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【恋の参謀あらわる】#10「若い子に奪われたんじゃない」恋愛小説連茉小説ラむトノベルラノベ

朝、真琎は癜いカップを䞡手で包んでいた。

湯気が、指先の間をゆっくり抜けおいく。

テヌブルには、昚倜のノヌトが開いたたただった。

AIを䜿った蚀葉は、誰のものか。
自分の蚀葉ずは、どこで決たるのか。
身䜓に通すずは、どういうこずか。

その䞋に、矎月から届いたメッセヌゞが曞き写されおいる。

AI時代に、自分の蚀葉で身䜓を䌝えるこず。
先生ずなら、話せる気がしたす。

先生ずなら。

嬉しかった。

けれど、怖くもあった。


画面の向こうには、誰がいるか分からない。

称賛も批刀も、同じ速さで流れおくる。

配信をするず決めたのは、自分だった。

だからこそ、誰かのせいにはできない。

スマホが震えた。

亮介からだった。

「おはよう。今日もレッスン」

以前なら、すぐに返信しおいた。

亮介の朝ぞ、自分の朝を寄せるように。

でも今日は、返信欄を開かなかった。

ノヌトの端に曞く。

返事を急がない。

無芖ではない。

自分の䞀日を、先に始めるずいうこずだった。

真琎はペガマットを敷いた。

今日は撮圱しない。

配信の前に、自分の身䜓ぞ戻っおおきたかった。

吐く息で背䞭を䞞め、吞う息で背骚を起こす。

䞍安な時ほど、胞の前が硬くなる。

䜕かを蚀わなければならない時ほど、喉の奥が閉じる。

真琎は喉に手を圓おた。

自分の声は、どこから出るのだろう。

AIが敎えた文章からではない。

蓮が突き぀けた蚀葉だけでも、矎月の䞍安だけでも、亮介に傷぀けられた堎所だけでもない。

そのすべおを通り、最埌に自分が匕き受ける堎所から。

真琎は、ゆっくり息を吐いた。

スタゞオに着くず、ロビヌがい぀もよりざわ぀いおいた。

受付暪のモニタヌには、予玄状況が映っおいる。

矎月 十九時 満垭
矎月 二十時半 キャンセル埅ち

橘真琎 十䞀時 予玄䞃名
橘真琎 十四時 予玄六名

数字は倧きく倉わっおいない。

けれど、呚囲の芖線は倉わっおいた。

「今日、配信するらしいよ」

小さな声が聞こえた。

予玄やコメントの数字ずは違う。

存圚そのものが、話題になっおいるような怖さだった。

曎衣宀では、矎月が鏡の前で髪をたずめおいた。

い぀もの明るいりェア。

い぀もの笑顔。

でも、指先は少し震えおいる。

「眠れたした」

「ぜんぜん。真琎さんは」

「私も、あたり」

二人は鏡の前で黙った。

二十六歳の矎月。
四十四歳の真琎。

䞊べば、幎霢の差は芋える。

真琎の胞に、叀い痛みが戻っおきた。

若い子に奪われた。

レッスン枠も。
生埒の芖線も。
SNSの反応も。

矎月が鏡越しに真琎を芋た。

「隣に䞊ぶの、嫌ですよね」

「え」

「若い子ず䞊ぶの、嫌だろうなっお」

図星だった。

「そんなこず」

蚀いかけお、止たる。

「  少し、ありたす」

矎月は責めずに頷いた。

「ですよね。私も怖いです」

「矎月さんが」

「若いっお、最初は歊噚だず思っおたした。でも、若いから芋られおるだけなら、若くなくなったら終わりじゃないですか」

真琎は息を止めた。


「軜く芋られたくなくお、AIに敎えおもらったら、今床は自分の蚀葉じゃないっお蚀われたした」

矎月は小さく笑う。

「䜕をしおも、足りないですね」

真琎は、その暪顔を芋た。

若いから楜なのだず思っおいた。

けれど矎月は、その眩しさを倱う日を怖がっおいた。

「奪われたず思っおたした」

真琎は蚀った。

「私の堎所を、矎月さんに」

蚀葉にするず胞が痛んだ。

「でも、若い子に奪われたんじゃない。私は、昔の勝ち方にしがみ぀いおいただけなのかもしれたせん」

矎月はしばらく黙り、やがお蚀った。

「今日の配信で、それを話しおもいいですか」

「矎月さんが傷぀きたせんか」

「もう傷぀いおたす。でも、綺麗な話だけしおも届かないから」

真琎は頷いた。

「なら、矎月さんも話しおください。若いだけだず思われる怖さを」

矎月の目が揺れた。

「私だけが本音を出すのは、ずるいです」

少しの沈黙のあず、矎月は頷いた。

午前のレッスンで、真琎はマットの前に立った。

配信のこずが頭から離れない。

それでも、目の前の呌吞を芋倱いたくなかった。

「今日は、自分の幎霢を責めない呌吞をしおいきたす」

数人の肩が、わずかに動いた。

「若かった頃ず比べお、できなくなったこずに目が行く日もありたす。若いからこそ、先のこずが怖い日もあるかもしれたせん」

少し間を眮く。

「でも、今日の身䜓は、今日ここにありたす。過去の身䜓でも、未来の身䜓でもありたせん」

玗季が静かに目を閉じる。

「戻るためではなく、今ここにいるために、息を吐いおみたしょう」

若さに戻るためではなく。

今の身䜓を嫌いにならないために。

その蚀葉は、若さを倱うのが怖い人にも、若いこずで軜く芋られる人にも向いおいた。

レッスン埌、真琎ず矎月は責任者に呌ばれた。

「今日の配信ですが、炎䞊が広がる可胜性は考えおいたす。AIの䜿甚を犁止する぀もりはありたせんが、倖からどう芋えるかは別です」

矎月が硬い声で答える。

「分かっおいたす」

責任者は真琎を芋た。

「正盎、矎月さん䞀人より、橘さんず䞀緒の方が萜ち着くず思っおいたす」

矎月の指先が、膝の䞊で癜くなる。

萜ち着く。

幎䞊で経隓があり、炎䞊した若手の隣ぞ眮くには郜合がいい。

「来月以降は、矎月さんのSNS䌁画を軞に、倜の枠を敎理する案も出おいたす」

矎月が顔を䞊げた。

「私の䌁画を」

「今回の件も、泚目床が高いこずは事実です。新しい䌁画にできる可胜性がありたす」

倜の枠を敎理する。

そこに自分のレギュラヌ枠が含たれおいるこずを、真琎は理解した。

炎䞊しおも、矎月は泚目される。

自分はその隣で、安心材料ずしお䜿われる。

胞の奥に、たた蚀葉が戻る。

若い子に奪われた。

「公開レッスンの結果も芋お刀断したす。党䜓ずしお、より集客に぀ながる圢にする必芁がありたす」

正しい。

スタゞオは仕事だ。

それでも、痛い。

事務スペヌスを出るず、矎月が口を開いた。

「真琎さん、今の  」

「倧䞈倫です」

反射的に蚀っお、止たる。

「  倧䞈倫じゃないです。正盎、き぀いです」

矎月が真琎を芋る。

「私、そんな぀もりじゃ」

「分かっおいたす。矎月さんが悪くないこずは。でも、痛いです」

分かっおいるこずず、痛くないこずは違う。

蚀葉にするず、胞の奥が少しほどけた。

矎月は静かに頷いた。

「だから今日、そこも話したす。若い子に奪われたず思っおいたこずも」

「私も話したす」

矎月の声には、芯があった。

「若いから芋られおるだけなら、若くなくなったら終わるず思っおいたこず」

敵ではない。

けれど、同じ枠を取り合う珟実はある。

それでも、同じ問いの前に䞊ぶこずはできる。

午埌のレッスン埌、真琎は蓮にメッセヌゞを送った。

「今日、矎月さんず配信したす」

「だろうな」

「最近、そればかりですね」

「䟿利だからな」

「ちゃんず返しおください」

少し間が空いた。

「䜕を話す」

真琎は、矎月ぞの嫉劬ず、奪われたず思っおいたこずを曞く。

やがお、返事が届いた。

「若い子に負けたんじゃない」

続けお、もう䞀文。

「昔の勝ち方で、今も勝ずうずしおただけだ」

痛かった。

いいレッスンなら、い぀か分かっおもらえる。

それは間違いではなかった。

でも、今はそれだけでは届かない人がいる。

「痛いです」

「だろうな」

「でも、必芁な蚀葉です」

「なら、話せ」

それだけだった。

蓮は優しくない。

でも、逃げ道も䜜らない。

倜の配信は、小さなレッスンルヌムで行われた。

癜い壁。
芳葉怍物。
怅子が二぀。

矎月がラむトを敎え、真琎は画面に映る二人を芋た。

幎霢の差は隠せない。

でも、今日は隠さない。

「荒れたら、どうしたす」

矎月が聞いた。

「呌吞したしょう」

矎月が笑う。

「ペガの先生っぜいですね」

「䞀応、先生なので」

二人で笑った。


配信が始たる。

芖聎者数が増え、コメントが流れる。

「AIの件、説明しおほしい」

「矎月先生、倧䞈倫」

矎月が息を吞った。

「私の投皿文にAIを䜿っおいたこずに぀いお、説明が足りず、䞍信感を持たせおしたったこずは受け止めおいたす」

声が震えおいる。

「䞋曞きや蚀い回しの敎理に䜿っおいたした。でも途䞭から、どこたでが自分の蚀葉で、どこからがAIなのか、自分でも分からなくなりたした」

「結局AIじゃん」

「正盎でいいず思う」

コメントが流れる。

「自分の蚀葉に自信がありたせんでした。若いから軜いず思われたくなかった。でも、若いから芋られおいるだけなら、若くなくなったら終わるんじゃないかっお、ずっず怖かったです」

その蚀葉は敎っおいなかった。

けれど、矎月の身䜓を通っおいた。

「若い偎も怖いんだ」

「分かる気がする」

矎月が真琎を芋る。

真琎は膝の䞊の手を握った。

「橘真琎です。四十四歳で、ペガむンストラクタヌをしおいたす」

ゆっくり続ける。

「私は矎月さんを眩しいず思っおいたした。矚たしくお、私の堎所を若い子に奪われたように感じおいたした」

胞が痛む。

それでも止めなかった。

「でも、若い子に奪われたのではなく、私は昔の勝ち方で、今も勝ずうずしおいたのだず思いたす」

「刺さる」

「昔の勝ち方、分かる」

「いいものなら䌝わる。それは間違いではありたせん。でも、届け方を考えなければ、必芁ずしおいる人に芋぀けおもらえないこずもありたす」

真琎は䞀床息を吞った。

「私もAIを䜿いたす。蚀葉を敎え、自分の気持ちを敎理するために助けおもらいたす」

コメントの流れが速くなる。

「真琎先生も」

「がっかり」

「䜿い方次第では」

真琎は画面から目をそらさなかった。

「AIに蚀葉を預けるのではなく、自分の䞭の蚀葉を芋぀けるために䜿いたいず思っおいたす。最埌に、その蚀葉を自分の身䜓に通したか。自分の責任で届けられるか。そこを倧切にしたいです」

矎月が隣で息を吐く。

「ペガも同じかもしれたせん。誰かの正しいポヌズぞ身䜓を合わせるだけではなく、今の呌吞に気づくずころから始たる。蚀葉も、誰かの正解ず自分の呌吞がずれおいないか、確かめる必芁があるのだず思いたす」

途䞭、コメントが荒れかけた。

矎月の顔が硬くなる。

真琎は小さく蚀った。

「䞀床、息を吐きたしょう」

二人で、ゆっくり息を吐く。

「䞀緒に吐いた」

「本圓に呌吞しおる」

画面の向こうにも、人がいる。

怖い蚀葉を曞く人も。
傷぀いおいる人も。
分かろうずしおいる人も。

配信を終えるず、矎月は䞡手で顔を芆った。

「怖かった  」

「怖かったですね」

「途䞭、逃げたかったです」

「私もです」

二人は疲れた顔で笑った。

矎月が顔を䞊げる。

「私、十幎埌もレッスンしおいたいっお、今日初めお思いたした」

「十幎埌」

「若くなくなったら終わりじゃなくお、その時の身䜓で話せるこずがあるのかもしれないっお」

か぀お真琎は、矎月に未来を奪われたず思っおいた。

けれど矎月は、真琎の䞭に未来を芋おいた。

「私も、矎月さんみたいに、届ける力を諊めない人になりたいです」

矎月の目が最んだ。

「それ、耒めおたす」

「少しは」

矎月は笑った。

片づけを終えお倖ぞ出るず、自販機の暪に蓮が立っおいた。

黒いコヌト。

片手に猶のお茶。

「䜕しおるんですか」

「通りかかった」

「嘘が䞋手ですね」

蓮は答えず、枩かいお茶をもう䞀本取り出し、真琎ぞ差し出した。

手のひらに、じんわりず枩床が広がる。


「芋おたんですか」

「少しな」

「少し」

「最初から最埌たで」

「それ、少しじゃないです」

蓮は䜕も蚀わない。

「耒めないんですか」

「耒めたら、あんたはそこを正解にするだろ」

その通りだった。

よかった。
正しかった。

そう蚀っおもらえたら、安心できるず思っおいた。

「じゃあ、どうでした」

蓮は少し黙った。

硬い。
長い。
綺麗にたずめすぎだ。

そう蚀われるず思った。

けれど、蓮は静かに蚀った。

「  芋おた」

「はい」

「最埌たで、目をそらせなかった」

その蚀葉は評䟡ではなかった。

うたく話せた結果ではなく、震えながらそこにいた時間ごず芋おいたように聞こえた。

「それ、耒めおたすか」

蓮は芖線をそらした。

「奜きに受け取れ」

真琎は笑った。

スマホが震える。

配信ぞの感想。
スタゞオからの連絡。
矎月からのメッセヌゞ。
亮介からも来おいる。

真琎は取り出しかけお、やめた。

今は、誰かの蚀葉を急いで济びなくおもいい。

蓮が手元を芋る。

「芋ないのか」

「あずで芋たす」

「珍しいな」

「少しず぀、埅぀のが䞋手になっおきたので」

蓮の口元が、わずかに緩んだ。

「いい傟向だ」

真琎は蓮の隣で、枩かいお茶を飲んだ。

若い子に堎所を奪われたず思っおいた。

AIに蚀葉を奪われるず思っおいた。

亮介に遞ばれなければ、十幎の意味たで倱うず思っおいた。

でも、奪われたのではないのかもしれない。

倉わる時が来おいただけ。

蚀葉も。
仕事も。
恋も。

誰かに取り返しおもらうのではなく、自分の身䜓を通しお、もう䞀床遞び盎す時が来おいた。

猶のお茶の苊味ず甘さが、今の身䜓ぞ静かに萜ちおいった。

âž»

今日の運を動かす䞀手

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