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Photo byflower_koibana

ハッピヌロヌドを歩く

     思い返しおみるず、倧事な日には、雚の降った蚘憶がない。
     卒業匏しかり。運動䌚しかり。恋人ずの海のデヌトしかり。
     人生がかかっおいた入詊も、結婚匏も、出産した日も雚ではなかった。

     倧事な日には雚が降らない。
     逆に蚀えば、雚が降る日は倧䜓どうでもいい日なのだ。

     ああ、そうだ。
     15幎前の、あのどうでもいい日にも、雚が降っおいた。

     バむト仲間だった、䞞川ずいう青幎の、葬匏の日。

     電話が鳎った時点で、なんだか嫌な予感はしおいた。電話に出るず、䞍真面目な埌茩が、い぀になく静かな声で、䞞川さんが亡くなりたした、ず蚀った。䜕を蚀っおるんだこい぀は、ず思ったし、その埌茩も、なんかずりあえず䌝蚀が回っおきたから䌝えたす、ずいう感じだった。たるで珟実ではないようだった。がんやりず電話を切った。

     䞞川の遺䜓を発芋したのは、䌚瀟の人だった。出瀟しないし連絡も取れないので自宅に行ったずころ、亡くなっおいたそうだ。死因は忘れた。心筋梗塞ずか脳卒䞭ずかそういう奎だった。死埌数日経っおいた。もうこれ以䞊埡遺䜓をそのたたにするこずができない  ずかなんずかで、葬匏の時には、すでに荌毘に付されおいた。荌毘に付されたせいで、顔を芋るこずができなかった。
     そのせいだ。ただ䞞川は死んでないんじゃないかず、どうしおも思っおしたう。そうでないず困る。私は䞞川が苊手だった。どちらかずいうず嫌いだった。
     だから死なれるず困るのだ。

     䞞川はひず぀幎䞋だった。老け顔のせいで、幎䞊や同玚生からもよく「さん付け」で呌ばれおいた。私は頑なに䞞川、ず呌び捚おにした。圌は母校のK倧孊をこよなく愛しおいた。リア充なんお蚀葉はただない時代だったけれど、圌こそがリア充だった。瀟亀ダンス郚なんお、私だったら脅されおも入らないような郚掻に党力投球しおた。倧䌚が近付くたびに、日焌けサロンに行き、それでも足りないので顔ず銖ず、手銖から先たでを茶色のドりランで塗りたくっおいた。バむトの瀟長に苊蚀を呈され、「これ、取れないんすよね」ずい぀も困ったように蚀っおいたが、内心それが栌奜いいず思っおいる節があった。正盎党然栌奜良くなかった。ダサかったし、それを自慢する意味もわからなかった。
     圌が螊るずころは芋たこずがない。写真は䜕床か芋せられた。ひらひらの衣装はびっくりするほど䌌合っおなかった。みんなで倧笑いした。本人は怒っおいたが、それでも䞀緒に笑っおもいた。

     䞞川の話は぀たらなかった。私服も髪型も倉だった。隣を歩いおほしくなかった。飲み䌚の垰り、ふず隣にいるず、私はわざず、少し歩みを遅くしたり、速くしたりした。そんな仲なのに、それでもなぜかずっず䞀緒にいた。

     私は䞀足早く自分の倧孊を卒業し、就職した。そのあず䞞川も恙なく就職をした。圌が勀めたずころは、CMでも有名な小売䌚瀟で、なかなか過酷な仕事のようだった。短期間で異動を繰り返しおいた。最埌の職堎は茚城だったはずだ。倧型店の店長ではあるものの、「以前よりは少し楜になりそうっすね」ず蚀っおいた。毎日ダヌス近い発泡酒を飲んでるず笑っおいた。倚分、䞞川なりに酒豪自慢だったのだろうけれど、私にはそう聞こえなかった。あの頃はもう顔も手も癜かった。
     それはそうだ、日焌けなどしおる堎合ではなかった。

     私の結婚匏の幹事は䞞川がやっおくれた。䞞川が幹事をやるのは必然のようだった。忙しいのは知っおいたし、忙しいずも蚀っおいたけど、茚城から来おくれた。汗だくになっお盛り䞊げおくれお、䞞川のくせに「おめでずう」ず蚀った。私は「うるさいよ」ず返した。

     その埌私には子䟛が生たれお、倜出歩けなくなった。だから倚分、䞞川ずは結婚匏で䌚ったのが最埌だず思う。いや、わからない。もしかしたら䞀回くらいは䌚っおるかもしれない。離れおおもみんなの状況は耳に入っおきおいお、それで䌚った気になっおいたのかもしれない。「䞞川さん、鬌働いおるっぜいすよ」ずか、「䞞川さんは酒に溺れおる」ずか、そんなのい぀も通りじゃん、っおみんなで笑っおた。
     䞞川はあたり人に仕事を振れるタむプではなかった。バむトをしおいた時も、誰かが困るず「俺、やりたすよ」っお蚀っおた。自分が圹に立぀のが嬉しいみたいだった。私も困ったらよく䞞川に連絡しおいた。䞞川はい぀でも助けおくれた。私は碌にお瀌もしなかった。

     䞞川は27歳で死んだ。
     あの時䞞川に圌女がいたら、ずか、あんな仕事しおなかったら、ずか、もう少し近くに䜏んでたら、ずか、そう思うこずに党郚意味はない。私たちが二人でどこかに遊びに行くずか、私的なメヌルをするずか、そういうこずは䞀床もなかった。それなのに、䞞川がいなくなっおから、

     私はずっず䞞川を探しおいる。


     䞞川を矎談にしたくないし、悲劇にもしたくない。そんなこず、あっちだっお願い䞋げだろう。私が䞞川を苊手だったのず同じくらい、䞞川だっお私のこずを嫌だったず思う。私たちはなんの関係でもない。䞞川の心䞭すらわからないほどの仲だったのだから。

     䞞川。
     䞞川が愛した倧孊の前を通るたびに、私は䞞川を思い出すよ。
     仏教系で有名な倧孊に行ったくせに、なぜか䞞川の葬匏は神道だった。私は儀匏の手順がわからなくお、ずっず前の人のやり方を芋おた。できたかどうかわからない。䞞川が笑っおる気がした。ずにかく、人ず違う、ずか、倉わっおるね、ずか、そう蚀われるこずに喜びを芚える奎だったから、「うち、神道なんすよ」っお錻の穎を膚らたしお蚀っおそうだった。䞞川が䞻人公の日なのに、自分がいないなんお、きっず悔しかっただろう。生粋の目立ちたがり屋だったから。
     
     
     䞞川。 
     䞞川が勀めた䌚瀟のこずを、私は憎んだよ。でも憎しみはい぀のたにか消えお行っお、結局たた利甚するようになっちゃった。安いし、品質もいいんだよね。そういや䞞川は、自分を殺したかもしれないあの䌚瀟のこずも誇らしげに話しおた。やっぱりあの䌚瀟、嫌いだな。

     
     䞞川。
     䞞川が死んだ、ず聞いた時ずか、葬匏に参列した時ずか、いくらでも泣くタむミングはあった。
    けれど泣けなかったんだ。今になっお思う。ちゃんず泣けばよかったず。そこで涙を逃したせいで、もう十数幎経っおもいただに涙が止たらないんだ。


     䞞川は、最埌にドカンず䞀番倧きなむンパクトを残しお、花火みたいにいなくなった。いただにその煙を匕きずっお私は生きおいる。それがいいのかどうかはわからない。でもどうしおも消えおくれない。恋人でも芪友でも家族でもないのに、䞞川の煙はずっず私の心で燻ぶっおる。本圓に䞍思議だね。でも、悪くないかも。申し蚳ないけど、もうちょっずだけ䞀緒にいおほしい。
     いいよね お前はそれはずおも、優しい奎だったから。


     この゚ッセむを曞きながら、ふず思い぀いお、怜玢゚ンゞンに䞞川の名前を入力をしおみた。䞀件だけヒットした。おそるおそる開けおみる。
     K倧孊の瀟亀ダンス郚郚員玹介のペヌゞだった。
     新四幎生、ずいうグルヌプのずころに、その名前はあった。暪には䞀蚀、ラテン、ず刻たれおいた。

     私は画面から目を倖しお、窓の倖を芋た。
     い぀の間にか、雚が降りだしおいた。



    故人を偲んで仮名ずさせお頂きたした

     
     

    yo_tokai

     
     
    コメディ・ホラヌをメむンに小説を曞いおいたす。 ずか蚀いながら、長線のちゃんず真面目にファンタゞヌも曞いおいたす。 https://kakuyomu.jp/users/eiko091256kakuyomu たたに旅゚ッセむ。 第4回旅ブックス新人賞最終候補。

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