メインコンテンツへスキップ
見出し画像

柑橘の香りに包まれて

    「気分転換にどう?」

    もらったのは、言葉では説明できない、色んな想いなのかもしれない。

    毎年恒例の甘夏をご近所さんから頂きました。
    母が倒れる前から5月になると、週に一回どどどっと、もらう。
    時期が過ぎるまで毎週続いて、甘夏フィーバー期間を堪能してきました。

    画像
    写真:筆者

    以前はさすがに食べきれないと、職場に持っていったり近くに住む親戚へと届けたりしていました。
    食べ方のレパートリーなんてものも無く母がせっせと剥いた甘夏を、私が “わんこそば” のごとく飲み込んでいくという。
    母親同士が「ウチも剥かなきゃ食べないんだから~」をそのまま実行していましたね。

    今年も、もうそんな時期が来たのか

    極寒だったのが、少しずつ寒さが和らいでパジャマが変わり、
    掛け布団が薄くなる、季節の移り変わりは日常を通して知っていました。
    毎朝流れる朝のニュースでも雪が雨になり、花粉情報になり黄砂予報になる。カレンダーも書き込むことだらけで、もう5月!もう6月!と。

    でも、「今年もたくさんなったの、お裾分けよ」とご近所さんから差し出された甘夏を見て、あぁ…もう一年経ったのか。と唐突に、腑に落ちたのです。

    私が小さい頃から付き合いがあるご近所さん、もとい母の友達。なんとなく違和感を覚えたのか、甘夏を受け取るだけのはずがピールの作り方講座が始まりました。

    簡単だから、気分転換にどう?

    「田舎の里でなったものだから無農薬よ、皮でピールも作れるのよ」

    ほうほう、それはすごい。買ったら高いピールが手作りできるなんて!
    軽い気持ちで聞いた作り方は、とても面倒くさいものでした。
    やろうと思えば、できないことはないけど…その時間があるかな?
    というのが率直な感想でした。

    でも一度聞いてしまえば、普段捨てていたはずの皮がとてーも、もったいなく思えてくるから不思議。まぁ、一度作ってみるか。と重たすぎる腰を上げました!

    まず始めに皮から白い部分を、こそげ取るのですが、香りの主成分は皮なの?ってぐらい一気に広がる柑橘の爽やかな香り!
    せまい我が家が、みかん風呂の一室のよう!

    「やべーぐらい、いい匂いがする」

    そして大きめのボウルで水にさらすこと1日!冷蔵庫で寝かします。
    冷蔵庫を開ける度に、ぶわっと広がる柑橘の香り!

    画像
    写真:筆者

    「ふわぁぁ、いい香りに思わず冷蔵庫に向かって深呼吸だわ」

    そして翌日煮詰める作業!みかん風呂の再来、今回は蒸気込み。
    肌が潤う、喜ぶ、いい香り。

    「すーはー、すーはー、もうこの香りだけで大満足よ」

    母との会話も増えました。部屋中に充満する香りに、今夜はいい夢見れるねーなんて。天日干しする前の甘露煮が好きみたいで、ちょっとだけよと言いながら、ふたりでばくばく味見。

    画像
    写真:筆者

    最終的に天日干し!
    最初は専用の網が無かったのでオーブンで焼きました。焦がしました。

    画像
    写真:筆者

    とても楽しくなり、天日干し用の網を購入。

    画像
    写真:筆者

    出来れば2日間晴天に恵まれる時がいいので週刊天気予報とにらめっこ。

    画像
    写真:筆者

    カラカラに乾いた皮をホワイトチョコでコーティングしてオランジェットにしてみたり。これがー本当にー私好みー!

    画像
    写真:筆者

    写真付きでご報告

    すごく楽しくて、これもう三回目です!
    ばったり会ったご近所さんをつかまえて、甘夏祭りの報告会。

    「よかった、嬉しい」

    その微笑みがあまりに優しくて、とても心配をかけていたのだと痛感しました。母の友達ということもあり、不自由になってしまった母への心配も、介護のために離職しずっと付き添っている私の事も。

    お互いに

    辛いことは話さない。だって聞いても、言っても、どうにもできないから。
    ご近所さんも、週に5日実家に泊まり込みで介護をしているそうです。
    大変よね、大変です。なんて言葉は交わすけどそれ以上はお互いに触れない。それがいいことか、悪いことかわからないけど。もしかしたら吐き出してしまえた方が楽になるのかもしれないけど。

    「私もピール作り楽しくて、この時期には絶対作るの」
    「あの作っている途中で、家がずっといい香りなのが良くて」
    「わかる!そうなの!気分転換になったらいいなと思ってすすめたの」
    「めっちゃ良かったです!ホントありがとうございました」

    感情の共有

    辛いことは確かにある。でも楽しいこと、嬉しいことも確かにあるのよ。
    ピール作りを通して、ご近所さんが感じることと、私が感じることは全てが一緒ではないと思う。ご近所さんにとっては昔を懐かしむ香りでも、私にとっては新しい出会いだ。それがまた時が経ちこの時を懐かしむ香りになっていくのだろう。

    来年の甘夏シーズンが今から楽しみだ

    どう日常が変化していても、変化していなくても

    今度は少し上向いた気持ちで、一年の歳月を受け止められると思う。

     
     

    由隆

     
     
    右半身不随の母を在宅介護中。3匹の保護猫と暮らしています。昭和のオタク。ゲーム好き。元パン屋(雇われ従業員)

    あなたへのおすすめ