
第3話 木刀と、一枚のハガキ
「いつもベッドからでてこないけどだいじょうぶ? まえみたいにもどれ。 いつもやさしくしてくれてありがとう」
7月の末、郵便受けにハガキが一枚あった。
差出人は、まだ小学生の三男——家族でちび武士と呼んでいる子だった。
宛名は、長男と次男の二人に書かれていた。
僕はしばらく、その文字を見つめていた。鉛筆で書かれた、少し不格好な文字。でも、その一行一行に、どれだけのものが詰まっているかが伝わってきた。
小学生の彼が、崩れかけた家族を諦めていなかった。
1ヶ月前、僕たちは中学校の視聴覚室にいた。
長椅子に並んだ教員たち。向かい合う被害者家族と加害者家族。部屋の空気は最初から重かった。
その日に流れた動画の音声を、今でも思い出せる。
笑い声が聞こえた。被害を受けている後輩の声が聞こえた。その場に居合わせた誰かの笑い声が、また聞こえた。
被害者のお父さんが立ち上がった。加害生徒に向かって詰め寄ろうとした。周りの大人たちが止めた。
当然だ、と僕は思った。自分の子どもが傷つけられた。怒り狂って当然だ。
僕は、加害者側の親として、その部屋に座っていた。
事の発端は、6月の終わりだった。
エイリアン王子が担任の先生と一緒に帰ってきた。珍しいことだった。嫌な予感がした。
話を聞いて、最初に頭に浮かんだのは、木刀のことだった。
次男——ノリゴリ隊長——の名前が刻まれた木刀。次男のために用意した大切なものだった。それが自宅から持ち出されて、主犯格の友人の手に渡り、後輩への集団暴行に使われた。
「自分は見ていただけ」
エイリアン王子は繰り返した。確かに、直接暴力を振るったわけではないかもしれない。でも、弟の名前が刻まれた木刀が凶器になった。その事実の重さは、言い訳では消えない。
その夜、僕は感情を押さえながら、事実だけを確認した。翌日、学校へ連絡した。
そして翌日、視聴覚室へ向かった。
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