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深淵の倧魔道士 第13話「クロ゚」創䜜倧賞2026ファンタゞヌ小説郚門ラむトノベルラノベ


孊園察抗戊、初日。

魔法士孊校の䞭倮挔習堎には、朝から生埒たちの声が満ちおいた。

芳芧垭には生埒たちが集たり、教垫たちは各所に結界を匵っおいる。
空䞭には詊合甚の蚘録氎晶が浮かび、䞭倮には巚倧な魔法陣が刻たれおいた。

その魔法陣の䞊に立぀ず、詊合甚の仮想フィヌルドぞ転送される。

攻撃は本物。
痛みも、衝撃もある。

けれど、䞀定以䞊の負傷が出る前に防護術匏が䜜動し、遞手は匷制退堎になる。

だから安党。

少なくずも、建前䞊は。

フラワヌ・マンディは、胞元の癜い花のブロヌチにそっず觊れた。

ひんやりずしおいる。
けれど、奥に小さな光がある。

垰る堎所を芋倱わないための光。

昚日たでなら、この䌚堎のざわめきだけで、心が抌し流されおいたかもしれない。

期埅。
䞍安。
焊り。
歓声。
笑い声。
誰かの勝ちたい気持ち。
誰かの負けたくない気持ち。

そういうものを党郚拟っお、どこを芋ればいいのか分からなくなっおいたず思う。

でも、今は違う。

党郚を芋なくおいい。

必芁な䞀点を芋る。

フラワヌは息を吞った。

自分たちの初戊盞手は、昚幎䞉䜍。
《城壁の誓い》。

守備型ずしお、同孊幎最高峰ず呌ばれるチヌムだった。

「緊匵しおいたすの」

隣でラビヌ・クリステむルが蚀った。

圌女はい぀も通り背筋を䌞ばし、赀い髪をきれいに結んでいる。
片耳には、ヒュンケルから蚗された金朱色のむダヌカフがあった。

匷く燃え䞊がる火ではない。
小さく、静かに、揺らがない火。

「しおるよ」

フラワヌは正盎に答えた。

「でも、逃げたい感じではないかな」

「それなら十分ですわ」

ラビヌは満足そうに頷く。

「緊匵しない人間の方が信甚できたせんもの」

「ラビヌちゃんも緊匵するの」

「圓然ですわ。緊匵ず臆病は違いたす」

ラビヌは胞元で矜を畳んでいる䞍死鳥を䞀床だけ撫でた。

「勝ちたい盞手の前で䜕も感じないなら、それは本気ではありたせんわ」

その蚀葉に、フラワヌは少しだけ笑った。

ラビヌは倉わった。

匷さが消えたわけではない。
むしろ、前よりも匷く芋える。

でも、その匷さは以前のように倖ぞ吹き䞊がる火ではなく、内偎で静かに燃えおいる火だった。

少し離れたずころでは、ハむネ・ベルセルクが立ったたた眠そうにしおいた。

黒いロヌブ。
抱えた黒い魔導曞。
半分閉じた玫の瞳。

詊合前だずいうのに、緊匵感はほずんどない。

いや、ないように芋せおいるだけかもしれない。

「ハむネさん、本圓にほずんど䜕もしないんですか」

フラワヌが尋ねるず、ハむネはゆっくり目を開けた。

「はい」

「危なくなったら」

「必芁最䜎限だけ動きたす」

「その必芁最䜎限が、普通の人の最倧火力だったりしたせん」

「倱瀌ですね」

「吊定はしないんですね  」

ラビヌが呆れたように息を吐く。

「深淵は犁止ですわよ」

「䜿いたせん」

「倧魔道具も、䞊䜍魔法も犁止ですわ」

「䜿いたせん」

「では䜕をするんですの」

「芋おいたす」

「いちばん腹立぀答えですわね」

ハむネは少しだけ銖を傟げた。

「でも、それが䞀番いいです」

その声は、い぀もよりほんの少しだけ真面目だった。

「これは、あなたたちの緎習です。匷い魔法で勝぀ためではなく、必芁な魔法を遞ぶための」

フラワヌは、胞元のブロヌチに觊れた。

必芁な魔法を遞ぶ。
守る範囲を、決める。
党郚を芋ない。
党郚を救おうずしない。

たず、目の前の䞀点を萜ずさない。

「分かりたした」

フラワヌが頷くず、ハむネは小さく目を现めた。

「いい返事です」

「耒められたした」

「はい」

「ハむネさんに耒められるず、ちょっず嬉しいです」

「そうですか」

ハむネは芖線を逞らした。

少しだけ照れおいるようにも芋えた。

四人目が決たったのは、孊園察抗戊の告知があった昚日の攟課埌だった。

孊園察抗戊は四人䞀組。
フラワヌ、ラビヌ、ハむネ。

そこたではすぐに決たった。

けれど、あず䞀人がいなかった。

「なら、私が入りたす」

そう蚀ったのが、クロ゚だった。

教宀の端。
窓際の少し圱になった垭で、い぀も静かに本を読んでいる少女。

淡い銀灰色の髪。
薄い存圚感。
敎っおいるのに、どこか空癜みたいな少女。

実技成瞟は䞋䜍。
授業䞭も、誰かず積極的に話すこずは少ない。

けれど、圌女が小さな玙片を机に眮いた瞬間、ハむネの指先が黒い魔導曞の衚玙の䞊で止たった。

そこには、銀色の现い魔導文字が刻たれおいた。

円のようで、針のようで、どこか時間そのものを折り畳んだような文字。

「  クロ」

ハむネが、小さく呟いた。

「クロ」

フラワヌが聞き返すず、ハむネは眠たげな顔に戻っお銖を振った。

「なんでもありたせん。クロ゚さんでいいず思いたす」

ラビヌは眉を䞊げた。

「即決ですの」

「はい」

「理由は」

「必芁そうなので」

盞倉わらず説明になっおいない。

けれどクロ゚は䜕も蚀わず、ただ䞀瞬だけハむネを芋た。

その目は、薄い灰色なのに、どこか遠い時間を芋おいるようだった。

その短い沈黙だけが、劙に印象に残っおいる。

そしお今。

そのクロ゚が、ハむネの暪で静かに立っおいた。

呚囲のざわめきの䞭にいおも、圌女だけが少し別の時間にいるようだった。

「クロ゚さん」

フラワヌが声をかける。

「はい」

「初戊、どうしたしょう」

クロ゚は䞭倮挔習堎を芋぀めたたた答えた。

「正面から壊そうずしないこずです」

ラビヌが腕を組む。

「盞手は守備型ですものね」

「はい」

クロ゚は淡々ず続けた。

「壁があるず、人は壁を壊したくなりたす」

「圓然ですわ。邪魔ですもの」

「でも、壁は壊されるために眮かれおいるこずがありたす」

フラワヌは銖を傟げる。

「壊されるため  」

「時間を䜿わせるため。魔力を䜿わせるため。芖線を奪うため」

クロ゚は芳芧垭の向こうにある詊合甚フィヌルドの幻圱を芋おいた。

「守っおいるように芋えるものが、本圓に守りたいものずは限りたせん」

ラビヌの目が、少し鋭くなる。

「぀たり、盞手の守備の䞭心を芋誀るな、ずいうこずですわね」

「そうです」

「あなた、実技䞋䜍なのに本圓に戊術だけは劙に話せたすわね」

「実技は䞋䜍です」

「そこは認めるんですのね」

「事実なので」

ハむネは䜕も蚀わず、クロ゚を芋おいた。

その芖線に気づいたクロ゚が、䞀瞬だけハむネを芋る。

二人の間に、短い沈黙が萜ちた。

ハむネの目が、ほんの少しだけ现くなる。

クロ゚は、すぐに芖線を戻した。

フラワヌは、その短いやり取りを芋おいた。

蚀葉はなかった。
ただ、䜕かが確認されたような沈黙だった。

やがお、教垫の声が挔習堎に響いた。

「第䞀詊合、第二組。ラビヌ・クリステむル班、ならびに《城壁の誓い》、転送陣ぞ」

歓声が䞊がる。

フラワヌの胞が跳ねた。

いよいよだ。

ラビヌが前ぞ出る。

「行きたすわよ」

「うん」

フラワヌは杖を握り盎した。

クロ゚は静かに歩き出す。
ハむネは黒い魔導曞を抱えたたた、眠たげに続いた。

四人が魔法陣の䞊ぞ立぀。

足元の術匏が癜く光った。

次の瞬間、景色が倉わる。

䞭倮挔習堎のざわめきが遠のき、代わりに、冷たい颚が頬を撫でた。

そこは、石造りの廃城のようなフィヌルドだった。

厩れかけた倖壁。
现い通路。
䞭倮に高い塔。
巊右には䜎い建物が䞊んでいる。

自陣の奥には、青癜く茝くクリスタルが浮かんでいた。

あれを守る。
そしお、盞手陣地のクリスタルを萜ずす。

それが勝利条件。

「なるほど」

ラビヌが呚囲を芋枡す。

「盞手に有利な地圢ですわね」

正面には、広い石橋が䞀本。
その先に、敵陣ぞ続く城門がある。

いかにも、ここを突砎しおくださいず蚀わんばかりの構造だった。

フラワヌにも分かった。

あの門は、硬い。
門の巊右には高い壁があり、その䞊から魔法を撃ち䞋ろされる圢になる。

正面突砎は難しい。

「どうしたすか」

フラワヌが尋ねる。

ラビヌは杖を握り、火を灯しかけた。
だが、その火はすぐに小さく畳たれる。

「正面から焌くのは簡単ですけれど」

「犁止です」

ハむネが即座に蚀う。

「分かっおいたすわ。分かっおいるから、ただ撃っおいたせん」

「えらいです」

「子ども扱いしないでくださる」

クロ゚は、城門から目を離さなかった。

「たず、芋たす」

「䜕を」

フラワヌが尋ねる。

「盞手が守りたい堎所です」

城門の䞊から、盞手チヌムの声が響いた。

「来ないのか、クリステむル」

《城壁の誓い》のリヌダヌ、ガルド・ベルマン。

倧柄な少幎だった。
䞡手に重そうな盟型の魔道具を構え、城門の䞊に立っおいる。

その埌ろには、防埡魔法を埗意ずする生埒が二人。

最埌の䞀人は芋えない。

「来ないなら、こちらから行くぞ」

ガルドが盟を地面に叩き぀ける。

次の瞬間、石橋の䞊に半透明の壁が䜕枚も立ち䞊がった。

土ず光を混ぜた防埡壁。
それが通路を狭めるように䞊んでいく。

ラビヌが目を现めた。

「こちらの進路を限定しおいたすわね」

「はい。正面ぞ来させたいんです」

「分かりやすい眠ですわ」

「分かりやすい眠は、分かっおいおも螏たせるためにありたす」

クロ゚の声は静かだった。

「実際、正面以倖は厩れた建物ず瓊瀫で通りにくい」

ハむネは䜕も蚀わない。

本圓に、芋おいるだけだ。

フラワヌは少しだけ䞍安になる。

でも、今は頌りきる堎面ではない。

自分で芋なければ。

「フラワヌさん」

クロ゚が蚀った。

「盞手の壁、どこが䞀番匷く芋えたすか」

「え」

「感じおください。魔力の厚い堎所」

フラワヌは城門ぞ意識を向ける。

芋えすぎる。

門。
壁。
塔。
通路。
敵の魔力。
味方の魔力。
ラビヌの内偎に畳たれた火。
ハむネの深淵の気配。

䞀瞬、党郚が抌し寄せる。

でも、フラワヌは息を敎えた。

党郚を芋ない。
壁だけを芋る。

守りの流れを芋る。

魔力は、城門の正面に䞀番集たっおいる。
巊右の壁にも厚い防埡がある。

けれど、ほんの少しだけ違和感があった。

「  右偎」

フラワヌが呟く。

「右の䜎い建物の圱だけ、魔力の流れが薄いです。でも、薄すぎる気がしたす」

クロ゚がわずかに目を现めた。

「正解です」

ラビヌが銖を傟げる。

「薄いなら、そこが抜け道では」

「そう思わせるための堎所です」

クロ゚は淡々ず蚀った。

「あそこには、おそらく四人目がいたす」

フラワヌは息を呑む。

芋えおいない盞手。
守りの薄い堎所。

぀たり、誘い。

「なら、どうしたすの」

ラビヌが尋ねる。

クロ゚は、今床は巊偎の厩れた塔を芋た。

「守っおいない堎所ではなく、守れない堎所を䜿いたす」

「守れない堎所」

「地䞋です」

䞀瞬、党員が黙った。

ラビヌが眉を寄せる。

「地䞋通路があるんですの」

「廃城型フィヌルドでは、たいおい排氎路がありたす」

「たいおい」

「過去十幎分の孊園察抗戊フィヌルド蚘録を芋たした」

「い぀の間に  」

「昚日。寝る前に」

ラビヌが呆れたように蚀う。

「実技䞋䜍のくせに、準備だけは䞊䜍ですわね」

「準備で負けるのは嫌いなので」

クロ゚は静かに答えた。

「このフィヌルドは、正面突砎を誘う防衛型に芋えたす。でも、排氎路があるなら、守備偎もそこを完党には塞げない。塞ぎすぎるず、陣地クリスタル呚蟺の魔力埪環が詰たるからです」

フラワヌには、半分くらいしか分からなかった。

でも、クロ゚が䜕を芋おいるのかは少し分かった。

この人は、盞手だけを芋おいるのではない。

地圢。
魔力。
構造。
勝ち筋。
負け筋。

そういうものを、冷静に䞊べおいる。

「では、地䞋ぞ」

ラビヌが蚀う。

「はい。ただし党員では行きたせん」

クロ゚はラビヌを芋る。

「ラビヌさんは正面で火を芋せおください」

「犁止ではありたせんの」

「倧きすぎる火は犁止です。芋せるだけなら初玚火でもできたす」

ラビヌの口元が少し䞊がる。

「囮になれず」

「はい」

「いい床胞ですわね」

「できたすか」

「圓然ですわ」

ラビヌの耳元で、むダヌカフが小さく灯った。

怒りの火ではない。
進むための火。

「フラワヌさんは、私ず䞀緒に地䞋ぞ」

「私」

「はい。排氎路には氎がありたす。あなたの方が向いおいたす」

「でも、陣地は  」

「ハむネさんが芋おいたす」

フラワヌがハむネを芋る。

ハむネは眠たげに頷いた。

「芋おいたす」

「本圓に芋るだけですか」

「たぶん」

「たぶん  」

クロ゚は続ける。

「ハむネさんは、自陣クリスタルを守っおください。盞手の四人目がこちらぞ抜けおくる可胜性がありたす」

「分かりたした」

ハむネは玠盎に頷く。

ラビヌが少しだけ驚いたように芋る。

「ハむネさんが、玠盎に指瀺を聞いおいたすわ」

「クロ゚さんの指瀺は劥圓なので」

クロ゚は衚情を倉えない。

ただ、少しだけ間があった。

ハむネも、それ以䞊䜕も蚀わなかった。

「では、始めたす」

クロ゚が蚀った。

その瞬間、ラビヌが前ぞ出た。

「《灯火》」

指先に、小さな火が灯る。

初玚火魔法。

本来なら、盞手を怯たせるほどの嚁力はない。

けれどラビヌが灯すず、それは劙に矎しかった。

小さいのに、揺らがない。

その火をラビヌは石橋の䞊ぞいく぀も眮いおいく。

たるで道暙のように。

「来るか」

城門の䞊でガルドが叫ぶ。

ラビヌは堂々ず橋の䞭倮ぞ歩き出した。

「ええ。行きたすわよ」

小さな火が、石橋に䞀列に䞊ぶ。

それだけで、敵の芖線がラビヌぞ集たった。

ラビヌ・クリステむルが前に出おいる。

なら、い぀燃え䞊がるのか。
い぀、橋ごず焌き払うのか。

盞手はそれを譊戒しおいる。

でも、ラビヌの火は広がらない。

ただ、小さく灯り続ける。

「䜕をする気だ  」

盞手の声が揺れる。

その隙に、クロ゚はフラワヌの袖を匕いた。

「こっちです」

「は、はい」

二人は厩れた建物の圱ぞ走る。

フラワヌは足元に氎の気配を探した。

地䞋に流れる现い氎脈。
石畳の䞋を通る、叀い排氎路。

「ありたす」

「開けられたすか」

「やっおみたす」

フラワヌは杖を地面ぞ向ける。

氎を抌し䞊げるのではない。
石を壊すのでもない。

隙間にある氎ぞ、そっず觊れる。

氎はすでに流れおいる。
こちらが無理に動かす必芁はない。

流れの方を、少しだけこちらぞ向ける。

石畳の継ぎ目から、淡い氎の光が滲んだ。

叀い蓋が浮き䞊がる。

地䞋ぞ続く暗い穎が珟れた。

クロ゚が頷く。

「行きたす」

「暗いですね  」

「怖いですか」

「怖いです」

「では、芋すぎないでください」

クロ゚は先に降りる。
フラワヌも続いた。

地䞋は狭かった。

石造りの排氎路。
足元には浅い氎が流れおいる。
倩井は䜎く、少し油断するず頭をぶ぀けそうになる。

けれど、氎がある。

フラワヌには、それだけで少しだけ安心できた。

「このたた盞手陣地の䞋たで行きたす」

クロ゚が蚀う。

「クリスタルの䞋に出られるんですか」

「正確には、出たせん。䞋から魔力を通したす」

クロ゚は前を歩きながら説明する。

「陣地クリスタルは、地䞊からの攻撃に察しお防埡されおいたす。でも、魔力埪環のために地脈ずの接続口がある。完党には塞げない」

「そこを狙うんですね」

「はい。ただし、こちらの魔力が匷すぎればすぐ感知されたす」

フラワヌの胞が鳎る。

匷すぎる光は、目を閉じさせる。
守るために広げすぎるず、抌し流しおしたう。

必芁な分だけ。

「私の小さい花なら  」

「届くず思いたす」

クロ゚は振り返らずに蚀った。

「あなたの魔法は、壊すより、届く方が向いおいる」

その蚀葉が、胞に萜ちた。

壊すより、届く。

フラワヌはブロヌチに觊れる。

「やっおみたす」

その頃、地䞊ではラビヌが䞀人で城門前に立っおいた。

《城壁の誓い》は動けずにいた。

ラビヌ・クリステむルが目の前にいる。
しかも、火を撃たない。

ただ小さな灯火を眮いおいるだけ。

それが逆に読めない。

「䜕を狙っおいる」

ガルドが叫ぶ。

ラビヌは埮笑んだ。

「さあ。䜕だず思いたす」

「挑発か」

「挑発に乗るかどうかは、あなた次第ですわ」

ガルドの盟が光る。
防埡壁がさらに厚くなる。

その瞬間、クロ゚の狙い通り、城門正面ぞ魔力が集たった。

地䞋ぞの埪環が、ほんの䞀瞬だけ薄くなる。

「今です」

地䞋でクロ゚が蚀った。

フラワヌは杖を氎面に觊れた。

氎の䞭に、癜い花を䞀茪咲かせる。

倧きくない。
匷くない。
でも、沈たない花。

その花に、ほんの少しだけ光を添える。

垰る堎所ではなく、今回は道を䜜るために。

「行っお」

癜い花は、氎の流れに乗っお進んだ。

排氎路を静かに進み、盞手陣地の䞋ぞ向かう。

フラワヌは感芚を広げすぎない。

花䞀茪だけを芋る。

その茪郭だけを远う。

盞手の防埡壁の魔力が䞊を流れおいる。

匷い。
厚い。
硬い。

けれど、䞋たでは届いおいない。

癜い花が、陣地クリスタルの地脈接続口ぞ觊れた。

「届きたした」

「壊せたすか」

「壊すんじゃなくお  」

フラワヌは息を吞う。

「少しだけ、揺らしたす」

癜い花が、地脈の䞭で淡く開いた。

匷く砎壊するのではない。

魔力の流れを、ほんの少しだけずらす。

城門の䞊で、ガルドが振り返った。

「䜕だ」

陣地クリスタルの光が、䞀瞬だけ揺れた。

ほんの䞀瞬。

でも、その䞀瞬で十分だった。

クロ゚が小さく蚀った。

「ハむネさん」

地䞊、自陣付近。

ハむネはすでに動いおいた。

いや、ほずんど動いおいない。

ただ、自陣クリスタルの暪に立ち、手元に小さな黒い玙片を浮かべおいる。

そこぞ、盞手チヌムの四人目が忍び寄っおいた。

右偎の薄い守備に隠れおいた玢敵兌匷襲圹。

クロ゚の予想通りだった。

「芋぀かっおないず思いたしたか」

ハむネが眠たげに蚀う。

盞手の生埒が息を呑む。

「い぀から  」

「最初から」

「くっ」

盞手は短剣型の魔道具を構え、クリスタルぞ駆ける。

ハむネは黒い魔導曞を開かない。

ただ、初玚颚魔法を指先で起こした。

颚が、盞手の足元の砂をふわりず巻き䞊げる。

芖界が䞀瞬乱れる。

その䞀瞬で、ハむネは盞手のペンダントに黒い玙片を圓おた。

ぱきん。

也いた音。

盞手のペンダントが割れた。

退堎。

芳芧垭がざわめく。

「今の、初玚魔法か」
「え、ハむネっお動けたの」
「ずいうか、䜕した」

ハむネは欠䌞を噛み殺した。

「芋おいただけです」

その頃、盞手陣地では混乱が生たれおいた。

クリスタルの魔力が揺れた。
匷襲圹が退堎した。
正面にはラビヌがいる。

《城壁の誓い》の守りは、厚い。

けれど、䞀床に党方向を芋るこずはできない。

ガルドが叫ぶ。

「地䞋だ 䞋を塞げ」

防埡圹の䞀人が慌おお地面ぞ魔力を流す。

その瞬間、正面の壁が薄くなった。

ラビヌが笑う。

「ようやく、こちらを芋たしたわね」

むダヌカフが小さく灯る。

ラビヌの指先に、静かな火が宿る。

初玚火魔法。

けれど、それはただの火ではなかった。

石橋に眮かれおいた小さな灯火が、䞀斉に现い線で繋がる。

炎の道。

燃え䞊がらない。
爆ぜもしない。

ただ、䞀盎線に城門ぞ向かう。

「《灯火連鎖》」

ラビヌが静かに蚀った。

火は壁を壊さなかった。

防埡壁の衚面を、なぞるように走った。

そしお、盞手の魔力が薄くなった䞀点だけを照らす。

そこぞ、ラビヌは小さな火球を䞀぀だけ投げた。

倧きくない。
掟手でもない。

けれど、必芁な䞀点に正確に届いた。

防埡壁が、静かに割れる。

蜟音はなかった。
爆発もなかった。

ただ、硬い壁に䞀本の现い亀裂が入り、そこから党䜓が厩れた。

ガルドの目が芋開かれる。

「なっ  」

ラビヌは走った。

炎ではなく、身䜓で。

城門の䞊ぞ飛び䞊がるような無茶はしない。
割れた壁の隙間を抜け、正面から堂々ず進む。

「火力だけでは勝おないのでしょう」

ラビヌの声が響く。

「なら、火力以倖で勝ちたすわ」

ガルドが盟を構える。

ラビヌの火球を受け止める構え。

だが、ラビヌは撃たなかった。

代わりに、足元の灯火を䞀぀、ガルドの背埌ぞ移す。

「埌ろです」

ガルドが振り返った瞬間。

地䞋から癜い花がもう䞀茪、クリスタルの根元に觊れた。

クロ゚が蚀う。

「今床は、壊しおください」

フラワヌは杖を握る。

「はい」

癜い花が開く。

匷くではない。

でも、今床は確かに、クリスタルぞ魔力を流し蟌む。

盞手陣地のクリスタルに、癜い亀裂が走った。

ガルドが叫ぶ。

「守れ」

だが、遅い。

ラビヌの灯火が、守備圹の足元を照らしお動きを止める。

ハむネは自陣で立っおいるだけ。
クロ゚は地䞋で静かに時間を数えおいる。
フラワヌは花䞀茪だけを芋おいる。

ぱきん。

盞手陣地クリスタルが割れた。

詊合終了の鐘が鳎る。

䞀瞬、静たり返った。

それから、芳芧垭が倧きくざわめいた。

「勝った  」

フラワヌは地䞋で呟いた。

クロ゚は淡々ず頷く。

「勝ちたした」

「私たちが」

「はい」

「去幎䞉䜍に」

「はい」

フラワヌはその堎にぞたり蟌みそうになった。

クロ゚がそれを芋お、少しだけ目を现める。

「よく芋えおいたした」

「え」

「最初の違和感。右偎が薄すぎるず気づいたのは、あなたです」

フラワヌは胞元のブロヌチを握った。

「私  芋えおたしたか」

「はい」

クロ゚は静かに蚀う。

「党郚ではなく、必芁なものが」

地䞊に戻るず、ラビヌが腕を組んで埅っおいた。

「遅いですわよ」

「ご、ごめん」

「でも、よくやりたしたわ」

ラビヌは少しだけ笑った。

「あなたの花、いいずころぞ届きたした」

フラワヌの目が、少しだけ熱くなった。

「ラビヌちゃんも、すごかった。火、すごく静かだった」

「圓然ですわ」

ラビヌは埗意げに蚀う。

けれど、耳元のむダヌカフがほんの少し明るくなっおいた。

ハむネも歩いおくる。

「勝ちたしたね」

「ハむネさん、本圓にほずんど䜕もしたせんでしたね」

「したした」

「䜕を」

「芋おいたした」

ラビヌが呆れる。

「それを”䜕かした”に含めるの、ずるいですわ」

ハむネは少しだけクロ゚を芋る。

「クロ゚さんの䜜戊が良かったので」

クロ゚は衚情を倉えなかった。

「䜜戊ずいうほどではありたせん。負ける理由を枛らしただけです」

䞀瞬。

ほんの䞀瞬だけ、二人の間に静かなものが流れた。

フラワヌはそれを芋おいた。

でも䜕も蚀わなかった。

ただ、胞元のブロヌチを、そっず指先で包んだ。

その頃、芳芧垭の䞀角では、数人の生埒が静かに詊合を芋おいた。

その䞭心にいた少幎が、手元の青いランタンのような魔道具を撫でる。

䞭には、青癜い炎が揺れおいた。

炎ずいうより、蚈算された光。

生きおいる火ではなく、䜜られた火。

「ぞえ」

少幎が笑う。

「初玚魔法だけで《城壁の誓い》を厩したんだ」

隣の少女が、無衚情に呟く。

「芳枬察象ずしお有甚」

少幎は肩をすくめる。

「深淵の子は、ほずんど動かなかったね」

「黒い本。通垞術匏倖」

少女の片目が、赀く光る。

深玅。

その名を持぀少女は、遠くにいるハむネを芋おいた。

次に、胞元のブロヌチを抌さえるフラワヌぞ。

最埌に、耳元の火を灯すラビヌぞ。

「花。火。深淵」

少女は静かに蚀う。

「どれも、ただ途䞭」

少幎は青いランタンを掲げる。

「なら、完成を芋せおあげよう」

青癜い炎が、人工的な揺らぎを芋せた。

その光は矎しかった。

けれど、どこか枩床がなかった。

挔習堎の歓声の䞭で、フラワヌたちはただ気づいおいない。

自分たちの初勝利が、別の誰かの芖線を静かに匕き寄せおいたこずを。

第14話ぞ぀づく。

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