我々人類は原則としてカンブリア爆発期(Cambrian explosion,およそ5億4200万年前~5億3000万年前)に獲得した視覚と視覚情報を処理する脊髄の末裔を用いて物を考えますが、所詮は不完全で様々な制約を背負っています。この状況を可視化する手段の一つが以下に述べる「パスカルの三角形への数理マッピング」という次第。
「パスカルの三角形」が内包する数理群
そもそも「パスカルの三角形」とは何でしょう? 自然数を三角形の形状に並べたもので、各数は直上の2つの数の和になっています。

二項係数(Binomial Coefficient)nCr=(nr)(第n行の左からk番目の数)を可視化したもの。
歴史的背景と発見の流れ
◉ 古代中国:楊輝の三角形(Yang Hui's Triangle)
紀元前2世紀頃:『九章算術』の注釈で知られる賈憲(かけん)が類似構造を使用。
13世紀:楊輝(Yang Hui)が図として明示 → 「楊輝の三角形」として中国では知られる。
◉ イスラム世界:アル=カーシー(al-Kashi)の三角形
15世紀:ペルシアの数学者アル=カーシーがこれを用いて二項定理などを展開。
◉ ヨーロッパ:パスカルによる体系化
17世紀:フランスの数学者ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)が著書 Traité du triangle arithmétique(1654)にて理論的に整理。この業績により、西洋では彼の名にちなんで「パスカルの三角形」と呼ばれるようになった。
ChatGPTに質問「パスカルの三角形の歴史的背景と発見の流れについて教えてください」義務教育段階でも相応には教わる訳ですが「群盲像を撫でる」の例え如く、以下の様な「さらに先の数理につながる」全体像に到達するのは中々難しいものがあります。





肝心なのは以下。
①我々が一般に抱く幾何学的イメージ(直線、正方形、立方体等)や(三十円まで扱える)ベン図で掌握可能な範囲は概ね三次元の世界に集中している。
⚫︎1次元…2項式(a+b)1の世界

⚫︎2次元…2項式(a+b)2の世界

⚫︎3次元…2項式(a+b)3の世界

②一方、順列(Permutation)
や組み合わせ(Combination)や二項分布(Binomial Distribution)といった数理は二項式(a+b)6ないしは二項式(a+b)7くらいから正規分布で近似可能となる。


二項分布とは何かというと、要するに「n枚のコインを同時投擲した場合に表が出る枚数r」の事。段々左右対称のベルカーブに近づいて行くのが観測されますね。

21=2の段(p=1−p=21の時、21+21=1)
1C0p0(1−p)1=1−p
1C1p1(1−p)0=p
組み合わせの計算
1C0=0!1P0=11=1
1C1=1!1P1=11=1
22=4の段(p=1−p=21の時、41+42+41=1)
2C0p0(1−p)2=1∗(1−p)2
2C1p1(1−p)1=2∗p(1−p)
2C3p2(1−p)0=1∗p2
組み合わせの計算
2C0=0!2P0=11=1
2C1=1!2P1=12=2
2C2=2!2P2=2∗12∗1=11=1
23=8の段(p=1−p=21の時、81+83+83+81=1)
3C0p0(1−p)3=1∗(1−p)3
3C1p1(1−p)2=3∗p(1−p)2
3C2p2(1−p)1=3∗p2(1−p)
3C3p3(1−p)0=1∗p3
組み合わせの計算
3C0=0!3P0=11=1
3C1=1!3P1=13=3
3C2=2!3P2=2∗13∗2=26=3
3C3=3!3P3=3∗2∗13∗2∗1=11=1
24=16の段(p=1−p=21の時、161+164+166+164+161=1)
4C0p0(1−p)4=1∗(1−p)4
4C1p1(1−p)3=4∗p(1−p)3
4C2p2(1−p)2=6∗p2(1−p)2
4C3p3(1−p)1=4∗p3(1−p)
4C4p4(1−p)0=1∗p4
組み合わせの計算
4C0=0!4P0=11=1
4C1=1!4P1=14=4
4C2=2!4P2=2∗14∗3=212=6
4C3=3!4P3=3∗2∗14∗3∗2=624=4
4C4=3!4P4=4∗3∗2∗14∗3∗2∗1=11=1
25=32の段(p=1−p=21の時、321+325+3210+3210+325+161=1)
5C0p0(1−p)5=1∗(1−p)5
5C1p1(1−p)4=5∗p(1−p)4
5C2p2(1−p)3=10∗p2(1−p)3
5C3p3(1−p)2=10∗p3(1−p)2
5C4p4(1−p)1=5∗p4(1−p)
5C5p5(1−p)0=1∗p5
組み合わせの計算
5C0=0!5P0=11=1
5C1=1!5P1=15=5
5C2=2!5P2=2∗15∗4=220=10
5C3=3!5P3=3∗2∗15∗4∗3=660=10
5C4=4!5P4=4∗3∗2∗15∗4∗3∗2=24120=5
5C5=5!5P5=5∗4∗3∗2∗15∗4∗3∗2∗1=120120=1
26=64の段(p=1−p=21の時、641+646+6415+6420+6415+646+641=1)
6C0p0(1−p)6=1∗(1−p)6
6C1p1(1−p)5=6∗p(1−p)5
6C2p2(1−p)4=15∗p2(1−p)4
6C3p3(1−p)3=20∗p3(1−p)3
6C4p4(1−p)2=15∗p4(1−p)2
6C5p5(1−p)1=6∗p5(1−p)
6C6p6(1−p)0=1∗p6
組み合わせの計算
6C0=0!6P0=11=1
6C1=1!6P1=16=6
6C2=2!6P2=2∗16∗5=230=15
6C3=3!6P3=3∗2∗16∗5∗4=660=10
6C4=4!6P4=4∗3∗2∗16∗5∗4∗3=24480=20
6C5=5!6P5=5∗4∗3∗2∗16∗5∗4∗3∗2=120720=6
6C6=6!6P6=6∗5∗4∗3∗2∗16∗5∗4∗3∗2∗1=120120=1
27=128の段(p=1−p=21の時、1281+1287+12821+12835+12835+12821+1287+1281=1)
7C0p0(1−p)7=1∗(1−p)7
7C1p1(1−p)6=6∗p(1−p)6
7C2p2(1−p)5=15∗p2(1−p)5
7C3p3(1−p)4=20∗p3(1−p)4
7C4p4(1−p)3=15∗p4(1−p)3
7C5p5(1−p)2=21∗p5(1−p)2
7C6p6(1−p)1=7∗p6(1−p)
7C7p7(1−p)0=1∗p7
組み合わせの計算
7C0=0!7P0=11=1
7C1=1!7P1=17=1
7C2=2!7P2=2∗17∗6=242=21
7C3=3!7P3=3∗2∗17∗6∗5=6210=35
7C4=4!7P4=4∗3∗2∗17∗6∗5∗4=24840=35
7C5=5!7P5=5∗4∗3∗2∗17∗6∗5∗4∗3=1202520=21
7C6=6!7P6=6∗5∗4∗3∗2∗17∗6∗5∗4∗3∗2∗1=7205040=7
7C7=7!7P7=7∗6∗5∗4∗3∗2∗17∗6∗5∗4∗3∗2∗1=50405040=1
話を確率論の世界に持ち込む為、それぞれの枚数で表が出た数rを総枚数nで割った結果が以下。

2nオーダーで最低値が下がり続け、60分割くらいから新たな様相を帯びてくるのは数学の世界においてよくある事。
二項分布の正規分布近似についてはこの辺りを。
こうして全体像を俯瞰すると、人類の認識における「(観察尺度が三次元以内に収まる為、先験的身体イメージの延長線上で思惟や洞察が働く)ミクロコスモス的数理領域」と「(観察尺度が6次元を超える為、統計学的に状況を把握した方が話が早い)マクロコスモス的数理領域」の間に「ちょっとした狭間」が存在する様子が透けて見えてくる訳です。
「ミクロコスモス的数理」と「マクロコスモス的数理」の狭間には何が?
数学者集団ブルバキは上掲の「(不完全極まりない)ミクロコスモス的数理領域」から人類がいつまで経っても脱却出来ない状況に愛想が尽きて「集合論を基底とする全数学の統合」に挑戦しましたが、解析学(とりわけ数理物理学)の領域に踏み込めず1980年代にはすっかり停滞してしまいました。こうした野心的試みの背後には「正義概念の統合を指向する」共産主義的イデオロギーの影響が見て取れ、だから冷戦時代が終わると最早モチベーションが続かなかったという指摘もなされています。
そう、どうやら「(観察尺度が三次元以内に収まる場合には先験的身体イメージの延長線上で思惟や洞察が働く)ミクロコスモス的数理領域」はどちらかというと数学より物理学と縁が深そうに見えてくるのです。
まずその事が指摘出来た時点で以下続報…