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コむビトノナビ―癜ず金

    コむミ゜ギ


    幎越しの恋人ず別れた。
    圌ずの運呜は出䌚ったずきから決たっおいたのだろう。
    結局前を向くのに3幎かかった。


    「お芋合いでもしない」
    「いいわね」 即答できた。

    幎の離れた男性だった。
    無意識に頭の䞭で蚈算を始めおいた。
    ただ、喪明けしたかった。
    䌚おう。

    初察面、星付きレストランでランチ。
    完璧に敎えられたセッティング。
    私の息は浅くなった。
    垰宅盎埌、ひどく嘔吐した。

    回目のデヌトは、私がコンサヌトを指定した。
    チャむコフスキヌ
    ピアノコンチェルト第番
    指揮者の深い呌吞でホルンが響き、匊がなる。
    そこぞ、矎しく柄んだピアノのむンパクト。

    気持ちの高揚ず裏腹に、圌の隣で私はむせこんだ。止めねばず思うほどむせ返し、矎しい調べは私の意識の倖偎ぞず消えた。

    䌚堎を出た。身䜓が圌を拒絶しおいた。


    犊みそぎ
    ―― お祓い
    倧奜きだった祖母の声ず重なる。
    気付くず指はすでに、次のコンサヌトを探しおいた。

    そういえば  
    “コンセルトぞボり、良かったら来ない”
    メッセヌゞをもらっおいた。
    4日埌。
    行こう。


    穊
    ―― それなら、衣装は癜よ
    はみ出しがちな母の声が降りる。

    ステラマッカヌトニヌのパンツスヌツ。
    それでも気分はゎヌルド。
    倧ぶりのピアスに、ティファニヌのボヌンカフ。

    チャむコフスキヌ
    ピアノコンチェルト第1番

    挔奏は、瞬きする間に終わっおいた。
    鳎りやむこずのないスタンディングオベヌション。指揮者ずピアニストは、あろうこずか、くるみ割り人圢、金平糖の螊りを即興連匟でアンコヌルに応えた。
    犊は、そこで終わっおいた。
    同䞖代の若き指揮者ずピアニスト。
    ぶ぀かり合うはずの個性は、䞍思議なほど調和しおいた。

    私の門が、音もなく開いた気がした。


    少し飲みたくなった。
    マンダリンオリ゚ンタルは、コンセルトヘボりの目ず錻の先。
    バヌに入った。

    二杯目のゞントニックに差し掛かったずころで、背埌から声がした。

    「コンサヌトにいらっしゃいたしたか」
    振り向くず、今倜の指揮者だった。

    「ステヌゞから、ずおも気になっおいたした
    あなたの装いが、目に぀いたんです。どんな女性だろうず」

    「ナンパにしおは、話ができすぎね」
    「八列目。癜ず金は意倖ず目に入るものです」
    「光栄だわ」
    「気になっおいた女性に、こうしお䌚えるなんお」

    圌の手が私の肩に觊れる。たるでチェロを支えるように、迷いのない重さで。
    肩がわずかに応えた。

    「あなたの垞套句ね。
    ずころで——即興であれだけ匟けるものなの
    音楜のこずは、よくわからないのだけれど 」
    「チェロが本業ですが、あのくらいなら。圌ずの連匟は、少し緊匵したした」
    「チェロでらしたわね。
    い぀か匟き振り、聎いおみたいわ」
    「もしよろしければ、今から」
    「埡冗談を」掠れ声になっおいた。

    䞀拍眮いお、笑った。頬が熱くなった。

    「お断りするのも無粋だけれど、もう遅いわ」
    「少しだけ、ここでお埅ちいただけたすか」

    圌はそう蚀っお、バヌを出お行った。
    ——倧人をからかうのもいい加枛にしおほしい。

    䞉杯目は、ドラむマティヌニにした。
    郚屋付けを頌む。


    ダニヌボヌむが、流れおきた。
    —— 懐かしいわね
    祖母の声が、かすめる。

    振り返らなかった。

    今倜の二人が奏でる、ピアノずチェロ

    埌ろ髪を匕かれる
    ——その手前で、グラスを眮いた。



    アムステルダム —  光


    窓から差し蟌む光にくすぐられお少しず぀目を芚たす。この街の光が私は奜きだ。
    隣で寝息をたおおぐっすりず眠る圌。時折り鍵盀を捉えおいるのか埮かに動く圌の现く長い指をこの街の光が照し、キアロスクヌロの神々しさを添える。圌の矎しい指に、私はただ觊れたこずがない。

    圌を起こさないようにそっずベッドから抜け出お、支床を敎えるず、ゞョギングに出掛けた。小1時間、携垯がなった。ようやく起きた圌からだった。
    「そろそろ朝食に行こうか」

    ホテルに戻るず、圌が近づいおきた。
    「今朝䜕時だったの」
    「3時過ぎかな。あい぀に呌び出されお。䌎奏しろっお。急にチェロ匟くっお。」
    「莅沢ね。䜕匟いたの」
    「ダニヌボヌむ」
    「゚ロいわぁ」
    「昚日さ、芳客にドキッずする女芋぀けたっお隒いでお。その女がバヌにいるっお、付き合わされた。最埌はゞャズで2時過ぎたで」圌の指が、錻で笑う。
    「でその矎人は」
    「消えおたっおオチ」
    「東掋系で、癜に金がどうずか蚀っおたな。目立぀んだよ、実際ああいうの .」
    䞀瞬の間

    「  でもさ、集䞭しろよっお話だよな。」
    圌はその矎しい指でクリストフルのカトラリヌを噚甚に操りながら薄く折りたたんだスモヌクサヌモンを口に運ぶ。

    「今日フラむト䜕時」私は確認する
    「倜」
    「食べ終わったら少し散歩しようよ」私を芗き蟌む様にしお止めた圌の指が、少し䞍安そうに私の回答を埅぀。
    「悪くないわね」ほっずしたのか、その指は、Bernardaud のモダンなカップを持ち䞊げる。
    「今朝はコヌヒヌなのね。」
    「抹茶ラテが良かったんだけど。。。」 䞍満そうに衚情を倉えたその指からは可愛らしさがあふれおいる。思わず笑っおしたった。
    「笑われおるの俺」


    レンブラントの『倜譊』を芋に行った。
    「明暗察比」぀ぶやいた圌の指は鍵盀を響かせおいる時の様に神々しい。

    「送らないわよ」
    やり堎のない圌の指は、匷がっおいる。
    「次は」 圌の指が苛立ちで小刻みに震える。
    「連絡するわ」私は曖昧に返事をする。
    「À bientÃŽt」
    私は静かにアクセルを螏み蟌んだ。
    バックミラヌ越しに圌が遠ざかる。ただ、圌の指だけはただ䜕かを蚀おうずしおいた。



    パリ — 倚幞感

    ギャル゜ンに、カフェ・オ・レずタルティヌヌをお願いしお、ドゥ・マゎの垭に着いた。
    巊岞の気配。
    束の間、パリの銙りに包たれる。


    五時を告げる教䌚の鐘。
    我に返り、足早にホテルぞ戻る。

    ――倧聖堂に色はね  
    母の声がよぎる。

    Natanの癜いケヌプドレス。
    パヌルは手に取っお、戻した。

    ゎヌルドを遞ぶ。


    ノヌトルダム倧聖堂が再開した。
    パリ生たれ。6歳たでここで暮らした圌が、サンサヌンスを匟く。

    聖堂内は息を呑むほど矎しく、モダンに生たれ倉わり、煀が萜ちた空間は枅涌感が挂う。倩井に吞い蟌たれ、アヌチを巡り、薔薇窓ぞず昇っおいく。音は、逃げ堎を倱ったたた満ちおいた。

    パリに諞瞁ある音楜家達を集めた゚スプリの効いたプログラム。

    奇跡的に被害を免れたパむプオルガンで華やかに始たるサンサヌンスの番で開挔。倧聖堂党䜓に響き枡る調べは、䞀瞬にしお私を包み蟌む様に倩界ぞ連れ去った。

    圌の指は、その巚倧な残響の䞭でさえ、音を濁らせなかった。
    透明なたた、たっすぐ私ぞ届いた。
    それはたるで倩から私の身䜓に聖氎を染み枡らせおくれたような幞犏感だった。

    神の響きで身䜓が満たされ、倧聖堂を出た。

    “リッツのバヌで埅っおるよ”
    圌からメッセヌゞが届いおいた。

    「䜕飲んでるの」
    「ブラッディメアリヌ」圌の指がケラケラ笑う。
    「私は、ドラむマティヌニで」
    圌の指が背筋を正す。
    「倚幞感」自然ず私の口を぀いお出た。
    グラスに添えられた圌の指は、バヌのシックな照明の䞋で誇らしげだ。

    お酒があたり匷くない圌はリッツのシヌツに挟たれるなり深い眠りに萜ちた。神ずの察峙を終えた圌の指は、月明かりに照らし出されお、ずおも劖艶だ。
    この指に觊れたい。




    りィヌン —    䞀拍


    “楜友協䌚で倧指揮者ず。䞀緒に来おほしい”
    圌が匷く意志を䌝えおきたのは初めおだった。
    チャレンゞねりィヌンは。気持ちが揺れた。

    だが、私も案件を抱えおいた。
    “生憎、ロンドン。クリスティヌズ”
    返事はなかった。




    間に合った。

    「楜友協䌚たで」
    運転手に告げる。

    癜のパンツスヌツのたた。着替える時間はない。

    りィヌン。
    ――正解は、黒でしょう
    遠い日の祖母の声。

    ――せめお、アクセサリヌだけでも。

    信号埅ちで、
    ゎヌルドのピアスずネックレスに替える。


    りィヌンフィルのホヌム
    完璧な垃陣のベヌトヌノェン
    皇垝
    明日には、歯に衣着せぬ評論家達の批評で、公挔の評䟡を叩き぀けられるりィヌンの厳しさに、二十代の圌がどこたでチャレンゞできるのか。私は、胞の高鳎りを感じた。


    䌚堎はスタンディングオベヌションに包たれた。

    だが、倧指揮者はアンコヌルを蚱さなかった。
    呌吞が䞀拍ずれたから。
    ただ䞀拍。


    “䞀拍” 圌にメッセヌゞを送った。
    “white and gold” 盎ぐに返事が来た。
    “今からそっちいっおいい”
    圌は私の郚屋に入るなり、ベッドに倒れ蟌んで朝たで起きなかった。疲れ切った圌の指は、悔しさを滲たせおいた。



    「アむスクリヌム」圌がやっず目芚めた。
    「デメル行かない」
    「いいわよ、早く着替えお」
    「やったヌ」ベッドで圌の指も無邪気に喜ぶ。


    「私はデメルトルテずコヌヒヌにするわ」
    「アむスクリヌム食べないの」
    「いらない」
    「なんだよそれ」メニュヌを持぀圌の指がふくれおいる。

    銀噚にのったアむスクリヌムが運ばれおきた。飛び぀く圌は無防備そのもの。
    「矎味しい」
    圌の回答を埅たずに、スプヌンを奪った。
    冷たい甘さが舌に広がり、思わず目を瞑った。
    そのたた返したスプヌンを、圌は䞀瞬だけ芋぀めお、䜕も蚀わずに口に運んだ。

    「ちょっず䞀緒に行きたいずこあるの」
    「アむス぀いおるよ」圌は笑った。
    「いいよ。いこいこ」アむスクリヌムに満たされた圌は無垢に返す。


    ベヌトヌノェンフリヌズ。

    「ショック療法よ」
    ヘッドホンを圌の頭にかぶせる。

    爆音の第九
    壁のクリムト
    善悪ず゚ロスが枊を巻く

    圌の脱力した腕の先で、その指は、䜕かに觊れようずしおいるこずだけは分かった。




    ブダペスト —    抜け


    プヌルの埌、サりナで少し抜けた。
    ゚ステに行く途䞭、メッセヌゞに気付いた。
    “ゲネプロ終わったら盎接オペラ座行くから”

    ブダペストのWは、ハンガリヌ囜立歌劇堎の真ん前だ。
    “ホテル寄らないのね”


    「オペラ芋に行かない」
    圌が、カノァレリア・ルスティカヌナのチケットを送っおきた。
    圌のコンサヌト前倜だった。

    120分の゚ステは、デコルテず背䞭も远加しおたっぷりずむくみを取っおもらった。
    ドレスアップしたかった。珍しくりェストを絞っおふんわり広がったサブリナネックの癜ドレスにゎヌルドボヌンカフを腕にした。


    絢爛なオペラ座。
    敎い過ぎた空間に息が浅くなる。すこし目眩。

    ――気付薬
    遠くで祖母の声。

    バヌでペリ゚ゞュ゚を頌む。
    ひず口。
    私はやっず呌吞ができた。

    開挔を告げる鐘。
    芳客達が垭に収たり、ラむトが萜ちたずころぞ、圌が恐瞮しながら入っおきた。隣人達は少し迷惑そうに腰を浮かせお通すず、圌は恭しくお瀌を蚀い私の隣に収たった。

    「怖いんだよね、明日」
    圌の呟きが匕っかかった。

    だが、私はシチリアの激しい感情のぶ぀かり合いに没入した。
    䞍倫、埩讐、階士道、愛
    茶番劇ず知りながらも、矎しい間奏曲が流れるず涙が頬を䌝った。

    ティッシュを探すが芋぀からない。

    䞁寧にアむロンがけされたハンカチが隣から差し出された。

    䞍安げな、それでいお獣めいた芖線が涙を拭う私の頬に突き刺さり、私は圌の指に芖線を萜ずす。圓惑するその指先に今床は私の理性が远い぀かない。

    私の方から圌の指に觊れた。



    翌朝、私はシャワヌの音で目を芚たした。朝日が圌の抜け殻を照らしおいた。

    日が燊々ず降り泚ぐ郚屋で蚀葉少なく、しかしゆっくりず食事をずり、圌を送り出した。ただバスロヌブ姿の私がドアノブに手を掛けるず圌がそっず指を重ね、俯いたたた、䜕も蚀わなかった。その指からは、少しだけ力が抜けおいた。

    リスト音楜院
    リスト䜜品のみで構成された今倜のプログラム。満垭だった。

    マれッパの最初の音
    「ピアノね」
    圌の䞍安はピアノだ。


    倉わった。
    今日の音は危うい。


    最埌のコンチェルトを匟き終えるや䌚堎は総立ちずなった。

    私は立ち䞊がれないでいた。
    聎き芚えのあるメロディが濃厚で゚ロティックに響いた。

    — 愛の倢


    圌はどんなピアノも匟きこなしおきた。
    ただ唯䞀、扱いきれないのは私だった。
    扱いきれないものほど、手攟せなくなるのかもしれない、圌の指が囁いおいた。




    カヌネギヌホヌル — white and gold


    私は静かに垭に着く
    ——やっぱり癜
    二重円の䞋、祖母は埮笑む

    チャむコフスキヌ
    ピアノコンチェルト第1番 

    わずかに倖した拍でオヌケストラず掛け合う


    カヌネギヌデビュヌ
    止たないスタンディングオベヌション
    アンコヌルを匟き終えおもなお続く拍手
    圌はもう䞀床座る


    「White and Gold」

    ——


    最埌の音が優しく眮かれた。

    残り音ノコリネ
    静謐




    鎮魂

    東京 —  ホテルオヌクラ

    六角のドりダンが矎しく色づく頃になるず、玄関を入った途端に私は、グランマルニ゚の銙りが沞き立぀クレヌプシュれットが食べたくなる。ただ、本通、別通なんお呌んでいた時代に、私はクレヌプシュれットのためにお䟛した。䜜る人によっお倉幻自圚なオレンゞピヌルを䌝う奔攟な炎を楜しんだ。2枚でも3枚でも食べられた。ただ、い぀も最埌はバタヌの重みがずっしりず残った。


    ロンドン —  サボむ

    オヌドリヌヘップバヌンが花を売り歩いおいたコベントガヌデンの劇堎街からすぐのずころにあるから、劇を芳た埌歩いおホテルに垰れるのが䟿利でね。

    ここの土地勘がさっぱりなかったあの頃の私は、ロむダルオペラずテムズ川がこんなに近いなんお想像できおいなかった。

    あの蟺りを歩いおいるず、面癜いお店があっおね。ハルシオンデむズなんおいうのは、ロむダルワラントがいく぀も䞊んだ玠晎らしいお店ですよ。い぀か1぀くらいぱナメルボックスを買うずいい。

    それが、あんなに小さな物だず知ったのはだいぶ埌になっおからだ。

    パリ —  リッツ

    お食事のお瀌にず、パリに戻っおいった圌女から、シャルべのチヌフが届きたしたよ。圌女はすっかりパリの゚スプリをたずっおいる。

    お食事のお瀌を考える時、䞀番にシャルべを思う。背番号1を私はただ䜿えたこずがない。氞久欠番䞭。

    シャルべはノァンドヌムを背に、少し行ったずころですね。リッツにはノァンドヌムずは反察偎にも出入口があり、そこがカンボン通り。シャネルのアトリ゚ですよ。圌女はリッツに䜏んでいたから、行き来しやすくおね。

    今、私の身䜓はようやくこの配眮を理解したけれど、ただ蚀葉だけがあの頃の私を通過しおいた。


    ニュヌペヌク —  プラザ

    プラザの食事も毎日では飜きるから、運動がおられむバヌズたで歩いお、ベヌグルずパストラミを買っお、プラザの郚屋でサンドむッチにしお食べるず、それがうたくおね。
    コロンビア倧孊たで行くず少し怪しい雰囲気になるから、女性1人ならば、せめお、リンカヌンセンタヌあたりたでですよ。

    今、私は、プラザかられむバヌズたでは
    歩かない。遠いから。


    レマルク『凱旋門』 —  パリ
    セヌヌ川にかかる橋の䞊から今にも飛び降りようずしおいるバヌグマンを通りかかったシャルル・ボワむ゚が翻意させ、近くのバヌに入っお飲たせたのがカルノァドスでね。比范的、手頃なりんごの蒞留酒がカルノァドスなんですよ。

    カルノァドスを飲むたびに、繰り返し蘇る蚘憶。デュマ・フィスの凱旋門だず勘違いしおいた私。䜕床か蚂正された蚘憶はあるのに、レマルク、は芚えられなくお、やっぱり、デュマで定着しおいる。間違い。


    『アルトハむデルベルク』 —  ハむデルベルク

    ザクセンの王子が身分違いの䞋宿先の嚘に恋をする。勿論、叶わぬ恋ですよ。王子がネッカヌ川の蟺りに䜇んで、詩を朗読するんですよ。
    必死になっおその詩を誊じたものです。

    詩の朗読がたさか始たっおしたい戞惑う皆の空気感。ペヌロッパに䜏む様になった私。詩の朗読はこちらの文化だず知る。
    私は未だそのお䜜法を心埗おいない。

    流れる時の䞭で、こうしお匕っかかる楔くさび たち。

    そしお、あの問い。

    ピカ゜—

    残ったもの。



    ベルリン —    ノァルドビュヌネ

    真倏のあの日、私はやり堎のない気持ちを連れおノァルドビュヌネの石段に腰を䞋ろした。舞台袖から䞍安げな足取りでゆっくりず出おきた高霢の指揮者を、枩かな拍手が包みこんだ。

    偶然だった。
    䞍意にポスタヌの指揮者ず目があったのは、開挔数時間前だった。

    スパニッシュナむト
    匕き寄せられた。


    怅子に座っお指揮棒を振り䞋ろす姿に、以前の様な粟圩さはない。

    皋なくしお、
    遠くに鳎るスネアドラム、
    あのリズム

    フルヌト、クラリネット
    連れ立っお近づいおくる

    ゚ネルギヌは増し
    やがお地響ぞ

    最高朮 ヌ そしお、

    䞀気に静寂ぞ萜ちる

    メメントモリ

    圌女に今日が来なかったこずを想う

    私は、必死に楔くさび をうっお今日にずどたる

    残ったもの



    white and gold


    パリがピヌクだった。

    パヌルクリア
    批評家たちはわたしの音をそう名付けた。

    りィヌン。
    䞀拍のズレ。

    ブダペスト。
    収めきれなかった。

    「ごたかし」
    圌女は、刺した。

    マルタ島ぞ誘われた。
    カラノァッゞョ
    匷すぎた。
    聖堂から出お吐いた。


    わたしはコンサヌトをこなした。
    レビュヌは芋なかった。それでよかった。
    そしお、
    わたしはステヌゞから圌女を探さなくなった。


    「敎いすぎね」
    「そうかな」
    圌女のコトバは、わたしを通過し始めた。



    「フランスの光」
    「急にどうした」
    「ロンシャン」
    朝日に埮睡みながら、圌女はわたしの隣でもう䞀床寝入っおしたった。
    静かだった。

    わたしが目を芚たした時、

    圌女は
    もうそこにはいなかった。


    完璧に匟けおいたけれど。


    垫のマスタヌクラス
    バヌれル

    垫は、䜕も蚀わなかった。
    䞀曲だけ匟いお芋せおくれた。

    ラ・チ・ダレム

    垫の指は、時々、䞍思議な間をずる。


    バヌれルからロヌカル電車を乗り継ぎ、無人駅に぀いた。
    ここからは、歩いお行くしかないのだず、乗り合わせた人が教えおくれた。


    Chapelle Notre-Dame du Haut


    『du Haut』
    高いずころの

    どれくらい登っただろうか。
    自分の息遣いが聞こえた。

    ひらけた芖界に、コンクリヌトの塊が目に飛び蟌んだ。
    「これが、ロンシャン ..」
    裏切られた。

    䞭ぞ入るず、
    蚀葉を倱った。

    倧小様々な窓から差し蟌む光は䞀぀ずしお同じ方向を照らしおいない。
    どこにも収める必芁がない。

    矎しい曲線を描くコンクリヌトの壁は、
    その倚様な光ず自由に察話しおいる。


    その時、シスタヌが瀌拝堂ぞ入っおきた
    「Pardon」
    話しかけたわたしの声が䞍思議によく響いた。

    「お静かに。
    祈りの堎ですので。」

    「オルガンは」
    「倱瀌したした。ピアノを生業にしおいるので、぀い気になりたした。」
    聞かずにはいられなかった。
    声を萜ずしおも、十分にシスタヌの耳に届いた。

    「そうでしたか。ここには、オルガンはございたせん。お気づきのように、人間の声で十分ですので。」

    十分


    わたしは、りィヌンぞ飛んだ。
    あのコンサヌト以来。


    デメルぞ行った。
    アむスクリヌムは、
    甘かった。

    街を歩いた。
    金ピカだった。

    分離掟䌚通
    黄金のドヌムの攟぀光は思ったより明るかった。

    それでよかった。
    そのたたで。

    あの時、
    そしお、今。

     
     
    ペネコです。 境界ず䜙韻に぀いお、曞いおいたす。

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