
精神と時の部屋——一年の食卓 60日目
白米を炊く。蓋を開けると、湯気が顔に当たった。茶碗に盛る。たくあんを齧った。塩気が、米の甘みを引き立てた。
「ごちそうさま」
そばを茹でた。冷水で締める。水が、指先から熱を奪っていった。つゆに浸けて啜った。冷たさが喉を通っていく。
「ごちそうさま」
松茸が届いた。
袋を開けた。香りが先に来た。土と湿気——それだけではない。山の気配が混ざっている。
取り出した。傘の裏に指を差し込んだ。張りが返ってくる。軸を持つ。固い。
刃を入れた。だが、最初の一瞬だけ刃が止まった。押し込む。繊維が縦に断たれていく。断面が白く出てきた。香りがさらに立った。
フライパンにバターを溶かす。松茸を加えた。熱が入ると、香りの方向が変わった。土の香りの下から、別の何かが立ち上がってくる。
米を加えた。炒る。白ワインを注ぐ。吸わせる。出汁を少しずつ加えていく。混ぜ続ける。米が、出汁を引き込んでいく。松茸が、熱を受けてわずかに縮んだ。とろみが出てきた。
皿に盛る。
松茸を口に入れた。歯を立てる。しかし、すぐには崩れなかった。さらに噛み込む。繊維が歯の間で割れた。香りが、鼻の奥に届いた。旨みが来た。リゾットの米が、その旨みを受け取っていた。
——秋の香りや。
さらにリゾットを口に運ぶ。さらに松茸を噛む。米と松茸が、口の中で重なっていった。
「ごちそうさま」
飲み込んだあとも、消えなかった。