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クリアレビュー:クオリティは素晴らしいが、あと一歩惜しいSRPG「ユニコーンオーバーロード」

今さらながら、ヴァニラウェアが贈る大作SRPG「ユニコーンオーバーロード」をプレイしました。美麗なグラフィック、奥深い戦略性、そして広大な世界。期待しかないじゃないですか。

©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

でも、ちょっと待ってほしい。確かに面白いんです。めちゃくちゃ丁寧に作られてる。ただ、「神ゲー!」と叫ぶには、もう一声かなぁ……。

クリアまで約80時間、じっくりとプレイした筆者が、感想を余すところなく(そしてちょっと辛口に)語ります。

※核心部分のネタバレなどは避けます。が、ストーリー、終盤やクリア後などの要素について言及するので「ネタバレのあるレビューは一切見たくない」方向けの記事ではありません。

※良いゲームであるぶん不満点も述べていくので、「神ゲー!」と思っている方には水を差してしまうかもしれません。

(約6000字)


基本情報

まずは基本情報から。

ゲームタイトル:ユニコーンオーバーロード
開発元:ヴァニラウェア
権利表記:©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
発売日:2024年3月8日
対応プラットフォーム:PlayStation 4/5、Nintendo Switch、Xbox Series X/S
CERO:「C」15歳以上対象
公式サイト:https://unicorn-overlord.com/
ジャンル:タクティカルRPG(シミュレーションRPG)
価格:8,778円(税込)
※2025/3/12時点のMy Nintendo Store通常版ダウンロード価格。体験版あり。

体験版もあるので、まずはそちらを試してみるのがおすすめです。

どんなゲーム? システムを徹底解剖

ユニコーンオーバーロードは、複数のゲームの良い所取りをしたようなシステムが特徴です。

  • 陣取りRTS(リアルタイムシミュレーション)

コーエーテクモゲームスの「決戦」シリーズや「無双」シリーズのように、リアルタイムで部隊を出撃させて陣地を占拠していく要素があります。ただしガッツリしたものではなく、援護射撃ができる程度のカジュアルなものなのでご安心を。

戦略マップ上の陣取り合戦
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
  • JRPG

ユニットの育成は、昔ながらの日本のRPGを踏襲。レベルアップで能力値が強化され、新たなスキルを習得します。

経験値によるレベルアップ成長
一緒に戦い続けることで好感度が上がる親密度システムもあり。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
  • ユニット編成

最大5人まで部隊を編成可能。各ユニットの特性を活かし、例えば「HPが50%未満になったら回復」のような細かい指示(スクリプト)を組み込むことで、戦略的なバトルが楽しめます。

個人的には、オートバトルで事前に戦略を練っておくのが好きなので、このシステムはドストライクでした。

戦闘自体はオートだが、技の発動条件を細かく指定できる。
(苦手な人にはお任せ機能もあり)
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

複数のユニットを組み合わせて部隊を作るシステム、どこか懐かしいと感じた方もいるかもしれません。多分これを最初にやりだしたのは「伝説のオウガバトル」ではないかと思われますが、筆者は世代的に日本一ソフトウェアの「ソウルクレイドル」やナムコの「7~モールモースの騎兵隊」のテイストを感じました。近年だと、「Symphony of War」が近いかもしれません。

操作性・UI:惜しい、あと一歩!

操作性やUIは、決して悪くはないのですが……終盤に差し掛かるにつれて、もう少し最適化して欲しかったと感じました。

  • 例えば、ユニットの装備をすべて解除したり、編成から一括で外したりする機能が欲しかったです。

  • 仲間になるユニット数に比べて部隊数の限界が少なすぎるので、もっと編成できるようにするか、お気に入りの設定や装備を保存できる機能が欲しかったです。

序盤は快適にプレイできるのですが、終盤になると「あの機能が欲しいなぁ……」「こうして欲しかったなぁ……」という点がしばしば。あるいは、そこまで手が回らなかったのかもしれませんね。

難易度:初心者向け? それとも……?

フリーバトルがあり、レベルを上げればゴリ押しも可能なゲームバランスなので、RTSやSRPG初心者でも問題なくプレイできるでしょう。

しかし、慣れている人にとっては、この点が少し物足りないかもしれません。(筆者はTACTICSモードでプレイしました。難易度を上げれば、また違った感想になるかもしれません)

グラフィック:これぞヴァニラウェア! ただし……

ヴァニラウェアといえば、圧倒的なクオリティの2Dグラフィック。まるで絵画が動き出したかのような美しさです。光源の変化など、細部にまでこだわりが感じられます。体験版だけでも、ぜひ一度見てほしい!

特に光の表現の美しさは絵画的です。
それでいてキャラクターに動きが多いのも特徴。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
冒頭、雷によってキャラクターにリムライトが入る。
細かいが手間暇かかる演出が光る。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

ただし、この美麗なグラフィックが、ストーリーへの没入感を阻害している部分もあると感じました。

  • キャラクターの顔が遠目に描かれる

  • 固定アングル

  • 一枚絵なし

そのため、キャラクターの表情の変化が分かりにくく、ドラマシーンでの感情移入が難しくなっています。

キャラクターのステータス画面では、アップの美しいイラストが見られるのですが……「アレイン(主人公)ってこんなに綺麗な顔してたんだ!」と、ちょっと勿体ない気持ちになりました。ドラマシーンで使うわけにはいかなかったんでしょうか……。

主人公のアレイン王子。ちょっと髪が乱れているところから、「身なりにはあんまり気を遣わない無骨さ」といったキャラクター性が伝わってくるのですが、ドラマシーンだとなんせ遠いので…
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また、これは好みなんですが、一部の女性キャラクターの胸の揺れが少し過剰だと感じました。(こんなに揺れたら彼女のクーパー靭帯は伸びきってしまうのではないかという無駄な心配)シリアスなシーンでもそちらに目が行ってしまい、感情移入が削がれることも。

音楽・サウンド:冒険心を掻き立てる

音楽は、ゲームの雰囲気を損なわない、オーソドックスなRPGらしい楽曲が揃っています。特にフィールド画面の曲は、冒険心を掻き立てられ、世界を探索するのが楽しくなります。

声優さんの演技も、キャラクターに合っていて、特に違和感はありませんでした。

ストーリー:シンプルイズベスト?

前述の通り、演出上の問題もあって、個人的にはストーリーに感情移入しづらいと感じました。

ストーリー自体も、

  • 「悪の帝国によって滅ぼされた亡国の王子が復権しつつ世界を解放する」

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という、非常にシンプルなものです。低年齢層が対象なのかな……? と思っていたのですが、CEROは「C」(15歳以上対象)ですし、最近の少年漫画はもう少し複雑です。となると、あえてシンプルにしているのかもしれません。

恐らく、本作のメインは戦闘システムと探索であり、ストーリーはおまけ程度なのでしょう。選択肢もたまにありますが、「仲間にする/しない」程度のシンプルなもので、ストーリーの分岐はほとんどありません。

繰り返しますが、ストーリーを楽しむゲームではないと思います。

キャラクター:大量の仲間、しかし……

仲間になるキャラクターは何十人もいます。でも、私はお気に入りの仲間を見つけることができませんでした。キャラクターが多すぎるせいなのか、

  • モブキャラクターと見分けがつかないユニットも多い

ということもありますし、戦争がテーマで悲惨な目に遭うキャラクターが多い割に、あっさり仲間になるなど「え? どういう感情の動きでそうなるの?」と置いてけぼりになる展開もしばしば。

中盤で「誰か一人を選ぶように」と言われる場面があるのですが、特別思い入れのあるキャラクターがいないので「誰を選べばいいの?」と本当に悩んでしまいました。

このゲームでは仲間同士で戦ったり、一緒にご飯を食べると親密度が上がり、ちょっとした会話が見られる、いわゆる「ファイアーエムブレム」シリーズでよく使われる「仲間同士の交流」があります。でも、これも少し薄味です。

たとえば、

「君は黙っていなくなったけど、色々理由があったんだね。でも置いて行かれて辛かったよ」
「そうか……お前にそんな辛い思いをさせていたなんて。気づかなかった」
「でもこれからはずっと一緒だ!」

キャラの掘り下げというより、このように良くも悪くも予定調和な展開が多く、ちょっと物足りないと感じました。こうしたやりとりを見て逆に「このキャラクターの感情についていけない」と興味を失ったキャラクターも多いです。

共通する特徴として、全体的に人物造形が人生経験と比べてちぐはぐだと感じました。

たとえば、主人公のアレイン王子は人格的に欠点のない好青年、人格者として描かれます。ですが彼は幼い頃に父を失い、母とも死別して国を捨てるという強烈なトラウマを負っています。

冒頭、母イレニアとの別れのシーン
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「辛いこともあったけど、仲間の支えで真っ直ぐな人間に成長した」という説明がありますが、実際の人間であれば、彼のトラウマは人生を通して解消されていくべきものであって、この年齢の時点でトラウマを克服するのはどのように育ったとしても難しく、必ず人格に影が落ちるはずです。それが見られない点に納得感がなく、違和感に拍車がかかります。

「ゲームなんだから」と言われればそれまでですが、作り物だからこそ本物以上にリアルに作るか、あまり語らないようにして想像の余地を残さないと、受け手は冷めてしまうことがありますね。あまりキャラクターやストーリーを深掘りできないならできないで、戦争というテーマを扱わないという選択肢もあったのではないかと思います。

ボリューム:中盤までは神ゲー、しかし……

私の場合は、のんびりプレイしてメインルートクリアまで80時間程度かかりましたが、「楽しい!」と感じたのは50時間くらいで、あとは惰性でのプレイになってしまいました……(それでもすごいボリュームですが!)。

クリア後に解放されるコンテンツもありますが、現状だと、リプレイ性はやや弱いでしょうか。

このゲームは、「悪の帝国から世界を解放していく」というリニアな目標があるのですが、攻略順はユーザーに任せられています。ただし、敵のレベルは固定なので必然的に順番通りにクリアすることになりますし、村や町を解放する時に仲間が増えたりもするので、ほとんどのプレイヤーは同じ順で攻略することになるでしょう。

もしレベルが大きく違う敵と当たると、簡単すぎるか難しすぎて、難易度としては破綻します。これについては色々な選択肢があったとは思いますが、私としては敵のレベルを主人公の平均レベルに応じて上げるようにして欲しかったですね。

RPGにちょっとしたオープンワールド要素を取り入れたゲームでは同様の問題が起こりやすいのか、「自由ですよ」というわりに攻略順は実質的に固定であるという指摘は「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の発売時にもありましたね。

また、ステージクリア後に評価画面があるのですが、細かい数字で結果が示されるものの、よくある「SABC」「優良可」などの目安となる評価がなく、何をどうすればどのぐらい評価が上がるのかもよく分かりません。

リザルト画面
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リプレイもできないので、自分のプレイがどうだったか? というフィードバックが得られず、「次はもっとうまくクリアして報酬をいっぱい貰おう」というようなインセンティブがありません。

結果的に、流れで攻略レベルの低い順にプレイして、終盤ではアレイン(主人公)に移動速度のバフをかけ、一人で敵の本拠地に特攻して数十秒でステージが終わり……虚しさを感じました。

味方ユニットが撃破されることのデメリットも(通常難易度だと)ほぼありませんし、上達しようというインセンティブが無いんですよね。

ステージごとにレベル制限を設けたり、クリア評価によってはっきりと報酬が変わるようにすれば、「次はもっとうまくクリアしてみせる」という気持ちになれたかもしれません。

過去に前者の方針「レベル制限」でユーザーからの不満が多く出たSRPGがありましたが、ユニコーンオーバーロードは新規IPですし、それはそういう方針ということで押し通しても良かったんじゃないかなぁ。

とにかく終盤の作業ゲー感や、成長体験に欠ける要素が少し残念です。

一番楽しかったのは闘技場かもしれません。闘技場では育てたキャラクターで特定の敵部隊や他プレイヤーの部隊攻略を目指せるのですが、KOではなく(おそらくHP減少率による)判定勝ちが許されるので、適当にやっても勝ててしまうことがあり、若干の物足りなさはありました。また、なぜか闘技場の戦闘だけ演出のスキップができない点は、プレイ時間の引き延ばしに感じられました。

クリア後要素も追加してくれようですが、一部、クエストリストに登録されないのでどこに出現したか覚えておかなければならず、敵自体は無言でストーリー上の整合性もないので、「とりあえず強い敵置いたよ!」という感じです。

とにかくこのゲーム、終盤にいくにつれて荒さが目立つようになります。まるで開発終盤になって「もっとプレイ時間を伸ばせ」という圧がかかったようです。

それでも目立った不具合もなく、ゲームとして作り切ってまとめたのはすごいと思います。

コストパフォーマンス:値段に見合う?

「8,778円」フルプライスだとちょっと驚きの価格ですよね。ただ、作り込み的には値段に見合っていると思われます。よくまとまっているし、クオリティは高いです。特にヴァニラウェアさんの職人技による狂気の2Dグラフィックは素晴らしいです。

(私にはLive2Dで動かしてるか、そうじゃないのかは見れば分かるのですが、Live2Dが当たり前の世代はそうじゃないのかも? 絵が動くことに関してあまり感動はないのかもしれません)

色々と書きましたが、総じていいゲームです。面白かったです! ただ、個人的には1周あたり40~50時間くらいのタイトなゲームにした方が満足度は上がったと思います。

「開発期間が延びる」→「価格が上がる」→「値段に比べてボリューム不足だとレビューに書かれるのは避けたい」→「なんとかボリュームを増やそう」→「薄味なキャラクター、シナリオ、クリア後コンテンツが増える」という負のスパイラルがあったのでは……と邪推してしまいます。

レベルデザインも最初からこうだったのではなく、開発中に諸事情で変遷して最終的にこうなっているだけという気もします。

ただ、これだけの新規IPをうまくまとめて発売しているだけでも意欲的で素晴らしいと思いますし、フルプライスで買っても後悔させないだけの完成度はあると思います。

総合評価:惜しい! でも、おすすめ!

  • 強み・魅力的なポイント:超丁寧に作られた大作SRPG

  • 改善が望まれる点:終盤のレベルデザインとストーリー演出、キャラクターの描き方

最終的な評価としては……「体験版をプレイして『続きがやりたい!』と思ったら、フルプライスでも買い」です。

  • ぬるぬる動くファンタジックな美しい2Dグラフィックが好きな方

  • 戦略シミュレーションは難しそうだけど、やってみたいという方

  • ロジカルなオート戦闘が好きな方

には、特におすすめです。

完璧ではないけれど、光る部分がたくさんある作品。ぜひ、あなた自身の目で確かめてみてください。


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