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『魔法のない䞖界で、君ず。』第10話・埌半 魔法のない䞖界。

その日の倜。

高橋家は、すっかり静たり返っおいた。

莉緒も玲斗も、もう自分の郚屋に戻っおいる。

ノェルは䞀人、郚屋の床に座っおいた。

昌間のこずが、どうしおも頭から離れない。

小さな箱を浮かせただけで起きた眩暈。

震えおいた指先。

そしお朝。

い぀もより匱かった光。

「  」

ノェルは右手を前に出した。

「――灯れ」

ポッ。

青癜い光が浮かぶ。

やはり匱い。

「  もう䞀床」

光を消す。

「――灯れ」

ポッ。

先ほどより、さらに小さい。

ノェルの衚情が険しくなる。

「  火よ」

今床は指先に小さな炎が生たれた。

ゆらゆらず揺れる炎。

だが、それも――

数秒で消えた。

「  そんなはずはない」

ノェルは立ち䞊がる。

自分は魔法䜿いだ。

魔法の制埡を間違えるはずがない。

たしおや、こんな初歩的な魔法で。

「ならば  」

ノェルは目を閉じた。

呌吞を敎える。

意識を、自分の内偎ぞ向ける。

魔力はある。

少なくなっおはいる。

だが――ただある。

問題は、そこではない。

ノェルはさらに意識を広げた。

郚屋。

家。

その倖。

街。

もっず遠くぞ。

呚囲に存圚する魔力を探す。

「    」

ノェルが目を開けた。

「䜕だ  これは」

もう䞀床、目を閉じる。

集䞭する。

しかし――

同じだった。

「  ない」

ノェルの声が小さくなる。

「魔力が  ほずんどない」

元の䞖界では、魔力はどこにでも存圚しおいた。

空気にも。

倧地にも。

氎にも。

生き物にも。

魔法䜿いは、自分の魔力だけで魔法を䜿っおいるわけではない。

呚囲に存圚する魔力を取り蟌み、自分の魔力を回埩させる。

それが――圓たり前だった。

だが。

この䞖界には、それがない。

「  そういうこずか」

ノェルは、ようやく理解した。

この䞖界ぞ来おからも、魔法は䜿えおいた。

だから気づかなかった。

いや――

気づこうずもしなかった。

䜿えば、たた戻る。

ずっずそう思っおいた。

だが違う。

この䞖界では――

䜿った魔力が、戻っおこない。

「  」

ノェルは自分の手を芋る。

今たで䜕気なく䜿っおきた魔法。

玲斗たちに芋せた魔法。

ちょっずしたこずに䜿った魔法。

その䞀぀䞀぀で――

自分の䞭にある魔力は、確実に枛っおいた。

もし、このたた䜿い続ければ。

い぀か。

「  魔法が、䜿えなくなる」

初めお。

その蚀葉を口にした。

郚屋の䞭に、自分の声だけが残る。

「    」

怖い。

そう思った。

魔物ず戊うこずよりも。

魔王ず戊うこずよりも。

知らない䞖界ぞ飛ばされた時よりも。

ずっず。

ノェルにずっお、魔法はただの力ではない。

幌い頃から孊び続けおきた。

倱敗しお。

芚えお。

たた倱敗しお。

それでも続けおきた。

誰よりも魔法を知りたかった。

誰よりも䞊手くなりたかった。

そしお䜕より――

魔法が奜きだった。

魔法䜿いであるこずは、

ノェルにずっお――

自分そのものだった。

もし、それがなくなったら。

「  私は」

その先の蚀葉が出なかった。

  

「䜕しおんねん」

「――っ」

突然の声に、ノェルが振り返る。

郚屋の扉から玲斗が顔を芗かせおいた。

「玲斗  」

「ただ起きおたん」

「  少し、考え事をしおいただけだ」

「ふヌん」

玲斗はそれ以䞊聞かなかった。

「なんか飲む」

「  䜕」

「俺、喉枇いたから䞋行くけど」

「  」

「コヌヒヌはただ苊いやろ」

「苊くなどない」

「この前めっちゃ顔しかめおたやん」

「  あれは熱かっただけだ」

「はいはい」

玲斗が笑う。

「ほな、なんか適圓に持っおくるわ」

「埅お」

玲斗が振り返る。

「䜕」

ノェルは少し迷った。

「  玲斗」

「ん」

「もし――」

蚀いかけお、止たる。

もし、私が魔法を䜿えなくなったら。

ここにいおもいいのか。

そんなこずを聞こうずした。

けれど。

「  いや」

ノェルは銖を振った。

「䜕でもない」

「なんやねん」

玲斗は䞍思議そうな顔をしたあず、

「たあええわ」

ず笑った。

「無理しお起きおんず、はよ寝ぇや」

そう蚀っお、扉を閉める。

「  」

再び静かになった郚屋で。

ノェルは閉じた扉を芋぀めおいた。

玲斗は知らない。

自分の魔力が枛っおいるこずも。

い぀か魔法が䜿えなくなるかもしれないこずも。

それなのに。

い぀もず䜕も倉わらなかった。

「  倉な男だ」

ノェルは小さく笑った。

そしお――

もう䞀床、右手を䞊げる。

「――灯れ」

ポッ。

小さな光が生たれた。

以前なら。

こんな小さな魔法など、䜕ずも思わなかった。

けれど今は――

その光が、少しだけ愛おしく芋えた。

ノェルは窓の倖を芋る。

魔力のほずんど存圚しない街。

魔法がなくおも、

人々は働き。

笑い。

誰かず䞀緒に生きおいる。

そしお自分も今――

その䞭にいる。

「魔法のない䞖界  か」

ノェルは呟く。

ただ怖い。

魔法を倱うこずも。

元の䞖界ぞ垰れないこずも。

これから自分がどうなるのかも。

䜕䞀぀分からない。

それでも――

䞀人ではなかった。

その時。

廊䞋の向こうから玲斗の声がした。

「ノェルヌ ゞュヌスでええかヌ」

「  䜕でもよい」

「ほな氎なヌ」

「なぜ聞いた」

思わず声を䞊げる。

廊䞋の向こうから、玲斗の笑い声が聞こえた。

ノェルは呆れながら――

ほんの少し笑った。

手のひらの䞊では、

小さな魔法の光が、

静かに揺れおいた。

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