俺たちは腰掛けたが、ふと妙な臭いを嗅いだ。


    ――何この臭い。すすきを燃やした臭い?でもこんな臭いってするものなのか?


    訝しげながら横目で同期を見たら何だかソワソワしている。


    「あ、あの、ひ、独りですか?」


    顔を赤らめながらうわずった声で質問している同期を見て「こいつナンパしようとしているのか?」とすぐに察した。


    「ええ、独りよ」
    「すすきを食べるって噂を聞いてきたのですが」
    「ええ、すすきが大好物なの。煮ても焼いても何にしても美味しいわ」
    「あ、あなたの手料理を食べてみたいです」


    目が完全にハートマークになった下心丸出しの同期に、半ば呆れていた俺はやりとりを黙って見守っていた。


    「嬉しいわ!そうだ、自己紹介がまだだったね。先にあなたのお名前、聞かせてくれる?」
    「俺は鈴木満次郎。俺と結婚してくだ…」


    いやらしい顔つきでいきなり告ろうとしたその瞬間。

    女は脇に置いてあった小型のボタンを押すと、同期の足下が開いて椅子とともに漆黒の闇へと墜ちていった。

    一瞬の出来事だった。


    「お、おい、何した」
    「彼を食用にしたの。だって「すすき・・・」でしたから」
    「「すずき・・・」だろ」
    「いえ、由来は「稲穂を積み重ねたもの」を意味する「穂積」から、方言で「すすき」と読んだことが始まりなの。だから「すずき・・・」は「すすき・・・」。そして私は「すすき」が大好物なの」


    女のうんちくを聞かされても「へえ〜」と思わないほど、額や手、腋、背中に至るまで嫌な汗が滲み出ていた。


    「私の愛の手でゆっくり餌付けして、最期は人おもいに、ね」


    そう言った女の口角が上がり、口元からはほんのりと粘り気のある液体を滴らせていた。


    同期がいた床の口は開いたまま下からは何も聞こえてこない。


    「あなたのお名前も聞いていい?」


    そう問いかけてきた女の瞳は、不気味なほど汚れのない澄んだ瞳をしていた。


    実は俺の名は、「鈴木智康」。
    先ほど食用送りされた同期と同じ姓。


    絶体絶命と思ったが、解決策はあっさり思いついた。

    単に嘘をつけばいいのだ。

    運転免許証見せろと言われたら、口を開けている闇に投げ入れたらいい。


    「お名前は?」


    髪をかきあげ、一段と艶めかしい仕草で俺に再度問いかけてきた。


    ーー大丈夫だ、絶対に助かる


    心臓の鼓動が激しく打っているところを抑え込もうと頭の中で必死に同じ言葉を繰り返した。

    そして、意を決して名前を伝えた。
    嘘の名前を。



    「佐藤…」



    言った瞬間、俺の身体は無常にも椅子ごと闇に葬られた。


    それを見届けた女は、別室に向かい、ベッドの上で人間とは思えない泣き声をする赤ちゃんを優しく抱き上げた。



    「よちよち、おなかがすきまちたよね。ちょうどだいちゅきな「さとう」をつかまえたからすぐにのませてあげまちゅからね」





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    (2,000文字)



    ■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

    ■小説専門マガジンに参加中です✨️

    ■創作系メンバーシップ「虹色創作部」に入部しています🍀



    この作品は、虹くりっぷさん企画参加作品です。
    今回のお題は「すすき」でした🌾


    最近「虹色創作部」に参加すると、どうしても怖い系になってしまいます💦
    今回はこんな連想でした。

    すすき→すすき食べられる?→食用に適さない→代わりに鈴木を食べるか→ついでに佐藤も食べよう→すすきに囲まれた家に住む鈴木と佐藤を食べる女と赤ちゃん

    これしか思い浮かびませんでした🙄💦
    すすきでステキな作品を書ける皆さんが羨ましいです🥹

    意図的に困らせてやろうとは思っていないのですが、怖い系作品ばかり生み出すメンバーシップ加入者なんて気味が悪いでしょうから、そろそろレギュレーション違反か何かで強制退部かもしれません🥲

    ちなみにホラー作家になるつもりはないですし、そもそもこういった怖い系の物語は苦手ジャンルです(笑)


    最後に宣伝です📣
    現在、企画を開催しています。
    11/3まで延長しましたので気軽にご応募ください🎵お待ちしています😌


    ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


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    なりきり作家|ちょっとズレた感性で子どもから大人まで楽しめる作品を丨本というカタチで残すのが目標|TALESでは連載小説公開中|不定期に個人企画開催|気ままに交流|二児の父 note個人企画受賞歴:アカリウム肝だめし大賞(2026)、アカリウム創作大賞個人賞(2026)

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