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第一回 寿司職人になるには?初心者が最初に学ぶべき寿司の基本🔰

    序章
    寿司職人になりたい。

    寿司を本格的に学びたい。

    そう思ったとき、まず何を練習しますか?

    おそらく、多くの人が「握り方」を思い浮かべるのではないでしょうか。

    私が寿司を教えていて、実際によく感じることがあります。

    それは、寿司を本格的に学びたいと思っている人ほど、**「何から学べばいいのか分からない」**ということです。

    魚を三枚におろすこと?

    包丁の使い方?

    シャリの炊き方?

    握り方?

    それとも、魚の仕込み?

    実は、寿司は「握り方」だけを覚えても、なかなか本当の意味では分かりません。

    寿司には、米があり、シャリがあり、魚があり、包丁があり、仕込みがあり、そして長い歴史があります。

    だから私は、寿司を学ぶときには、握るところから始めなくてもいいと思っています。

    むしろ、その前に知っておいてほしいことがたくさんあります。

    このnoteでは、これから寿司について、

    ・寿司の歴史
    ・米とシャリ
    ・包丁の選び方と使い方
    ・魚の見方と捌き方
    ・ネタの切り付け
    ・寿司の仕込み
    ・握り寿司、巻き寿司、押し寿司
    ・そして、寿司文化が日本から世界へ広がっていった歴史

    などを、一つずつお話ししていきたいと思います。

    「寿司を作れるようになる」だけではなく、「寿司そのものを理解する」こと。

    それが、私が考える寿司の学びです。
     
     
    第一章
    私自身、10歳のときに初めて寿司の仕事を始めました。父の店でお手伝いを始めたのです。

    それから半世紀、寿司の世界で仕事をしてきました。

    その間、日本だけでなく海外でも寿司を作り、多くの料理人に寿司を教えてきました。

    そして現在は、実際の寿司教室で、これから寿司を学びたいという方たちに、寿司の技術を伝えています。

    そこで強く感じるようになったのが、

    「寿司を学ぶ人には、技術だけではなく、寿司を学ぶための地図が必要なのではないか」

    ということでした。

    「握り方を教えてください」と言われても、その前に知っておいたほうがいいことがたくさんあります。

    例えば、シャリ。

    米を洗って、炊いて、酢を合わせれば、それで終わりではありません。

    米の選び方、洗米、浸漬、炊飯、蒸らし、そしてシャリ切り。

    その一つ一つが、最終的な一貫の寿司につながっています。

    私は生徒さんに、よく「シャリ切り3年」と話します。

    それほど、シャリを作るということは奥が深いのです。

    そして、魚。

    「魚を三枚におろせます」という方に出会うこともあります。

    もちろん、それは大切な技術です。

    しかし、寿司職人が魚を扱う仕事は、そこからさらに続きます。

    魚を見て、状態を判断し、捌き、骨を取り、皮を引き、柵に取り、そして寿司として美しく切り付ける。

    ここにも、覚えるべき技術があります。

    つまり、寿司職人の仕事は「握る」だけではありません。

    握るまでに、たくさんの仕事があります。
     
     
    第二章 握り寿司だけが、寿司ではない
    寿司を学びたいという方に、「何を作れるようになりたいですか?」と尋ねると、多くの方が「握り寿司」と答えます。

    もちろん、握り寿司は寿司職人にとって大切な技術です。

    しかし、寿司の世界は握り寿司だけではありません。

    細巻き、太巻き、押し寿司、棒寿司、箱寿司、そして魚を使ったさまざまな仕込み。

    さらに日本の寿司の歴史をたどれば、現在の握り寿司よりはるか昔から続く「熟れずし」という文化があります。

    実は、私が寿司を教えるときに大切にしているのは、こうした**「寿司全体を見ること」**です。

    「握りができれば寿司職人」というわけではありません。

    むしろ、握り寿司を学ぶためにも、その前後にある技術や文化を知ることが大切なのです。
     
     
    細巻きは、実はとても難しい

    「握り寿司より、巻き寿司のほうが簡単そう」

    そう思われる方も多いかもしれません。

    私も、寿司を知らない頃であれば、そう思ったかもしれません。

    ところが、職人が作る細巻きを見てみると、その印象は大きく変わります。

    細巻きは、海苔、シャリ、具材というシンプルな組み合わせだからこそ、ごまかしがききません。

    シャリの量が少し多いだけでも太くなります。

    具材の位置がずれれば、中心がずれます。

    巻き込む力が強すぎれば、シャリがつぶれます。

    逆に弱ければ、巻きが締まりません。

    海苔の向きや置き方、シャリを広げる幅、具材を置く位置、巻き始めから巻き終わりまでの力加減。

    その一つ一つが、仕上がりに表れます。

    そして、職人の細巻きには、もう一つ大切なことがあります。

    切ったときに、どこから見ても美しいこと。

    断面を見れば、シャリと具材のバランスが分かります。

    巻きが均一でなければ、切った断面にもその違いが現れます。

    つまり細巻きは、「海苔で巻けば完成」というものではありません。

    私は、寿司を教える中で、細巻きは握り寿司とはまた違った難しさを持つ技術だと感じています。

    シンプルなものほど、技術の差が出る。

    これは、寿司という料理全体にも通じることなのです。
     
     
    第三章 寿司の命は「シャリ」にある
    握り寿司を見ていると、どうしても魚のほうに目が行きます。

    「この魚は何だろう?」

    「どんな切り方をしているんだろう?」

    「どうやって握っているんだろう?」

    もちろん、それも大切です。

    しかし、寿司を一貫の料理として考えたとき、私は魚と同じくらい、いや、それ以上にシャリが大切だと考えています。

    ここでいう「シャリ」とは、寿司に使う**酢飯(すめし)**のことです。

    なぜなら、どれだけ良い魚を使っても、シャリが悪ければ寿司にはならないからです。

    では、そのシャリはどのように作られるのでしょうか。

    単純に言えば、炊いた米に合わせ酢を合わせたものです。

    合わせ酢とは、酢に塩や砂糖などを合わせて作る、寿司用の調味酢のことです。

    でも、実際にはそんなに単純ではありません。

    どんな米を選ぶのか。

    米をどのように洗うのか。

    どのくらい水に浸けるのか。

    どのように炊くのか。

    炊き上がった米をどう蒸らすのか。

    そして、どんな合わせ酢を使い、どのタイミングで合わせるのか。

    最後に、米をどのように切るのか。

    この一つ一つが、シャリの状態を変えていきます。

    私は生徒さんに、よく「シャリ切り3年」と話します。

    シャリ切りとは、炊き上がったご飯に合わせ酢を加え、しゃもじでご飯をつぶさないように、切るように混ぜながら酢飯に仕上げる作業のことです。

    「混ぜる」のではなく「切る」と表現するのには理由があります。

    ご飯を練るように混ぜてしまうと、米粒がつぶれ、粘りが出てしまいます。

    米粒を一粒一粒きれいに保ちながら、合わせ酢を均一に行き渡らせる。

    これが、簡単なようで非常に難しいのです。

    もちろん、「シャリ切り3年」は、文字どおり3年経てば自動的に上手になるという意味ではありません。

    それくらい、シャリ切りには奥深い技術があるということです。

    そして、シャリ切りをするときに使うのが**飯台(はんだい)**です。

    飯台とは、寿司職人が炊き上がったご飯を広げ、合わせ酢を合わせるために使う、木製の桶のことです。
     
    飯切りとも言います。

    飯台の中でご飯を広げ、余分な水分を飛ばしながら、合わせ酢を米全体に均一に行き渡らせていきます。

    最終的には、一粒一粒が生きた状態のシャリに仕上げる。

    これが簡単ではありません。

    さらに、シャリには温度があります。

    握るときのシャリの温度によって、口に入れたときの感じ方も変わります。

    ネタ(握り寿司などに使う魚介類や具材)との相性も変わります。

    つまり、寿司職人にとってシャリは、単なる「魚を乗せるためのご飯」ではないのです。

    シャリそのものが、寿司の味を作っています。

    だから私は、寿司を本格的に学びたい方には、握り方を覚える前に、まずシャリを知ってほしいと思っています。

    寿司職人への道は、実は包丁を持つところからでも、魚を握るところからでもありません。

    米一粒を見るところから始まっているのです。
     
     
    次回は第二回として、寿司職人には欠かすことのできない「包丁」について第四章からお話しします。
     

     

     
     
    10歳から父の店で寿司の道へ。国内外で寿司を学び教えて50年。現在は兵庫県芦屋市で「寿司スクール 慶」を主宰しています。寿司を握る技術だけでなく、歴史・米・包丁・魚・仕込み・盛り込みまで、寿司を最初から最後まで体系的にお伝えします。

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