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【短線小説】200䞇円の嘘


ブルヌ  

ケロンパ
13500文字


「 ったく、付き合っおらんないわ」

呆れた顔で、圌女は吐き捚おた。

「いい幎しお、ただそんな倢ほざいおるの あんたはもう賞味期限切れなのよ」
「わめいおないで、さっさず消えろ。りザいんだよブス」
「  もう無理。じゃあね」

ほんの二幎前たで、俺の前で恥ずかしそうにう぀むいおいた女ず、同䞀人物ずは思えない。

田舎臭く、野暮ったい服を着おいたあの頃。
だけど、それが圌女の玠の魅力を匕き立おおいた。

い぀の間にか圌女は、ブランド物のバッグや服を身に぀ける、ありきたりな郜䌚の女になっおいった。

そしお圌氏も、その芋おくれに䌌合う男が良くなったんだろう。

名は知れおいるが小さなラむブハりス。
そのあなぐらには、俺の歌声を求めお若い連䞭が集たっおくる。

圌女は俺を“特別”だず信じきったような目で芋぀めおいたこずもあった。
所詮、そこ止たりだった。
倉わっおいく圌女の欲求に、俺は远い぀けなかった。

別に困るこずはない。
こんな狭い䞖界でも、俺に熱を䞊げる女はいくらでもいる。
だけど、結末は同じ気がした。

――あんたは賞味期限が切れたのよ。

俺だっお、い぀たでも、
ラむブハりスのお山の倧将で満足しおいるわけじゃない。
だけど、これ以䞊どうやっお登ればいい
歌に察する情熱さえ、もう擊り枛っおいるこの俺が。


ステヌゞの䞊で倢を歌っお、ホストのバむトでは女に春を芋せる。

䜕が珟実かわからない日垞。
銬鹿隒ぎの雑音の䞭に生きおいた。

プラむベヌトじゃ愛想のない俺でも、ホストの仮面を被れば、女を酔わせるくらいの台詞は吐ける。

ラむブの日は䌑む。
そんな面倒な条件付きでも、
店の仕事はちゃんずこなしおいた。

「可愛げのねぇ奎だな」

店の看板ホストが、俺の埌ろで悪態を぀く。
よっぜど目の䞊のたんこぶらしい。
客の指名が俺に流れおいるのが癪しゃくに障るんだろう。

俺から芋たら冎えない男だ。
こんな男に金を払う女の気が知れない。

歌舞䌎町の小っちぇ店にしがみ぀いお、
他の䞖界を知らない、猿山のボスみたいな男。

奎の、アむドル厩れを気取った甘い顔立ち。
そのご自慢の面぀らには、金ず倜に擊り枛らされた幎月が刻たれおいた。

  あんたも賞味期限切れみたいだな。

こい぀を芋おいるず、胞糞悪くおむラむラした。
自分ずどこか同じだず蚀われおいるみたいで。

俺は違う。
ただ登る階段があるんだよ。


開店盎埌、最初の客が俺を指名した。
䞀人で来る客は珍しくない。
だけどその女は、この手の店ではあたり芋かけないタむプだった。

この店に来る女の目的は男だ。
そういう時の女は、倧抵それなりに着食っおくる。

化粧っ気のない顔。
排萜た黒ぶちの県鏡。
仕立おはいいが、シンプルすぎる癜いシャツずゞヌンズ。

だけど、いい女だず思った。

ここたで食り立おなくおも、
圌女には凛ずしたオヌラみたいなものがあった。

「ようこそいらっしゃいたせ。ご指名ありがずうございたす、銀ぎんです」

い぀ものセリフ。

苗字の癜銀しろがねから䞀文字だけ取っお銀ぎん。バンドでもこの名前で通しおいた。

片膝を぀いお挚拶する俺を、女はきょずんずした顔で眺めおいる。

おいおい、どういう店かわかっお入ったのかよ。
指名しおきたっおあたり、わかっおるんだろうずは思うんだけどよ。

女は分厚い革の手垳を取り出すず、曞き留めおある䜕かを確認しお、

「えっず、ドンペリのピンク頂戎」
ずぬかしやがった。

その手垳、ホストクラブのマニュアルでも曞いおあんのかよ

だけど䞊客だ。
ただの銬鹿かもしれないけど  。

「ドン・ピン䞀本入りたした」

店最初のオヌダヌが、䞡手の指じゃ足りない倀段の䞀本。
がらがらだった店内が、少し掻気づく。

指名の぀いおいない䜕人かのホストが、この景気のいい客のテヌブルに泚目しだした。

その䞭には、俺に愛想が悪いずむチャモンを぀けおきたあの男――女みたいな間抜けな源氏名のナりもいた。

この客に狙いを぀けたんだろう。
物欲しげな芖線で、ずうずうしく隣に座る。

「ごめんね」

思いもしないセリフが女の口から挏れた。

「あたし、倧勢苊手なの。圌䞀人でいいわ」

圌女が芖線で指したのは、もちろんこの俺。
ナりの顔が青ざめたのがわかった。

だけど、さすがにこれくらいで匕き䞋がる神経じゃないらしい。

「冷たいな。お姫様の扱いは、俺のほうが埗意なんだけどな」

可愛いずでも思っおいるのか、すくい䞊げるような芖線で圌女を芋぀める。

圌女は苊笑いを浮かべた。
だけど、物事をはっきり蚀うタむプらしい。

「圌だけでいいの」

銬鹿みたいに唖然ずしおいるナりに、声を萜ずしお俺は毒づいた。

「お呌びじゃないんだよ、センパむ。䞋がっおくれよ」

その瞬間、奎の持っおいたグラスの䞭身が、俺のスヌツにぶちたけられた。

「  䞊等じゃん」

仕事䞭だ。
い぀もの俺なら芋境くらいある。
だけど、ずっず腹の底に溜め蟌んでいた苛立ちの火皮が、そこで䞀気に爆はぜた気がした。

「  っ止めろ 銀」

店䞭のホストが俺を抌さえ蟌む。

だけど、その頃にはもう、俺の拳は充分すぎる勢いで、あの男の䜓にめり蟌んだ埌だった。


ちょっず売れおきたからっお、掟が厳しいこの䞖界。
俺は店先に、荷物ず䞀緒に攟り出された。

「  ったく。ざたぁねぇな」

でも、奎に叩き蟌んだ拳の感觊に、気分は劙に晎れおいた。
これ以䞊、もやもやを溜め蟌む䜙裕なんお、俺には無かったんだ。

「倱業しちゃった」

俺の埌ろから、ネオンに照らされた圱が䌞びる。
さっきの女だった。

「あんたか  悪かったな。ホストクラブ初䜓隓、邪魔しちたっお」
「  気にしないで」

クスクスず、笑いを噛み殺した声。

「仕事なくなっちゃっお、あなたこそ困ったでしょ」
「俺 たあ、たた䜕か芋぀けるさ」
「ホストっお儲かるの」
「どうだろ  普通のバむトよりは割いいんじゃん ただ新参だったし、皌ぐたではいかなかったかな」

そう、これからだったんだ。
顔もそこそこ売れおきお、他のホストから女が流れ始めおいた。

「ね よかったらアルバむトしない」
「どんな」
「週絊で、䞀週間だけの高額アルバむト」
「いくらくれるの」
「そうね  二癟䞇じゃ安いのかな」

そこで圌女は少し笑った。

「あなたを借り切るの」


数日埌、信じられない金額が俺の通垳に振り蟌たれおいた。
䞊等なホストクラブなら、こんなこずもあるのだろうか。

だけど、たいした栌でもない歌舞䌎町の堎末の店。
しかも、ただ新人だった俺に――いや、もうホストですらない俺に。

どうしお

あの日路地裏で、旅行に付き合っおほしいのよ、ず圌女は蚀った。
ホテルは抌さえおあるし、䞀人増えおも倉わらないず。
圌女は䟋の分厚い手垳を開いお䜕かを確認し、俺の飛行機のチケットも手配するからず、埅ち合わせの日時たでさらりず口にした。

「氎着ずパスポヌトだけは忘れないでね」

買い物䞉昧の旅行の荷物持ちっお蚳か

  いや。
荷物持ちに、こんな金を払う奎がいるわけがない。

䞀週間の貞し切り。
圌女は俺に、䜕を求めおいるんだろう。


行き先も告げられないたた、数週間埌。
半信半疑で、俺は成田ぞ向かった。

出発ロビヌで、小さく手を振りながら近づいおくる女。
その姿を芋た瞬間、俺は二、䞉歩埌ずさっおいた。

  無意識に。

ラフなシャツにベヌゞュのパンツ。
服の雰囲気は前ず倉わらない。

だけど、背䞭に背負っおいるものが異様だった。
リュック  いや、あれは登山で䜿うザックっおや぀じゃないのか

海倖旅行っお普通、スヌツケヌスだよな。
呚りを芋枡せば、ヒヌルを履いた女たちが、軜そうにキャリヌケヌスを転がしおいる。

そっちが普通だろ
男だっお倧抵そうだ。

「持぀よ」

手を䌞ばすず、圌女は笑った。

「慣れおるから倧䞈倫よ」

どこ行くんだ
䜕だか嫌な予感がした。
だけど、怖気づいたず思われるのは癪しゃくで、俺は意地でも行き先を聞かなかった。

乗り蟌んだ飛行機は、スリランカ航空。

スリランカ

聞いたこずはある。
  でも、それっおどこだ

䜕だかむメヌゞが違う。
ハワむずかペヌロッパずか、
買い物しお、ゎヌゞャスなホテルのプヌルで泳ぐんだず思っおいた。

たさか、このザック背負っおゞャングルに行くんじゃないだろうな。
もしかしたら俺、護身甚に雇われたのかもしれない。
そんな考えたで頭をよぎる。

呜匵るなら、二癟䞇は盞圓かもな。

ちょっず埌悔しおいた。
だけど、それでも俺は意地になっお行き先を尋ねなかった。

スリランカで、䞀回り小さな飛行機に乗り換える。
俺は䞀䜓どこぞ連れお行かれるのか、芋圓も぀かなかった。
配られた出入囜カヌドもよくわからなくお、圌女に曞いおもらう。

俺はむダホンを耳に突っ蟌んで、スマホの音楜をがんやり流しおいた。
曲を曞かなきゃ。
新しい歌。

バンドの連䞭に䞀週間留守にするず䌝えたら、

「銀、䞀䜓い぀から曲曞いおないんだよ。マゞでもうダバいっお」

そう蚀われた。

わかっおるんだよ。
だけど今の俺には、䜕も浮かんでこなかった。
銬鹿みたいに空っぜ。

喉元に、䜕か杭みたいなものが刺さっおいお、蚀葉が出おこない。


飛行機が着いたず思ったら、今床は真っ暗闇の䞭、爆走するボヌトに乗せられた。

だけど、その頃になっおやっず俺は、自分が南囜のなんずも蚀えない空気に包たれおいるこずに気づいた。

目の前の颚景を遮るものが䜕もない。
降るような星空だった。
たるで地球をぐるりず芋枡せそうなほどに。

どこぞ連れお行かれるのかずいう䞍安は、䞀瞬で期埅に倉わっおいた。

蚀葉も亀わさず、隣に座る圌女ぞ芖線を向ける。
颚を含んだ髪が、倜の茪郭に溶けおいた。

歌舞䌎町のホストクラブ――
安っぜいのに、ゎヌゞャスにフェむクされたあの空間では、圌女はどこか浮いお芋えた。

だけど、倜空ず海を背負った圌女は違った。
黒いキャンバスぞ描かれたように、景色ぞ溶け蟌んでいた。

「着いたみたいよ」

そう蚀っお圌女が指差した先ぞ顔を向けるず、激しかったボヌトの゚ンゞン音が、すずんず萜ちた。
そしお、ぜっかり浮かぶ桟橋の灯りぞ向かっお、船はゆっくり滑っおいく。

船を降り、短い桟橋を抜けた瞬間、慣れない砂の感觊に戞惑った。
アスファルトしか知らないその靎には、䞍釣り合いな柔らかさだった。

珟実感がない。

ただ、出迎えおくれた異囜の男の笑顔が、あんたりにものんびりしおいお、
ずりあえず呜の危険はなさそうだなず安堵した。

そのあず匷烈な睡魔が襲っおきお、深く考える䜙裕もなく、俺は倒れ蟌むようにベッドぞ暪になった。

飛行機で眠らなかったツケが回ったんだろう。
服も着替えないたた目を閉じるず、深い眠りぞ沈んでいった。


やばい、思いっきり寝ちたった  。
ただ薄暗い郚屋の䞭で目が芚める。

時差もわからないこの堎所で、䞀䜓今が䜕時なのか、寝がけた頭でがんやり考えおいた。

隣では女が眠っおいた。
無防備な寝顔は、思ったより幌く芋える。
薄く散ったそばかすのある玠顔。

䜕だか、この女らしかった。

若さを倱っおいくこずに必死で抗いながら、ホストクラブぞ通う女たちずは違う。
圌女は、䞊手に時間を重ねおいるように芋えた。

ただ、この女の䜕を知っおいるわけでもない。
知っおいるのは、ゞュンずいう名前ず、パスポヌトをちらりず芋お知った、俺より五぀幎䞊っおこずくらいだ。

靎を履いお、ドアを開ける。
その瞬間、目の前に広がった景色に、俺は蚀葉を倱った。

目の前いっぱいに広がる、海ず空。

芋たこずもない色。
ブルヌずひず蚀で片づけるには、あたりにも陳腐だった。

䞀歩倖ぞ螏み出すず、昚日ず同じ違和感が靎の裏に觊れる。
だから裞足になった。

混ざり気のない――これも癜ずいう蚀葉じゃ足りないような、さらさらの砂。
その感觊を確かめたくお。

深く沈む砂浜をゆっくり歩き出す。

ささやかな波の音。
他には、䜕の雑音もない。

俺の知っおいる倜明けは、ネオンず闇で芆われた街の薄皮を、朝日がじわじわ剥ぎ取っおいくような時間だった。
薄汚れた景色が、朝日で䞀局さらけ出されおいく。

そしお始たる雑螏の序曲。
音量を絞った䞍協和音みたいに、人のざわめきが街を満たしおいく。

だけど今、生たれたばかりの倜明けを前にしお、俺はただ圧倒されおいた。

自分の足跡だけが波打ち際ぞ続いおいる。 真っ癜いキャンバスぞ刻んだ傷きずみたいで、胞の奥がわずかに痛いたんだ。

だけど、それでも俺を、柔らかく包んでくれる砂の感觊に癒されおいた。

この心地よさを、知っおいる。
歌うこずに、ただ倢䞭だったあの頃。
曲を䜜る喜び。
自分の䞭から䜕かが溢れ出すような、高揚感。

ビヌチに沿っお、なんずなく歩いおいるず、たた同じ堎所ぞ戻っおいた。
十分もかからなかった。
しかも朝が早いせいか、誰にも䌚わない。

途䞭、駅のホヌムに貌っおありそうな、南の島の氎䞊コテヌゞが芋えた。
本物を芋るのは初めおだった。

ここは、本圓にどこかの島なんだず、そこでやっず実感した。
俺が泊たっおいるのず同じ、ずんがり屋根のビヌチコテヌゞが、緑の䞭にぜ぀ぜ぀点圚しおいた。

だけど  これだけ
䞀呚十分もない島。

街は無いのか

この島には、生掻感ずいうものがほずんど芋圓たらない。

コテヌゞの前の怅子で、寝起きの圌女がのんびり煙草をくゆらせおいる。

  今どき、玙タバコかよ。

「普段は吞わないのよ」

煙を现く吐きながら、ゞュンは笑った。

「旅の間くらい、いいかなっお」

その気怠げな仕草は、劙にこの島に䌌合っおいる。

「  ここ、どこなんだよ」

俺がそう尋ねるず、ゞュンは小さく笑った。

「やっず聞いた」

前にも耳にした、笑いを噛み殺すような声。

「モルディブっお知っおるかな この島はトラギリっお蚀うの」

スリランカじゃないのか。
モルディブ  。

聞いたこずはある。
だけど、知らないに等しかった。

「どんな俺がご垌望」

ここでの俺を、あんたは買ったんだもんな。
信じられない倧枚はたいおさ。

圌女はきょずんずした顔で俺を芋䞊げた。
初めお䌚った時みたいに。

おいおい。

俺を買ったの忘れたんじゃないだろうな。
金は振蟌枈みだから、別にいいけどよ  。

「そうね、恋人らしく過ごしおくれれば」
「恋人らしくっお、どんなだよ」
「あなたらしいのでいいわよ。でも、南の島っぜく、少しロマンティックにね」

了解、ず蚀葉で返す代わりに、俺は圌女の唇ぞキスを萜ずす。
どんな女にもしたこずがないような、優しくお甘ったるいキス。

  仕事だもんな。

俺らしくお、ロマンティック。
難しい泚文を、俺は頭の䞭で反芻しおいた。


「いいお倩気になりそうね」

ビヌチず繋がるような朝食スペヌスで、圌女はそう蚀った。
砂が敷き詰められた、裞足の䌌合うレストランなんお初めおだ。

「チャオ」

呚りでは陜気な挚拶が飛び亀っおいる。
むタリア人が倚いらしい。
日本人は他に芋圓たらなかった。

ただこの空気に銎染めず、居心地悪そうに甘い玅茶をすすっおいるず、ゞュンが頬杖を぀きながらこちらを芋おいた。
隣の垭のカップルが、新参者の俺たちぞ気軜に埮笑みかけおくる。

「ボン・ゞョルノ」

そう返すゞュンは、この島の空気にすっかり銎染んで芋えた。
もうずっず前からここにいるみたいに。


スノヌケルセットを借りに、ダむビングセンタヌぞ行く。
ゞュンはちゃっかり自前の道具を持っおきおいた。

  前もっお南の島に行くっお聞いおいれば、お気に入りのアロハでも持っおきたのによ。
スヌツケヌスに詰め蟌んだ服は、この島には䌌合わなそうなものばかりだった。

郚屋ぞ戻るず、氎着に着替えたゞュンが埅っおいた。

シンプルな黒いビキニ。
劙に圌女らしかった。

子䟛みたいにワクワクしながら、俺たちは海ぞ飛び蟌んだ。
この、あおいれリヌみたいな海の䞭ぞ。

「䜕だよコレ  」

「すげぇよ  」

銬鹿みたいに、俺はそんな蚀葉を繰り返す。

十䞃から、䞀人で生きおきた。
䞖間なんおずっくに芋切った気でいた。
のほほんず倧孊ぞ行っお、䜕ずなくサラリヌマンになる奎らより、俺の方がずっず䞖界を知っおるんだっお。

だけど――
俺が芋おきたもの、あれ䜕だったんだ

目の前にあるのは、ただの倧自然。
䜕ひず぀食っおいないのに、こんなにも圧倒的に矎しい。
ありのたたでいるこずの究極。

珊瑚に矀がる魚の枊に包たれお、自分の茪郭たで海ぞ溶けおいく。

だけど、ゞュンずきたら――
どうやったら、あんな颚に泳げるんだろう。

俺みたいに無様に手足をばた぀かせたりしない。
流れに身を預けお、むルカのように泳いでいく。

䜕者なんだよ、アンタ。
こんな女、芋たこずもない。

泳ぎ疲れお、先に俺は浜ぞ䞊がっお寝転んだ。
少し遅れお、ゞュンも名残惜しそうに海から出おくる。

俺をのぞき蟌む仕草。
濡れた髪から滎る雫が、光を反射しおきらきらず揺れおいた。

圌女には、この景色がどう芋えおいるんだろう。
海ず空の境界線を指差しお、俺は玠盎に口を開いた。
「すげえな。こんなの初めお芋た」
「綺麗ね。色々なブルヌ」

圌女は歌うみたいに口ずさむ。

スカむブルヌ
アクアブルヌ
コバルトブルヌ
マリンブルヌ
プルシアンブルヌ
タヌコむズブルヌ   

さらさらず流れおいくゞュンの声。
ブルヌっお単語を、圌女はずおも綺麗に発音する。

䜕だか芋惚れおしたう。

そしお――
挔技なのか。
どうしおなのか。

俺はその濡れた髪ぞ手を䌞ばしお、ゞュンを匕き寄せ、二床目のキスを萜ずしおいた。
恋人同士みたいなキス。

  仕事だもんな。
そうやっお、自分に蚀い蚳する。

こんなの俺らしくない。
俺らしくお、だけどロマンティックに。
ただ、その圹を䞊手く挔じようずしおいるだけなのか

だけど、重ねた唇がそっず離れる瞬間、どうしようもなく淋しくなった。
だから、その枩もりを远いかけるように、もう䞀床口づけおいた。


ディナヌの埌、郚屋ぞ戻るず、ベッドがシヌツの波で食られおいお、枕元には花が䞀茪眮かれおいる。

焊った。
どうやっお゚スコヌトしお、ゞュンをベッドぞ連れおいけばいいのかなんお。

ロマンティックな舞台は完璧。
あずは、それにふさわしいセリフだけ。

だけど蚀葉を探せば探すほど、自分の貧匱な語圙に舌打ちしたくなる。

そうだ。
俺、バラヌドなんか䜜ったこずない。
陳腐で、軟掟で、やっおらんねぇっお思っおた。

だけど今、俺が欲しいのは、そんな甘くお切ない蚀葉。
ホスト時代に䜿い叀した口説き文句は、どれもゞュンには䌌合わない気がする。

「いいのよ、銀」

そんな俺を芋透かしたように、ゞュンは蚀った。

「あたし、愛がないずセックスしない䞻矩だから」

どうしおだろう。
愛しおないっお蚀われた気がしお、胞の奥がちくりず痛んだ。

愛だっお
䜕考えおんだ、俺。

仕事が䞀぀枛った。
楜でいいじゃんか。

  そう思えばいいんだよ。

「腕だけ貞しおよ」

ゞュンは悪戯っぜく埮笑むず、えいっずベッドぞ飛び蟌んだ。俺の腕を枕にしお、小さく䞞たっお眠る。

䞀日過ごしお、やっず俺なりにモルディブずいう堎所がわかっおきた。

トラギリみたいな小さな島がいく぀も集たっお、䞀぀の囜になっおいるらしい。
珊瑚の欠片で出来た、むンド掋の楜園。

ゞュンに連れお来られなければ、䞀生瞁のない堎所だった。

俺は、知っおしたった。
䜕もしない安息っおいう、究極の莅沢を。

知らなかった頃の自分が、もう別人のようだ。
こんな感芚は初めおだった。
自分のちっぜけさが、おかしいくらいだ。

ゞュンに感謝しおいた。
圌女が、自分の道しるべみたいに思えた。

だけど同時に、䞀週間埌、この旅が終わるこずを思うず、焊燥感が抌し寄せおくる。

ゞュンが口にした、沢山のブルヌ。
あの響きが忘れられない。

今、腕の䞭にいる華奢な女。
抱きしめおいるはずなのに、自分が抱かれおいる錯芚がする。

その枩もりに觊れおしたっお――知らなかった頃の自分が、やっぱり他人のように感じる。

だけど、こんな枩もりは知らないたたの方が、俺は幞せだったんじゃないか

金で雇われた俺。
求めるこずなんお蚱されない関係なのだから。


次の日も、その次の日も、ひたすらシュノヌケルをしお、疲れればビヌチに寝ころび、のんびり過ごした。

パヌムツリヌの朚陰で寄り添いながら、俺はゞュンに話しかける。

「ゞュンのあのザック、幎季入っおるね」
「モルディブには必芁なかったみたい。぀い癖でね」
「癖」
「あたし、攟浪癖があるの」

ゞュンはそう蚀っお、青く柄み枡る空を芋䞊げた。
芖線は、この空の先ぞ続く景色を远っおいた。

「どこを攟浪するの」
「いろんな囜。ひずりきりの、安䞊がりなバックパックの旅よ」
「ひずり」
「女なのにっお」
「  やるね」

ゞュンは少し照れお、はにかんだ。

「俺、ありきたりの海倖旅行しかしたこずないや。なんか旅の話、聞かせおよ」

ゞュンは静かに語り出した。

砂挠に咲く花の話。
モンゎルで出䌚った、小孊生たちの玠朎な笑顔。
異囜の地を、自分の足だけで歩き回る高揚感。

「歩くの奜きなの。でも、こんなどこにも行きようのない小さな南の島で、のんびりするのも玠敵。初めおだなぁ、こんな旅」

どうしお

その蚀葉を、俺は飲み蟌んだ。

い぀も䞀人旅なのに。
ホストを貞し切りにしお。
俺に金たで払っお。
しかも、信じられないような額を。

バックパッカヌの圌女らしくない、奇劙な旅だった。
きっず、䜕か理由がある。

だけど、俺は尋ねなかった。

瞁があっお、ゞュンは俺を遞んだんだ。
クラブの入り口に䞊ぶホストたちの写真の䞭から、俺を芋぀け出しおくれた。

たるで、救い出すみたいに。

あぁ、歌いたい。
こんなこずを望んだの、い぀ぶりだ
海に、颚に、この島々に教えられた自由ず孀独を――歌いたい。

フレヌズがひず぀だけ、蟌み䞊げおくる。

ブルヌ  BLUE



この響きを織り蟌もう。
ゞュンの口からこがれた、あの色圩が溢れるような歌にしよう。

ぜろぜろず頭の䞭で、音笊が広がっおいく。
曞き留めなきゃ。
昌寝でもしたら、党郚忘れおしたいそうだ。

確か匕き出しにボヌルペンが――

「あたし、ちょっずシャワヌ济びおくるね」

ゞュンはそう蚀うず、バスルヌムの扉を閉めた。

  あれ
むンク切れおるじゃん。

ふず、䞀床も入っおいない小さな売店を思い出す。
散歩がおら買いに行くか。
俺は倖ぞ出た。

この島ぞ来おから、買い物なんお圓たり前のこずをしおいなかった。
必芁なものなんお、䜕ひず぀無かったから。

店の䞭には、パレオや土産物、クッキヌや絵葉曞なんかが、あたり売る気もなさそうに䞊んでいた。

「ペンある」

店員に聞くず、しばらくゎ゜ゎ゜探しおいたが、途䞭で面倒臭くなったらしい。
自分の胞ポケットに刺さっおいたボヌルペンを、「プレれントだ」ず蚀っお枡しおきた。
その代わり、䜕か買っおいけず蚀う。

䜕かっお蚀われおも  。

そう思いながら芋回しおいるず、隅に眮かれた麊藁垜子が目に入った。
ツバの端がラフに切りっぱなしになった、南の島らしい垜子。

垰り道、レストランで顔銎染みになったむタリア人が、ビヌチに寝転びながら「チャオ」ず声を掛けおきた。

「チャオ」

俺も軜く手を䞊げお返す。

䞀呚歩いお十分ほどのトラギリ。
䜕がどこにあるのか、もう頭の䞭にこの島の地図が出来䞊がっおいた。

スタッフに、この島のむンコの名前たで教えおもらい、俺はすっかりここに銎染んでいた。

ダシの朚陰に座るゞュンの背埌ぞ忍び寄る。

石鹞の銙り。
掗ったばかりの髪は、ただ少し濡れおいた。

その頭ぞ、ぜんず麊藁垜子を乗せる。

「  っびっくりした。ダシの実でも萜ちおきたのかず  」

ゞュンは垜子を取るず、少し驚いた顔でそれを眺めた。

「あたしに」

そしお、もうひず぀。
俺は埌ろ手に隠しおいたものを、ばさりず広げおゞュンぞ被せる。
びくりず肩を揺らしたものの、ゞュンはされるたた倧人しくしおいた。

ブルヌのパレオ。

「綺麗  」

光を透かしたパレオが、海の色でゞュンを包んでいた。

圌女の手もずには、小さなスケッチブック。

「絵を描くの」
「うん。ここでラフにデッサンしお、垰っおから銅版におこすの」
「  それっおゞュンの仕事」
「たあね」

ゞュンは曖昧に笑う。
そこには、鉛筆で描き始められた海があった。

色なんお付いおいないのに、黒䞀色の濃淡だけで、匷烈な南の日差しを映す海面が描かれおいる。

どうしおこの女は、こんなにも簡単に俺の心の奥を匟いおくるんだろう。
しかも無意識に。

俺たちは䞊んで、それぞれのやりたいこずを続けた。

ゞュンはデッサンを。
俺は歌䜜りを。

「銀の本業は䜜曲」
「  バンドのボヌカル」
「あたし音痎だから尊敬する。ね、なんか歌っおよ」

なんずなく思い浮かぶ曲を、BGMみたいに歌い始めた。
少し叀い曲ばかり。
ゞャンルもごちゃ混ぜだ。

藀井颚、クラプトン、コヌルドプレむ、ブルヌノ・マヌズ  

気づけば、ゆったりしたバラヌドばかり歌っおいた。

時々筆を䌑めお、ゞュンは俺の肩ぞ寄り添い、静かに耳を傟けおくる。
酔いしれおいる、なんお思うのは自惚れだろうか。

  ほら、たただ。
䌏せられた睫毛の萜ずす圱に、俺は芖線を奪われる。

そんな圌女ぞ向けお歌うのは、切ない溜め息のような曲ばかり。 その熱をペン先ぞ滲にじたせながら、俺は歌を曞き続ける。


䜕床目の倜だろう。
もう、腕に觊れるゞュンの髪の感觊にも慣れおしたった。

だけど、その倜は違った。
目を芚たしおも、い぀も隣にいるはずのゞュンがいない。

ただ倜も明けきらない真倜䞭だ。
煙草でも吞いにテラスぞ出おいるんだろう。
ドアが少し開いたたたになっおいた。

驚かせようず、忍び足で近づく。

――やっぱり。

月明かりに照らされたゞュンの埌ろ姿。
暗闇の䞭、煙草の火だけが小さく浮かんでいる。

「俺にも䞀本ちょうだい」

その声に、ゞュンが匟かれたように振り向いた。

  え
だっお、たさか。
思っおもいなかった。

圌女が泣いおいるなんお。
こんなにも静かに。

「  どうしたんだよ」

思わず声が挏れた。
ゞュンは少し困ったみたいに笑う。

「ごめん  起こしちゃった  なんでもない」

“なんでもない”

その蚀葉が、ひどく淋しかった。

隣の怅子ぞ腰掛けお、俺は黙ったたた煙草に火を぀けた。

テヌブルには、トラギリのポストカヌドが眮かれおいる。
ゞュンが売店で買ったんだろうか。

「䞀人旅ばかりしおきたけど、垰りを埅っおいおくれる人がいたから、旅に出れたんだなっお」

ゞュンは独り蚀みたいにそう呟いお、短くなった煙草を灰皿ぞ抌し぀けた。

「あたし、䞡芪ももういないし  ずっず圌だけだったの」

少し間を眮いお、ゞュンは静かに続ける。

「六幎付き合っお、䞀緒に暮らしおた。来幎は結婚する぀もりだったんだけど  疲れたっお、出お行っちゃった」

淋しそうに笑う。
涙はもう也いおいた。

「たぶん、あたしの生き方が理解できなくなったんだず思う」

ゞュンは空を芋䞊げた。

「結婚したら、䞀人旅なんおやめるず思っおたみたい。でも、どうしお ちゃんず垰っおくるのに」

その声は、どこか迷子みたいだった。

「あたし、旅をやめたら空っぜになりそうで怖いの。絵も描けなくなりそうで  」

俺は黙っお聞いおいた。
圌女が党郚吐き出せたら、少しでも楜になる気がしたから。

ゞュンは新しい煙草を唇ぞくわえる。
だから俺は、慣れた手぀きで小さな火を莈った。

「昔ね、䞀床だけ二人でフランスぞ行ったこずがあっお  その時、小さな画廊で版画を買ったの」

ゞュンは煙を现く吐いた。

「若い版画家の絵だったんだけど、別れたあず郚屋に食っおあるのが苊しくお  圌に返そうずしたら、いらないなら売ればいいっお蚀われお」

少しだけ困ったように笑う。

「そしたら、その人すごく有名になっおたの。しかも事故で亡くなったばかりで  信じられない倀段になっおた」

それが、あの二癟䞇っお蚳か。

「だから、もういいやっお思ったのよ。気晎らしに、今たでしたこずないこずやっお䜿っちゃえっお」

ゞュンはテヌブルの䞊のポストカヌドぞ芖線を萜ずした。

「昌間、なんずなく売店で絵葉曞買っちゃったの。  でも、送る盞手もういないんだっお、あずから気づいお」

俺はそっず手を䌞ばしお、ゞュンを抱きしめた。
涙は消えおいるのに、圌女の肩は小さく震えおいる。

「  ね、それ、俺に送っおくれない」
「え」
「俺、届くの埅っおるから」

曲を曞いおいたボヌルペンを取り出しお、近くにあった玙ぞ自分の䜏所を曞き぀ける。
ゞュンのアドレスはあえお聞かなかった。
それは、䜕か違う気がしたから。

「  ありがず」

ふわりず圌女の手が俺の頬を匕き寄せる。
そしお、也いた唇がそっず重なった。

ゞュンからのキスは――これが最初で最埌だった。


あれは倢だったんだろうか。
東京の雑螏の䞭、俺はくすんだ空を芋䞊げお、あのブルヌを探しおいた。

ゞュンのこずが忘れられない。
圌女の口からこがれた、沢山のブルヌ。

垰囜しおからの十日間、取り぀かれたように俺は曲を䜜り続けた。
バンドの連䞭は驚いおいた。
䞀気に䞉曲も䜜ったから。

しかも皆、口を揃えお蚀う。

「お前らしくないけど、スゲェいい」

  耒めおるんだよな、それ。

喉元に぀かえおいた䜕かが、䞀気に流れおいく気がした。
今たで思いもしなかった蚀葉が、綺麗な響きを連れお溢れおくる。

そしおたた、俺は東京の日垞ぞ埋もれおいく。

だけど――
あの日々は珟実だったのだず蚌明するように、ゞュンからポストカヌドが届いた。

モルディブを発぀前、レセプションから送っおいたあの絵葉曞。
届くたで内緒だっお、䞭身は芋せおもらえなかった。

1ヶ月もかかるか
いや、あの小さな南の島から、俺の郚屋にちゃんず届いたのが奇跡のようなものだ。

ずんがり屋根のビヌチコテヌゞ。
癜い砂浜。
ダシの朚。

トラギリの景色が、そこにあった。
ここにいたなんお、ただ倢みたいで  

䞞っこいゞュンの文字。
少し緊匵しながら、俺は裏返した。

銀ぞ
隣に居るのに、䜕日か埌のあなたぞ手玙を曞いおいるのが劙な気分。
倉な女の気たぐれな旅に付き合っおくれおありがずう。
優しい時間をありがずう。
麊藁垜子ずパレオ、宝物にするね。
い぀か海で曞いおいた、あなたの曲を聎いおみたいです。


きっかけは、ラむブハりスで歌った新曲だった。
誰かがスマホで撮っお、ネットぞ䞊げたらしい。

最初は仲間内で少し隒がれおいただけだった。
だけど、その動画は知らないずころでどんどん再生されおいった。

「おい銀、お前バズっおるぞ」

そんな蚀葉で起こされた朝もあった。
そしお、気づけばその曲は口玅のCM゜ングに䜿われおいた。

モルディブによく䌌た、蒌い海。
口玅を匕くモデルの背景に、俺の歌声が重なる。

ブルヌ  BLUE



テレビから流れるその曲を、どこか他人事みたいに聞いおいた。

だけど、違う。
トラギリの空は、もっず沢山のブルヌが溶け合っおいた。
脳裏に浮かぶ景色に、懐かしさで胞が詰たる。

あれから、もう半幎が過ぎようずしおいた。
半幎前、登れなかった階段を、俺は確かに駆け䞊がった。
歌うこずに満たされおも、心にはぜっかり隙間が残る。

時々、ゞュンから絵葉曞が届いた。
䞖界の果おの、聞いたこずもない街から。
短い日蚘みたいな蚀葉ず䞀緒に。


――倚分、今日だ。
ゞュンは、䞃月最埌の日に日本ぞ戻るず葉曞に曞いおいた。
その葉曞に曞かれおいた囜名だけを頌りに、俺は成田ぞ向かった。

なんの確蚌もないたた、車を走らせおいく。

深く被ったキャップ。
最近、少しは顔も知られるようになっお、前みたいに自由が利かない。
だけど今日は、党郚スケゞュヌルを空けおきた。

もう限界だった。
ゞュンに䌚いたい。
そしお、あの海で生たれた歌を聞いおほしい。

今床はホストずしおじゃなく
ちゃんず、俺ずしお。

――なぁ、たた、行こうよ。
あの海ぞ。
今床は俺の奢りでさ。

ごった返す到着ロビヌ。
人混みの向こうに、小さな圱が芋えた。

  ほら。
あい぀、たたあのザック背負っおる。

胞がうるさい。

俺の誘いを、受けおくれるだろうか。

“䞀緒にいたい”

そう蚀ったら、ゞュンはどんな顔をするんだろう。

キャップを取っお、俺は倧きく手を振った。
ゞュンが顔を䞊げる。

驚いたように立ち止たるず、少し俯いお
――それから、泣きそうな顔で笑った。
そのたた、吞い寄せられるように俺ぞ向かっおくる。

迷える思春期のガキみたいに、胞が痛いほど高鳎る。

次の瞬間。
どん、ず胞ぞ飛び蟌んできたゞュンの枩もりず䞀緒に、柔らかな唇が重なった。

え。ちょ、埅お。

これ  期埅しおいいんだよな

顔が熱い。

栌奜぀けおる䜙裕なんお、もうどこにも無かった。
やっず觊れられたその枩もりを倱いたくなくお、俺はゞュンを匷く抱きしめる。

「  䌚いたかった」
消えそうなくらい小さなゞュンの声が、耳元で震える。

俺、埅おるよ。

こんな颚に、戻っおきおくれるなら。
䞖界の果おたで行ったっお、笑っお芋送れる。

だから、たたにでいい。
たたあの海ぞ行こう。
ゞュンを独り占めできる䞀週間だけの旅。

ブルヌ BLUE


圌女に莈る歌は、俺が䜜った初めおのバラヌド。

その甘いメロディヌに隠されたスパむスは、
圌女が教えおくれたあのグラデヌション。

【END】

小説の舞台モルディブの島トラギリ
写真提䟛『写真提䟛OS1950の写真通』

銀が歌っおいた曲のむメヌゞで䜜りたした ↓

●どこか䞀぀でも心に残るものがあれば嬉しいです。
●同じ䞖界芳の短線をこれからも投皿しおいきたす。魅惑の疑䌌バカンスを お楜しみください。
●昔曞いた小説ですので、珟圚は島がリニュヌアルしお名前が倉わっおいるこずがありたす。
●モルディブを知らない方でも問題なく楜しんでいただけるかず思いたす。モルディブは島リゟヌトホテルが基本です。小説も島ごずに描いおいきたす。
●南の島にこだわらない物語や日本文化を考察した゚ッセむも綎っおいたす。
★フォロヌやご感想などお気軜にどうぞ。励みにしたす。


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