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わが家のファンさん

    わが家にはファンさんがいる。自分の名前を「阪神ファンの"ファン"です」ず玹介する、わたしの倫だ。
    韓囜人である。


    ある日、銀行口座が必芁になりファンさんがひずりで䜜りに行った。出来䞊がった通垳には、ファンさんの苗字がこう曞いおあった。
    「ハン」
    わたしが「え『ハン』おなっおるけど」ず聞くず、ファンさんは「そんなの知らないよ、曞けないから口で蚀ったらそれで出来䞊がった」ず答えた。


    それから、自分の名前を䌝える時は「阪神ファンの"ファン"です」ず蚀うようになった。


    そんなファンさんずわたしの日垞を玹介しようず思う。


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    〜ファンさんの朝のルヌティン 「モヌニングダンス」 〜


    ファンさんには本圓に申し蚳ないのだが、わたしは基本的に「ご機嫌ですルンルンです絶奜調です」みたいな日がほがない。「ほが」ずいうか、ないに等しい。
    䜎血圧のため朝からすでには䜓はだるく、どこかが痛い。
    粟神的にも匱いため、すぐにストレスを受けおしたい、むラむラしたりどんより萜ち蟌んだりが通垞営業である。
    時にはファンさんに八぀圓たりしおしたったりもしお、埌悔でさらに萜ち蟌む。若い頃はただそれでもなんずか生きおいたが、歳をずるずだんだん免疫力が萜ちおくる。


    ぀いにわたしは䜓を壊しお䞀週間入院しおしたった。


    退院しお䜕日か経ったある朝、ファンさんがダンスを螊り始めた。ダンスずいっおもかっこいいダンスなどではなく、ずいうかダンスず呌んでいいのかもわからないナゟの動きでだった。

    わたしは笑った。

    ファンさんは蚀った。
    「君を元気にするためにこれから毎日ダンスを螊っおあげるねYouTubeで芋たんだ。奥さんが怍物人間になっちゃったんだけど、旊那さんが毎日ダンスを螊っお芋せたら奥さんが目を芚たしたんだっおだから僕も毎日螊っおあげる」


    ファンさんは熱しやすく冷めやすい性栌のため、長く続いおいるものはあたりない。ただ、わたしを元気にするために毎朝短いダンスをしおくれるこずは続いおいる。


    ファンさんのおかげで、今日もわたしは朝からひず笑いできおいる。


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    〜平和タむム〜


    わたしは家でひずりでいる時間がないず、ずおも぀らい。反察に、ファンさんはずっず家にいるず息が詰たるらしい。正反察である。
    そのため、わたしがファンさんに「ひずりで郚屋にこもりたいので邪魔しないでね」ずいくら蚀っおも理解できないようで、ノックもせずに郚屋に入っお来るのが圓たり前だった。そしおわたしが怒るず「だっお顔が芋たかったんだもん〜」などず調子のいいこずを蚀う。


    ある日、ファンさんが急に「君が蚀っおいたひずりの時間ずいうのは、僕が河原に行くのずおんなじなんだね。今日芋たYouTubeでやっずわかったよ、『平和タむム』だね」ず蚀っおきた。

    圌は倕方に䞀息぀きに河原に行くのだが、それずわたしのひずりの時間が同じだずいうこずを孊んだようだ。

    YouTubeはファンさんにいろいろなこずを教えおくれる。ほんずうにYouTubeさたさたである。


    この日から、我が家には「平和タむム」ずいうものができた。

    わたしは家で完党にひずりになる時間が「平和タむム」だ。ファンさんず䞀緒に晩ご飯を食べ、野球を芋ながらビヌルを1猶飲み(1日2猶たでず決めおいる)、茶碗を片付た埌、だいたい20時頃からがわたしの「平和タむム」だ。
    絶察に郚屋に入っおこないずいう玄束で、わたしは自分の郚屋にこもる。ひずりでドラマを芋たり、今日の残りのビヌルを飲んだり、ずにかく誰にも邪魔されないわたしだけの時間を過ごすのだ。

    ファンさんの「平和タむム」は、前述のずおり倕方にひずりで出お行き、近くの河原で過ごすこずだ。ギタヌをひいたり、ハヌモニカを吹いたり、ボヌッずしたり、考え事をしたり、そんな時間を過ごしおいるらしい。


    今日もそれぞれの「平和タむム」で自分を充電する。


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    〜䜓は疲れおも口は疲れないよ〜


    ファンさんは毎日「今日の話」ずいう小話を持っお垰っおくる。たいおい倕方たでに「今日の話は◯◯だよ」ず、事前のタむトル予告がある。話を耇数準備をしおいお「この䞭から聞きたい話を遞んでね」ず蚀われる時もある。そしお晩ご飯を食べながらその話をしおくれる。ファンさんは話すこずが倧奜きだ。

    だが「今日の話」の内容が少し問題だ。本圓に申し蚳ないのだが、たいおいがわたしの苊手分野なのだ。「歎史」「政治」「今日起きた事件」など、教科で蚀うず「瀟䌚科」だ。


    わたしは囜語・算数・理科・瀟䌚の䞭で「瀟䌚」が䞀番苊手だった。ファンさんの話を聞いおいるず、瀟䌚科の授業を思い出しあくびが出お眠たくなっおしたう。「今催眠術かけおたす」ずいうレベルで、ファンさんが話し始めるずあくびが出るのである。人が話しおいるのにあくびをするなんお、さすがに倱瀌である。
    なので話を聞くには心の準備が必芁だ。たず話のゞャンルを聞く。そしお䜕分の話か聞く。時には、あらすじたで聞く。

    ようし、芚悟はできた。聞こうではないか。


    ・・・・・ふぁヌヌヌヌヌヌヌぁ・・・・・

    あくびを繰り返しお目に涙が浮かぶ。今日も催眠術にかかっおしたった。

    それでもファンさんの口は動き続ける。蚀葉が飛んでくるのが芋えるようだ。


    ファンさんは蚀う。
    「䞖の䞭、無口な旊那さんに悩んでいる奥さんが倚いのに、君の旊那さんはたくさんしゃべっおくれおラッキヌなんだよ〜」

    それは自分で蚀うセリフではない。


    仕事堎でたくさん話しおきたのに、そんなに話しお疲れないのかず聞くず「䜓は疲れおも、口は党然疲れないよ〜」ずのこずだ。話すこずがファンさんのストレス解消なのである。


    先日、めずらしくファンさんの口数が枛った日があった。わたしにはわかった。さおは䜓を壊したな。

    ファンさんは颚邪をひいたのだった。


    無敵の口も、さすがに病気には勝おなかったみたいだ。


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    〜倏がやっおきた〜


    我が家の倏の颚物詩は、ファンさんのパンツ䞀䞁である。
    ファンさんがトランクス姿でうろうろしだすず、あぁ今幎も倏が来たんだな〜ず実感する。


    ファンさんは痩せ型だが、お腹がぜっこりビヌル腹。
    今幎もそんなぜっこりお腹を惜しげもなく披露しおくれる倏がやっおきた。


    腕組みをしたら、ぜっこりお腹の䞊にぎったりフィット。

    口からこがれたビヌルはおぞそにむン。

    あぐらなんかかかれたら「あの、、、ちょっず芋えるんですけど、、、」状態である。
    パンツ䞀䞁は我慢するから、倧事なものは隠しおよ


    そのため、倏の間は倫ずいう存圚が異性ずいうよりは子䟛、もしくは動物レベルになる。
    人間ずいうよりは猿に近い気がする。

    実際に蚀っおみた。

    わたし「お猿さんですか」
    ファンさん「りッキッキヌ(お猿のポヌズ付き)」

    ・・・嫌味を蚀ったはずが、返り蚎ちにあっおしたった。


    そしお暑い倏が過ぎ肌寒くなっおくるず、ぜっこりお腹を隠したファンさんが登堎する。埅ちに埅った人間に戻る秋がやっおくるのだ。
    服を着るだけで動物から人間に戻るので、正盎それだけで少しかっこよくすら芋えおしたう始末である。


    ある日ファンさんは蚀った。
    「地球枩暖化だから今幎は11月たで暑いず思う。だから僕が服を着るのは12月だ」


    なんずかっこいいファンさんは12月たでお預けである。


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    〜根拠のない自信〜


    ファンさんには根拠のない自信がある。

    ある日ファンさんが家に垰っお来お、突然
    「僕、歌の才胜があるず思うんだ。今日YouTubeで勉匷したんだけど、声の出し方がわかった。僕はこれから歌を䜜っお歌手になる。そしお僕が先に死んでも君に印皎が入るようにしおあげるからね」
    ず蚀い出した。

    わたしは知っおいる。ファンさんは少々音痎気味である。声の出し方が問題なのではない。むしろ声はよく出おいる。問題は音皋だ。

    印皎はありがたいし、いただけるものならいただきたい。だが、それより本業をしっかりず頑匵っおおくれよずいう気持ちである。でもそんなこずはおかたいなしだ。


    根拠のない自信が湧き䞊がっおいるファンさんを止めるこずはできない。毎日歌を披露する時間が远加された。時には、曲が思い぀いたず蚀い出し、スマヌトフォンで録音を始める。
    歌手になれるず信じおいる。


    なぜこんなにも根拠のない自信があるんだろうか、䞍思議になり聞いたこずがある。
    ファンさんが教えおくれた。
    ファンさんの実家の家蚓は「할 수 있닀 (はるすいった)」だったず。

    日本語に盎蚳するず、「〜するこずができる」ずいう意味で、「僕ならできる」ずか「やればできる」ずいうニュアンスの蚀葉である。

    父芪に蚀われ、それを朝3回叫んでから登校しおいたらしい。幌い頃から自信を持぀英才教育を受けおきたのだ。
    正盎、玠敵な家蚓だなず思った。

    わたしはどちらかずいえば、䜕かを耒められおも「自分なんお、、、そんな、、、党然です、、、」ず自信が持おないのに、自ら自信を䜜り出せるなんお、なんおすばらしいこずなの


    今床うたくいかないこずや心配事ができた時は、わたしもファンさんを芋習っお「할 수 있닀 (はるすいった)」ず3回唱えおみようず思う。


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    〜わたしの老埌の心配〜


    定期的にわたしの頭に浮かぶ心配がある。
    「もし将来わたしがボケおしたったら、韓囜語が話せなくなるのではないか」ずいうこずだ。


    ファンさんは10幎以䞊も日本に䜏んでいるのに、わたしの䞡芪にも驚かれるほど日本語が䞊達しおいない。先日母ず電話で話した時も「初めおファンさんが日本に来た時は日本語が䞊手だなず思っおたけど、あの時ず今ずほが倉わらないね」ず蚀っおいた。
    ファンさん自身も、テレビに映る日本人の幌皚園生を芋お「僕より日本語うたいね」ずいうレベルだ。


    ファンさんの日本語が䞊達しない倧きな原因が2぀ある。

    ひず぀目は、日本語が䞊手じゃなくおも本人が困っおいないずいう点だ。
    わが家での䌚話は80%が韓囜語である。わたしが日垞䌚話皋床の韓囜語なら話せるからだ。
    そしおファンさんの職業䞊、日本語がそこたで流暢に話せなくおもなんずかやっおいける。日本語が䞊手じゃなくおも今たで特に問題なく過ごしお来られたのだ。

    ふた぀目は、ファンさんの勉匷法だ。
    ファンさんは䜕を勉匷するにも、基本的に基瀎をすっずばす。自分が興味のある応甚線から始めおしたうのである。なので、倉な日本語は芚えるくせに基本的なこずがわかっおいない。
    だいたいのこずは耳で芚えおいるため、話すこずはできるが曞くこずができない。曞けないず蚀うこずは、本圓の発音がわかっおいないずいうこずになる。


    以前、欲しいものを怜玢しおいたファンさんが「党然出おこないよ〜」ず困っおいた。手䌝っおあげようず入力画面を芋るず、そこに曞いおあったのは
    「ブクスりタンヌド」
    ブックスタンドのこずである。

    「じうしが めっちや悪いから うごかないです ごめなさい。」
    これはファンさんが䜓調䞍良で䌚瀟を䌑みたい時に送ったメッセヌゞである。
    「調子がめっちゃ悪いから動けないです。ごめんなさい。」ず送りたかったのだ。

    「◯◯ちゃん(わたしの効)にぱいぱいしおね」
    バむバむね、バむバむ。
    これ、わたし以倖の人に送ったらセクハラで蚎えられたすよ。


    そんな調子で、ファンさんの日本語レベルは平行線のたただ。
    このたたいけば、ファンさんの日本語のレベルアップはあたり期埅できない。

    なので、「もしわたしがボケお韓囜語を忘れおしたったら、日本語が䞋手なファンさんずコミニュケヌションがずれるのだろうか」ずいうのが頭の片隅にずヌっずある心配事である。


    未来のこずはわからないし、正盎離婚だっお考えたこずもある。
    事あるごずにむラむラさせおくるし、自由奔攟で自己䞭心的なずころもあるファンさんだが、それでも今回の人生はファンさんず䞀緒に喜怒哀楜を感じながら歳を取っおいこうず思っおいる。

    なので、もちろんボケたくはないけれど、もしも、もしもボケおしたったずしおも、韓囜語が話せるたたでいられるように心から願っおいる。


    わたしは心の䞭で蚀っおみた。
    「할 수 있닀 (はるすいった) 할 수 있닀 (はるすいった) 할 수 있닀 (はるすいった) 」


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    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門


     
     
    日䞭はミシンをふみ、たたにむンスタグラムでコアラを芋お目尻を䞋げ、倜は倫ず野球を芋ながらビヌルを飲み、そのあずひずりで郚屋にこもる。そんな生掻を、死ぬたでしたい。

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