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初秋の候

    透明な手紙の香りかたは、少しずつ変わってゆくのかもしれません。

    書くよろこびに包まれた春を過ぎて、何もかもをやみくもに書きつけずにはいられなかった夏を過ぎて、書くことでほんとうに出会ったような気がした秋を過ぎて、そのすべてを手放したくなった冬を過ぎて、

    あまやかさも、
    みずみずしさも、
    おくぶかさも、
    そこしれなさも、

    その香りから、わたしはその意味を覚えました。
    かたちある言葉でかたちある物語を書いては、書いた覚えのない透明な手紙の香りを知りました。

    透明なのに、だれにも見えないのに、わたしはこの手紙にいったい何を書き続けているのでしょうか。
    だれにも見えないのに、わたし自身も見ることができないのに、なぜ透明な手紙は「手紙」のかたちをしているのでしょうか。

    ことしも香りかたが変わってきました。秋はあなたを思い出す。透明な手紙が、強く香る季節です。



    <369文字>


    シロクマ文芸部の企画に参加させていただきました。

     
     
     

    ヱリ

     
     
    3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビールとアートが好きです。へんなものを見つけると嬉しくなります。 ▼青山ヱリのアカウントはこちら https://note.com/aoyama_eri

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