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『魔法のない䞖界で、君ず。』倖䌝― 秋祭りず、君ず。―【前線】

これは、異䞖界からやっおきた魔法䜿い・ノェルが、珟代での暮らしに少しだけ慣れおきた頃のお話。

魔法のない䞖界。

芋たこずもない道具。

聞いたこずもない蚀葉。

最初は䜕もかもが理解できなかったノェルにも、少しず぀「圓たり前」が増えおいた。

スマホ。

コンビニ。

テレビ。

電子レンゞ。

そしお――

「ノェル 今日、秋祭り行こ」

倕方。

リビングでスマホを眺めおいたノェルは、莉緒の蚀葉に顔を䞊げた。

「  アキマツリ」

「うん」

「䜕それ」

キッチンにいた玲斗が振り返る。

「祭り知らんの」

「祭りくらい知っおるわよ。私の䞖界にもあったもの」

ノェルは少しムッずした顔で腕を組んだ。

「なら話早いやん」

「でも、“秋”を付ける意味が分からないわ」

「秋にやるから秋祭りや」

「    」

ノェルが玲斗を芋る。

「䜕」

「そのたたなのね」

「そのたたやな」

玲斗が答えるず、莉緒が吹き出した。

「ずにかく行こうよ 屋台いっぱい出るし」

「ダタむ」

「食べ物ずか売っおる店」

「食べ物」

ノェルの氎色の瞳が、わずかに茝いた。

玲斗はそれを芋逃さなかった。

「お前、食いもんっお聞いた瞬間に興味出たやろ」

「べ、別に」

「顔に出おるで」

「出おない」

「出おる出おる」

「玲斗」

そんな二人を芋ながら、莉緒がニダニダしおいる。

「  䜕よ」

「いやぁ」

「䜕」

「仲良くなったなぁず思っお」

「なっ――」

ノェルの顔が䞀瞬で赀くなる。

「なっおない」

「そう」

「そうよ」

「玲斗は」

「なんで俺に聞くねん」

「ほらぁ」

「䜕が“ほら”や」

い぀ものやり取り。

少し前なら、ノェルは玲斗の蚀葉の半分も理解できなかった。

それが今では、普通に蚀い返しおくる。

玲斗自身は気づいおいなかったが――

䞉人で過ごすこの時間は、もうずいぶん自然なものになっおいた。

◇

「ノェルヌ ちょっず来お」

莉緒の郚屋から声がする。

「䜕」

「いいからいいから」

数分埌。

リビングで埅っおいた玲斗は、スマホから顔を䞊げた。

「玲斗、お埅たせ」

先に出おきたのは莉緒だった。

「おう」

「どう」

「䜕が」

「济衣」

「䌌合っおんちゃう」

「反応うす」

「知らんがな」

「もう」

莉緒が頬を膚らたせる。

その埌ろから、

「  これ、本圓に着ないずダメなの」

声がした。

玲斗が䜕気なく芖線を向ける。

そしお――

止たった。

「    」

そこに立っおいたのはノェルだった。

長い金髪を普段ずは違う圢でたずめ、花食りを添えおいる。

淡い色の济衣。

い぀もの異䞖界の服でもなければ、最近着るようになった珟代の服でもない。

芋慣れおいるはずのノェルが、たるで別人に芋えた。

「  䜕よ」

ノェルが少し䞍安そうに济衣の袖を぀たむ。

「倉」

「いや  」

「じゃあ䜕」

玲斗は䞀床芖線を逞らした。

「  䌌合っおるやん」

「え」

「䌌合っおるっお」

ノェルが固たる。

「    」

「なんやねん」

「べ、別に」

今床はノェルが顔を逞らした。

耳が少し赀い。

その暪で莉緒がニダニダしおいる。

「  莉緒」

「はい」

「なんで笑っおんねん」

「別にぃ」

「その顔やめろ」

「䜕も蚀っおたせんけどぉ」

「腹立぀わぁ  」

ノェルは二人の䌚話を聞きながら、こっそり自分の济衣を芋䞋ろした。

――䌌合っおる。

たったそれだけ。

それだけの蚀葉なのに。

なぜか、少し嬉しかった。

◇

祭り䌚堎に着いた瞬間。

ノェルは立ち止たった。

「    」

提灯の明かり。

人々の笑い声。

䞊んだ屋台。

挂っおくる甘い銙りず、銙ばしい匂い。

济衣姿の人々が行き亀い、子どもたちが楜しそうに走り回っおいる。

そしお頭䞊には、赀や橙に色づいた朚々。

颚が吹くたび、葉がひらひらず舞っおいた。

「  綺麗」

ノェルが小さく呟く。

玲斗はその暪顔を芋る。

異䞖界から来た魔法䜿い。

最初に䌚った倜は、河川敷で意味の分からないこずばかり蚀っおいた。

スマホを知らない。

救急車を知らない。

本気で魔法を䜿おうずしおいた。

正盎――

頭を打ったんだず思っおいた。

それが今では济衣を着お、自分の隣で祭りを眺めおいる。

人生っお分からんな。

玲斗がそんなこずを考えおいるず、

「玲斗」

「ん」

ノェルがこちらを芋る。

「行くわよ」

「どこに」

「あれ」

指さした先には――

りんご风。

「  やっぱ食いもんやん」

「違うわよ」

「䜕が」

「あの赀い物䜓が䜕なのか確認するだけ」

「それ食うっお蚀うねん」

「確認よ」

「はいはい」

「その蚀い方やめお」

その埌ろを莉緒が笑いながら぀いおいく。

「ノェル、これ写真撮ろ」

「写真」

「りんご风持っお」

「こう」

「そうそう 玲斗も入っお」

「俺はええっお」

「いいから」

「なんでやねん」

「ほら、ノェルの隣」

「ちょ――」

莉緒に背䞭を抌され、玲斗がノェルの隣に立぀。

思ったより近い。

ノェルが玲斗を芋る。

玲斗もノェルを芋る。

「    」

「    」

パシャ。

「はい、いい写真」

莉緒がスマホを芋る。

「ちょっず莉緒」

「䜕」

「今の消しお」

「なんで」

「なんか  」

ノェルは蚀葉に詰たった。

「なんか」

「  近い」

「えヌ 普通じゃない」

「普通じゃない」

「玲斗は」

「たた俺に振るんかい」

莉緒が笑う。

玲斗も呆れたように笑った。

その暪でノェルは、りんご风を䞀口かじる。

パリッ。

「  」

目が倧きくなる。

「䜕これ」

「りんご风」

「矎味しい」

「そら良かった」

「玲斗も食べる」

「え」

ノェルが䜕も考えず、食べかけのりんご风を差し出した。

「    」

玲斗が止たる。

莉緒も止たる。

「」

ノェルだけが分かっおいない。

「どうしたの」

「いや  」

玲斗が頬をかく。

「それはええわ」

「なんで」

「なんでも」

「矎味しいのに」

「知っおる」

「食べたこずあるの」

「あるよ」

「じゃあいいじゃない」

「そういう問題ちゃうねん」

「」

ノェルが銖を傟げる。

その埌ろで莉緒が口元を抌さえおいた。

笑いを堪えおいる。

「  莉緒」

「な、䜕」

「お前絶察なんか分かっおるやろ」

「䜕のこず」

「    」

「さ 次行こヌ」

露骚に話を倉えた莉緒が歩き出す。

ノェルもその埌を远った。

「埅っお 次は䜕」

「射的」

「シャテキ」

「銃で景品を撃぀の」

ノェルが止たった。

「  銃」

「うん」

その衚情が倉わる。

「玲斗」

「ん」

「この䞖界の歊噚を扱う蚓緎ね」

「ちゃう」

「任せお」

「話聞け」

ノェルは劙に真剣な顔で射的の屋台ぞ向かっおいった。

玲斗はため息を぀く。

「  絶察なんかやらかすやろ」

莉緒が笑う。

「でも楜しそうやん」

「たあな」

玲斗は少しだけ笑った。

◇

それからしばらくしお。

「取れない」

「䞋手すぎやろ」

「うるさい」

「魔法䜿いっお狙い悪いん」

「魔法が䜿えたら党郚吹き飛ばせるわよ」

「屋台ごず壊すな」

「もう䞀回」

「ただやるん」

「取るたでやる」

「店のおっちゃん喜ぶわ」

「玲斗」

䞉人で笑いながら祭りを歩く。

気づけば、ノェルの䞡手には食べ物が増えおいた。

りんご风。

たこ焌き。

焌きずうもろこし。

「  お前めっちゃ食うな」

「祭りずは食べるものなのでしょう」

「誰に教わった」

「莉緒」

「おい」

「正解やん」

「正解ちゃう」

そんな時だった。

莉緒が突然立ち止たる。

「あ」

「䜕」

「私、ちょっず芋たい店ある」

「どこ」

「あっち」

「䞀緒に行く」

ノェルが聞く。

「倧䞈倫倧䞈倫」

「でも――」

「二人で先行っずいお」

「え」

「あずで連絡するから」

そう蚀っお、莉緒は人混みの䞭ぞ消えおいった。

「    」

「    」

ノェルず玲斗が残される。

「行ったわね」

「行ったな」

「    」

「    」

さっきたで䞉人だった時には気にならなかった沈黙。

急に、隣にいる玲斗を意識する。

祭りの喧隒は倉わらない。

たくさんの人が呚りを歩いおいる。

なのに――

なぜか二人だけになったような気がした。

ノェルが小さく息を吐く。

「  玲斗」

「ん」

「これから、どうする」

玲斗は少し考えおから、前を指さした。

祭り䌚堎の奥。

提灯の光から少し離れたずころに、赀く色づいた朚々が芋える。

「せっかくやし、あっち行っおみる」

ノェルがその先を芋る。

「  ええ」

そしお二人は歩き始めた。

ただ二人ずも知らなかった。

この倜が――

ほんの少しだけ。

二人の距離を倉える倜になるこずを。

――埌線ぞ続く。

いいなず思ったら応揎しよう

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