世界で一番モテるのは日本人女性ということを、一番知らないのは日本人
ここ二年ほど、私はヨーロッパを中心にスケッチ旅行をしています。
スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、そして東欧の国々。
絵を描くのが目的ですから、美術館へ行ったり、街を歩いたり、建物を眺めたり、カフェでスケッチをしたりしています。
ところが旅をしていると、絵とは別のところで、何度も同じことに気づきます。
日本に関心を持っている人が、驚くほど多いのです。
「日本が好きです」
と言われる。
なぜですか、と聞くと、答えはいろいろです。
漫画。アニメ。抹茶。寿司。京都。日本のファッション。日本の車。
入口はそれぞれ違います。
しかし、その先にあるものは、わりと似ています。
日本という国そのものに、いいイメージを持っているのです。
面白いのは、その好感が日本人そのものにもつながっていることです。
そして、私が出会った人たちを見ていると、とくに日本人女性への関心は、思っていた以上に高いと感じます。
日本にいると、日本人女性は珍しくありません。
電車に乗ればいる。会社にもいる。カフェにもいる。コンビニにもいる。
日本人にとっては、日本人女性であること自体に特別な意味はありません。
ところが外国へ行くと、その「当たり前」が急に珍しいものになります。
黒い髪。話し方。服装。小柄な体型。雰囲気。
そして、その後ろには「日本」という文化までついてきます。
日本人女性を見ているようで、少しだけ日本そのものも見ている。
そんな感じがします。
漫画が好きな人なら、日本人女性を見て、日本のカルチャーを重ねるかもしれません。
京都が好きな人なら、伝統的な日本のイメージを重ねるかもしれません。
抹茶が好きな人なら、そこから日本そのものへの親しみを感じるかもしれません。
もちろん、現実の日本人女性が漫画のキャラクターでもなければ、京都の舞妓さんでもありません。
それでも、人間というのは、知らない相手を見るとき、その人の後ろにある国や文化まで一緒に見ています。
これは日本人だって同じでしょう。
フランス人と聞けば、なんとなくパリを思い浮かべる。
イタリア人と聞けば、ファッションや料理を思い浮かべる。
スペイン人と聞けば、陽気で情熱的なイメージを持つ。
実際には、そんな単純ではありません。
しかし第一印象というのは、案外そういうものです。
その意味で、今の日本はかなり得をしていると思います。
昔なら、日本を知らない人もたくさんいたでしょう。
しかし今は違います。
漫画やアニメは世界中に広がっています。寿司は珍しい料理ではなくなりました。抹茶も普通に知られています。
日本のゲーム、日本の車、日本のデザイン、日本のファッション。
日本に行ったことはなくても、日本文化には触れている。
そういう人がかなり増えています。
つまり、日本人女性は外国へ行くとき、自分一人で行っているようで、実は巨大な日本文化を背負って行っているのです。
これは、かなり強い。
ところが、そのことを一番知らないのが、日本人なのではないでしょうか。
日本にいると、どうしても日本国内の基準で自分を見がちです。
顔がどうだ。スタイルがどうだ。若く見えるか。目が大きいか。脚が長いか。
雑誌やテレビやSNSの基準と比べて、自分はたいしたことがないと思う。
しかし、国境を越えた瞬間に、その基準そのものが変わることがあります。
日本では普通だったものが、外国では個性になる。
日本では気にしていたところが、外国では魅力になる。
私は絵を描いているので、つい絵にたとえてしまいます。
同じ絵でも、置く場所が変わると見え方が変わります。
倉庫に置いてあれば、ただの一枚の絵です。
しかし立派なギャラリーの壁に掛けると、急に人が立ち止まる。
絵そのものは、一ミリも変わっていません。
変わったのは、環境です。
人間も同じなのかもしれません。
自分の価値は、自分がいる場所だけでは決まりません。
誰が見るか。どの文化の中にいるか。どんな背景を背負っているか。
それによって、評価はかなり変わります。
だから私は、日本人女性に、
「外国へ行けば絶対モテます」
などと言うつもりはありません。
そんなに単純な話ではないでしょう。
ただ、ヨーロッパを歩いていると、どうも日本人が思っている以上に、日本人女性への関心は高い。
そして、その背景には、日本という国そのものへの好感があります。
世界で一番モテるのは日本人女性なのかもしれない。
そして、そのことを一番知らないのが、日本人なのかもしれません。
