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【掌編小説】身体追認

「お待たせいたしました。オニオンスープです」
「ありがとうございます」

 テーブルに置かれたオニオンスープからは、湯気がこれでもかと立ちのぼっている。スプーンを手に持ち、スープの皿に突っ込む。くるくると回しながら、息を吹きかけ続けた。

 口に入れれば、じっくり炒めた玉ねぎの甘みと香ばしさが舌に伝わる。コンソメの塩気とうま味が残り、胃まで温かく満たしてくれるはずだ。そう考えているだけで、口の中に唾液が溜まっていく。

「お客様。スープのお味はいかがでしょうか」

 私は手を止めて、店員の方を向いた。

「え、あ、はい。美味しいです」
「ありがとうございます」

 まだ食べていないのに、私は咄嗟に「美味しいです」と答えた。

 別に、嘘はついていない。

 スープの皿からは、さっきよりも湯気が出ていない。私はスプーンでスープを一口分すくって口に入れ、すぐに飲み込んだ。それから、味を確かめるように連続で何口もすくって飲み込み続けた。

 目を瞑って、何度もさっき妄想した味を思い出す。しばらくした後、目を開けて意識を口の中に向けると、口の中が乾き、頬の内側が歯に張りついていた。急いでスプーンでスープをすくおうとしたが、皿の中にはもう何も残っていなかった。

「お待たせいたしました。舌平目のムニエルです」
「ありがとうございます」

 このムニエルを口に入れれば、少し香ばしく、バターのコクと塩気が舌に伝わるはずだ。胃まで運んでしまえば、きっと私の気持ちは満たされる。

 ふわっと柔らかい白身にナイフとフォークで切れ目を入れると、切れ目からかすかな湯気が立った。この料理も、きっと美味しいのだろう。

 私はナイフとフォークをテーブルに置き、ムニエルを眺め続けた。


創作大賞2026落ちました。読んでくださった方がいらっしゃったら、本当にありがとうございました。

心折れそうというか、やっぱり才能ないのかなとか、もう書きたくないな、などと本音では思いますが、現実的に次の公募が迫っていて落ち込む余裕がありません。

物書きとしてやっていくなら、すべての気持ちを創作に変えるくらいでないとダメだよなーという綺麗事を言う自分の中の昭和な体育会系おじさんを呼び起こし、明日から次の公募作品の制作に入ります。

僕にできるのは、落ちた要因を様々考えて言い訳をするのではなく、「実力が足りなかった」「相対的に負けた」という事実を重く受け止めることだけです。

結果が全て。精進します。いつもお読みいただいている方々、本当にありがとうございます。

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