
【その心は、詩 #06】許しとかけまして、ほどけた靴紐と解きます

歩いている途中で
靴紐がほどけていた
気づかないふりをして
そのまま進もうとしたけれど
一歩ごとに
足元が少しずつ不安定になった
立ち止まるのが
面倒だった
しゃがみ込むのが
少し恥ずかしかった
でも
このままでは
きっと転んでしまう
許しとかけて
ほどけた靴紐と解く
その心は
まだ言いわない
少しだけ
一緒に考えてみて
許すという言葉は
簡単そうで
とても難しい
誰かを許すこと
自分を許すこと
過去を許すこと
できなかった自分を許すこと
言い過ぎた自分を許すこと
選べなかった自分を許すこと
逃げた自分を許すこと
傷ついたまま
まだ立ち止まっている自分を許すこと
どれも
口で言うほど
簡単ではない
人はよく言う
もう忘れなよ
気にしなくていいよ
前を向きなよ
でも
忘れられるなら
とっくに忘れている
気にしないで済むなら
こんなに苦しくなっていない
前を向きたいのに
足元がほどけているから
進めないこともある
許せない気持ちは
心の中に残った結び目のようだ
あの言葉
あの態度
あの裏切り
あの日の沈黙
あの時
守ってもらえなかったこと
あの時
自分を守れなかったこと
何度も
もういいと思おうとする
でも
ふとした瞬間に
また思い出す
もう終わったはずなのに
終わっていない
過去の出来事は
遠くにあるはずなのに
心の中では
まだ近くにある
だから
許すことは難しい
許したら
あの痛みが軽く扱われる気がする
許したら
相手が正しかったことになる気がする
許したら
自分の苦しみまで
なかったことにされる気がする
だから
許せない自分を
責めてしまう
こんなに引きずる自分は弱いのか
いつまでも覚えている自分は小さいのか
まだ怒っている自分は醜いのか
でも
そうではないと思う
許せないほど
痛かったのだ
簡単に流せないほど
大切だったのだ
忘れられないほど
心に深く触れたのだ
だからまず
許せない自分を
責めなくていい
許しは
優しい人だけができる
立派な行為ではない
無理に笑って
大丈夫なふりをすることでもない
傷ついたことを
なかったことにすることでもない
許しとは
たぶん
ほどけた靴紐に気づくことから始まる
ああ
自分はまだ痛いのだと
ああ
このまま進むには
少し足元が危ないのだと
ああ
一度立ち止まる必要があるのだと
そう認めることから
始まる
歩き続ける人は
偉い
耐え続ける人も
強い
でも
立ち止まって
靴紐を結び直す人も
同じくらい強い
しゃがみ込む姿は
負けではない
進むための準備だ
許すということも
きっと同じだ
過去に戻るためではなく
もう一度歩くために
心の足元を
結び直すこと
誰かを許すことは
相手のしたことを
正しいと認めることではない
傷つけられた事実を
消すことでもない
ただ
その出来事に
これ以上
自分の今日を支配させないと決めること
自分を許すことは
過去の自分を
全肯定することではない
間違えたことを
正しかったと言い換えることでもない
ただ
あの時の自分なりに
必死だったことを
少しだけ分かってあげること
未熟だった
余裕がなかった
怖かった
知らなかった
うまく言えなかった
守り方が分からなかった
それでも
あの時の自分は
あの時の手持ちの力で
何とか生きようとしていた
そう思えた時
少しだけ
結び目がゆるむ
許しは
一度で終わるものではないのかもしれない
今日許せたと思っても
明日また痛むことがある
もう大丈夫だと思っても
何かの拍子に
また思い出すことがある
それでいい
靴紐だって
一度結んでも
またほどけることがある
そのたびに
また結べばいい
ほどけたからといって
歩けない人間になったわけではない
また結び直せば
また歩ける
心も同じだ
完全に強くならなくていい
完全に忘れなくていい
完全に許せなくてもいい
今日は少しだけ
昨日より
自分を責める力を弱めてみる
今日は少しだけ
過去ではなく
今の足元を見る
今日は少しだけ
もう一度歩く方向へ
体を向けてみる
それだけでも
許しは始まっている
許しとかけまして
ほどけた靴紐と解きます
その心は
どちらも
一度立ち止まって
結び直すことで
また歩き出せるでしょう
もし今
あなたの中に
許せない人がいるなら
無理に許さなくていい
その人を
好きにならなくていい
仲直りしなくていい
近づかなくていい
ただ
その人のために
自分の人生まで
止め続けなくていい
もし今
あなたの中に
許せない自分がいるなら
すぐに好きになれなくてもいい
ただ
少しだけ
こう言ってあげてほしい
あの時は
あれで精一杯だったんだな
間違えたけど
それでも生きてきたんだな
まだ変われる場所まで
歩いてきたんだな
許しは
過去を消す魔法ではない
傷を一瞬で治す薬でもない
でも
もう一度歩くための
小さな結び目にはなる
痛みを抱えたままでも
後悔を抱えたままでも
怒りを抱えたままでも
人は
少しずつ歩き出せる
そのために
今日は一度
立ち止まってもいい
しゃがみ込んでもいい
足元を見てもいい
ほどけていたものを
結び直してもいい
急がなくていい
誰かと同じ速さで
前を向かなくていい
あなたの歩幅でいい
あなたの結び方でいい
強く結べない日があってもいい
またほどける日があってもいい
それでも
結び直そうとする限り
道はまだ続いている
今日の問い
あなたが今日
少しだけ許してあげたいものは
何ですか
誰かでも
過去でも
自分自身でもかまいません
無理に答えを出さなくていい
ただ
ほどけていた心の紐に
気づいてあげてください
一つの景色から
一つの謎をかけ
一つの心を詠む
謎をかけて
心を解く
その心は、詩
欲求マンゾク