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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.65「鳩の乱心」

    「ノックくらいしろ。」
    男は右県だけで俺を芋た。
    そしお再び県を手元の本に萜ずし、たたこちらぞ向いた時には䞡県で俺をずらえおいる。
    しかし顔の造圢぀くりのせいか、ひどく無関心のように芋えた。

    「鳎海先生 僕、土曜日ここぞ来たんですよ。」
    俺は圌の机の瞁に頬杖を぀く。
    「で」
    「でも先生、いらっしゃなくお。僕  」
    䞍意に口の䞭で䜕かが砕け、するするず溶けおいった。
    あずには牛酪バタず砂糖のため息が錻から脳ぞず抜け出いでた。
    俺は口から飛び出しおいるものを摘み、その姿を芋る。

    「鶩あひる  」
    「鳩はず。」
    机の瞁は、鳩の尟矜の残骞で散らかっおいた。
    「可愛くっお、食っちたうのが忍びないよ  」
    焌菓子の鳩の目を芋たら、俺はたたらなくなったのだ。

    「お前、それ初めおか  」
    男は少し意倖そうな顔をした埌のち、埐に立ち䞊がるず寝台の方ぞず歩いお行った。
    そしお身をかがめ乳癜色のブリキ猶を匕っ匵り出すず、さも倧事そうに運んできお机に眮いた。
    「孊䌚土産だ。気の枈むたで食えばいい  」
    圌が蓋を開けるず、郚屋は途端に溶け萜ちたのかず錯芚するほどの甘い匂いに包たれた。

    湯が陶噚を打぀音がする。
    「でも先生 どうしお連れおいっおくださらなかったんですか  」
    「どうしおっお  」
    俺はどうしたわけだかこの男を困らせたくお仕方がなかった。
    鳩の目を芋぀めた時のあの身を捩りたくなる感芚を圌の背に芚えたのである。
    「せめお、孊䌚に行くのなら蚀っおおいおくれたっおいいじゃないですか なぜ芋ず知らずの孊生から先生のご予定を教えられなければならないのです あの時の僕の気持ち、先生はお分かりになりたすか」
    湯が湯の䞭で茪郭を倱う音がやたらに長く尟を匕いた。
    「先生」
    俺は目尻がひり぀くのを感じた。
    それず重なるようにしお、片方の口の端だけが擡もたげおくる。
    歪んだ口で鳩の頭を砕き、蕩し、飲み蟌んだ。
    飲み蟌む前からひっ捕えおいた鳩の胞にかじり぀いたその瞬間ずきのこずだった。

    目の前に金瞁の玅茶茶碗ティヌカップが二぀眮かれた。
    䞊々ず玅色の茶が泚がれおいる。

    男は角砂糖をひず぀、茶に投じた。
    「お郚屋からは枯れ玫陜花でも芋えたしたか 僕を攟ったらかしにしお芋る景色はさぞ立掟だったでしょうね。」
    俺は䞋手な蚳詩文の劂き台詞を吐き捚お、猶から鳩を連れ出した。
    ここで圌はもうひず぀、角砂糖を沈める。

    たたひず぀、さらにひず぀──こんなこずを繰り返すうちに奎の茶匙ティヌスプヌンが砂利を掬い始めた。
    俺は気道から肺の葡萄たで党郚灌かれたような嫌な感芚に襲われた。
    いたたたれなくなっお目を逞らす。

    逞らした先には盞倉わらず敷垃シヌツず垃団が逆転した意味䞍明の寝台がい぀にも増しお、折目正しく、意味を為さないこずに倧真面目だった。
    その䞊に、䞍自然に几垳面に畳たれた黒い垃が芋える。
    その䞊には掋綎ようずじの本、そしお孊生垜子  
    眠かず思われるほどに敎えられた狩堎に──なんの疑いもなく、ずいう皋俺は銬鹿ではない。
    芋瞊みくびっおもらっおは困る。

    ただ俺は十二の頃に嫌々叫ばされた、遊䟠ノ粟神ココロがどうしたずかいう歌──朝が来るたび痛む顎のたた  おかしな味を舌に乗っけたたた吐瀉ゲロでもぶちたけるみたいに歌い叫んだあれを今曎ながら倧矩名分にしお、寝台の前に立った。

    俺は獲物を芋せびらかすが劂く鳩を咥え、そのたた倖套を矜織り、孊生垜子を目深にかぶる。
    栎檀の鈍金の茝きは芋るたでもなく目に浮かぶ。
    掋曞を片手に、俺は奎の意味䞍明の寝台にう぀ぶしおぱらぱらず灌け玙を繰る。

    「なあ」
    「䜕ですか 先生。」
    「お前  『可愛くっお忍びない』なんお蚀っおおいお䞀䜓䜕矜食ったんだ」

    俺は溶けた脂でぎらりず悪い光り方をする指を折っお数えた。

    寝台から飛び降りお、倖套を翻した。

    ──さながら翌を取り戻した蝙蝠の劂し

    「知らねェや」
    俺は奎の顔の真ん前で蚀っおやった。
    しかしその埌すぐに萎しおれおみる。
    「気の枈むたで  こんなに可愛くっちゃ枈むものも枈たないじゃないですか」

    圌は䜕も蚀わなかった。
    ただ抌し黙っお俺の口の端を芪指でひず撫でするず、小卓に鍵束を攟った。
    「出る時、閉めろ。絶察にな。」
    分厚い本の束を抱え、扉の裏ぞず消えた。

    䞀人にされお、心蚱なくなった。
    空のブリキ、床に小卓に寝台に撒き散らした鳩の面圱  

    長怅子゜ファに腰を䞋ろし、金瞁に唇を圓おる。
    もうすっかり熱を倱った玅色が、舌を転げ、喉を冷やした。
    䞍思議ず心地が良かった。
    玅茶茶碗ティヌカップには玅く现い茪が二本残されおいる。

    窓が空いおいる。
    始業を告げる鐘が聎こえた。

    鍵束に觊れる。

    残り銙が消えるたで、俺は目を閉じるこずにした。

    ↑
    【創䜜倧賞2026】
    オヌルカテゎリ郚門゚ントリヌ䞭
    鳩サブレヌの歎史は長いのだ。
    倧正の文孊青幎をも魅了する、あの味。


    ↑
    法曹厩れの名前は久米くめ君でした。
    はい、名付けたわけじゃないです。
    私の倢の䞭でそう呌ばれおいただけです。

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    恋愛小説らしきものも曞きたした。

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    【゚ッセむ】
    あくたでも蚀葉のリズムのために男性を「オダゞ」呌ばわりしたした。
    蚱しおください。
    普段は幎䞊の男性のこずは「アニキ」ず呌んでおりたす。
    それはそれでどうなんだよ

    ↑
    いっこうに䞊達しない文章力。

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    【゚ッセむ】
    たぶんこれ去幎の嚘の運動䌚芋に行った話。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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