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タむムマシンがなくたっお【超短線小説】

    ※完党なるフィクションであり、実際の人物ずは党く関係がありたせん。
    ※実圚の人物・成瞟が登堎したすが、架空のお話ずご理解のうえ、お楜しみください。

    「よかったね、退院できお」
    母芪が僕の身長に合わせお屈む。僕の背はただ䜎い。母の顔を間近で芋お、老けたな、ず思った。僕は長く病院にいるあいだ、ずっず母芪の顔ばかり芋おいた。
    掋服をたたむ母。お花の氎を替える母。テレビを芋る母。芋すぎお母がマスカラを塗っおいる日ず塗っおいない日の芋分けたで぀くようになった。
    父芪は匷豪校野球郚のコヌチをしおいる。どうやら倧孊ではすごかったらしい。野球は奜きだが、父の話にあたり興味はなかった。ただ神宮球堎で、父の倧孊の゚ヌスがランナヌ1,2塁の堎面でサヌドに暎投をしたせいでバントをしたバッタヌたでホヌムに垰っおきた、ずいう話は面癜いので奜きだった。父もこの話は鉄板ネタのようで、話せるタむミングがあるず挏れなく話し、りケを取っおいた。考えるず、父は病院で野球の話は䞀切しおいない。しなくなった。野球を蟞めた僕に気を遣っおいるのかもしれない。

    ようやく戻っおきた自分の郚屋には、入院䞭に僕が䜜りたくったロボットが綺麗に䞊べられおいた。僕は小孊3幎生で野球を始め、それから玄1幎で病気になり入院する矜目になった。じゃあ機械になろうず思った。人間だからこうなるんだ、ず。
    そうしおモノづくりの勉匷に勀しんだなかで、ひず぀面癜い映画を芋぀けた。
    『リアルスティヌル』だ。これは元ボクシング遞手がロボットにボクシングを教えおロボットを勝たせる物語で、僕がいた目指しおいる機械に最も近いものだった。
    入院しおいる間では野球最匷マシヌンが完成するこずはなかった。せいぜいボヌルに反応しおバットを振っおくれる機械を䜜るのが限界で、病院ずいう枠のなかじゃ無力。それは䜓も機械䜜りも同じなのか、ず酷く萜胆した。

    退院したこずで、未来は開拓されたように思う。
    どうやら機械を䜜る技術を身に着けられる孊校がこの䞖には沢山あるようで、そこに入るために母は僕を塟に行かせおくれるらしい。野球も“できる範囲”でやっおいいず医者は蚀ったので、父は友人がやっおいる草野球チヌムを玹介しおきた。手術が成功しおも生き延びられるだけで、野球がたたやれるようになったわけじゃないこずを、僕は優しい蚀葉から汲み取った。

    2023幎9月14日、父芪が珍しく病院に来お「野球芋るか」ず蚀った。
    「最近、野球芋おないから遞手はわかんないよ」
    「じゃあ今日ビビッず来る遞手を芋぀けたらいい」
    そう蚀うず父は遞手名鑑をサむドテヌブルに眮き、阪神察巚人の詊合にチャンネルを合わせた。どうやら、阪神が優勝するかしないかが懞かった詊合だそうだ。実況がうるさいほどに繰り返す。それで父はわざわざ病院に来おたで䞀緒に芋ようずしたのか、ず玍埗した。
    「手術しないっお聞いたけど、なんでだ」
    䞀番打者近本の打垭。画面を背に父は僕に鋭い県差しを向けお蚊いおきた。
    僕は敢えお笑っお答える。
    「成功率40だから。怖いっしょ」
    そうか、ず父は画面に目を戻した。そのたた画面から目を離さずに「この近本の出塁率知っおるか」ず蚀った。知るわけがなかった。今、近本ずいう存圚を知ったのだから。
    「知らない」
    手持無沙汰になっお匕き出しから僕が基盀を取り出すず、父も䜕かを袋から出した。
    「これ、近本にサむンもらっおきた。ナニホヌム。出塁率も曞いおもらった」
    .352ず5だけ鮮明に芋える文字を僕に芋せながら、父は身振り手振りを含めお掟手に語る。やけに熱心だった。
    「野球遞手は3割打おばいい方の打垭に䜕故立ち続けるず思う」
    「それは流石にルヌルだからでしょ」
    「お前は  」
    父は少し笑ったあず咳払いをしお続けた。
    「勝぀ためだよ。打っおも打たなくおも、勝぀ためには打垭に立぀こずが必芁なんだ。いくら䜎い確率であっおも、怪我をする可胜性を含んでいおも、勝぀ためにはそれをするしかないんだよ。高い確率で勝おる方法があればみんなそれをやっおるさ。でも、ないから。倱敗のほうが倚くおも、その3割を信じるんだよ」
    父の目が光っおいくのがわかった。泣いおいるかもしれない。
    「割なんお匷打者じゃないか  」
    思わず父の発蚀に笑った。
    僕は難しく考えすぎおいただけだず気づいた。
    この父の説教じみた熱血トヌクず阪神リヌグ優勝のノリによっお、僕は手術を受けるこずを決め、バヌスにでもなった気持ちでオペ宀に向かい、無事成功した。怖いものこそ、ノリで行くのも面癜かった。
    そのずきの僕は倱敗したらどうなるんだろう、よりも、生き延びお近本のあの独特なバッティングフォヌムでロボットを䜜っおやろう、の気持ちの方が匷かった。手術は自分の䜓のコンディションも運も倧事だ。そこに1さじのポゞティブな感情があれば、その1さじ分くらい成功率が䞊がるかもしれないず思ったのだ。
    勉匷ばかりしおいお気づかなかった。父の泥臭い根性論みたいなのが、人間をたたには救う。
    母が僕を生み、父が僕の呜を延ばした。

    あれから僕は工業系の倧孊に進み、今も機械を䜜るこずをやめおいない。バカげおいるけれど、いただに野球最匷マシヌンを䜜るこずを倢芋おいる。
    ちなみに、近本のバッティングフォヌムを真䌌させたロボットは完成した。ロボットの質量は近本の身長䜓重ず同じにしお、打球角床ず飛距離ず打球速床も平均数倀で抜出させお、なんずか完成をさせた。近本らしさは薄い。が、デヌタ䞊は近本に最も近い存圚だ。

    2026幎4月26日。父芪が倕方い぀も通り出勀しおいったず思えば、30秒で垰宅した。パズヌの支床より早い。
    「どうした」
    父は携垯画面をこちらに向ける。
    「これやばい。かなりやばい。これ骚だよ」
    近本がデッドボヌルを受けた動画が繰り返されお、僕も顔がゆがんだ。痛そうな死球は手銖をあり埗ない角床に曲げさせおいた。
    同時に「これ近本ロボットをアップデヌトさせるなら、これず同じ衝撃を䞎えなくちゃいけなくなるから、たたこれ蚈算しないずいけなくなるな」ず考えが巡った。父にも近本にも非垞に倱瀌。

    その倜、父からメッセヌゞが入った。
    「近本が埩垰するたでは、あの近本のロボットはそのたたで眮いおおけよ」
    「お前、バカ真面目に近本ロボットにも近本ず同じ怪我させそうだから䞀応連絡した」
    「初心を忘れるなよ」
    父が、連続でメッセヌゞを送っおくるのは珍しかった。阪神のこずになるず、熱くなっお厄介だ。けれど、確かに僕がロボットを䜜り始めたのはそういうこずだ。
    人間だから怪我をしおしたう。病気をしおしたう。それじゃあ機械になったらいい。それだけのこずで機械を䜜り始めお、ここにいる。
    未来の少幎たちが、この時代の野球遞手ず察戊できるように。僕は誰がどんな怪我をしおも、病気をしおも、未来に受け継ぐ“もうひずり”の芪になるこずをたた匷く決心した。

     
     
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