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Startupeable Silicon Salsa 解説:「最もアメリカ的なW杯」──Anthropic対Codex、中国製オープンソースモデルの台頭

    ▶ 元エピソード: https://startupeable.captivate.fm

    2026年7月20日

    概要

    本記事は、中南米のスタートアップとベンチャー投資をテーマにしたポッドキャスト番組「Startupeable」の対談回「Silicon Salsa」を日本語でまとめたものです。投資家と起業家が、米国で開催されているサッカーワールドカップと、生成AIをめぐる最新動向について語り合っています。

    前半では、アメリカで開催されたワールドカップがいかに「アメリカ的」で商業的なイベントに仕立て上げられたか、そしてSNSやショート動画クリエイターが主役になった「クリエイターのW杯」という側面が語られます。あわせて、米国におけるヒスパニック・中南米系の人々の経済的影響力の大きさと、それが起業家にとって持つ意味についても議論されています。

    後半は、AIコーディングツールをめぐる勢力図の変化が中心です。3か月前まではAnthropicのClaude Codeを9割方使っていた出演者が、今ではOpenAIのCodexへと比重を移しつつあること、その背景にあるインフラ規模の差、そして中国発のオープンソースモデルの急速な台頭が語られます。さらに、AnthropicとOpenAI、そしてSpaceXなどの相次ぐ新規株式公開(IPO)を見据えた投資戦略についても踏み込んだ議論が展開されます。

    「最もアメリカ的なW杯」

    出演者たちは、今回のワールドカップを「歴代で最もアメリカ的なW杯だった」と評しています。ある出演者は「これは徹底的に資本主義的なW杯だ。世界中の愛国心を小さな箱に詰め込み、高価なラベルを貼って売り返すようなものだ」と表現しました。

    スタジアムのカメラワーク、インフルエンサーやクリエイターの起用、チケットの売り方や座席の配置に至るまで、すべてがアメリカのエンターテインメント・スポーツの流儀で設計されていたといいます。米国でバスケットボールの試合を初めて観たときに「これは半分がショーで、半分が競技だ」と驚いた経験を引き合いに出し、「今回のサッカーは、それに近い感覚だった。競技よりショーの割合が高かった」と語られています。

    決勝戦のハーフタイムショーにはBTS、Justin Bieber氏、Shakira氏、Madonna氏、Coldplayといった大物アーティストが名を連ね、スペイン代表の得点シーンではRosalía氏の楽曲が流れ、アルゼンチン代表の試合ではBizarrap氏が登場するなど、有名人が総動員される演出も話題になりました。

    この演出はFIFAと米国のエンタメ業界によって周到に設計されたものだ、というのが出演者たちの見立てです。前回のカタール大会は年末開催で気候も異なり、少なくとも米国ではこれほどの熱狂はなかったのに対し、今回は夏休みと重なったこともあり、SNSを中心に一気に主流(メインストリーム)化したと分析しています。

    クリエイターが主役になった大会

    今回のW杯のもう一つの特徴として、出演者たちは「クリエイターのW杯」だった点を挙げています。ある出演者は「試合が終わった瞬間には、もうプロンプトとトークンを手にした人々が試合を観ながら、キャプチャーし、動画を制作し、公開している」と語り、動画制作にかかる時間が事実上ゼロになった現実を指摘しました。

    昨年の夏(2025年)頃までは、AIによって「これまでできなかったことができるようになった」と驚いていたのに対し、今年の夏は「もうそれを当たり前のものとして受け入れてしまった」といいます。W杯という巨大イベントを通じて、質の高い動画が驚くほど速いスピードで生み出される様子を目の当たりにし、AIの活用がすっかり日常に溶け込んだことを実感したと語られています。

    企業のマーケティングについても言及があり、Airbnbが制作したW杯向けの30秒広告が高く評価されました。ビールや自動車、McDonald's($MCD)のような大企業の広告が「どれも凡庸(meh)だった」のに対し、Airbnbの広告は「非常によく考えられ、感情に訴えかけ、ブランドとの距離が近い、まさに優れた芸術作品だった」と称賛されています。

    米国におけるヒスパニック・中南米系の経済的影響力

    W杯の熱狂と結びつけて、出演者たちは米国におけるヒスパニック・中南米系の人々の経済的な存在感の大きさを論じています。今大会は多くの移民層に向けて売り込まれ、Wells Fargo($WFC)のような100年以上の歴史を持つ伝統的な銀行までもが、アメリカ訛りのスペイン語による広告をTelemundo(スペイン語放送局)で流していた点が印象的だったといいます。

    伝統的な米国の銀行がこうした広告を打つのは、そこにビジネスチャンスがあると判断しているからだ、という指摘です。Bank of America($BAC)がメキシコ系アメリカ人選手を起用したキャンペーンを展開したり、Nubank($NU)がインテル・マイアミのスタジアムを冠スポンサーしてマイアミの中南米系層にリーチしたりする動きも紹介されました。

    ある出演者は、ポッドキャストを米国で成長させる過程で得た気づきとして、「外から見て人々が想像するよりもはるかに多くのヒスパニック・中南米系の人々が、大きな権力と影響力を持つポジションにいる」と語っています。上場企業のCEOやCTO、CIO、エンジニアリング担当VPといった要職に、そうした人々が数多く就いているというのです。

    この文化的な親和性は、中南米系の起業家が米国で事業を始めたり成長させたりする際に、市場参入(GoToMarket)の強みになると出演者は指摘します。特に事業の初期段階では、個人的なつながりで意気投合したことをきっかけに、パイロット導入やデザイン・パートナーシップに踏み切ってもらえるケースが多いといいます。それにもかかわらず、この人的ネットワークという資産を意識的に活用している起業家は非常に少ない、というのがその見立てです。

    AnthropicからCodexへ──コーディングツールの勢力図の変化

    後半の主題は、AIコーディングツールをめぐる勢力図の変化です。ある出演者は「3か月前は自分の利用の95%がClaude Code(AnthropicのAIコーディングツール)だった。だが今は半々か、むしろCodex(OpenAIのAIコーディングツール)寄りになっている」と明かしました。もう一人の出演者も「自分はCodexをより多く使っている。動作が速く、レスポンスも良くなっている」と同意しています。

    出演者たちが注目するのは、この変化が製品やモデルそのものの優劣というより、インフラの規模に起因するという点です。「Anthropicはとても良い製品を持っているが、それをスケールさせることができなかった。加えて、人気が出すぎたことが仇になった。営業面では大成功で急成長したが、それは諸刃の剣だった」と語られています。Codexは需要に応じてうまくスケールできており、この点があまり語られていないと指摘されました。

    一方で、Claude Codeにも根強い評価があります。ある出演者は「創造的な作業、たとえば文章を書いたり、ニュースレターを書いたり、動画を編集したり、戦略を議論したりといった発想を広げる作業はClaude Codeで行う。実行に近い作業はCodexに任せる」と使い分けを説明しています。Claude Codeはより創造的で計画立案に向き、Codexはルールやフレームワークに従って実行するのが得意だ、というのがその見立てです。

    Cursorについても言及があり、Claude CodeやCodexが台頭してもなお、自分でコードに手を入れたい「職人的な」ユーザーには依然として支持されているといいます。

    中国製オープンソースモデルの台頭

    議論はオープンソースモデルとフロンティアモデルの関係へと移ります。ある出演者は、数週間前に中国のZ.AIという研究所からリリースされたGLM 5.2という新モデルを試したことに触れ、「AnthropicのOpus 4.8と同等の性能を、その10分の1から5%程度のコストで実現している、という声が多かった」と紹介しました。

    もっとも、出演者たちはこの中国勢の強さを「ゼロからのイノベーションというより、既存モデルの蒸留(ディスティレーション)によるキャッチアップの側面が強い」と分析しています。巨額の費用をかけて開発された非公開モデルを、中国勢がリバースエンジニアリングによって追いつき、追い越す、という構図です。

    ただし、それが簡単なことではない点も強調されています。「もし簡単なら、フランスのMistralやヨーロッパの研究所もやっているはずだが、実際にはできていない」というのです。中国勢の強みは、模倣を厭わない文化的風土、賃金水準、大学の層の厚さといった要素の組み合わせにあると分析されました。

    さらに、多くの中国製モデル(Alibaba($BABA)などのもの)は、当初はオープンソースで公開され、フロンティアに追いついた段階で非公開に転じる傾向があると指摘されています。「フロンティアモデルは常に先陣を切る槍の穂先だが、市場に出て誰でも使えるようになると、そのビジネスモデルゆえに中国勢に模倣され、追い越されやすい。だが追い越されるのは一時的で、すぐにまた新しく、より強力なものが出てくる」というのが、出演者の描く「猫とネズミ」の構図です。

    この3年間、その関係は一貫して一時的なものにとどまっており、オープンソースが支配的になった日が来て初めて「オープンソースこそが正しい構築手法だ」と言えるが、まだその段階には至っていない、と結論づけられています。もう一つの可能性として、最良のモデルが優秀すぎるがゆえに、それを使ってさらに自らを改善する「自己再帰的(self-recursive)」な進化により、むしろ差が広がっていくシナリオも提示されました。

    相次ぐIPOと投資戦略

    番組の後半では、AnthropicやOpenAI、そしてSpaceXといった企業の相次ぐIPOを見据えた投資戦略が議論されました。中国のDeepSeekも近くIPOを計画しているとされ、フロンティアモデルに関連したIPOがアジア側でも進行しつつある点にも注意が促されています。

    「今10万ドル(約1624万円。1ドル=162.39円換算)を渡されたら、どうポートフォリオを組むか」という問いに対し、ある出演者は「Darío氏(Anthropic)のナラティブのファンではないが、それでも半分の5万ドル(約812万円。1ドル=162.39円換算)をAnthropicに入れる」と答えました。その理由として、Anthropicが技術人材を惹きつける力の圧倒的な強さを挙げ、「Anthropicはサッカーで言えばReal Madridのようなものだ。勝ち続け、より良い選手を惹きつける」と表現しています。

    残りの5万ドルについては、3分の1をOpenAIに、3分の1をSpaceXに、残りの3分の1を半導体企業に配分する、という考えが示されました。半導体企業の候補としてはCerebrasのほか、中国でTSMC($TSM)を目指す企業のIPOも注目しているといいます。「10年後にAI向けハードウェアやチップの時価総額がすべてNvidia($NVDA)に集中しているとは考えにくく、他にも大きな勝者が出てくるはずだ」との見立てです。

    もっとも、別の出演者は「均等に配分する」戦略を支持しました。その理由は、これらの企業のIPOがすでに公になっている以上、爆発的な成功の妙味(edge)はすでに失われているから、というものです。過去のGoogle($GOOGL)の例を引き、「検索エンジンに賭けろと言われた当時、YahooとGoogleのどちらが勝つかを見極めるのは非常に難しかった。だがカテゴリー全体に賭けていれば、Googleで大勝ちできた」と語り、今回のフロンティアモデルというカテゴリーへの分散投資の合理性を説明しています。

    一方で、GoogleがIPOした15年前と現在とでは状況が異なる点も指摘されました。当時のGoogleは若く売上も小さかったのに対し、今のAnthropicやOpenAIは若い企業でありながらすでに非常に大きく、「Googleに投資して20倍、30倍になったのと同じことが、今後10年でAnthropicに起きるのか」は不透明だ、というのです。

    AI大手への懐疑と「ドゥーマー」批判

    議論の終盤では、米国社会におけるAIへの懐疑的な空気が話題になりました。Palantir($PLTR)のCEOであるAlex Karp氏が、AIモデルがユーザーのデータを取り込んでいると批判し、米国の多くの経営者がAI研究所のリーダーたちに懐疑的だと語った動画が拡散したことにも触れられています。

    ある出演者は、Sam Altman氏(OpenAI)やDarío氏(Anthropic)について、「彼らは間違いなく世代を代表する起業家であり、我々の歴史上最も重要な技術を築いた。だが彼らがAIについて語るのを聞いても、まったく心が動かされない。英語で言うところの『ドゥーマー(悲観論者)』だからだ」と語りました。「我々にはこれほどの力がある、さあ行こう、と鼓舞してくれるMessi氏のような存在が必要なのに」というのが、その不満です。

    出演者は、サンフランシスコの内輪で、外部の人々がAIの波に乗り遅れていると責める傾向があることを自己批判的に振り返り、「むしろ、我々自身がAIの機会をうまく伝えられていないのではないか、と自省すべきだ」と語りました。テキサスやワイオミングの経営者に製品を売るとき、相手が求めているのは技術そのものではなく、自らの課題に対する解決策であり、「最も成功した企業の多くは、優れたエンジニアではなく、優れたマーケターや、技術を大きな市場に届ける方法を知る営業によって築かれてきた」と指摘しています。

    AIの利用コストと今後の展望

    最後に、AIを本格的に活用するコストについても率直な数字が語られました。ある出演者は、Codex、Claude Code、一部のAPI利用、そして中国製モデルを合わせて、月に500ドルから1000ドル(約8万円から16万円。1ドル=162.39円換算)を費やしていると明かしています。そのほとんどは非公開モデルへの支出ですが、「1年後、2年後、3年後もこの状態が続くのか、それとも支出の半分が中国製モデルに移るのか」は未知数だといいます。

    もし後者の世界が訪れれば、AnthropicやOpenAIの企業価値は、現在期待されているほどには高くならない可能性がある、との見方が示されました。逆に、AnthropicがKimiのような優れたオープンソースモデルを取り込み、自社のオーケストレーターと組み合わせて自らの戦略の一部にする、という展開もあり得ると指摘されています。

    現時点でも価格競争は激しく、モデル各社が利用枠を頻繁にリセットしており、Mark Zuckerberg氏(Meta($META))やSatya Nadella氏(Microsoft($MSFT))が100万トークンあたり1ドルという水準を掲げたことにも言及されました。こうした健全な競争は、ユーザーにとっては大きな恩恵だといいます。ただし、AIを本気で活用しようとすれば月に1000ドル規模の費用がかかる現実は、決して安くないと結ばれています。

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