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ショートショート|破線(837文字)

    #創作大賞2026
    #オールカテゴリ部門

    僕は、黒いアスファルトの上に引かれた白線を歩くことが好きでした。白線といってもただの直線ではなく破線で、できる限り破線の上だけを歩くゲームをしていました。いつものように大股で破線の上を歩いていると、垂直に地面が割れて、僕のほうに倒れ掛かってきました。あまりに急な出来事に何もできないまま地面に挟まれてしまい、地面の毛布をかぶっているような状態になりました。しかし、倒れ掛かってきた地面はすぐに元の場所に戻ったので、圧死することはありませんでした。僕は、再び破線の上を歩くゲームを始めました。すると、後ろのほうから「ぺりぺり」といった音とともに、破線上にひび割れが走り始めました。そのひび割れは勢いを増してこちらに近づいており、僕は必死になって破線の上を走りました。こんなときでも、きちんと破線を走るのは、僕が完璧主義であるからにほかなりません。一度始めたゲームは最後までやり遂げないと気が済まないのです。ちらと後ろに目をやると、道路が地中に沈んでいましたが、沈んでいるというよりも宙ぶらりんに浮いているようでした。ここから落ちたら間違いなく死んでしまう高さです。僕は前を向くと、最後の破線が2,3歩先にあることが分かりました。ただ、ゴールする前にひび割れに追いつかれてしまい、靴のかかとがひび割れた道路に触れ、僕は負けたと思いました。しかし、なんといままで破線上を走っていたひび割れが、右にそれたのです。それたかと思うと、それまで宙ぶらりんになっていた道路は、地中深くへ落下していきました。僕はしばらくの間、破線の上で、困惑と恐怖と安堵を感じながら、落ちていった道路を眺めていました。さて、命拾いできたことだし帰ろうかと思っていた矢先、土砂崩れに合ったかのように僕の足場が急に崩れてしまいました。僕はそのとき、なぜか死の恐怖よりも、残された道路と落ちていった道路が二度と会うことはないという、彼らが引き裂かれた事実に胸を痛めるのでした。

     
     
    所属:大学生 MBTI:INTP 趣味:読書、創作、芸人のポッドキャスト 好きな作家:安部公房 好きなアーティスト:フルーツジッパー、セカオワ、Simon &Gaefunkel、NF 好きな芸人:霜降り、マユリカ 不定期にショートショートを投稿していきます。

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