
第4話 「そーだね」という、再生の合言葉
- 割引あり
辛ラーメンを完食した、と僕は妻に言った。
ちょっと自慢げに。辛いものが苦手で「お子ちゃま」とからかわれていた分、得意げに報告した。
妻は少し間を置いてから、こう言った。
「それ、鬱の傾向じゃない?」
笑いながら言ったわけじゃなかった。心配そうな顔をしていた。
味覚が鈍くなることがある。強いストレスが続くと、辛さや痛みへの感覚が変わることがある。僕はその話を聞きながら、自分の中で何かがつながっていく感覚があった。
そういえば、最近よく涙が出る。理由もなく、気づいたら目が潤んでいる。
僕は自分の体が変わっていることに、妻に言われるまで気づいていなかった。
7月のはじめの夜、妻がカウンセリングの結果を話してくれた。
「鬱寸前だから、心療内科を絶対に受診するように、って言われた」
リビングのソファに座って、二人で向き合っていた。
しばらく、何も言えなかった。
妻がここまで追い詰められていたことを、知っていたようで、知らなかった。毎日隣にいて、一緒に子どもたちのことを話して、一緒に悩んで、それでも僕には見えていない部分があった。
さらに、僕自身の特性が妻を無意識に傷つけている可能性があるとも言われたらしい。
僕も、検査を受けようと思う。
自分の「脳の取扱説明書」を手に入れるために。
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