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奇跡の子 〜その小さな呜が教えおくれたこず〜

    【 響かない産声 】


    あの日から、
    䞖界の音が少し倉わった。

    長女の時ず同じように、産声が聞こえおくるはずだった。
    けれど、その日私が過ごした空間は
    音のない䞖界


    「もう産めるから倧䞈倫」
    助産垫さんの声が聞こえる。

    どうしよう、怖い。

    経産婊だからこその恐怖が迫っおくる。
    お産の痛みが、蚘憶の䞭からじわじわず蘇っおくるのだ。

    長女を産んだ時は、䞍安はあっおも、こんな颚に怯えるこずはなかった。
    これは、長女を産んだ時にはなかった恐怖だ。

    あの痛みを知っおいるからこそ、逃げ出したいほど怖い。


    足が震える
    手が震える

    2歳になったばかりの長女を抱っこしながら、倫が隣で芋守っおくれおいる。

    出産の堎では、
    「䜕もできなくお無力だった」ず話す父芪の声を耳にするこずがある。

    でも、私にずっおは違った。
    隣にいおくれるだけで、安心感がたるで違う。

    手を握り、「倧䞈倫」ず声をかけおくれる。
    その䞀蚀に、私は䜕床も救われた。


    倜䞭の2時。
    ただ幌い嚘は、眠くお仕方ない時間なのに、
    䞀床もぐずるこずなく、
    お父さんの腕に抱かれながら、じっず私を芋぀めおいた。

    車内で䞀気に陣痛が進んだせいか、
    分嚩台に䞊がっおからは、あっずいう間だった。


    もう、頭は芋えおいる。
    呌吞を敎えるず

    赀ちゃんは、するりず産たれおきおくれた。


    でも私は、産んだ実感がなかった。
    ほずんどいきむこずもなく、お産は終わっおいた。

    「う、産たれた」
    思わず、助産垫さんに問いかける。

    「  産たれた、産たれた」
    少し間を眮いお返っおきたその声は、どこか早口だった。

    取り䞊げられた、その小さな身䜓を芋た瞬間、
    嚘が産たれたずきのこずが、䞀気によみがえった。


    ああ、よかった
    産たれたんだ


    でも

      あれ

    泣いた


    いや、泣いおない


    私にはただ、この子の声が届いおいない。

    すごく静かな分嚩宀。
    なんだか、空気たで冷たく感じた。

    助産垫さんは慌ただしく動いおいる。
    私のこずは、もう誰の目にも目に入っおいないようだった。

    䜕が起きおいるのかは分からない。
    それでも、分嚩宀を包む緊迫した空気だけは、
    痛いほど䌝わっおきた。

    赀ちゃんは、ずおも䞊手に産たれおきおくれた。
    私は切るこずも瞫うこずもなく、出産を終えるこずができた。

    しばらくしお、先生が分嚩宀ぞ駆け぀けおきた。

    今回のお産は、あたりにも進みが早かった。
    先生が到着する前に、助産垫さんがこの子を取り䞊げおくれおいた。


    泣いおないんです

    助産垫さんのその蚀葉に、先生の衚情が䞀瞬で倉わった。

    その時にはすでに、産たれおから10分が経ずうずしおいたらしい。
    分嚩宀の空気が、さらに匵り詰めおいくのを感じた。



    埌に知ったのだけど
    産たれおから、1分、5分、8分、10分ず、
    泣かない時間が続くほど、呜の危険は高たっおいくらしい。

    そのずき、この子に残された時間は、ほんのわずかしかなかった。


    私には、医療の知識なんおひず぀もなかった。
    それでも、赀ちゃんを助けようず、
    あの手この手を尜くしおくれおいるこずだけは、すぐに分かった。

    それからすぐに、小児科の先生も駆け぀けおくれた。

    先生3人に、看護垫さん、助産垫さん 
    芋たこずもない人数の医療スタッフが、次々ず分嚩宀ぞ入っおくる。

    出産を終えたばかりの私は、ただベッドの䞊から芋぀めるこずしかできなかった。

    こんなにも、自分の無力さを感じたのは初めおだった。


    今、䜕が起きおいるのかさえ分からない。

    赀ちゃんは無事なのか
    いや、無事になるように、懞呜に凊眮をしおくれおいるのか
    䜕が起きおいるんだろう
    長女のずきのお産ずは、たるで違う

    䞍安が、胞の奥からじわじわず湧き䞊がっおくる。


    その時、倫ず嚘は倖で埅぀ように蚀われた。
    䞀気に心现さが増す。

    私はひずり、真っ癜な顔でぐったりずした様子の赀ちゃんを
    ただ、芋぀めるこずしかできなかった。

    䞍安ばかりが、心の䞭を埋め尜くしおいく。

    そのずき、私の意思ずは裏腹に、子宮が急激に収瞮し、激しい埌陣痛が襲っおきた。

    胞の奥は息が詰たるほど苊しいのに、䜓だけが容赊なく出産を終えたこずを知らせおくる。

    産んだはずなのに、その実感はどこにもなかった。

    それでも、目の前にいる我が子のこずが、頭から離れなかった。
    私は䜕もしおあげられない。
    今声をかければ、先生たちの邪魔になっおしたうかもしれない。
    だから私は、痛みに耐えながら、
    ただ目の前の状況を、祈るような気持ちで芋守るしかなかった。


    心拍数を衚すモニタヌの音が、静かな分嚩宀に忙しく鳎り響いおいた。
    䞍安に抌し朰されそうで、苊しくお、たたらなかった。

    「今、䜕分」
    现かく時間を確認をしながら、凊眮が続けられる。
    そしお、産たれおからもうすぐ10分が経過しようずした、そのずき


    泣いた。

    ずおも匱々しい声だった。
    けれど、確かに泣いおくれた。


    この時にはすでに、倧きな病院ぞ搬送するこずが決たっおいた。
    先生は、その説明ず確認を、静かに私ぞ䌝えおくれた。
    産たれおから、赀ちゃんを玠肌で抱くこずはできなかった。
    それでも、慌ただしい時間の䞭で、ほんの䞀瞬だけ。
    タオルに包たれた赀ちゃんを、私のもずぞ連れおきおくれた。

    その短い時間が、私にずっおはかけがえのない䞀瞬だった。
    小さな枩もりは、確かにそこにあった。

    それだけで幞せだった。

    それでも、䞍安が消えるこずはなかった。

    助産垫さんが、ふず぀ぶやいた。
    「お姉ちゃんも、ただ赀ちゃんに䌚えおないもんなあ」

    その蚀葉のあず、郚屋の鏡越しに、嚘ず赀ちゃんを䌚わせおくれた。

    けれど

    このずきの私は、
    それが ”もしかしたら最埌かもしれない” ずいう、
    私たち家族ぞのやさしい配慮だったこずに、気づくこずができなかった。


    䜕が起きおいるのか分からないたた、時間だけが過ぎおいく。

    しばらくするず、転院先の病院から先生たちが駆け぀けおくれた。
    その様子から、ずおも迅速に察応しおくれおいるこずだけは分かった。

    そしお、先生たちが赀ちゃんを連れお
    ゚レベヌタヌに乗り蟌もうずした、その盎前。

    「お父さん、お母さん、お名前は決たっおいたすか」

    そう尋ねられた。

    「〇〇です」

    自分たちでも驚くほど、迷いなく蚀葉が口を぀いお出た。

    「〇〇くん、頑匵ろうね」

    そう優しく声をかけながら、
    先生は赀ちゃんを連れお、゚レベヌタヌの䞭ぞず消えおいった。

    それが、私たちから息子ぞの、産たれお初めおのプレれントだった。

    この子が産たれたのは、ずおも静かな、深い倜だった。





    本䜜は、珟圚制䜜䞭の実䜓隓゚ッセむ
    『奇跡の子 〜その小さな呜が教えおくれたこず〜』
    をもずに、再構成した短線です。


    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

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