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トリプル役満 〜手足口病黙示録〜

    ◻️序章 『戦いの始まり』

    怒涛の1週間を終え
    ようやく一息ついた私のスマホに届く

    一通の通知。

    下の子の
    保育園の連絡帳アプリだ。

    ざわ……
    ざわ……

    『 手足口病が 数名出ております 』

    画面を見つめる私…

    新米母ならこう思うだろう。
    「えーこわーい!気を付けよ〜!」

    だが、違う……!
    私は二児の母……!
    そして看護師でもある!!

    保育園感染症サバイバルと仕事を
    両立して生き抜いてきた女……!

    知っている……!
    知っているのだ……!
    手足口病とは……
    気を付けるどうこうの病ではない……!

    潜伏期間は3日〜1週間
    最初の発症者が出た時点で……もう…遅い病……!

    既に、賽は投げられている……!

    ざわ……
    ざわ……

    そう言えば、数日前ー

    下の子、なんだかご機嫌が麗しくなかった。
    少し頭もほかほか。

    だが体温計は平熱。
    ミルクも飲む。眠る。

    だから流した……
    日常という、濁流に……!

    今思えば……

    あれこそが…予告状……!!
    犯人からの、最初のサイン……!

    その時、私はまだ知らなかったのだ
    数日後に我が家が…『戦場』になることを…

    ざわ……
    ざわ……


    ◻️第一章 『伏線回収』

    日曜日の午後。
    運命の日。

    私は…見つけてしまった。

    下の子の
    口元の…赤い、ポチ。

    ざわ……ざわ…

    まだだ、まだ…
    湿疹のひとつやふたつ、日常茶飯事。

    しかし鼓動は早まる。

    一呼吸置いて
    わが子の小さなおててを、見てみる。

    右手の、親指の付け根……赤い、ポチ。

    「あ…あ…」

    ざわ……ざわ……
    ざわ……ざわ……

    最後に、ちいちゃいあんよを、チェックする。

    左足側面に…ポチ。

    「ああああああああああ……!!」

    三面張。いや違う。
    これはもう確定演出。
    口。
    手。
    足。
    揃った……!
    揃ってしまった……!

    手足口病……
    トリプル役満……!!

    脳内に鳴り響くファンファーレ。
    流局なし。待ったなし。
    伏線完全回収!!!

    そして私には分かっている。

    上の子の時に2回
    家庭内大流行を経験したから、もう分かっている。
    本当の勝負は、ここからだと!!

    家庭内感染。
    上の子、夫、そして私…!

    次のツモは誰だ……!
    誰が引く……!誰が叫ぶ……!

    あぁなんだか…
    スマホを持つ手が…痛い?ような、気がしてきた…足の裏も、なにか…違和感が……
    いや、きっと気のせいだ…そう、気のせい…


    ◻️第ニ章 『感染拡大』

    その夜ー

    ご機嫌麗しくない0歳児を抱っこし
    涎にまみれながらあやす。

    産まれて初めての手足口病という病に侵され
    抱っこマンがスーパーブースト中だ。

    すると、夫が釣りから帰宅し
    YouTube中の上の子(5歳)を見て言った。

    「パパには分かるよ……」

    ざわ……

    「お前……熱、あるな……?」

    上の子の顔を触る夫。
    そして叫ぶ。
    「ママ!!この子、お熱ありまーす!!」

    愕然。
    次は……上の子……!

    検温。
    37.9℃。
    発疹なし。

    だが、分かる。
    ざわ……ざわ……

    日頃飛び跳ね続ける5歳児が…
    そういえば今日は静かにYouTube。
    伏線は、あった……!

    ・下の子の発症タイミング
    ・潜伏期間
    ・上の子の発熱
    ・繋がる点と点
    ・脳内で組み上がる感染経路
    ・今後の経過
    ・同時に始まる週明け勤務シミュレーション……!
    ・シフト作成、監査報告会議の資料作り…

    わずか5秒で
    来週の未来予想図を完成させ絶望しかけた…
    その時だった。

    「俺、火水はZoomだから家で見れるよ」

    救済…!
    まさかの救済……!
    地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸……!

    こんなに夫に感謝した事があったろうか。
    ありがとう夫!

    と言うことは
    今、優先度の高い業務は…

    私は即断した!
    月曜は休む、代わりに今から
    ちょちょっと2時間で…
    シフトを作ってしまう!!そうしよう!


    ◻️第三章 『 夫の裏切り 』

    近さで選んだ職場だ、2分で着ける。
    夫の快諾もあり、私は職場へ急行した。

    日曜かつ業務外、静寂の病棟。
    圧倒的集中により…1時間半でシフトは完成。

    来週最大の懸案事項を処理……!
    勝利……!

    私はデスク周りを丁寧に消毒し
    高揚感と共に帰宅した。

    「ただいま!」
    5歳児が走ってくる
    「僕ひとりでお風呂入って、くもんもやった!」

    なんと……!
    感染症疑惑児童によるセルフケア自立……!
    成長……!感動……!

    そして私は尋ねた。
    「あの…パパは…?」

    視線の先、そこには…

    0歳児の涎にまみれながら
    白目でソファに横たわる、夫がいた…

    「パ…パパ!?」

    「おかえり…ミルクは飲んだけど、ずっと機嫌悪くてさ……なんか、俺も…具合…悪い?気がしてきた……ちょっと薬、飲むね…」

    出た…!
    病人がいると
    自分も病人になるパパ特有の現象…!

    そしてお得意のジ○ニン!!
    沖縄県民が異様な信頼を寄せる、謎の万能薬!
    うちなんちゅは頭痛も風邪にも何でもジキニンを常用しやがる。普通に依存症だと思う。

    仕方なく0歳児を受け取り
    ワンオペ風呂に入れて戻った

    そこには…
    なんと…
    ソファでふわふわお布団に包まれた……
    スヤァ夫!!

    「おいパパ起きろおおお!!風呂に行け!!手足口病がうつってもいいのかああ!!てか靴下脱げよ汚い!!!」
    ドスの効いた声掛けを何度もするが…

    無駄だった…
    こいつは寝入ったらもう、起きない…

    敗北……!
    完全なる敗北……!

    「パパねてたから、おふとんかけといたよ!」
    5歳児の優しさが胸を刺す…

    夫はいる
    確かにいる
    しかし今夜もまた、ワンオペの長い夜が始まる…

    次章 『テロリストにはなりたくない』
    ー coming soon ー

     
     

    やな

     
     
    0歳児と5歳児の育児中ママ。 タオルに包まれた謎生物、虚無ペンギン巻きの人。深夜授乳のお供にどうぞ。🐧

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