メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byhoikushi_micchan

近隣の人の言葉で泣かされた

    今日、泣いた。

    Sさんに言われた一言で。

    その言葉が、じわっと来て、止まらなかった。

    ─────

    Sさんは、YOROCOBIファームの近くに住む、
    山をいくつも持つ農家さんだ。

    今年からファームづくりを始めた私を、
    ずっと気にかけてくれていた。

    ある日、声をかけてくれた。

    「原木しいたけ、やってみる?」

    Sさんが山で育てたシイタケの原木。
    木の根元の部分はは太くて重い。

    もう歳だから運ぶのがしんどくて
    根元の部分は使うのをやめて
    去年から山に捨てていたという。

    「よかったら、持っていきな」

    やります、と即答した。

    ─────

    軽トラで山に向かった。
    でも、うちの軽トラは2駆だから山の中に入れない。

    だから転がした。

    70〜80キロはありそうな丸太を、一本一本、
    山の斜面から下まで転がして、運んだ。

    それが、100本。

    菌を打つ作業も教えてもらい、
    4000個の菌駒を打ち込んだ。

    打ち終えたら今度は育てる場所まで運ぶ。
    でも土につけてはいけない。
    林業事務所の指導で、この地域では
    出荷のために様々な規制があるのだ。

    どうしよう。

    まず、持ち上がらない。

    一輪車になんとか載せてみた。
    重すぎてふらつく。
    タイヤが、落ち葉でふかふかになった森の土に埋まる。

    友達がいるときは二人がかりで、
    一輪車にのせてロープで結びつけて運んだ。
    これを…100回?
    想像しただけでくらくらする。

    そんなとき、パートナーが竹でレールを作ってくれた。
    まず短い距離で試してみる。
    竹の上で転がせば、何とかいける!

    このレールを長く伸ばしていった。

    竹のレールによって
    何とか一人の時も運ぶことが出来る
    とはいえ、ラクチンというわけでもない。

    坂になっている箇所では、気を抜くと戻ってくる。
    まっすぐじゃない丸太は、色んな向きにずれていく。

    腕はパンパンになっていく。
    顎からぽたぽた汗が垂れている。
    ふと思った。

    私、50歳過ぎて
    こんなに丸太を転がすなんて
    思いもしなかった。

    1本ずつひたすらやっていれば
    いつかは終わりが来るものだ

    数日かけて
    100本できた!

    やり切ったとき、Sさんに報告した。
    頑張っている動画と、写真を送った。

    「よく頑張ったね」
    と一言 返事が来た。

    後から聞いたのだが、Sさんはこれまで山仕事をずっと一人でやってきたという。

    重機や道具も使うけれど、木を切って引き出したり、原木の移動も、一人で。

    Sさんは小柄で細身だ。どこにそんなパワーがあるのか。
    心から、尊敬する。

    その大変さを知っている人からの言葉が
    とてつもなく嬉しかった

    ─────

    そして今日、Sさんの家に行った。

    助成金の申請を、一緒にやってくれると言う。

    でもこの助成金は、私一人では申し込めないものだった。
    組織をつくらないと、対象にならない。

    Sさんは、わざわざ私のために
    その組織を一緒につくってくれた。

    2週間、海外に行っていた私に代わり
    法務局まで行って、
    登記簿まで取ってきてくれていた。

    私は農家じゃないから、
    いろんな手続きが複雑で、面倒なことになっていた。

    「私が入ったせいで、めちゃくちゃ面倒くさいことに
    なってるんじゃないですか。すいません」

    そう言ったら、Sさんは私の目を見て言った。

    「これはね、悦子さんのためにやってるんだよ」

    そうだ、Sさんは立派な農家さんだ。助成金なんて必要ない。

    ─────

    そういえば、私はずっと補助金を探していた。
    農機具を買うのには、大金が必要だったから。

    新規就農者向けの補助金。
    農業従事者向けの支援。

    でも、50歳を過ぎていたから新規就農者にはなれなかった。
    農業従事者でもないから、対象外だった。

    どれも、もらえなかった。

    そのことを、いつかぽろっとSさんに話したことがあった。

    Sさんは、覚えていてくれた。

    ─────

    「ホームページも見たよ。
    最初、この人は何なんだろうって思ってたけど、
    こういうことがやりたいんだな、ってわかった。

    あの原木をやり切ったとき、
    この人は本気なんだなって分かったから、
    応援しようと思ったんだ」

    泣いた。

    人に本気を見てもらえた日のことを、
    きっと、ずっと覚えていると思う。

    ─────

    一人じゃ、できないことばかりだ。

    でも、本気でやっていたら、
    見ていてくれる人がいる。

    ファームづくりは、まだ始まったばかり。

    Sさんに恥じない場所を、つくっていく。



     
     

    悦子

     
     
    房総で「循環する家」をセルフビルド中。8000坪の土地で、人も生き物も悦ぶ「循環するファーム」をつくっています。 自然の一部となる暮らしと家づくり、田舎中古物件選びなどを実践から発信。

    あなたへのおすすめ