メインコンテンツへスキップ
見出し画像

小説|百奇夜行 No.098 三婚〜世界が滅びるまで、あと2話〜

    『三婚』


    この国には変わった掟がある。


    ・二十歳になったら四十歳の相手と結婚すること。


    ・四十歳になったら二十歳の相手と結婚すること。


    ・六十歳になったら六十歳の相手と結婚すること。


    その真意は誰にも分かっていない。


    俺には昔から想いを寄せている幼馴染がいる。


    同い年の幼馴染。


    国の掟がある限り、六十歳まで結婚することができない。


    二人で国を出ようと考えたが、家族を見捨てることになる。


    何があっても、互いに想いを絶やさずにいよう。


    そう約束して、それぞれの相手と一度目の結婚をした。


    とても落ち着いた女性だった。


    二十年間、前の相手とは一度の喧嘩もなかったらしい。


    「国の掟がなかったら、別れませんでしたか?」


    「どうかしらね。でも最初はありえないと思ってたわ」


    「結婚してから気持ちが変わったんですか?」


    「そうね。あの人には幸せになってほしい」


    まだ自立もしきれていない俺は、あらゆる面で助けられた。


    収入だって相手の方が倍近くある。


    「仕方ないわよ。二十年も人生の後輩なんだから」


    そう言って不満を漏らすこともなく、生活を支えてくれた。


    与えられてばかりの自分が不甲斐ない。


    この人のために出来ることを少しでも増やしたい。


    いつしかそんな気持ちが芽生えていた。


    「早いね。もう二十年か」


    「本当にあっという間でしたね」


    「悪くない二十年だった」


    「幸せになってください」


    「あなたもね」


    二回目の結婚は、当たり前だが二十歳下の相手とだった。


    初対面からずっと不機嫌そうな顔をしていた。


    好きな人がいるのに、どうしてこんなおじさんなんかと。


    大方、そんな心境なのだろう。


    「無理はしなくていいよ。お互い気楽にいこう」


    ろくに会話も出来ないまま、新しい生活が始まった。


    ある日、珍しく相手の方から話しかけてくれたと思ったら、


    職場の人間関係が原因で仕事を辞めたらしい。


    相談はしてほしかったが仕方ない。


    正直なところ、俺の収入だけでは苦しい現状だった。


    残業を増やしてどうにかやっていこう。


    「新しい仕事決まったよ」


    「おめでとう」


    「どうして、すぐに働けって言わなかったの?」


    「焦って決めるものじゃないからね」


    「でも、私が頑張ればあんなに残業しなくて済んだじゃん」


    「気にしなくていいよ。二十年も人生の後輩なんだから」


    それからの生活は円満だった。


    相手の気持ちに何か変化が起きたということは分かる。


    俺も二十年前に経験したことだから。


    「二十年経ったなんて信じられない」


    「そうだね。数日しか経ってない気がする」


    「それは言い過ぎ」


    「歳を取ると早く感じるものなんだよ」


    「幸せになってね」


    「君もね」


    六十歳になった俺は、六十歳の幼馴染へ連絡を取った。


    互いの四十年間を話し合った。


    そして確認した。あの日の約束をどうするか。


    「俺と結婚してください」


    「はい」


    誰かに何かを与えてもらうこと。


    誰かに何かを与えること。


    誰かに幸せを願ってもらうこと。


    誰かの幸せを願うこと。


    幸せってそういうことなのかもしれない。


    残りの人生、二人で幸せになろう。

     
     

    山本

     
     
    初めまして。山本です。 『百奇夜行』という小説を連載中。 どうか私を信じて、ついてきてください。 1日1話のペースで更新予定。 カクヨム/TALESにて同時掲載中。

    あなたへのおすすめ