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『魔法のない䞖界で、君ず。』倖䌝― 秋祭りず、君ず。―【埌線】

「せっかくやし、あっち行っおみる」

玲斗が指さした先。

祭りの䞭心から少し離れた堎所に、赀く色づいた朚々が䞊んでいた。

「  ええ」

ノェルは小さく頷いた。

二人で歩き始める。

さっきたで聞こえおいた屋台の呌び声が、少しず぀遠くなっおいった。

◇

「    」

「    」

しばらく歩く。

なぜか䌚話がない。

ノェルはちらりず玲斗を芋る。

い぀もなら、こんな沈黙は気にならない。

家でも、玲斗がスマホを觊っおいる隣で本を読んだり、テレビを芋たり。

䜕も話さない時間なんお、いくらでもあった。

なのに今日は――

劙に気になる。

「  ねえ」

「ん」

「䜕か喋りなさいよ」

「急やな」

「だっお静かじゃない」

「祭りから離れたんやから、そら静かになるやろ」

「そういう意味じゃなくお」

「じゃあどういう意味やねん」

「それは  」

ノェルが蚀葉に詰たる。

自分でも分からない。

ただ。

さっきたで莉緒がいたからだろうか。

二人きりになった途端、玲斗ずの距離が少し近く感じる。

「ノェル」

「  なんでもない」

「なんやそれ」

玲斗が笑う。

「倉なや぀」

「あなたに蚀われたくないわ」

「俺は普通や」

「初めお䌚った女の子を家に連れお垰る人が」

「お前が河川敷で倒れかけおたからやろ」

「それでもよ」

「ほっずけっお蚀うんか」

「    」

ノェルが黙った。

「それは  困るけど」

「ほら」

玲斗が笑った。

その顔を芋お、ノェルも少しだけ笑った。

◇

祭り䌚堎から少し離れた堎所に、小さな階段があった。

二人はそこに腰を䞋ろす。

目の前には赀く染たった朚々。

その向こうから、提灯の明かりががんやりず芋える。

颚が吹いた。

䞀枚の玅葉が、ノェルの膝に萜ちる。

「  綺麗ね」

ノェルが玅葉を手に取った。

「そんな珍しい」

「私の䞖界にも䌌た朚はあったわ」

「じゃあ珍しくないやん」

「でも  違うの」

「䜕が」

ノェルは玅葉を眺める。

「向こうにいた時は、こんなふうにゆっくり芋るこずなんおなかったから」

玲斗がノェルを芋る。

「忙しかったん」

「たあね」

ノェルは少し笑った。

「魔物が出たずか、魔王軍がどうずか  そんなこずばかり」

「物隒やな」

「そういう䞖界だったのよ」

「魔法あるのに倧倉なんやな」

「魔法があるから倧倉なのよ」

「そういうもん」

「そういうもの」

少しの沈黙。

ノェルは倜空を芋䞊げた。

「䞍思議ね」

「䜕が」

「この䞖界には魔法がない」

「うん」

「最初は、本圓に䜕もない䞖界だず思った」

玲斗は䜕も蚀わず聞いおいる。

「魔力もない。魔法も䜿えない。知らないものばかり」

スマホ。

車。

電車。

コンビニ。

テレビ。

配信。

そしお――

目の前にいる、この男。

「毎日驚いおばかりだったわ」

「今もやろ」

「最近は枛ったわよ」

「昚日、自動ドアに話しかけおたやん」

「    」

ノェルの顔が赀くなる。

「芋おたの」

「“開きなさい”っお蚀うおた」

「忘れなさい」

「無理」

「玲斗」

玲斗が笑う。

「でもたあ」

「䜕よ」

「最初より楜しそうやん」

「  私が」

「うん」

ノェルは少し考えた。

そしお、祭りの明かりを芋る。

楜しそうに歩く人たち。

遠くから聞こえる笑い声。

屋台の匂い。

手の䞭の玅葉。

「  そうね」

ノェルは小さく笑った。

「この䞖界も、悪くないわね」

「そら良かった」

玲斗はい぀もの調子で答えた。

「最初はずっず垰りたい蚀うおたからな」

「    」

ノェルの衚情が少し倉わる。

垰る。

元の䞖界ぞ。

もし今、

「垰れる」

ず蚀われたら。

私は――

どうするのだろう。

少し前なら、迷わなかった。

でも今は。

「  ねえ、玲斗」

「ん」

「もし私が  」

そこたで蚀っお、ノェルは止たった。

「䜕」

「    」

垰るこずになったら。

あなたはどうする

そう聞こうずした。

でも。

なぜか蚀えなかった。

「  やっぱりなんでもない」

「今日それ倚ない」

「うるさい」

「なんやねん」

「いいの」

ノェルは顔を背けた。

◇

その時。

ひゅるるる――

倜空から音がした。

「え」

ノェルが顔を䞊げる。

ドンッ――

倜空に倧きな花が咲いた。

赀。

青。

金。

「  」

ノェルが立ち䞊がる。

「䜕」

「花火や」

「ハナビ」

ドンッ――

もう䞀぀。

ノェルの氎色の瞳に光が映る。

「魔法  」

「ちゃうちゃう」

玲斗が笑う。

「これも魔法じゃないの」

「違う」

「じゃあ、どうやっお――」

「説明したら長い」

「たたそれ」

次々ず倜空に花が咲く。

ノェルは蚀葉を倱ったように芋぀めおいた。

玲斗は花火ではなく、そんなノェルを芋おいた。

「  綺麗やな」

「ええ」

ノェルが笑う。

「すごく綺麗」

「    」

「玲斗」

「ん」

「花火、あっちよ」

「分かっおるわ」

「じゃあ䜕でこっち芋おるの」

「  別に」

玲斗が芖線を逞らす。

「」

ノェルは銖を傟げた。

そしお再び倜空を芋る。

しばらくしお。

「玲斗」

「ん」

「私ね」

ノェルは花火を芋たたた蚀った。

「少し分かった気がする」

「䜕が」

「魔法がなくおも  綺麗なものは䜜れるのね」

玲斗は少しだけ笑った。

「そらそうやろ」

「食べ物も矎味しいし」

「結局そこかい」

「䟿利なものもたくさんある」

「うん」

「莉緒もいる」

「うん」

そしお。

ノェルは䞀瞬だけ玲斗を芋る。

「  あなたもいるし」

「え」

ノェルはすぐに倜空ぞ芖線を戻した。

「だから――」

少しだけ頬が赀い。

「この䞖界も悪くないっお思えるのかもしれない」

玲斗がノェルを芋る。

「    」

ノェルも自分で蚀った蚀葉の意味に気づいたのか、さらに顔が赀くなる。

「  䜕よ」

「いや」

「䜕」

「今のっお――」

「違う」

「ただ䜕も蚀うおぞんやん」

「顔芋たら分かる」

「䜕が」

「だから」

ノェルは立ち䞊がった。

「垰る」

「急やな」

「垰るったら垰るの」

「莉緒ただ祭りにおるぞ」

「    」

ノェルが止たる。

「  じゃあ戻る」

「どっちやねん」

玲斗が笑う。

「笑わないで」

「ごめんごめん」

「もう」

ノェルは先に歩き始めた。

玲斗も立ち䞊がる。

そしお――

ノェルに聞こえないくらいの声で呟いた。

「  俺がおるから、か」

少しだけ嬉しそうに。

◇

「おヌい」

祭り䌚堎ぞ戻るず、莉緒が手を振っおいた。

「遅かったねぇ」

「莉緒」

ノェルが駆け寄る。

「あなた、どこ行っおたの」

「ちょっずお店芋おただけやっお」

「長すぎ」

「そう」

莉緒が玲斗を芋る。

そしおノェルを芋る。

「    」

ニダッ。

「䜕よ、その顔」

「別にぃ」

「たたそれ」

「楜しかった」

「普通よ」

即答。

「ぞぇ」

「䜕」

「玲斗は」

「俺」

「楜しかった」

玲斗が少し考える。

「たあ、楜しかったで」

「    」

ノェルが玲斗を芋る。

「そっかそっか」

莉緒は満足そうに頷いた。

「じゃ、垰ろ」

䞉人で歩き出す。

少し前を歩く莉緒。

その埌ろを玲斗ずノェルが䞊んで歩く。

しばらくしお。

ノェルの手が、玲斗の手に觊れた。

「」

ノェルが慌おお離す。

「ご、ごめん」

「いや」

「    」

「    」

たた沈黙。

でも――

今床の沈黙は。

さっきほど嫌ではなかった。

◇

家に垰ったあず。

ノェルは济衣から着替え、ベッドに腰を䞋ろした。

スマホを開く。

今日、莉緒が撮った写真が送られおきおいた。

りんご风を持った自分。

射的に本気になっおいる自分。

たこ焌きを食べおいる自分。

䞉人で笑っおいる写真。

そしお――

玲斗ず二人で写った写真。

祭りが始たったばかりの頃に撮った䞀枚。

ノェルはその写真をじっず芋る。

「    」

――この䞖界も、悪くない。

自分で蚀った蚀葉を思い出す。

どうしおそう思うようになったのか。

ただ、はっきりずは分からない。

ただ。

写真の䞭で隣に立぀玲斗を芋るず――

胞の奥が、少しだけ枩かくなった。

「  倉なの」

ノェルは小さく笑う。

そしお。

その写真を消さずに、そっずスマホを䌏せた。

窓の倖。

䞀枚の玅葉が、倜颚に舞っおいた。

魔法のないこの䞖界で。

ノェルはたた䞀぀。

魔法では説明できないものを知った。

――『秋祭りず、君ず。』 完

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