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マチアプ婚の40代DINKs、マンションを買う(3話目)

    前回のお話はこちら

    2026年2月。
    大寒波に見舞われた、とある休日。
    昼前からは雪の予報だった。

    この日は、マンション購入に向けて初めての内見。自宅からほど近い場所にあるそのマンションは、昨年できたばかりの真新しい物件だ。

    価格帯は3,498万円〜4,448万円。
    間取りは1LDK〜2LDK。
    広さは42.8㎡〜44.73㎡。

    全邸角住戸、内廊下設計、静かな住環境。
    総戸数34戸、駅徒歩8分。
    さらにもう1駅も徒歩13分で利用可能。
    即入居可能で、モデルルーム家具付きの部屋も1室だけ用意されている。

    これまで43㎡ほどの1LDKに夫婦で住んできた私たちにとって、広さは大きく変わらない。

    住環境をあまり変えずに、「賃貸→所有」へ移行できればいい。
    そんな温度感で探していたので、条件としてはまずまず良さそうに感じていた。

    近所なので土地勘もあり、生活スタイルもほとんど変わらない。
    そういう意味でも、安心感のある物件だった。

    この日出迎えてくれた担当のNさんは、おそらく60歳前後。
    話しぶりからは、第一線を少し退いているような落ち着きも感じられた。

    ガツガツと売り込んでくる様子はまったくなく、
    もしかすると再雇用で、ゆったり働いているタイプなのかもしれない。

    いずれにせよ、初心者の私たちにとっては、
    落ち着いて話ができる、ちょうどいい距離感の人だった。

    モデルルームに入ったときの第一印象は、
    「思ったよりコンパクトだな」というもの。

    限られた敷地に建てているからか、配管の影響で下がり天井が多く、やや圧迫感もある。

    商業地域のコンパクトマンションなので、
    このあたりはある程度仕方ないのだろう。

    隣地では、車3台分ほどの駐車場を作る工事が行われていた。

    その奥には、平屋の日本家屋が一軒。

    Nさんの話によると、当初はその平屋と駐車場予定地も含めて一体で買い取ってほしいという要望があったらしい。

    しかし、そうすると敷地がいびつな形になり、
    マンションの建設が難しくなるため見送ったのだという。

    こうした平屋は、いずれ取り壊される可能性が高い。敷地的に高層建築にはならなそうではあるが、なんとなく気にはなるポイントだった。

    ちなみに私は、この場所がマンションになる前の姿を知っている。
    散歩コースの一部だったからだ。

    過去を知っている場所、というのは、
    それだけで少し安心材料になる。

    当時は、
    「こんな狭いところに、よくこんな建物を建てたな」なんて思っていたのに、

    今では、そこに住もうかと検討しているのだから、人の考えなんてわからないものだ。

    Nさんによれば、最近は単身者や、
    私たちのような子なし夫婦向けのコンパクトマンションが増えているという。

    少子高齢化の影響もあるが、
    建築コストの高騰により、従来のような広めの間取りは一般層には手が届きにくくなっているらしい。

    実際、このとき見せてもらった成約済み一覧では、売れ方は明確に二極化していた。

    ・低層階の安い部屋
    ・高層階の高い部屋

    なんとなくだが、

    コスパ重視で「賃貸よりは所有したい」人と、
    資金に余裕があり、資産性も見据えて選ぶ人。

    その両極が先に動いている印象を受けた。
    (あくまで個人的な感想だが)

    私たちのような中間層により、じっくり検討されながら1〜2年かけて埋まっていくのかもしれない。

    子供の頃のマンションといえば、
    一家5人ほどのファミリー世帯が当たり前だった。

    それを思うと、時代は確実に変わったのだと感じる。

    今は「家族のために買う」というより、
    単身者やDINKsが「賃貸よりは」という理由で選ぶケースが増えているのだろう。

    ただ、それでも私は、「購入」が本当に最適解だったのか、今でもわからない。

    昭和、平成、令和と生きる中で、
    常識や価値観が何度も覆されてきた。

    だからこそ、「世の中で言われていること」を
    そのまま信じる気にはなれない。

    最終的には、
    「どちらがワクワクするか」で判断した。

    妻の気持ちが、賃貸派から購入派へと変わったことも大きい。
    そして何より、これといった刺激的な趣味のない私にとっては、この一連のプロセス自体が十分にエキサイティングだった。

    パワーカップルでもない私たちにとって、
    「二人だからこそできる共同作業」という感覚もあった。

    この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない。
    それでも、「子供を持つ」という選択を手放した今、これくらいの挑戦がなければ、人生に張り合いが生まれない気がしている。

    さて、内見の話に戻る。

    結論から言うと、このマンションは私たちにとってはコンパクト過ぎた。

    なにより収納が少ない。

    妻はモノをなかなか手放せないタイプなので、
    ここが最終的に見送る大きな理由となった。

    立地と価格は理想的だっただけに、
    後ろ髪を引かれる思いはあった。

    軽自動車の駐車場が月8,000円という破格だったこともあり、
    最後まで悩んだのだが、結果的には断念。

    もし単身だったら、ここに決めていたと思う。
    あるいは、妻がミニマリストだったら……(笑)

    担当のNさんは最後まで押し売りすることもなく、終始心地よい距離感だった。

    今回の内見の多くはSUUMOカウンター経由で進めており、リモートで最初に対応してくれたIさんのことも、Nさんは把握していた。

    Iさんについては第2話で触れているが、
    どうやら私たちとの面談後、ほどなくして退職してしまったらしい。

    理由はわからないが、少し驚いた。

    実は1ヶ月ほど前から連絡が途絶えていたため、
    気にはなっていたのだ。

    内見の予約自体はアプリで完結するので問題はなかったが、
    それでも一言、引き継ぎの連絡くらいは欲しかったな、と思う。

    「ここから1〜2ヶ月が勝負ですよ」
    「短期集中で決めましょう」

    そう言っていた彼女の言葉を思い出しながら、
    少しだけ、複雑な気持ちになる。

    とはいえ、仕事ができそうな人だっただけに、
    きっといろいろ考えた末の決断だったのだろうと、勝手に想像してみたりもする。

    (続く)





























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