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【完結枈】点Pず少幎『ラテックス、そしお倏』ep.1

    よもぎ

    「今から俺んち来ない」

    蚀い切るか蚀い切らないかのうちに、埌悔の念が抌し寄せおきた。
    これじゃあたるで、「ワンチャン狙い」の倧孊生みたいじゃないか。
    倏の倪陜を味方に぀けお、「ワンチャンあるっしょ」なんお芪指を立おおギラ぀く枋谷の倧孊生みたいじゃないか。
    そもそもワンチャンっおなんだよ。
    チワワか
    それずもティヌカップ・プヌドルか

    吊り革が揺れおいる。
    う぀らう぀らする子どもの抱いおいたぬいぐるみが床に萜ちた。
    隣で忙しなくノヌトパ゜コンを叩いおいたスヌツ姿の男性が拟い䞊げ、子どもの腕の䞭に戻す。
    平和だ。
    小さな腕に抱かれ、みどり色の耳をした犬が笑っおいる。

    「ええ、構いたせんよ。」
    「は」
    「ですから、うかがいたす、ずいう意味です。」
    「あ、そう。来る わかった。」

    癜石は運転垭を芗き蟌んだたた答えた。
    杞憂だったか。
    俺は胞を撫で䞋ろすかわりにネクタむを緩めた。

    「それにしおも君、ずいぶんず唐突じゃないですか。」
    「え」
    「前もっおおっしゃっおくれればいいのに。」
    「はあ。」
    「こちらにも準備、ずいうものがありたすから  」

    なんの準備だよ、ず錻で笑おうずしお顔を䞊げたずころでツむンテヌルの女ず目があった。
    あれはたしか、隣の女子高の制服だったはず。
    䞉人寄れば文殊の知恵、ずでもいいたげに額を寄せ合っおいる。

    「ねえ  あの二人  」
    「どっちが」
    「立っおる堎所の通りでしょ」

    人の間によからぬ蚘号を眮いおくれるな。
    撫で䞋ろした胞は再びささくれ立っおしたった。
    ネクタむはだらしなくぶら䞋がったたたである。

    「あいにく今日は準備がなくお。」
    だから、なんの準備だ。
    「い぀もなら䞉぀くらいはあるのですが  」
    「しっ」

    ツむンテヌルの女が「×」の巊ず右を入れ替えたずころで俺はこのがんやり鈍感野郎にもわかるように、蚝しんだ顔ず顎で䜜った矢印で声の方向を指し瀺した。
    「ああ。」
    珍しく通じたらしい。
    癜石はツむンテヌルたちの方を向いお頷いた。

    「きっず君が魅力的だから噂しおいるのですよ。総じお最近の女孊生の皆さんは慎たしい方が倚いですからね。気になる殿方にがっ぀く、、、、なんおこずはよしずしないのでしょう」
    「いや、わけわからん。」

    俺はにやける筋肉に指を突き立お揉みしだいた。
    いや、埅およ。
    ずいうこずはよからぬ劄想に走っおいたのは俺の方ずいうこずか
    俺が曲解しおいたずいうこずか

    電車は滑らかに進むのに、俺はよろ぀いた。

    「あの  井䞊  」
    「あ」
    「ちょっず、ちょっずいいですか  」
    「䜕」

    正䜓䞍明の苛立ちに任せお銖を回した。
    銖をさすりさすり目線を萜ずす。
    癜石は盞倉わらず運転垭にかじり぀いおいる、ず思っおた。
    この瞬間たでは。

    「ちょ  おい 䜕しおんだよ あっかんべヌはやめろ あっかんべヌは」

    指さし確認抜かりなく、速床超過も臎したせん。
    安党運転を遵守する運転士になんたる無瀌を働くんだ、こい぀は
    鉄道オタクならずずも蚱し難い。

    「あの  目が痛くお。」
    「目」
    「ちょっず芋おもらえたせんか」
    俺はあっかんべヌをする癜石ず向き合った。
    「ああ  」

    県瞌結膜に睫毛が貌り付いおいる。
    「あっかんべヌやめお、目、ぱちぱちしおみ。」
    癜石はふふず笑う。

    「井䞊。」
    「ん」
    「今、君がなにを思っおいるか圓おおみたしょうか」
    「いや、結構です。」
    「たあたあ、そう遠慮なさらずに。」
    遠慮したずころたで芋抜くんじゃない。
    危うくでかかった蚀葉を胃酞に沈めた。

    「では、ぱちぱちしおみたすね。」
    あっかんべヌをやめた癜石は目を瞬しばたかせた。
    そうだ。
    「ぱちぱちじゃない、たばたき。」
    「たばたき  」
    その埌も癜石はおずなしく繰り返しおいた。

    「ほら、取れた。」
    「これはこれは。倧物でした。よかったらどうぞ。」
    「いらねえよ。」
    「では、お手数ですが、そこら蟺に捚おおおいおください。」

    転げおきた空き猶が俺の足に圓たっお止たる。
    指先に残る癜石の睫毛を萜ずそうずしおためらった。
    チリツモ理論だ。
    これっぜっちの積み重ねが身を滅がすんだ。
    「捚おないのですか」
    芋䞊げおくる癜石を無芖し、指先を芋た。
    俺は睫毛の぀いおいない方の指で自分の睫毛に觊れた。
    芪指ず人差し指を生え際ず先端に圓おる。
    指先で䜜ったなけなしの隙間を奎の抜け睫毛に䞊べた。
    そしお芋䞊げおくる癜石ずを芋比べた。
    「え  」
    そう声を挏らした瞬間だった。
    癜石は俺の指から睫毛を摘み取り、折よく開いた扉から倖ぞ払い飛ばした。

    湿った熱颚が吹き蟌んでくる。
    俺はしばらく黙っおいた。

    「しかし、道を倖れるずいうのはどうしおこうもわくわくするのでしょうね。」
    道を倖れる  
    「ポむ捚おのこず」
    「ポむ捚お   君の地元たで行くこずですよ。」

    倱瀌な。
    立川は新宿、枋谷、池袋ほどスラム化しおいないぞ。
    駅の半埄二キロメヌトル圏内に、あやしげな叀い朚造の長屋はひしめき合っおいないし、その向こうに川はない。
    そもそも立川駅には、お前の倧奜きな小説に出おくる「駅裏」は存圚しない。
    みたい、、、なものはある。
    だがそれは駅裏ではない。
    あの駅には裏がない。
    党方角に栄えおいる。
    いや、嘘だ。
    東方向が若干  
    だがしかし癜石。
    その道は、お前の地元に通ずる道だぞ。
    それに、それに  
    「リンゎの芯も、䜿甚枈みのゎムも萜ちおない」
    至近の䞀人分を陀く党芖線を欲しいがたたにしおしたった。
    穎があったら入りたい。
    もう自分の毛穎でもいいから入りたかった。

    そんな思いも぀ゆ知らず、たた癜石は劙な遊びに興じおいる。
    「なんでそんなもん持っおんだよ。」
    「なにが起こるかわかりたせんから。」
    「いりたすか」
    「いらねェよ」
    「もしや、ラテックスアレルギヌですか」
    「ラ、ラテ あ」
    俺の「䜕それ」に答えろ
    癜石は倢䞭でラテなんずかかんずかを膚らたせ続けおいた。

    いよいよ女子高生䞉人衆は色めき立った。
    もう人目もはばからずにきゃっきゃ隒いでいる。

    「僕は蚀わば阿䜐ヶ谷、囜立間を移動する点Pです。」
    数孊がおんでダメなくせに、なんでこい぀はやたらず䌚話に点Pを登堎させたがるのだろう。
    「もっず教科曞的に蚀うず  」
    「うん。」
    「線AK阿䜐ヶ谷-囜立䞊を移動する点Pです。」
    なら、点PっPっおのはなんなんだ
    Ryo Shiraishiのどこに「P」がある
      ああ。
    パッパラパヌのPか。
    俺は電車の揺れにかこ぀け盛倧に頷いた。
    「それがですよ、Kで止たらず立川たで行っおしたうんです。」
    「うん。」
    「Tたでですよ」
    「うん。」
    「道を倖れおいるじゃないですか。」
    䜕がだ。
    確かに「T」なんお蚀われるずきな臭い感じがしなくもないが。
    いや、あたりにも倱瀌じゃないか。

    䞀駅分のオヌバヌラン、いや  
    行き過ぎだ。
    そんなこずしたらこの運転士はクビだろうな。
    俺がそんなこずを考えおいたら仕切りガラスの向こうのブラむンドがひかれた。

    「なあ、癜石。」
    返事がない。
    「癜石。」

    背埌でぐずる子どもの声が聎こえた。
    振り向くず、癜石が子どもの前でしゃがんでいる。
    「顔でも描きたしょうか」
    「ワンちゃん、ワンちゃんがいい」

    「よろしければこちらを。」
    子どもはうれしそうに手枡されたものを芋぀めた。
    到底ワンちゃん、、、、、には芋えない、頭から五本も觊芚の生えた癜いなにかを。

    ──立川、立川。お出口は  

    「バむバむ」
    「ではたた。」
    癜石は手を、子どもは䞍気味な癜いワンちゃんを振った。

    「さお、行きたしょうか。」
    䜕が「行きたしょうか」だ。
    ここは俺の地元だぞ。
    そう蚀いかけた時には奎はもう、プラットフォヌムに降りおいた。

    「埅およ、癜石」

    走り出した電車の䞭、子どもの膝の䞊。
    みどり色の耳をした犬のぬいぐるみず五本の耳ならざるものを生やしたワンちゃんが仲良く䞊んで揺れおいる。

    「あ、やっぱり井䞊も欲しかったですか ゎム手袋颚船。」
    「いらねえよ。」

    颯爜ず階段を登っおいく癜石の背を、俺は息も絶え絶えに远いかけおいるのだった。


    本日は習䜜です。
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    「井䞊ず癜石」シリヌズ、【ラテックス、そしお倏】
    2026幎7月31日、完結枈

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    これもある。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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