
モチヅキくん家のマカロニサラダ
小学校終わりにみんなでモチヅキくんの家へ遊びに行った。
六月の牧草地はどこまでも青い。
モチヅキくんの家は、小学校から歩いて十五分ほどの小高い丘の上にあった。庭先のムラサキハナナが風が吹くたびにさらさらと揺れる。
ランドセルを置いて、みんなで鬼ごっこをして遊んだ。
夕方に近づくと、放牧していた牛たちが牛舎に近い畑へ向かってゆっくり、ゆっくり近づいてくる。
もうすぐモチヅキくんのお母さんが牛舎へ行く時間だ。
時計の針が15時を過ぎていた。
「そろそろ帰ろう」
そう言ってみんなで帰り支度を始めると、モチヅキくんのお母さんが家から出てきた。
モチヅキくんのお母さんはショートヘアがよく似合う。ばっちりした目とすっと通った鼻筋が印象的で、笑うと目尻が下がって優しい顔になる。
「たくさん作りすぎちゃったから、よかったらお家で食べてね」
そう言って蓋が青いタッパーを手渡してくれた。
渡されたタッパーの中にはたっぷりマカロニサラダが入っていた。
タッパーを手に持ち、ノラニンジンの花が咲きほこる砂利道を歩く。
夕方に近づく空。雲はゆっくり流れていて、遠くから牛の鳴き声が聞こえる。
赤いランドセルはずっしりと重い。
手に持ったマカロニサラダ入りのタッパーが、家までの足取りを軽くさせた。
家に帰ると、祖母が夕飯の支度をしていた。
「モチヅキくんのお母さんにサラダをもらったよ」
そう言ってタッパーを開ける。
マカロニサラダにはほんのりピンク色の、輪切りにされた魚肉ソーセージが入っていた。
ひと口食べると、マカロニの食感のあとに魚肉ソーセージのうまみが口いっぱいに広がる。
玉ねぎがぴりりときいて、いくらでも食べられそうな味だ。
塩揉みされたきゅうりのシャキシャキも心地いい。
「なにこれ!おいしいね...」
気がつけば箸が止まらなくなっていた。
その日から、私はマカロニサラダが大好物になった。大人になった今でもモチヅキくんのお母さんのマカロニサラダがときどき無性に食べたくなって作る。
マカロニを柔らかく茹でて水を切り、刻んだゆで卵、塩揉みした胡瓜と輪切りにした魚肉ソーセージ、少量の玉ねぎみじん切りを加えて塩胡椒、マヨネーズで和える。
マカロニサラダを作るたびに、モチヅキくん家でみんなで鬼ごっこをして遊んだあの日のこと、モチヅキくんのお母さんの優しい笑顔を思い出す。
私がつくるマカロニサラダはモチヅキくんのお母さんの味。