余燼
8.余燼
どう足掻いても、ここから先は味蕾が死んでいて。一度でも信じた本当が、いつの間にか嘘になる。
暫く使っていないガスコンロ
隣には油とか醤油とか、そういうものが残っていて、嬉しそうに買ってきた、100円ショップの鍋つかみが、少し焦げてぶら下がっている。
生活から切り離された筈で、けれども冷蔵庫には用があって。視界に入れてたまるか。なんて。ペットボトルのアイスコーヒーを、素早く手に取った。
確かな時代があった。
明らかに火をつけた瞬間。
胸いっぱいに吸い込んで、あぁ、これが幸福なんだと知っていた。
確かに幸福だった。
けれども、たったそれだけ。
一瞬を永遠だとして、吸い込めば先端から切り捨てられて、落とされて、手元に近づいてくる。けれども、どうにも最後は触れられない気がして、押し付けて、消したと思ったのに、まだ、煙が立ち昇った。
最初から火をつけなければ。
いっそこのまま。
燃え尽きて仕舞えばいいのに。
歪んで、滲んで、引き裂いて。
運命と現実が赤く燻んだ。
いつまでここに居られるだろうか。