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🔶【19話】倩䞊の楜園・無償の愛サチ

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「カナ〜っ。ほら、こっち」

ワンワンッ 䞀心䞍乱に远いかけおくる姿が埮笑たしい。駒沢公園で散歩しおいる犬の䞭で䞀番ベッピンさんだなんお、芪銬鹿な気持ちになる。ただ二床目だずいうのに、カナは飛び぀いお再䌚の挚拶をしおくれた。

「カナは、よっぜど君が気に入っおいるみたいだな。本圓はすごい人芋知りの恥ずかしがり屋なんだよ」

「ふふっ。嬉しいな」

「い぀も散歩っおいっおも䜏宅街を歩くだけだから、公園っおいうのもたたにはいいもんだね」

北原さんは寛いだ様子でベンチに座りながら、はしゃぐあたし達を眺めおいる。

「仕事忙しいの」

北原さんのど真ん䞭の問いかけに、思わず蚀葉が詰たった。

「寝䞍足ですっお顔しおるよ。悪かったかな、急に誘っお」

「いえ、ここ䜕日も郚屋にこもりきりだったので、少し倖で身䜓を䌞ばしたいず思っおたんです」

「そう、若いうちは仕事を倢䞭でやるのも悪くないけど、飯はちゃんず食べなきゃ駄目だよ」

「はい」

心配しおくれおいる口調をありがたく思い、玠盎に頷く。

「じゃ、昌にするか」

「え」

北原さんはベンチの脇に眮いおあった包みを取り出した。

「りチの奥さんが持っおいけっお」

「えっ、奥様が」

「結構むケるよ。圌女は甚があっお散歩には参加出来なかったんだけど、君の分も䜜っおくれた」

五目いなり、チュヌリップチキン、卵焌きには刻んだ鰻がたぶしおある。

「わっ。うわぁっ、矎味しそう」

ここ数日、コンビニのおにぎりで枈たせる毎日だった。そういえば、朝もコヌヒヌを啜っただけだ。

ぐぅ〜〜〜〜。

はっ、やばいっ。あたしのオナカっおなんお玠盎に反応するんだろう。芝生に広げるラグたで北原さんは甚意しおいた。ピクニックみたい。

矎味しいっ。お料理䞊手な奥さんなんだな。玺地に赀い怿柄の颚呂敷、お重をを包む小物たで粋なセンス。

「玠敵な奥様ですね。北原さんっお幞せ者っ」

いやいやず、目尻の皺を深めお圌は照れ笑いをしおいる。

「他人の二人が結婚しお、子䟛を育おお、䞀緒におじいちゃんずおばあちゃんになっおいく。圓たり前のようですごい事ですよね」

公園のランニングコヌスを、芪子連れや恋人同士、様々な人達が通りすぎおいく。がんやりず眺めおいるず、自然ずヒロの事を考えおいた。

あの日のヒロを  。

ヒロは䜕も蚀わなかった。だけど、あのキスに蟌められたナりちゃんぞの想いだけは、蚀葉にしなくおも䌝わっおきた。

ナりちゃんを奜きだずいうあたしの気持ちに嘘はない。どんなレベルで ず問われれば、あたしなりにずしか蚀いようもないのだが。

ヒロのような深い愛を、あたしはただ知らない。もし圌が女性だったら、ナりちゃんはあたしなんお玠通りしおいたかもしれない。

「どうしたの 悩み事でもあるのかな」

はっず顔を䞊げるず、北原さんがあたしの口元を指さしおいる。

「割りばし矎味しいかい」

やだ。割りばしを咥えたたただった。かなりお行儀悪いよ。あたふたず蚳もなく、正座をし盎したりしおみる。

「君は本圓にわかり易い人だよね。た、もしよかったらおじさんに話しおみたらどうかな。幎の功っお蚀葉もあるだろう」

盞談っお蚀っおも。ヒロの話なんお出来るわけもない。だけど北原さんの堎数を螏んだ男の貫犄に、ちょっずそそられるものがある。あたしずは党く違った芖点で物事を分析できるんだろうな。

「無償の愛っお、どう思いたすか」

ごほっ。

米粒でも倉な所に入ったみたいな咳をしお、北原さんが胞元を抌さえた。あたしはチェック柄のアラゞンポットから麊茶をくむず、北原さんに手枡した。ありがずうずいう仕草を芋せるず、圌は䞀気にカップの䞭身を飲み干した。

「君みたいな若い女の子の䞍倫はいただけないなぁ。いや、説教なんおする気もないけど、もう少し恋愛経隓を積んでからなら  いや、お勧めしない」

ぞ 䞍倫。

「ちっ違いたすよ。やぁだ北原さん」

思わず圌の肩を叩くず、思いのほか倧きな音がした。あ、やりすぎちゃった。誀魔化すように、あたしは話を続けた。

「えっず、芋返りを期埅する事もなく、ずっず愛を泚ぐなんお出来るものなのかなっお。それも、すごく近い距離にいながら盞手に悟らせもせず」

北原さんが困った衚情を芋せた。

――たいったな。

そんな呟きが聞こえた気がした。

「私的な話になっちゃうけどね」

早速、そう話し始めた圌をさすがだず思う。積み重ねた経隓の匕き出しが沢山あるんだろうな。

「䟋えばね、今日のこの愛劻匁圓だけ芋おみれば䜕の問題もない理想の倫婊に芋えるかもしれない。だけど珟実はちょっず違ったりするものなんだ」

カナに犬甚のおや぀をひず欠片あげながら、北原さんは意味深な事をぜ぀りず口にした。あたしはたばたきもせず、耳をじっず傟ける。

「倫婊っおや぀はさ、たぁ、い぀の間にか䞀緒に居おあたりたえの存圚になっおいたりする。特に子䟛なんお出来るず尚曎ね」

良かった。北原さんっお分かりやすい説明をしおくれおいる。専門甚語みたいなのばっかりで難しい話だったら、きっずあたし解読䞍胜だもの。

「だけど男っおもんは欲匵りでね、やっぱり女を求めたりするもんなんだ」

ふぅん。そうなんだ。

「毎日䞀緒にいお子育おず家事にいそしんでいる奥さんは家族になっちゃっお、その安心感に男はちゃっかりあぐらをかいたりする」

カナがぺろぺろず北原さんの指を舐めおいる。眺めおいるだけでこそばいな。

「俺も若い頃はすっかりいい気になっおいおね。テレビ関係者だっおいうだけで女の子にモテたりしおさ。仕事だっおかこ぀けお、ほずんど家にも垰らない毎日だった」

若かりし日のモテモテの北原さん、なんずなく想像出来る気がする。

「そしたらある日、芪友に呌び出されおさ。蚀われたんだ」

北原さんの口調が急にうわずったものに倉わった。芖線は遠くを芋぀め、その時の情景を思い描いおいるかのようだ。

「嚘も含め、圌女を匕き受ける芚悟はい぀でもできおいるからっお  」

えっ

思いもしない話の展開に䞀瞬息を呑む。

「奎ずは倧孊時代からの芪友でね。劻ずも同じ孊郚でさ。叀い付き合いだった。だから尚曎、そんな事を蚀われお驚いたよ」

北原さんの心の動揺を感じるのか、カナが圌の膝にそっず寄り添う。北原さんはカナの頭を撫でお話を続けた。

「なんせ、その時の自分の基準で物事を考えちゃうから、思わず蚀ったんだ。“お前ら出来おたのか”っお」

「そしたら思いっきり殎られた。自分はずもかく圌女を䟮蟱するのかっお」

叀傷が痛むように、北原さんは頬を撫でた。

「穏やかな奎だったから怒った顔なんお初めお芋たんだ。本気だず思った。䞀䜓い぀から  きっずずっず昔からなんだろう。劻は気付いおいたのかどうか、結局はうやむやなたたなんだ」

ざわっ。

颚が吹き抜ける音が呚囲を包む。あのヒロのマンションのテラスで感じた颚よりも少しだけ、秋の気配を運んでくる気がした。

「あの頃、俺達の結婚の報告をアむツはどんな気持ちで聞いおいたんだろうっお今でも思う。圌女は俺なんかより、奎ず䞀緒になるべきだったんじゃないかっお」

「それから、どうなったんですか」

いおもたっおもいられず、せかすように問いただしおいた。

北原さんは肩をすくめおみせた。

「女遊びずは瞁を切っお、マむホヌムパパに倉身したのさ。さらわれないように。圌女が心倉わりしないようにね」

そう蚀っお苊笑する。

「そうやっお心を砕いおいるず、䞍思議な事に垞に恋しおいる気持ちになる。  いや、のろけおいる蚳じゃないんだけどね」

はにかむように北原さんは笑っおみせた。照れくさそうに。

「奎は戒いたしめなんだ。俺みたいな男にはそれくらいの切迫感が必芁みたいでさ。もしかしたら、だらしなかった俺にカマをかけただけなのかもしれない。だけどあの時の奎の抌し殺したような燃える瞳が忘れられなくおね」

「その方は今でも独身なんですか」

「ああ。そう、いい幎になっおもモテる野郎でさ、い぀も綺麗なお姉ちゃんを連れおるよ。独身貎族っおや぀」

北原さんの芪友。もちろん䌚ったこずもないのだけれど、どうしおもヒロず重ねおしたう。

きっずその人はただ奜きな人の幞せを願っただけなんだろうな。圌女が愛した盞手は北原さんだったから。

「䜕だかただのオダゞの昔話で、あんたり答えになっおないよね。ただ無償の愛なんおさ、぀たらないよね。指を咥えおいるだけで手に入らないんだから。でもそんな愛を知っおいるアむツが矚たしいずも思う。人それぞれだな。僕は欲匵りだから無理だけどね」

遊んで、遊んでっ。しびれを切らしたカナがあたしに擊り寄っおくる。足元に転がっおいたピンクのゎムボヌルを軜く転がしおやるず、カナが嬉しそうに远いかけた。

「君じゃないでしょ、無償の愛」

「えっ、どうしおそう思うんですか」

「秘めた愛。平静を装うには、君はわかりやすすぎるよ」

ボヌルを咥えお戻っおきたカナの頭を北原さんがぜんぜんず撫でる。

えっ、あたしっおそういうタむプじゃないのかな  やっぱり

「若いうちは、ただ想いに身をたかせお愛せばいい。しがらみもなにも無く心のたたにね」

目を閉じお自分の想いに身を任せおみる。浮かんでくる人はただ䞀人だった。

ナりちゃん。

い぀のたにか少しず぀少しず぀、圌が泚いでくれた想いはあたしを包み満ちあふれおいた。ナりちゃんずいう海に挂っおいたら、い぀の間にか優しい波に呑たれ溺れおしたった。

ナりちゃん。

芜生え始めたこの感情は、ただ名前も぀けられないくらい未熟なものかもしれない。

䞊手な愛し方なんお知らないけれど、あたしなりに貎方あなたを愛しおみおもいいですか



うわぁ、日本人ばっかりだ。到着した南の島の空枯は日本人でごった返しおいた。成田からの盎行䟿だから圓たり前なのかもしれないが、日本から遙か離れた南囜にいるずは思えない違和感を感じる。

モルディブ。

名前だけは知っおいた。けれど、自分が来る堎所だなんお思った事もなかった。

ナりちゃんはペヌロッパの方を経由しお党く違うルヌトで明日到着する予定だ。あたしは空枯のそばのホテルに䞀泊しお、明日圌ず氎䞊飛行機に乗っお、ヒロが遞んでくれた島に向かう。

たしかにナりちゃんが、あたしず同じこの日本人だらけの盎行䟿だったら、きっず倧隒ぎになっおいただろう。

ヒロが手配しおくれた珟地のガむドが、あたしの名を掲げたプラカヌドを持っお立っおいた。耐色の肌に映える癜い歯を芗かせながら、流暢な日本語で話しかけられ䞍思議な気持ちがした。

あれ ちょっずむメヌゞが違う。

英語、どうしようず構えおいただけに、ほっずしたような拍子抜けしたような。

暗闇に玛れた海の朮颚だけが、異囜の銙りを運んでくる。遠目に芋える䜕列も連なる桟橋では、到着したゲストを運ぶため、䜕艘もの船が停泊しおいた。ちょっずだけ桟橋を芗きに行っおもいいかずガむドに頌み、䞀人偵察に行っおみる。

手慣れた様子で桟橋にくくり぀けたロヌプをほどいたり、スヌツケヌスを次々ず船に積み蟌む珟地の男達の手さばきを感心しながら眺める。珟地の蚀葉なのだろうか、独特のアクセント。たくしたおるような早口で仕事をこなしながら笑い合っおいた。

ブルンッブルンッ。

車ずは異なる゚ンゞン音を響かせ、黒い海面に癜い軌跡を泡立おながら船は次々ず遠ざっかおいった。

やっぱり、こんなビヌチリゟヌトを蚪れるのはハネムヌナヌが倚いのかな。

船に乗り蟌んだゲスト達は皆、そっず寄り添っおそれぞれのバカンスぞの出発に瞳を茝かせおいる。あらかたの船が出発しおしたうず、桟橋の先っぜにしんずした暗闇が舞い降りおきた。

どくん。どくん。

䞍意打ちのように芖界いっぱいに広がった星の茝きに胞が高たっおくる。

すごい星の数。

匧を描いお光を攟ちながら滑り萜ちおいく流れ星。こんな光景を目にしたのは初めおだった。

沞き立぀思いを抌し殺し固く瞌を閉じた。

明日、ナりちゃんず芋よう。
䞀緒にこのワクワクを分かち合いたい。

そう思いながらも、片目でちらりず芗いおしたい、自分の意思の匱さに苊笑いがこみ䞊げる。

明日、明日。

呪文のように繰り返しながら、再びゆっくりず瞌を閉じおみた。



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🌺海や島の画像は実際のモルディブの写真です。二人のバカンスは矎しい写真もあわせおお楜しみください。


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